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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
427/790

第427話 露見。

2021・01・13・大幅に書き直し、物語の進行にも変更あり。

(注意・今回の話は大幅に書き直した()の物となります。事前の報告通り、やはり大きく書き直す事となりました。書き直す前の物を読まれてしまった方々、大変申し訳ございません)





「ねえロム、『泥』の魔法使って見せてっ。真似してみたいっ!」


「……ああ、わかった」



 冒険者ギルドが『大樹の森』のある一帯を『魔境』を定めた事に関して、色々と思う所はあった。

 ただ、それによって私達に何か被害があるわけでもないので、結局は素直に受け入れ気にしない事にしたのである。……正直、ここで私達が文句を言った所でギルド側を困らせるだけだろう。



 それに、ランクの低い冒険者達が間違えてこの森でやって来てしまい、『魔力濃度』に適応できずに倒れてしまう様な事態も避けられる訳なので、ギルド側のその判断は私達にとっても都合の良い部分があるのだ。



 ……『魔境』と言う響きにだけ、ちょっとだけ嫌な気持ちも覚えるが、言わばそれだけである。

 『不満』と呼べる程のものでも無いだろう。



 それに、ここへとやって来るのが『金石』の中でも高位の冒険者達であるならば、不必要に森を荒らす事も少ないと思うし、この間の様な者達であれば私達もその様子を眺めるのは正直楽しいので、皆がそれで平穏に過ごせるのであれば、『魔境』と呼ばれるくらい大した問題ではないと思えたのであった。



 『いずれはそんな『魔境』と言う響きも気に入る事が出来る様になれるかもしれない──』



 ──と言う感じで私達の話もまとまり、エアや精霊達も微笑んで、納得してくれたのである。



 ……例えどんな名で呼ばれようとも、物事の本質は変わらないのだ。




「おおおおーっ!すごーいっ!『泥』がバウそっくりっ!飛んでるっ!!」


「……うむ。だいたいこんな感じだな」




 私が『泥』を使ってバウそっくりになる様に操り、そのまま追加で羽ばたく仕草をさせて【浮遊】でパタパタと浮かべて見せる演出をすると、エアは大層喜んだ。……こういう事は私も得意である。



 ──ただ、そうして穏やかに過ごす中でも、また私の頭の中では『例の件』についての悩みが少しだけ再燃しかけていたのであった。



 ……と言うのも、前々から時間が解決してくれたら良いなと思っていた『友二人との関係』なのだが、やはりどうにも気になってしまい、もやもやとする気持ちが止まらなくなっていたのだ。

 この前、ふとレイオスの昔の言葉を思い出した瞬間があり、それをきっかけにまた少し考えてしまっているのである。



 だが、今はまだ時期が悪いと、少し時間を置こうとは思っていた。

 ただ、出来るだけ考え過ぎない様にもしてきたつもりなのだけれども……結局は、自分でもどうしようもなく、逆に『考えるな』と思えば思う程に、どうにも気になってしまっているのが現状なのである。




 ……そして、そんな自分の正直な気持ちに一度気づいてしまってからは、その、なんと言うのか、もう『二人の事』にばかりに考えが向いてしまうし、気になりだしたら止まらなくなってしまったのだ。



 もしかしたら、これまでにもちょくちょく私の言動からそんな様子が漏れ出ていたのかもしれないけれど……どうやら今度のはかなりの衝動だった。うずうずする。会いに行きたいと強く想う。


 今すぐに会いに行って何か言葉を交わしたくなる気持ちがそこにはあり、私は『ティリアとレイオス』の姿を一目でも見たくなってしまったのだ。

 ここ最近は色々あった事だし、また元気にしているかどうかだけ見たいと思ったのだが……でも、それは甘い考えだろうか。



 でも、ふとした瞬間には、彼らの顔がついつい思い浮かんでしまう程で……めめしいと思われるかもしれないが、それが私の率直な気持ちなのである。……正直、いい年して恥ずかしい限りではあるが、こればかりは仕方ない話であった。




「……うーん、意外とこれ、魔力の配分が難しいんだね」


「……大丈夫だ。少しずつ試していけばよい。エアならば直ぐにコツを掴むだろう」




 ──だから、内心こればかりはもう仕方のない事なので、ここはいっそ開き直り、彼らの様子を見に行ってしまうのはどうだろうかと今では考え始めている。


 ……正直、こんなにもうじうじと悩むくらいならば、いっそこの気持ちの赴くままに、当たって砕けるつもりで素直に行動してみる方がいいのかもしれないと。



 ただ、出来る限り彼らには見つからない様に気をつけるつもりではあった。

 それこそ全力で魔法を使い、隠れて陰から観察するつもりである。……正直、これは悪だくみの類だろうか。


 だが、今の私にはそれを叶える『泥』と言う存在もあるのだ。

 だから、出来なくはないと思う。

 これを用いればきっと、『探知系統の魔法』が使えずとも何とかなるのではないかと思う。


 いっそ、『この場所に居たまま、『泥』だけを遠隔で操作すればいいのかもしれない』と。



 私は、一人でそんな悪だくみを密かに計画していたのであった……。




「…………」


「……ロム?どうしたの?」


「──ん?ああ、いやなんでもない。……そうだな、もう少し『泥』の粘性を高める為には、込める魔力をもう少し増やすと良いと思う。その方が操り易くなるし、妨害もかなり効果的に──」




 私は元々、あまり人と積極的に関わろうとはしないタイプであると思っている。

 だが今は、エアやバウ、そして精霊達、それから私が大事にしたいと想う者達に関してだけは、自分からも一歩を踏み込んでいきたいと思うようになれた。



 ──早い話が、私が皆の事を『好き』になってしまったのだ。



 昔はそれこそ、目的に関してばかり目が行っていたが、これほどまで長く生きて来て、ようやく私も『大切な誰か』へと目が向く様になった。関わっていきたいと強く想う様になった。


 故郷を失い、友からも離れ、独りで森に生き魔法に没頭していた頃からすると、これは大きな変化だと思う。


 数百年かけて、ようやくその一歩を踏み出す事が出来たのも、エア達のおかげだった。

 だから、私は自分に芽生えたその気持ちを、大切に育みたいとも思うのである。



 そして、そんな私の気持ちが、率直に友二人の事を求めるのだ。

 『あの二人の事がやっぱり気になる』と。



 だが、恐らくはまだ時期が悪いのも確かではあった。

 なにしろ、あれからまだたったの数年しか経っていないし、その間は戦争とか他の色々な問題も重なって起きている為、友二人もきっと今頃はまだまだ大変だろうと思う。



 だから、最低限でもそんな彼らの気持ちを蔑ろにする事だけはしたくなかった。

 あれだけ散々迷惑をかけたのだ。決別に近い言葉まで言わせてしまったのである。


 ならば私は、特に彼らの気持ちへと配慮すべきだろうと思ったのだ。

 それこそ、様子を見に行きたいからと言って、考え無しに能天気にも普通に訪ねていくような醜態を晒せば、それこそ彼らとの関係が終わってしまう気がする。そのような愚はもう冒せない。



 大切に想っている友二人との関係を、このまま失いたくない。

 でも、彼らの様子は凄く気になる。

 ……ならば、『泥』を使うしかあるまい。



 ──と、そんな事を安直にも私は考えていた。


 ……ダメだろうか。気付かれたら間違いなく怒られる気がするが。




「…………」


「──ロム?何を考えてるの?」



 ──すると、私が内心でそんな悪だくみを考えていたら、気が付いた時にはどうやら私が操っていた『泥』にも反映されて、いつの間にか『泥』が頭の中の友二人の姿を模っていたらしく、それを見た傍にいるエアからは不審そうなジト目が向けられていたのであった。



 ……恥ずかしい。いい年こいた大人の耳長族(エルフ)が、友達と仲直り出来なくて、思い悩んでいるのがバレてしまったのでる。それも何か悪だくみを考えていると言うのがエアにも見透かされてしまったのだ。



 そりゃ当然、隣に居るエアも突然『泥』がバウの姿から、見覚えのあるエルフ達に変われば異変にも気づく筈だろう。


 と言う訳で、私のそんな浅はかな考えは全て、エアに暴露する事になったのであった。

 ……因みに、エアに話すと『……もう、仕方ないなぁー』と苦笑しながらも、協力してくれる事になったのである。──ありがとうエア。



「…………」



 ──まったく。子供の頃であれば、仲直りなんてあんなにも簡単だったのに、どうしてこう大人になると難しさを感じるのであろうか。

 それも関係改善の為に、先ずは偵察をする事から始めると言うのだから、難儀な話である。


 ……たった一言『ごめん』と謝る事さえ、今の私にとっては高難度ミッションの様に感じた。


 ──でも、彼らとまた仲直りをして笑い合える関係になる為にも、私は先ず『泥』を使っての偵察任務を開始する事に決めたのであった。





またのお越しをお待ちしております。

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