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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
436/790

第436話 無辜。

(注意・ここ数話は、この作品において少しだけ複雑な部分になるかもしれません(予定)。


 出来る限り主人公視点で物事を進めますので、詳しい説明は敢えてしない様に、なるべくロムさんの見たまま、感じたままをそのまま書こうと思っております。

 その為、理解がし難い部分や、不思議な流れになる可能性がありますので、その点だけはご了承ください。


 ──ただし、そんな面倒を避けたい方用に、後書きにて三行ほどで簡単に状況をまとめておきますので、忙しい方は本文を読まずに良かったらそちらだけをお読みください。


 ──逆に、それを見たくないと言う方は、ブラウザバック等の措置をよろしくお願いします。申し訳ございません)



 目を覚ましたティリアは、私に対して『……なんでもっと早くに来てくれなかったのか』と、寝たまま顔を背け、涙ながらに語りだした。



 だが私は、そんな彼女に対して何と言えばいいのか分からずに、愚かしくもただただ見つめ返す事しか出来ずにいたのである。




 ……それに、どうやら彼女が私に抱く『想い』と、私が彼女に抱く『想い』には、大きな差があった。


 なので、ずっと『掛け替えのない友』として彼女と接してきた私からすると、彼女が向けて来たその一歩進んだ気持ちは、少し深過ぎるものだと感じてしまったのである。



 ……どちらも、相手を大事に想う事に変わりはないだろう。

 だが、彼女が求めているその一歩には、『友』以上の関係性を必要とするものだと、私はなんとなくだが感じたのである。


 だから、その『想い』には私などが安易に受け止めて踏み込んでいいものではないと思ったのだ。



 ──そう。そもそもの話が、その『想い』を向けられた瞬間に、私は想ったのである。


 『君がそれを求める相手は、私ではないだろう……』と。



「…………」



 だから、涙ながらに語るティリアに、私は沈黙で応じる事しか出来なかった。

 彼女が幾ら来て欲しいと、慰めて欲しいと、そう思われていても、それを見ている事しか出来なかったのだ。



 なにせ、彼女の隣にはいつも、レイオスがいたのである。

 そしてその彼は、今も彼女の傍で、近くのベットで眠っていた。


 私としては、二人が一緒に居る事の方が自然であり、居ない事の方が違和感がある。

 だから彼女が今、私に求めるその場所は私の居場所ではないと確り判断できたのだ。



 ……ずっと昔から、私達はいつもすれ違う事ばかりで、私は彼女に怒られてばかり居た様な関係である。

 なので、そんな私が、彼女のその『想い』を向け合う相手として本当に相応しいのかと問われれば、率直に言ってそうだとは思えなかった。


 今の弱々しい彼女は友としても心配になるし、見放してはおけない気持ちは当然ある。

 泣いている彼女を慰めて元気付ける事も、友としては出来る限り応じたいとも思った。



 ──だが、その求めが、私の『領域』を超えていなければの話である……。


 彼女は大事な友ではあるけれども、それ以上へと踏み込む気持ちは私の方になかったのだ……。


 


「…………」



 ……ただ、心と身体に傷を負った今の友に、それを伝える事が私には上手く出来なかった。

 彼女のその言葉が、涙を流すその姿が、決して冗談の類ではない事が分かってしまったからである。



 戦いに敗れ、利き腕をも失い、精神的に弱っている今の彼女が、そんな冗談を言うはずも無い。

 そんな彼女が純粋に支えとなってくれる相手を、今この瞬間に必要としている事も痛いほどによく分かっていた……。



 なにしろ、これほどにまで弱々しく涙を流すティリアの姿など、私はこれまでに一度たりとて見た事がなかったのだ。……それが普通でないことくらいは流石に、幾ら不器用で鈍感な私でも理解できた。



「…………」



 ただ、だからこそ逆に、ここで彼女を支えてあげる相手は私ではないと強く思ってしまった。

 安易な慰めの言葉すら、今ここでかける事は罪深く、憚られる程に……。



 私は、誰彼構わず甘やかしたり、流されたりはしない。

 この心には、もう想う相手もいる。甘やかしてあげたい相手は決まっているのだ。

 だから私は、彼女の事を『友』としてしか見てあげられない。



 ……そして、そんな彼女にもまた、その『想い』を向けるに相応しい相手が決まっている筈なのである。

 

 彼女の事を、全力でこれまで支え続けてきた男が誰なのか、それに適う人物が誰なのか、最早言うまでもないだろう。


 その男が、どれだけの『想い』を幼き頃から彼女に対して持ち続けていたのかも私は知っている……。


 その『想い』に準じて、彼が何をどう選んできたのかも知っていた……。


 そして、その選択の果てに、彼女の近くにあるもう一つのベットの上で、その彼が今どんな状態で寝ているのかもだ……。



 だから私は、内心で、『向ける相手が違うだろう……』と、ティリアに思ってしまったのである。


 そして、『それは、あまりにもレイオスが不憫すぎるだろう』と、悲しくなってしまったのであった。



 君達の間に、いったい何があったと言うのだ。

 ……それとも、何も無かったからこそ、こうなっているのだろうか。


 『ティリアはレイオスを想っていなかったのか?』

 『二人の仲は本当は悪かったとでも言うのであろうか?』

 『なぜ今、彼女は彼を求めない?彼の事を尋ねて来ないのだ……?』



 そんな色々が、私の心の中には言い様の無い想いと共に幾つも生まれていた。

 ……そして、何故かこの瞬間に、私の頭の中には、あの日のレイオスの姿が強く浮かんで来たのである。


 あの日の、悔しそうに涙を流しながらも、私に決別を告げて来た、かつての彼の姿が──



「…………」



 ……勿論、ティリアの心はティリアの物だ。そして、レイオスの心はレイオスの物である。

 だからそこに私の想いを押し付けようとは思わない。


 それだけはちゃんと理解もできている。

 二人がどう考え、どう向き合うか、誰を想い、誰を愛するのかは二人の勝手が決める事だと。


 そして、如何なる結末があろうとも、その気持ちは、誰に否定されるべきものではないのだと……。



 ──だがしかし、現状で、唯一の両者の事情を知る私としては、『ある思い』を全く考慮の埒外に置く事は、とても難しい状態でもあったのだ。



 ……そもそも、私が友二人を想う気持ちは基本的には等しいものである。

 でも、今回の場合においては、私は凄惨なレイオスの姿を見ていた事と、彼の気持ちに対しての同情が強く、その気持ちを想わざるを得なかった部分が強かった。


 一人の男として、己の全てを掛けた人の、その姿を尊重したくあったのだ。

 ……だから、自然と彼の方を私は──その肩を持ちたくなってしまう気持ちが若干なりとも強かったのである。



 大切な人を守る為に、己の全てを尽くして来た彼を、私は少しだけ支えてあげたいと思った。

 ……微力なりともその力になってあげたいと思わない訳が無かったのである。


 それに、彼女に向ける『想い』の大きさにしても、私なんかじゃ全然彼に敵わない事は、幼い頃から既に悟っていたのだ。



 ……だからきっと、彼女には少しだけ彼の方へと贔屓している様にも思われてしまうかもしれないが、それこそが私の素直な気持ちであり私のしたい事だと信じて、私は顔を背けるティリアに向かい、彼女の話が一旦途切れた時を見計らってレイオスの話をする事にしたのであった。



「ティリア……実はな……」



 二人の間に何かがあって、彼女が私に対して本気でその『想いの相手』として求めていたのだとしても、せめて先ずはレイオスの現状を知ってから、もう一度判断して欲しいと私の心は思ったのである……。




「…………」



 ──だがしかし、その話をしてティリアが現状を知り、こちらに顔を向けたまま目を見開いて、止めどない涙を流し始めた時に、私は己の失敗を悟ったのであった。




またのお越しをお待ちしております。



(注意・三行で簡単に説明)

 ・どうやらティリアが慰めて欲しそうにしている。

 ・でもロムさんは、その役割は自分には相応しくないと考えている。

 ・ティリアにはレイオスが居るのだからと、彼女の気持ちには応えないままに彼の現状を話す事にした。


 (幻の四行目)

 ・要は、ちょっとだけ『三角関係』展開になります。『泥』をきっかけに少しだけドロドロに……。

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