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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
437/790

第437話 興味。

(注意・前話同様です。ここ数話は、本作品において少し複雑な部分になるかもしれません(予定)。

 ──ただ、面倒を避けたい方用に、後書きにて今回も三行ほどで簡単に状況をまとめておきますので、忙しい方は本文を読まずに良かったらそちらだけをお読みください。

 ──また、逆にそれを見たくないと言う方は、ブラウザバック等の措置をよろしくお願いします。申し訳ございません)




 『良き関係』とはいったいどういうものであろうか。



 互いに影響し合い、自分の成長になれば、その影響を与えてくれた相手は良き人となるのだろうか。

 その逆に、自分にとって、『利』にならない事ばかりであれば、その相手は悪い人となるのであろうか。


 ……だが、その『利』にならない相手が、自分の『想い人』や『大切な人』であった場合、いったいどうすれば正解と言えるのだろうか。



 関係を切り捨てて距離を取ればいいのか。

 それとも、最初から近付かなければ良かったのか。

 そもそも、出会う事すらしなければ良かったのか。

 ……果たして、どれが正解なのだろう。



 ただ、どんな選択をするにしても、その相手がどうしようもなく求めざるを得ない人であったなら、離れがたいと感じる相手ならば、その場合仕方ないと思いながらも関係は続けていけるものであると私は思うのである。



 良くも悪くも、関係とは続ける意思があれば続けられるものだと私は思う。



 だが、そのまた逆で、自分の存在が相手にとって良き影響を与えないと、自分がいる事で相手に悪い影響を与える事が理解できてしまった時……それも相手がそれに気づいていない場合、相手にその事を気付かせてあげる事は果たして……『優しさ』と呼べるのだろうか。……呼んでもいいのだろうか。



 ……ただ、結局求めるのであれば、関係し合わないわけにはいかないのだ。



 私たちは生きていればそれだけ影響し合う。そんな世界の中にいる。

 なんにしても、全くの無関心でいる事はとても難しく、相手の事を良くも悪くも『想わずにはいられない』そんな状況の中で皆、生きているのだ。



 そして、そんな色々な気持ちは、心の奥にずっと秘めたまま仕舞っておく事は出来るけれども、その気持ち自体は簡単に無くせはしない。


 ……何故なら、それは記憶に強く結び付くものなので、自分の好き勝手に消したりできないからである。



 だから、それを忘れない限りは、どれだけ上手く隠せていても、心は喜びを感じれば自然と沸き立ってしまうし、その自然と沸いた心の声や色は仕草や表情となって、本人の身体へと気付かぬ間に表れてしまうものなのだ。



 ──つまりは、誰かと接する際に、表情や仕草が変わるのは、そこに想いがあるからである。



 だから、そんな中で、相手の仕草や表情が全く読めない相手の場合、その相手が自分の事を好きなのか、それとも嫌いなのかすらわからない状況であるならば、その相手との関係を良好に築く事は想像するよりもかなり大変な事は最早言うまでもないだろう。



 相手に一方通行な気持ちを伝え続けるのは、とても疲れる事でもある。

 ……そして、その際になにも反応が返って来ないとしたら、それはとても悲しい事でもあるだろう。

 だから、相手の表情が読みにくいと言うのは、それだけでもう相手に何らかの辛さを強いているとも言えるのかもしれない。



 それこそ、そんな相手に大事な想いを伝えたい側としては、これ以上に踏み込んでいっていいのか、わからなくなってしまう事だろう。


 そして、その判断が容易に出来ないからこそ尚更心は複雑さを増し、考えれば考える程、長い付き合いになればなる程、動けなくなり次の一歩が踏み出せなくなってしまうのである。



 仲良くなりたくても近付けない。近付いてもあまりいい表情をされないなら、嫌われない様にする為に逆に距離を取ってしまう。……そんな気持ちを秘めたまま、隠し続けてしまうのだ。



 そして、隠してしまい容易に伝えられなくなったその大切な想いは、伝えるのであればやはり少しでも効果的なタイミングで伝えるのが望ましいと、そう考えたくなるのである。

 ……大切にしてきた分だけ、その気持ちにはより想いがこもっているだろうし、なによりも相手にはよりよく想われたいと言う願いがあるからである。



 ──だから、そんな絶好の状況が来るまでは、ひたすらに待つ事を選びがちになるのだと言う。



 それも、一流の狩人であれば、急がないし焦らない。そして、来た時には好機は絶対に見逃さない。

 ……その心の矢は、一発必中で相手を貫き、相手の心を射止めるまで、簡単には手放さないのだと……。



 それこそ、『運命』を感じた相手であれば、尚更だ……。

 『その機会』は確実にあると少し高を括り、まだまだ平気だと己の心を励まし続けた。


 機会はいつだって、限りがあると知っている……。

 でも、『幼馴染』だと言う、その特別な関係には、思わず(すが)りたくなってしまう部分があるのかもしれない……。






「なんで、なんでそんな話を……わたしにしたの?」



 私がレイオスの事を彼女に伝えると、ティリアは私へと顔を向けて、そう言ってきたのであった。

 彼女の話の中断を狙ってまで語られたその話に、彼女の目には多くの涙が浮かび、その瞳の奥には『今、なんでその話をしたの?』と言う、強い疑問が視えている。



 彼女からすると、『今はそれよりも大事な話をしていたでしょう?』と言いたいのかもしれない。

 彼女からすると、私が何故その話をしたのか、率直に言って理解ができないのだろう。



 ──なにしろ、彼女は狙った獲物を逃さない為に集中している最中で、それ以外の事には脇目を振らずにいるのだ。



 そして今、彼女はその機会を得たと思い、その矢を射っている所なのである。

 それ以外に大事な事はなく、それ以外の事は全て雑事にしか見えていない。



 何しろ、ずっと彼女は待ち続けて、その機会を窺って来たのだ。

 相手の行動に干渉し過ぎて、束縛しては良くないだろうからと、適度な距離を保ってきた。

 嫌われない様にしながら……その想いをずっとひた隠しにしてきたのである。



 当然、その間に感じる心のイラつきやその涙は、それだけ相手に対する想いが大きいと言う事の裏返しでもあった。

 ……我慢し続けて来たその感情が、自然と溢れて表情や仕草に表れてしまうのも仕方のない話である。



 それに、相手が幾ら鈍感で気づいていなかったとしても、こうまで涙が流れ落ちれば流石に嫌でも気付くだろうと彼女も思ったのだろう。

 そして、こうなったらもう止まるわけにはいかなかったのだと。その機会が来たのだと。


 だから、これ以上はもう我慢の必要はなく。今この瞬間に全てを吐き出して良いのだと。



 それだけの想いをもって、彼女は話をしていたのだ。


 どれだけ時間がかかろうとも、離れていようとも、いずれはその『運命』の相手と結ばれれば良いと考え、遂にその日が来た喜びを涙ながらに語り始めていたのである。


 これだけ『好きなのだから』、これが『運命』じゃないわけがない、と彼女は信じていた……。


 ずっと大切にしてきたこの想いを、ずっと伝えたいと思っていた相手に、伝えるだけなのだと。


 これまでの我慢はこの日の為に。歓喜を得るのは、まさに今この瞬間からなのだと……。




「──だから、わたしは……。それに、レイオスは確かにいつも傍に居たけど、わたし達はそんな関係じゃ──」




 ……ティリアはそう言って、私にその胸の内の想いを一部、さらけ出してくれた。

 涙ながらにそう語る彼女の姿は、とても辛そうに私からは見える。



 なにしろ、実際にぶつかってみないと分からない事は多いのだ。

 それも、そうして実際にぶつかってまで知り得た相手の想いは、必ずしも思った通りになってくれる訳ではないと、彼女もそれを思い知っているからである。



 ……それに、一度ぶつかってしまえばその衝撃で互いの心は変形しないわけにはいかないのだと、私も彼女のその表情を見て想い知ったのであった。




 ──本当に、心とは、感情とは、それほどまでに脆く、とても複雑なものだと思う。



 誰もが思い通りにしたいと願いながら、様々な状況によってそれは簡単に左右されてもしまう。

 機会があっても、それが好機であるとは限らない。

 同じ言葉も状況次第では受け取り方が変わってしまう事もある。



 その想いの強さに比例して成功するとも限らない。

 縮まっていると思っていたのに、全然距離が縮まっていない事もある……。

 相手の事を思えば思うほどに、離れてしまう事も……あったりするのだ──。




「──なんでっ、わたしはいつまで経っても、あなたに近づけないのよ……あんなに一緒にいたのに……それに、今だって……いつもレイオスがいたから?レイオスがいけないの?でも、彼は何も悪くないでしょ。いつだって彼はわたしを助けてくれただけで──それに、わたしも……」




 ……弱り切って、支えを必要としている相手に、私は更なる『重し』を与えて、余計に苦しめただけだったのかもしれないと──その時になって、遅ればせながらに私は気づいたのであった。



 なにせ、私からレイオスの話を聞いたティリアは、そう言うと頭を押さえながら、混乱と共に更なる涙を流し始めたのである。


 ……正直な話、彼女の気持ちがいったいどれほどの大きさなのか、結局の所、不器用な私には正確に量る事など出来はしなかった。精々が『恐らくは好意を向けられているだろう』と感じた程度なのである。



 ただ、状況から考えて、それが『友』と言う関係以上になりたいと言う気持ちも含めた『好意に基づく関係修復』だと感じられた私は、そこで彼女が『今後の人生の支え』を欲しているのだと、そんな判断してしまったのであった。



 だから、当然の事ながら、私は自分をそれに相応しくないと思い、それならば『レイオスの方が当然相応しいだろう』と思って、話を進めてしまったのである。



 でも、だからこそ結果的には彼女にレイオスの事を話す事によって、彼女の心を悪戯にかき乱してしまう事になったのであった。



 ──なにしろ、彼女からするとそれはまるで『一大決心をして告白をしているのに、それに答えないままにはぐらかされ、別の男を薦められた様な……』そんな残酷な行為をされた事と大きな違いはないからである。



 ティリアは真剣な想いを伝えたのに、それが無かった事にされたまま、『遠回しに拒否されている』のと何も変わらない行為を私からされた。


 そして、その瞬間、彼女はもう一つの事にも恐らくは思い至ってしまったのである。



 なにしろそれは、『私がティリアに対して、そのつもりが無かったからやってしまった行為』であると同時に……。


 彼女もまた『レイオスに対して、同じ様な態度を取っていたのだ』と言う事に、ティリアは気づいてしまったからである──。





またのお越しをお待ちしております。



 ・ティリアにレイオスの事を話したら、ロムさんは彼女を更に泣かれてしまった。

 ・ティリアの告白に対して、無視する様な酷い行為をしてしまった事にも気づいた。

 ・だが、それはティリア本人も、実はレイオスにしていた行為であったのだ。

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