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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第450話 擁。




 恐らくは仕組まれ、狙われていたであろう今回の『大樹の森への襲撃』ではあったが、なんとか助けに入る事が間に合い事なきを得た。


 ……ただ、その襲撃の前に『子連れの赤竜』にバウを連れ去られてしまった為、今度はそちらへと直ぐに助けに行かなければと私達は考えている。



 だが、状況的に恐らくだがあの『子連れの赤竜』にバウを傷つける意思はないとは思うのだ。


 なので、そこまで心配はし過ぎてはいない。

 話に聞くと幼竜がバウの事を好いているために、何らかの形で此度の襲撃がある事を察したあの赤竜が、ならせめてバウだけでも助けるかと思ったのではないだろうかと言うのが私達の想像である。


 ただ、もしかして万が一と言う事も考えられる為、出来るだけ急いでバウの事を迎えには行くつもりだった。エアもあの赤竜にはちょっと物申したい事があるらしいし、今は『泥』を使って赤竜がどちらへと去ったのか調べている所なので、見つけたらすぐさま追いかけたいと思う……。



「…………」



 ……だが、それにしても、此度の事は本当にギリギリだった。


 それに、手口がなんとも陰湿過ぎるのである!なんだあの、『精神攻撃で時間稼ぎをして、その間に拠点を襲撃だ!』なんて魔法使いである私用に考えられた様な作戦は!いったい誰が考えたのだ!

 ……正直な話をすれば、今回の件はかなり私には効いた。

 だから、もうやらないで欲しいと言うのがここだけの秘密である……。



 これで、もしエア達を助けるのがほんの少しでも遅れていれば、私自身本当にどうなっていた事か……想像しただけでも眩暈を覚える。



 エアにしても、精霊達にしても、疲労や小さい怪我で済んだから幸いだった。

 ほんと皆が無事でいてくれて嬉しく想う。最悪の事態に至る事だって十分に考えられたから、尚更に強くそう思った。



 ……それに、森の中は四精霊やエアが『大樹』周辺と『別荘』周辺を優先的に守ってくれた為に比較的無事ではあったが、それ以外の場所はドラゴン達のブレスによってか大きく大地が抉れてしまっている場所も多く、炎が燃え広がっている場所や、動物や魔獣、『ゴブ』などによってかなり荒らされてしまってもいたのだ。



 これを元に戻すには多くの時間がかかる事だろう。

 あれだけの襲撃だ。被害は確りと大きかったのである。



 それも、何やら『よくわからない存在』から『宣戦布告』に近い発言もされたために、また同じような襲撃が起こる可能性もかなり高くなった。今後も油断はできない。


 なので、『子連れの赤竜』の大凡の行方が探知できるまでは、エアや精霊達と一緒に森の修復と更なる防衛手段の向上に私達は努めようと思う。




 ──そこで、私は今回の経験を鑑み、一つの対策を思い付いたので、それをエア達に相談してみる事にした。



「……えっ、ロム、ほ、ほんきっ?」



 『旦那、頭は痛くありませんか……?』『そんな事って出来るの?』『……不明』『……でも、この方がおっしゃるのであれば……でも、それはあまりにも負担が──』




 ──だが、それを伝えるとこの様に、四精霊だけではなくエアにまで驚かれて心配そうな目をされてしまったのだった。



「ああ……本気だ……」



 ……だが、私はその言葉通り大真面目で『それ』を提案している。

 そもそも、今回の問題となるのが、『敵側の思惑に嵌りかけてしまった事』と『敵の領域の性質』にあった。


 ならば、それを解決する為にあたって最低限必要となるのは、簡単に言うと『敵の思惑を外す術をもつ事』と、『敵の領域への対処法を備えておく事』である。



 そこで、まず『敵の思惑を外す術』についてであるが、こちらは今回の場合、『私とエア達で連絡する手段が無かった事』と『敵の襲撃を跳ねのけるだけの戦力が不足していた事』等が原因として考えられると思う。……もしそれらがちゃんと整っていれば、例え襲撃があったとしても、敵の思惑に嵌りかけていたとしても、そこまで大きな問題へと発展する前に対処が可能だったと私は思うのである。



 なので、こちらについての簡易的な対処法としては、遠隔でも意思疎通できる様に何らかの魔法道具や魔法を開発したり、森そのものに過剰な罠や戦力を配置しておく事が考えられるだろう。



 そして、もう一方の『敵の領域』に対しては、いざと言う時に『大樹の森から脱出する為の方法』や、それこそこちらも『敵の領域を無力化』する為に、魔法道具や魔法を開発するという方法等が考えられる……。



「…………」



 ……だが、正直な話、本来はそんな色々と都合良く魔法道具も魔法も簡単に開発できるものでも無いし、折角開発してもまたそれに対して更に向こうが対策を講じて襲撃して来たら何の意味も無くなってしまう。森に過剰な戦力を配置したとしても、それを超える戦力を向こうが用意すれば一緒である。


 それに、私が今回はたまたま【転移】で居なくなってしまった事も原因と言えるのかもしれないが、あの手の『良くわからない存在達』は時に力業でどんな犠牲でも払って私の事を無理矢理別の場所へと【強制的転移】させたり【封印】をしてきたりして邪魔をするような気がするのである。



 ……と言うか、『別荘』の存在がかなり気に入らなそうなあの『何か』の発言もあったし、『敵側』の本気具合も窺えたので、これは並の対処法では通用しない可能性が高いような気しかしないのだ。



 ──なので、向こうがそれだけの想いをもって本気で来るならば、こちらもそれ相応の本気をもって対処しなければいけないと私は思うのであった。



 ……そこで、私は本気も本気で、超真面目かつ一番効果的で効率的な『それ』の方法をエア達に伝えた訳なのだが──



「──でも、それじゃあロムだって危ないんじゃないのっ?」


「……そうだな。確かに全くの危険がない方法だとは言いきれないだろう」


「ならやだっ!やだやだやだーーっ」


「…………」



 ──と、こんな風に珍しくエアを筆頭にしてみんなからあまりいい印象をもって貰えずに、先ほどから全く了承して貰えないのだった。


 ……だがなぁ、私としては、これ以上に安心感を覚える方法はないのだが……。



「絶ー対にダーメっ!そんな危ない事しなくたって、絶対他にも方法がある筈だよっ!──『大樹の森をロムの中に移す』だなんて、そんな必要ないんだから……」



 ……とエアは終いにはそう言い、とても悲し気な表情をする様を見て、私は何とも心苦しくなってしまうのであった。




またのお越しをお待ちしております。

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