第518話 芬芬。
2021・05・02、本文微修正、物語の進行に変更なし。
『魔力生成』と言う『性質』を私は手に入れた。
それにより私の身体からは自然と溢れた魔力が『ふわふわ』と立ち上っているのである。
正直、これまでも魔力を周囲へ放出していた気もするのだが……まあ細かい事は気にせずにいこうと思う。
それになんと言うのか、自分の生成した魔力はどことなく別物である感覚が強い。
……上手くは言えないのだが、『魔力生成』と言う『性質』を得てからは、一概に『魔力』と言っても別物の様な存在感があって、その影響力は今までよりも段違いに広範囲に、かつ均等に薄く伸びていく様な感覚があるのだ。
それに、これまでの『私の魔力』と言えば、『私色に染まった魔力』ばかりだったのだが、今度のは『浸透し易く、無色透明で純粋な魔力』であると感じたのである。
その為、先ずは魔力の広がり具合がとても滑らかであった。
そして、その滑らかに広がる『生成された純粋な魔力』は基本的に『大樹の森』へと満ちて行くと、余分となった分だけが『外側』へと出て行く様に調整もしておいたのである。
その為、『世界』からすると増加する魔力量は微々たるものでしかないのだが、こればかりは許して欲しいと思う。私の優先順位的にこれは変えられないのだ。
それに、これでも費やせる範囲で最大を消費した結果なので、そもそもの生成量が少ない所も見逃して欲しいと思う。……私的には絞りきったのだ。
それに時間は少しかかる事になるけれども、『世界の魔力と淀みのバランス』はこれによって段々と改善していく事には違いない。なので、長い目で見て欲しいと思った。
……どれだけの魔力量を生成できるか当初は心配していたけれども、期待していた量よりは少なかったとは言え、問題解決に効果が望めるのであれば私は十分に及第点だと思う。
「…………」
それと、結果的に『人』としての『性質』──『心と身体』以外──を、ほぼほぼ失ってしまった私だったが、いまいち『人』でなくなったと言う実感は湧いていなかったりもする。
……と言うか正直、あまり変わった気がしない。
私は私のままだった。
まあ、確かに『食欲や睡眠欲』と言ったものは消費してしまったので、消えた感覚はある訳なのだが、現状ではそこまで不便も感じず、寧ろ活動時間が延びたくらいなので、ちょっとだけ利を得たなとも考えているのである。
……その為、現状の私は凄い前向きだ。『魔力生成』ができる様になって良かったと心から思っている。
結果的に、『性質変化』は大成功だったと言って過言ではないと──
「──ねえ、ロム?また『匂い』嗅いでていい?」
「……ん?うむ、ほどほどにな」
「うんっ!」
──すると、そんな私の思惑の途中で、隣に居たエアから突然そんな言葉が聞こえて来たのであった。
……当然、私は直ぐにそれに了承を伝えると、エアは満面の笑みと共に私の背中へと羽の様な軽やかさで負ぶさって来たのである。
まあ、いつも通りの光景ではあった。
……ただ、その実『性質変化』を成功させてから、エアからのスキンシップの頻度は少し過剰な位増えても居たのである。
因みに、周囲の反応もまた微妙に変化が生じており、エアの様に周りの精霊達も友二人も盛んに私に対する距離が近くなった様に感じていた。
それも、特に皆して『私の匂い』を嗅ぎにやって来るのである。
……つい先ほどまでは、私の傍に四精霊達もじゃれ付いて来て嗅いでいた程である。
だが、どうやらその理由としては、『人』でなくなった『私』と言う存在が、不思議と『お菓子』の様な甘い匂いを漂わせる様になってしまった事が原因らしい……。
……まあ、恐らくは『性質変化』による副産物ではあるのだろうとは思う。
だが、匂いに関して何かを付与した覚えが無いので、この変化が何故起きたのかについては私からは何とも言えない状態ではあった。……ほんとうに不思議な話だ。
でももしかすると、私の身体が『謎の発光現象』に包まれた事が何か影響しているのかもしれないとは疑っている──。(目を覚ました後、エア達から話を聞いたのだ)。
ただなんにしても、自分の匂いだからか、私にはその匂いがどんなものであるのか良くわかっていない。なので、判別がつきにくく、この問題をどう判断していいのか凄く困惑している所なのである。
……正直、影響の度合いもよくわからないと、どこからが危険で、どこからが危険じゃないのか不明過ぎたのだ。とりあえず『怪しい』位しか分からないのが現状である。
ただ、エア達が言うには『あまり危険な感じはしない上に、今までにないくらいに甘美に感じるので……すき』と言う話であった。その為、とりあえずは好意的に捉えつつ様子見にしたのである。
因みにだが、その『甘い匂い』は誰もが感じ取れると言う訳でも無いらしく──。
それでいて、尚且つ感じ取れる時とそうでない時があるらしい──という何とも複雑な『性質』を持つ様であった。
つまりは現状で感じ取れるのも、エアとバウ、四精霊、兎さん達、友二人と言う面々に限られていて──その『甘い匂い』がするのは私が『魔力生成』で『沢山の魔力を生み出した時』により強く香るらしいのである。
……だからまあ、なんとも『不思議な匂い』なのだ。
まあ、『魔力』については私もまだまだ分からない事が沢山あるので、『魔力から発せられる匂い』があってもおかしくはないとは思う。
……それに、もしかしたら『あっと驚く様な効果』もまだまだ他にも判明してないだけで隠れている可能性も十分にある。
なので、今後も警戒を忘れずにはいたいと思うのであった。
「…………」
……ただ、現状『外側の私』の方は『雪のお家』の中で白い兎さん達と一緒に過ごしているのだけれども、その兎さん達の様子がこれまた『内側』に居るエア以上にスキンシップ過剰な状態になっているのだが──これももしかすると『匂い』のせいになるのだろうか?
だが、何とも判断が難しい。
もし『内と外』でも効果に差があったりすると、更に複雑になりそうだった。
まあ、現状だと外で問題になりそうなのは、そんなにも可愛らしい兎さん達からスキンシップを受けている私が愛らしさから胸を痛める可能性があるくらいなのだが──。
「…………」
……まあ、『内側』の方は『大樹』の前にある花畑に居れば全然気にならない位の匂いだと精霊達は言うし、本当に『匂い』のせいなのかは要検証である。
それに、『外側』の方が匂いの効果が強まるとか言う可能性もあるのかもしれないと思う。
……もっと言うなら、私が生み出した『純粋な魔力(匂い付き)』と『世界にある魔力』が合わさる事によってのに、何かしらの『とんでもない効果』が発生してしまうとか──
『──がうがう』
──かぷっ!
「──んっ!?」
「あっ!ご、ごめんねロムッ!──ついまた、噛んじゃったっ」
──すると、『内側』にてエアがこれまた突然、私の首筋に甘噛みをして来たのであった。
……という事は?、『内と外』の効果の強さはどうなるのだ?個人差があると言う事なのだろうか?
だが、とりあえずは、エアと兎さん達の様子を見る限り『匂いの効果』には『他者を魅了する効果があるのかも?』と言う事は気を配って警戒をしておきたいと思うのである。
「──平気だ。痛く無い」
「──うん」
甘噛みでしかないので本当に痛みは殆ど感じなかったのだ。エアは流石に恥ずかしかったのか若干頬を赤らめている様に視える。
……ただその時、エアの額にある二本の美しい『血晶角』もまた、いつもよりも鮮やかさを増した様に私には視えて、なんとなく私はその事が少しだけ気に掛かるのであった──。
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