第467話 過程。
『ダンジョン都市』の復興の手伝いの為、暫くこの地に留まっていた私達であったが、周囲の全てのダンジョンの間引きが済んだタイミングで、それを区切りにこの地を去る事にしたのであった。
……結局の所、大した事は何も出来なかったが、それでも道場青年や生き残った者達は十分に助かったと言って、皆凄く感謝してくれたのである。
現状、街は少しずつ建物らしきものも増えてきて、危険そうだからと今までは距離を取って様子を見ていたらしい他の街の商人達や旅人、冒険者達も段々と足を運ぶようになってきており、新しい『ダンジョン都市』も少しずつだが活気が戻ってきている所であった。
ただ、元々この地の領主的な役割を担っていた者達が今回の件で亡くなってしまっていた為、当初は少し混乱もあり、余所から来た商人達とはこの地の管理について少しもめそうな雰囲気もあったのだが、それも今では道場青年を先頭に生き残った者達が上手くまとめ上げて、彼らを中心に街は順調な歩みを取り始めている。
「…………」
……まあ、もしかすると、いずれはまたこの地を巡って余所から貴族等の存在が厄介をかけてくる可能性もあるが、この街を一から建て直したのは道場青年達なので、もしそんな者達が後からやって来て勝手な言い分をわめき美味しい所だけを持って行こうとしても、『──その時は、そんな不届き者達は俺達の力で軽々と跳ねのけてやるつもりですよ!』と、彼らはとても堂々としていた。
『……この街は俺達の街ですからね。見守っててくれる皆の分まで、俺達がちゃんとした明日を作っていきます。だから誰にも邪魔はさせません。例えまた強大な魔獣がやって来たって、もう勝手な事をさせるつもりはありませんよ』──と言う事らしい。
……実際、道場青年も生き残った者達も高ランクの冒険者ばかりなので、もし彼らと余所の貴族などが戦う様な事態に発展しても、戦力的には十分に申し分ないだろうとは私も思った。
なにしろ彼らは、あの酷い火炎と衝撃の中、生き抜いてきた者達なのである。
そもそも、それに耐え得るだけの生存能力を備えていなければ、あの地獄の様な状況で生き残る事は到底できなかっただろう。
……彼らの生存は、なにも奇跡だけで成り立っていたわけでは決してないのだ。
それも、エアに治療され完全復活してからは、街の復興をしながら各ダンジョンを私達と一緒に攻略もしていく内、彼らも更なる成長をしていたりする。
『この街を絶対に守る』と言うその意思と、『救世主』を支える百人弱の強靭な戦士団の絆はあまりにも固く。その強さは余所の者達では最早測り知れないものとなっている筈だ……。
それに、百人弱の生存者達は皆、瓦礫の中から一人一人道場青年に命を助けられた者達ばかりであった。
だから皆、言葉にはしていないけれどもどこかしら彼に心酔している部分があり、『彼の為ならば』と、どこまでも共に突き進んでいくだけの覚悟を持っている様にも私は感じたのである。
だから、その様な背景もあって後は彼らに任せておいても大丈夫だろうと、私達はそう判断したのだった。少しこちらに長居し過ぎてしまった気もするが、結果的には私達も色々と気付けた事が多くあり、長居して良かったとも想う……。
だが、流石にそろそろ友の迎えにも行きたいと思っていた所だったので、この区切りは丁度良いタイミングだとも思ったのだった──
「ロムさん、エアさん……ほんとうにいろいろとありが──あっ、いや、あとそれからバウさんもっ!本当に色々とありがとうございました!俺達、頑張ってきっと強い街にしてみませますから、次来た時は楽しみにしていてくださいっ!」
「……ああ」
「みんな、身体には気をつけてねっ!」
「ばうっ!!」
──そうして、去り際の挨拶はそんな言葉と笑顔に包まれ、私達は道場青年達に温かく見送られながら『ダンジョン都市』から離れたのであった。……君達が作る『明日』を私も楽しみにしている。
だから、どうか身体に気をつけて頑張ってほしいと、心からそう想った。
「……ん?」
……ただ、そうして別れを告げて街を離れた私達なのだが、空へと身を浮かし友二人が居る大陸の果てへと──例の『岬の小屋』がある方へと向かっているその途中で……私はなにやら少し不思議なものを発見してしまったのであった。
──と言うのもそれは、遥か遠くに薄っすらと、雲の高さにほど近い場所にて、どうやら何か『大きな城の様な物』を建設中の『見覚えのある空飛ぶ大陸』の姿だったのだが、私はその想定外の光景に思わず首を傾げる事になるのであった……。
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