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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第456話 水掛。




 赤竜達との話し合いによって、一応はすんなり(?)と、バウと赤竜の子は目出度くも『許嫁』となる事に決まった。


 それにより、父赤竜は私達から少し離れた場所で何やら地面にシクシクと水を撒いているけれども、『許嫁』に決まったと赤竜の子とバウに話をしてみたら、二人がとても喜んでいた為になにも問題はない。大事なのは二人の気持ちである。



 それにしても、『許嫁』が決まった事による赤竜の子の喜び様が凄かった。

 『許嫁に決まったよ』と、母赤竜から聞いた瞬間から『ぴーッ!ぴーッ!』と『好き!』をバウに連呼し続けており、バウが思わず照れてしまう程に今ではもうべったりとくっ付き続けている。



 そんな娘の嬉しそうな姿を見て嬉しく思っているのか、母赤竜は『ウンウン』と満足そうに頷いており、父赤竜は──チラッとだけ振り返ると、また再びシクシクと水撒きを開始し始めたのだ。




「…………」



 ……だが、『許嫁』となる事は決まったものの、実際はまだ話し合いは終わっていない為に気は抜けない。

 何しろこの後には、もしかしたら父赤竜が更に水撒きをしかねない重要な問題が残っているからである。



 ──と言うのも、事前に予想していた事ではあるのだが、『今後バウと赤竜の子は何処で暮らすのが一番良いのか?』と言う話をちゃんとここで話し合っておかなければいけないのだ。



 そもそも、未だ幼竜の域を出ないバウと赤竜の子にとって、番になるとしても相応しい姿となるまでには、まだ十数年はかかると言うのが一般的な認識であった。


 なので、その間『許嫁』となった二人が、どれだけの距離感で生活していくのかと言うのはとでも重要な話だと思う。

 特に、これだけバウにべったりな赤竜の子が、バウにずっと会えない状況が続く事を受け入れられるとは到底思えないのである。



「ぴーーッ!ぴぴぴぴぴぴぴ──」



 ……現に、暗に遠距離で生活する事を母赤竜から仄めかされたら、直ぐに『絶対にやだ!やだやだやだ──』と、最早『やだ』以外の言葉を忘れてしまったかのように、赤竜の子は母赤竜に首を振り続けていた。



 ……だが、ならば『近距離で……』という選択肢は、逆に今度私達の方からするとあまり具合が良くないのである。

 何しろ、バウの住処でもある『大樹の森』は既に私の中にある為、近距離で暮らすとなったら、私がこの地周辺に居る必要があるのだ。



 でも、まだ緑豊かな森であるならばまだしも、この熱気と岩ばかりの土地では、個人的には居心地が良いとは思えない為に、十何年も長居したいとは思えないのである。



 それも、私が暮らし難いからと言ってこの地を好き勝手に作り変えてしまうと、今度はドラゴン達にとっても都合が悪くなってしまうのだ。



「…………」



 そうすると、残った選択肢は自然と限られてくる訳で……。

 今の所一番現実的なものとなると……『バウと赤竜の子が、どちらか親元を離れて一緒に暮らせばいい』と言う考えに自然となって来るのであった──。



「──ギャウっ!ギャウッッッ!!」



 ──ただ、そうすると、その話が聞こえたか否かの瞬間、先ほどまではただ水撒きに徹していた筈の父赤竜が猛然と身体を起こし、話し合いの場所へとドタドタと戻って来て断固として『うちの可愛い娘をっ!絶対に連れて行かせはしないッッッ!』と鼻息荒くも騒ぎ始めたのであった。




「…………」



 ……だが、父赤竜のその言葉は親として考えるのであれば、至極真っ当なものではあったと思う。


 なにせ、彼らからすると私は、万にも及びかねないドラゴン達の襲撃があったにもかかわらず、何の問題もなくここまでやって来て居る様な、危険な存在エルフなのである。


 当然、それだけのドラゴン達が帰って来ていないという情報は、例の『ドラゴン井戸端会議』を通して彼らにも伝わっている事だろう。


 なので、それだけのドラゴン達の殺めたであろう者の元に、自慢の可愛い娘を嫁がせたくはないと彼らが想ってしまうのも仕方がない話ではあった。



 そして、今回ばかりは母赤竜も父赤竜に賛成らしく。どちらかが親元を離れて暮らさなければいけないなら、『そちらの白い子はこちらが預かる。娘と一緒にこの地で暮らせばいい』と言うのである。



「……バウ……」



 ……だが、それは私達側からすると、当然のように話は変わって来る。


 『大樹の森』において、バウと言う存在がどれだけ大切に想われているか。

 生まれた時から一緒に居る私やエアにとっては、特に離れがたい存在なのである。

 ……その為、一緒に暮らすのであれば『大樹の森』でバウと一緒に赤竜の子が暮らせばいいのではと想ってしまうのだ。



 ──その為、互いにバウや赤竜の子の事が可愛くて大切で仕方ないからこそ、話はそこから平行線を辿る事になってしまったのであった。




またのお越しをお待ちしております。

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