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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第477話 胸中。




 『お城作り』も含めて祭りの準備は進み、日々は瞬く間に過ぎ去った。


 ──そして本日、私達は『大運動会』当日を迎えたのである。




「──これより、『大魔法戦運動大会』を開催する」



 『うおおおおおーーッ!』『待ってましたーーっ!』『楽しみにしてたぞーーッ!』


 『大樹の森』の中、『内側の私』がそう宣言すると、周りからには精霊達のとても大きな歓声が響き渡った。

 そして、上へと視線を向ければそちらには『第五の大樹の森(お城付き)』の姿があり、そこからはゴーレムくん達の喜びの喝采がよく聞こえてくる。



 『──ドコドコドコドコ!ドンドンドンドン!ドコドコドコドコ!ドンドンドンドン!』



「それでは、開会の挨拶はエアに……頼む」


「はいっ!──ごほんっ、それじゃあ!みんなっ!がんばろうっ!いっぱいたのしもうっ!全力でっ!出陣だあああーーーッ!!」



 『いくぞおおおおおおおおおーーッ!』『ウオオオオオオオオーー!!』『勝つぞ―--!!!』


 『──ドコドン!ドコドン!ドコドコドコ!ドンドコドンドン!ドコドンドン!ドココココココ──』




 精霊達やゴーレムくん達の歓声や足踏みや拍手がまるで嵐の様に鳴り響き、此度の祭りは競技開始前から既に最高の盛り上がりをみせていた。皆、それほどまでにこの日を待ち望んでいたと言う期待の表れなのであろう。……私も凄く楽しみである。


 エアもそんなみんなの気持ちを察したのか、熱が冷めない様にと最短で最高の挨拶をしてくれたのだった。


 私が視た所、ゴーレムくん達の熱意は言うに及ばずだが、精霊達もまた同等以上のやる気満々に良い表情をしている。……どうやら両者共に既に臨戦態勢はばっちりと整っているらしく、これはとても良いものが観られそうであった。



「…………」



 ここ最近は色々と大変な事ばかりで、悲しい事や辛い事も沢山あったが、今日から数日かけて行われるこのお祭りでは、精々その分まで皆で楽しく過ごせたら良いと私は思う。……とりあえず、最後まで怪我無く楽しめれば、もうそれだけで最高のイベントとなるだろう。



 ……因みに、今回は『大運動会』以外のイベントは敢えて除外しており、皆で身体を動かして明るく楽しく暴れ回り、ここ最近の色んな鬱憤やら溜まっていた悪いものを全部吐きだしちゃいましょう──と言うのが趣旨になっている。



 その為、予定スケジュールは全部が全部、競技ばかりで埋まっている訳だ。それを想うと皆のこの熱狂も当然なのかもしれない。昼夜関係なくずっと何かしらの競技をやっているので観戦するだけでもきっと暇しないだろう。

 流石の私も楽しみすぎて、若干いつもよりテンションが高くなっている気がする(気がするだけである)。



 それも今回は、参加者として精霊達やゴーレムくん達だけではなく、ゲスト参戦として竜族代表で赤竜親子とバウ、魔法使い代表でエアと友二人も参加者として入っており、各競技はいつもより少しだけ複雑さが増し、展開が読みにくくなることだろう。正直、誰が勝かの予想は大変難しいと私は思っている。……各自の応援にも尚更熱が入る事だろう。大いに盛り上がって欲しい。



 因みに、いつも通り戦力バランスに偏りが無いよう私がその都度上手く振り分けもするので、一方的な試合展開にはならないと思う。

 またそれぞれの代表をごちゃ混ぜにした種目も多めとなっているので、いつも以上に混沌としたわちゃわちゃ感が楽しめるのではないだろうか。



 ……ただ、エアやバウの参加はともかく、友二人までも参戦するとは正直思っていなかったのだが、あの二人はどうやらゴーレムくん達のサポート役をしたいそうで、後方支援をしながらこのお祭りを楽しむ予定であるらしい。まあ、それぞれの楽しみ方があって大変素晴らしいと私は思った。気をつけて、無理ない後方支援を頼む。



 それと、勿論の事だが、人気の魔法戦だったり、例によって『精霊達対ゴーレムくん軍団』の激熱対決など『お約束』も確りと抜かりなくやる予定なので、これまた楽しみである。


 特に、お城まで作って練習し続けていたゴーレムくん軍団の『魔法攻城戦』と精霊達超有利の戦場である『魔法水中戦』と言うその二つの競技と、敢えてその二つを複合して考えられた新競技『魔法攻城水中戦』と言う、この新競技も今回かなりの見どころとなっている。



 『魔法攻城水中戦』は、ゴーレムくん達と精霊達のそれぞれの要望を合わせた戦いで、それぞれの陣地をどちらが上手く攻略できるかが戦略の肝となっており、『魔法攻城水中戦』前のそれぞれの有利戦は言わば『前哨戦』となっており、本戦は後に控えている訳なのだが、ちゃんとそれぞれでも競技ポイントを稼ぐ仕様となっている為、最終的にはその三戦での合計ポイントが高い方の勝利となる様に競技を調整してみたのであった。



 ……少し説明が長くなったが、要は三つの戦場を用意し、攻め側と守り側を何度も繰り返しながらポイントを稼いで、最終的に本戦で決着をつけると言うそんな競技となっている。

 正直、実際にやって見ないと結果がどうなるか全くわからないので、これもまた凄く楽しみなのは間違いない。



「…………」



 それと、例によって私は審判役である。全力でやらせて貰います。頑張ります。


 ……あと、この楽しいイベントの最中に余計な茶々を入れられるのは大変困ると準備している途中で気付いた為、急遽『大樹の森』と同様にこの『空飛ぶ大陸』も私の『内側』へと移してしまったのだった。



 そのせいで調整がまた少し大変な状況にはなっているのだが、これで皆が安全に過ごせるのであれば大した問題ではないだろう。『内側の私』もとりあえずは問題なく審判役をこなせそうである。



 ただ、その代わり『外側の私』はとある街で宿を借りながらのんびりと生活する以外なく、時折ご飯を食べる為に外に出ては『ぽーっ』とし、ギルドで簡単な依頼を受けるフリをしながら近くの森に行くと木の枝に乗って寝て過ごすと言う、そんな生活を送っていた。



 ……本当はずっと不動のまま宿で眠り続ける事も出来るのだが、それをすると宿の者達に別の意味で凄く驚かれてしまうと気づいた為にやめたのである。とりあえずは、お祭りの終わりまで『外側』で平和にのんびりと過ごせば良いと私は思ったのだった。



 ──ただまあ、その祭りの終わりがいつ頃になるのかは、実はもう不明だったりはするのだが……。



 ……でもまあ、それも仕方がないだろう。皆、どうやら久々のお祭りが楽し過ぎるらしく、競技によっては『も、もう一戦頼む!』『わっはっは!仕方ないな!受けてやろう!さあ、かかってこい!』みたいな熱い状況が既にそこかしこで起きてしまっているのである。



 その為、開始一日目でもう予定はかなり延び延びになる事が決定していた。

 当初の予定では数日で終わる筈だったが、これはきっと一月くらいかかってしまうかもしれないと思っている……。


 だが、それはそれで私も面白いと想った為、このまま変更する事なく見守っていくつもりであった。

 それに、もしも途中で皆の熱が冷める様な事があれば、その時はまた本来の進みに戻せば良いだけの話なので、臨機応変に審判をしていくつもりなのである。



「…………」



 『皆が笑顔で居られる場所が此処にある』──その事が私にとっては何よりも大切なのだ。


 ……おっと!そこそこ!今のは惜しいがフライング判定だ。もう一度開始の合図を送るぞ!……うむうむ、今度はいいスタートだな。がんばれがんばれ。……おや?





「……ろむ」


「……ん?レイオスか。何かあったか?」



 『大樹』の傍に座って審判に集中していると、私の元へと友レイオスが尋ねて来た。それも、その手には何かを携えている様に見える。

 ……辺りは既に、深夜と言っても良い時間帯へと差し掛かっており、疲れ知らずの精霊達やゴーレムくん達とは違ってエアやバウなどは一旦おやすみしている頃合いであった。



「……飲まないか?」


「酒か?」


「ああ」


「……貰おう」



 彼がその手に持っていたのはどうやらお酒であった様で、審判役をしている私の事を彼は労いに来てくれたらしい。ありがとう。いただきます。


 ……うむ。うまい。これは何時ぞやの夜の街での事も思い出され、私は直ぐにいい気分になった。勿論、審判としての役割もちゃんとやっているので問題はない。



 ただ、それからは暫くレイオスと二人で酒を飲みつつ、色々と語り合いながら、沢山の競技を楽しく観戦して過ごしたのであった。


 ……でもなんと言えば良いのか、私は楽しく酒を飲んで観戦しているものの、一方彼の様子には少しだけ陰りがあり──『……ん?なんか言いたい事でもありそうだぞ?』と、何となくだがそんな雰囲気を私は感じたのであった。



「…………」


「……ロム、話があるんだ」



 ──そこで、私は暫く敢えて酒も飲まずに、ただ彼の方を『ジッ』と見つめ続けていたのだが……案の定、彼の方もそこで空気を察したらしく、器に残っていた酒を一気に呷り始め、私の目を見返し来ると、いきなり覚悟を決めたような表情でゆっくりと話し始めたのであった……。



「……俺は、ティリアと、子を作ろうかと思う」


「…………」



 ──だがしかし、彼の口からいきなり告げられたその内容は少々、私が想像していたよりも赤裸々が過ぎて、逆に私は何も言う事が出来なくなってしまったのだった……。




またのお越しをお待ちしております。

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