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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第530話 愛育。

手直し等はまた後程に。




 『第二の大樹の森』を目指し、『外側の私』はプカプカと海に浮かぶ『土ハウス』の中でのんびりと過ごしていた。



 『魔力生成』を得てから二年余り、今の私なら【転移】などの魔法も使える様になっており、本当ならば直ぐに向こうへと辿り着ける。


 だが、それなのにこうして波に漂っている理由は、また『魔力生成』の為に海に引き返してくるのは非効率的だと判断したからであった。



 元々時間がかかるのは分かっていた事なので、こうして行きの海域もずっと『魔力と淀みのバランス』を整えながらのんびりと『第二の大樹の森』を目指していると言う訳である……。



「…………」



 ……そしてこの二年で、流石に不器用な私も『魔力生成』にはだいぶ慣れて来たように思う。

 幾らか生成できる魔力量も増えたし、扱い方も達者になってきた。


 また、『元気の芳香』に関しても、生成する魔力量から大凡の効果範囲を探る事が出来たので、『匂い』そのものが私自身には分からずとも、ある程度の効果範囲の調整は思いのままに出来る様になったのである。



 ……単純に、街などに入る際は極力『魔力生成』をしない様にすれば全く問題ない事も確認した。

 だが、結局はその状態のままだと『魔力と淀みのバランス』の調整が一向に進まなくなる為、街からある程度離れた場所で『魔力生成』をしなければいけない事に変わりはなかったのである。



 その為、次第に私は街に入る事自体が億劫にはなってきていた。

 ……そもそも『食事も睡眠も必要ない』私が、街に入って何をするのかという話もある。



 だからまあ、最近は『気が向いた時にだけ』街に入ってブラブラと散策する程度であった。

 ……でも、それが大きな街だった場合はエアにも一声掛けて、一緒に買い物などを積極的にするようにはしている。



 だからちゃんと『楽しんで』はいるから、心配は要らないのだ。

 ……特に今は、『内側』にてレイオスとティリアの子供である『双子ちゃん』──『レティエとレティロ』にとって必要な物とかも色々とあるので、その為の子供用品を買い揃える事が楽しかったりもするのである。



 愛妻家であるレイオスは、産後のティリアと『双子ちゃん』の支えになる事で忙しいので、その代わりに私達が買い物係を買って出たと言う訳だ。



 ただ、子供用の品物と言うのは品揃えもあまり良いとは言えないので、気分的には『宝探し』に近い部分もあった。

 だから、私達はあまり苦も無く買い物をしていると思う。



 それに前々から個人的に思っていた事なのだが、『子供服で可愛い物』はとても少ない為に、良いデザインを探すのにも丁度良かったのである。


 友二人の子なのだから、出来る限り『良い服を作ってあげたい欲』が最近ではメラメラと燃えてしまったのだ。



 ……ただそうすると、それだけ真剣に拘ったり探したりしていれば、当然店の者達からは『お二人のお子さんは幸せですね!』などと言われて間違われたりする事も多かったのだが──まあまあ、それはそれでご愛敬だった。



 勿論、エアはそれに笑顔で『はいっ!』と即答するし、私もそれに続いて『ウンウン』と頷くのみである。



 そもそも『名付け』や『加護矢』の話もあったし、実際に作って贈りもしたので私達的には『友の子』であっても『自分達の子でもある』と言う気持ちが等しく育っていたのだった。



 また『大樹の森』に居る精霊達やバウや赤竜親子、白い兎さん達からしても、既に『レティエとレティロ』は自分達の子供の様に可愛く想えているに違いない。


 皆、『双子ちゃん』に対しては全力で可愛がる気満々である。甘やかす気しかない。



 ──そんな感じで、『内側』ではそんななんともほっこりとした時間を皆で楽しんでいるのであった。



「…………」




 だが、当然の様に『外側』は、その全てが穏やかであると言う訳にはいかず……。


 やはりあの私の怪しげな風貌から、時々冒険者達には『異形の存在』と間違われて道中で争いになりかけてしまう事はしばしばあった。



 だが、それもどうやら単純に私の恰好がどうこうというよりも、今は完全に冒険者達の黄金時代とも言える環境になっているらしく──街から『異形と化した神兵達』を退ける為にも、街から街へと商人達が移動するのにも、冒険者達がパーティを組んで行動する事が言わば必須となっているそうなので、一人で居る私を周りが見間違えてしまうのである。



 だから、格好の怪しさだけではなく、単純に一人で動いている私は特に目立ってしまっていたのだった。


 ……因みに、冒険者のランクを示す首元の石の色が『白石』である事もまたそれに拍車をかけてしまっているらしい。



 まあ、『大樹の森』に居る者達以外の誰かと行動を共にする事はほぼほぼないし、その気も無いので、仕方がない話ではあると思う……。




「…………」



 ……ただ、そんな風に冒険者達の活躍が目まぐるしい事自体は、一冒険者としては喜ばしい事ではあった。

 冒険者達の人気が出れば、憧れて冒険者になりたいと思う者は増えるだろうし、人々の安全にも繋がる。

 安全な場所が増えれば人が集まり、人が集まれば、お金も動き、物流が増え、また更なる人を集める要因にもなってくるのだろう。



 大きくなることで安全性は更に高まっていくだろうと考えられる。

 また、冒険者達自身の練度も上がり、『人』は更に強くなっていく筈だ。

 自然と、『神兵達』への対処も上手くなっていくと思う。



 ……それに皮肉な話だが、『異形達との争い』が激化すればするほど、『人と人の争い』は前よりも格段に減り、世の中は平和になってくると言う噂も聞いたのである。



 だからまあ、それについては他の視点からすると色々と思う所もあるのだろうが……上手くは言えないけれども、『このまま平和になってくれればいいのにな……』と、私は思ってしまうのだった。



 それに、私が『魔力と淀みのバランス』を整える事で段々と改善もしていく部分もあるだろう。

 『神兵達』の発生自体を少なく出来れば、問題も減る筈である。



 ……ただ、『淀み』とは絶対に無くなるわけではないので、『神兵達』が完全に居なくなるという事は無いだろう。


 また『人を襲え』と言う『性質』を『神兵達』持つ以上、どうしても『人』との衝突は避けられないとも思うが、『それでもいずれは……』と信じて、私は希望を抱くのだった──。



「…………」



 ──まあ、実際私に対して襲い掛かってくる様な冒険者達も、私が『異形』ではないと知ると退いてくれる者も多かった。


 ……それに、もし戦闘になったとしても私の相手になる者は一人も居なかったので、個人的には大した問題でも無いのが現状である。



 暫く魔法で動きを止めたり、眠らせたり、宙に浮かせている間に私が歩き去ってしまえばそれでお終いだった。



 元々この手の対処には昔から慣れているので、敢えて説明するまでもないだろう。

 ……ただし、この二年程で、前よりも格段に『効率良く』対処出来るようにはなった気がした。



「…………」



 と言うのも、あの『おどろおどろしい音が鳴る杖』がこれまた意外といい味を出しており、襲って来る者達の動きを止めた後に『ひゅ~ドロドロドロドロ~』を間近で響かせてあげると、冒険者達はそれだけで『言葉に出来ない恐怖』を感じてしまうのか、その後しつこく追いかけて来ると言う事が殆どなくなったのである。……正直、これは想像以上に素晴らしい成果であった。



 まあ、一見すると私がとんでもない『悪役』に見えてしまうのが難点だが、私としては昔から苦手としている『しつこい者達』への対処法が見つかって内心『ほっ』と満足している。



 ……最近では、その杖に魔力を乗せながら響かせると『更に良い不気味な音』が出す事も分かったので、『最もいい音色』を模索して、今後も色々と試していきたいと言う所存であった。




「──ん?」



 ……でもそんな『外側』の喧騒も、海に出てしまえば暫くは無縁になるかと思う今日この頃。


 ただ、そうしてのんびりと波に流されていた私なのだが──そんな時にちょうど水平線の先から、なにやら『白い点』みたいなのが『ポツリポツリ』とこちらに向かって流れて来ている事に気づいたのであった。



 それも、その『ポツリポツリ』は段々と数を増やしていっている様にも視え、近付くにつれてその『威容(・・)鳴き声(・・・)』が私の元にまで届き始めたのである……。




 『プメェ~~!プメェ~~~~!!』



「…………」




 ……そうして、近づいて来るその愛くるしい姿と鳴き声は一度見聞きすれば到底忘れられない存在であり──当然の様に私はその正体を瞬時に察したのだった。




 あれは『羊さん達』であると……。





またのお越しをお待ちしております。

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