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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第453話 先。





 『大樹の森』を身体の中へと収納した『外側の私』は、『泥』を使ってバウを連れ去った赤竜の痕跡を探りながら追いかけていた。



 生憎と『子連れ赤竜』は飛び去った為に、地面へと分かり易く足跡などを残していってはくれていないようだ。

 だが、かなり追跡し難くはあるけれども、この大陸の各地へと事前に『偵察用の水溜まりや土石』を配置していた事によって、途切れ途切れだがその飛び去る姿を補足する事には成功していたのである。



 よって、その見かけた場所から行き先を色々と考察しつつ、恐らくは赤竜の塒だと思われる方向へと最短距離で私は向かって行った。



 ただ、『ダンジョン都市』へと幾つか救助用に『泥』を向かわせてもいた為に、偵察の警戒網にも大きな穴が幾つか生じており、その為正確な行方を察知は出来なかった。だが、確実に赤竜の方へと私は近付いていると思う。……まあ、『泥』を操作しながらなので徒歩での移動にはなってしまうが、それでも地道に距離を縮める事は出来ている筈だ。




 『──何故、魔法で飛んで追いかけないの?』と思うかもしれないが、現状の私は色々と自分自身にも調整が必要な状態であり、実はその、普段よりもあまり余裕がないという弱体化の状態にあった。


 それに、『内側の私』も何かとエア達と作業しながら魔法を使ったりしているので、こちらは現状『泥』の操作だけで手いっぱいになってしまっているのである。こればかりは仕方のない話だった。



 ……だが因みに、『内側の私』やエア達の方は、今は丁度『巨大な樹木の魔獣』と化してしまった喫茶店の店主を元の姿に戻せないかと頑張っている所である。向こうはだいぶ良い調子で進んでいるようだ。



 また更に、こちらも因みになのだが、色々と騒ぎがあった為に未だ祝えてはいないが──なんと、この度喜ばしい事にもエアが、素晴らしくも『差異』を超える魔法使いに成長したという慶事があったので、そのお祝いを近々したいなと実は画策中なのである。



 先の大きな戦いを通して、防衛しきったエアがそれだけ大変な思いをしたという証であり、今まで幾つもの壁を乗り越えた果てに、ようやくたどり着いたその輝かしい成果を、皆で祝ってあげたいなと思ったのだった。


 ……私なんかよりも余程最短で駆け抜け、そこへと至ったエアの頑張りを想うと、私はそれだけで胸が熱くなってくる。その労苦を共に歩きながら見続けて来た私達としてはもう、それだけで言葉にならない。



「…………」



 覚えているだろうか。最初は普通の川にいる魚にすら翻弄されていたあのエアがである。

 そんな彼女がもう、あの時の私と同じ場所へと立っているのだ。

 それを想うと、それだけでもう色々と感慨深くなる。……心の中の手ぬぐいを、私はいったい何十枚、水浸しにしてきた事だろうか。嬉しい。喜ばしい。そして、自分の事の様に幸せを感じてしまう。



 それこそ、『おめでとう』と。

 『よくがんばったな』と、心から伝えてあげたい。



 ……ただ、今はちょっと時期的に良くなく、目の前にある大変な事が片付いてもいない為に、直ぐには祝ってあげられないのだが、バウの事や巨木の彼女の事、『ダンジョン都市』の事や、友二人を迎えに行く事等、そんな色々が落ち着いてゆっくりとした時間が取れたら、それこそ盛大に、精霊達と一緒に皆で全力でエアの事を祝ってあげたいと私達は計画しているのであった。



 四精霊には密かにもう伝えているので、裏では少しずつ精霊達も準備を進めてくれるらしいが、今の所はとりあえず目の前の事に集中して、残っている問題を一つずつ確実に解決していきたいと思う……。



「…………」



 ……そうして、そんな想いを秘めつつも、私はその後も歩きで確実に『泥』を使いながら捜索を続けていき、『土ハウス』を使ってまた海を漂い大陸を渡って、赤竜の塒があると思われる山々の一つ──とある火山の傍までやって来たのであった。



 こっちは『白銀の館』がある方の大陸で──日差しが厳しい大陸であり、それも今居る火山周辺の山々は特に気温も高く、暑くて普通の人では生活するのに適さない土地として、冒険者ギルドでも『魔境』とまでは言わずともかなり危険な地帯として認定されている土地だ。



 流石は赤竜と言う事で、熱に強いあのドラゴン達の塒としてはまさに案の定とも言える場所ではあるのだが……うちのバウにおいては、見た目はなんとも可愛らしい白い糸目のプニプニとした愛らしいドラゴンであり、元々は『地学竜』と言う『地』属性に秀でた子なので、もしかしたらその熱に耐えきれていないかもしれないと言う不安が出てきたのである。



 つまりは、赤竜達にそのつもりが無くても、連れて来られたバウが自然とこの環境に適応できずに弱ってしまう可能性も十分に考えられた。



 なので、『もしかしたら、バウが苦しい思いをしているかもしれない……』と、ついつい考えてしまって、私の捜索する足にも自然と力がこもったのである。



 『……バウ、待って居ろ。直ぐに迎えに行くからな……』と、私の心もそんな周りの熱気にあてられたのか、熱い想いが段々と積み重なっていく……。



 そして、『泥』によって赤竜の塒がとある山の大きな洞窟にあると突き止めた私は、まだ少し調整の塩梅が思わしくない状態であっても関係ないと──『バウの為ならば多少の無理も構わぬ!』と思い立ち、それからは全速力で一気に飛んでその場所へと突入していったのであった。



 ……先の件もあって、大丈夫だとは思うが万が一の事もあるからと、手遅れになってはいけないと、そんな少し切羽詰まった雰囲気で私はその大きな洞窟へと入って行ったのだ。



「…………」


「ぴーっ!ぴーっ!」


「ばうっ!ばうっ!──ばっ!?……ぅ?」




 ──すると、その大きな洞窟の奥地にて、甘える赤竜の子となんとも仲睦まじく互いに『お食事魔力』を食べさせ合っている、それはそれは楽しそうなバウの姿を見つけて、私はなんとも言えぬ脱力感に包まれ『ふにゃり』と身体の力が抜けてしまうのであった。





またのお越しをお待ちしております。

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