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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第412話 引越。







 『精霊達のお引越し』をする為に、私達は戦場の近くまでやって来ていた。

 ここに辿り着くまでに、私は四精霊へと頼んでこの大陸に居る精霊達へと呼び掛けて貰っている。


 その内容は『戦争に巻き込まれない様にみんなで引越して来ないか?』と言うものだ。



 だがそう尋ねて貰った所、その呼びかけに多くの精霊達は応えてくれたのだが、中にはやはり自分達の『領域』から離れる事を嫌がる者達も居た為、私は少しだけやり方を変える事にしたのである。



 と言うのも、元々は大地そのものを切り離して『大樹の森』まで運んでしまおうかと思っていたのだけれど、流石にそれは強引が過ぎると思い直し、もっと穏便で確実な方法をとる事にしたのであった。



 私としてはその方法自体は初めての試みではあったが、二つ目の『差異』を超えた影響なのか、不思議と私は『できる』と言う強い確信を持つことが出来たのである。何をどうすれば良いのか思い浮かぶ感覚とでも言うのだろうか、上手い説明こそ出来ないが、完璧とは言えずとも少なくとも失敗はしないだろうと思えたのだ。



 そこで私は、今回戦争が起きている範囲を上空から一望しつつ、視界に収まっている範囲全てを余裕で覆う事が出来る位の魔力を自分で放出していき、『とあるもの』を作りあげていった。

 その『とあるもの』とは、純粋な魔力が何層も重なり合い、複雑に混ざり合って、どんどんと圧縮されながら、高密度の魔力の塊となっていったのである。



 ──そう。私が今作っていたのは、言わずもがな『ドッペルオーブ』であった。


 そして、私はそうして出来上がった『ドッペルオーブ』を更に緻密な魔力操作で性質を変化させていく。



 ……すると、その塊は段々とこの土地に近い性質を帯びていき、最終的には私の手のひらに収まる位にまで縮めることができた。これは今まで作った事がある『ドッペルオーブ』と比べればかなり小さめではある。


 まあ、これくらいの『ドッペルオーブ』であれば、『大樹の森』を作る時に経験しているので、正直手慣れたものではあった。



 ただ、今回の場合は『大樹の森』の時とは違い、対象が『木』では無くて『大地そのもの』であることが大きな違いである。

 それも、大地の各所には精霊達が大事にしている『領域』もあり、私はそれを邪魔しない様にと己の性質は極力抑えて、彼ら精霊達の『領域』の性質に限りなく近い物へと作りあげていったのだ。



 本来、精霊達の『領域』に合わせて魔力を調整する事など、言葉にする程簡単な技ではない。

 その為、私もいきなり上手くいくとは思っていなくて、何度か失敗するとは思っていたのだが……これもまた私が二つ目の『差異』を超えた影響なのか、思ったよりもすんなりと作る事ができて、私は内心で驚いている。少なくとも前までの私であれば出来なかった事だ。



 なので、その後は出来上がったその『ドッペルオーブ』を大地へと付け加える事により、私は『大樹』と同じくこの周辺の土地にも繋がれるようになり、その情報を感覚的に把握できるようになったのである。そして、同時に精霊達の大事な『領域』の事もある程度は理解できるようにもなったのだ。


 そうして、その結果彼らの『領域』を、そのまま別の場所へと反映させる事も出来る様になったのである。



 ──要は、今まで精霊達が『家』として使っていた場所があるとして、そことそっくり同じ『別荘』を作る事が出来る様になったと言える分かり易いかもしれない。

 それによって私は、精霊達の『領域』を大地から切り離して移すまでもなく、もう一つ同じ『領域』を増やせるようになったのだ。



 ……正直、これほどまで上手くいくとは思わなかったと言うのが本音ではある。

 だが、上手くいってくれた事自体はとても喜ばしい事であった。


 これが出来た事によって、精霊達は自分の『領域』と呼べる場所を二つ持てる事になり、もしも今まで暮らしていた場所や『領域』が何らかの被害を受けてしまったとしても、もう一つの『別荘』へと避難する事が出来る様になったので、精霊達自身の安全はかなり守れるようになったと言えるだろう。


 ……それも、『ドッペルオーブ』に【(ホーム)】の魔法を付け加えた事によって、精霊達は自由に『領域』を行き来できるようにもなった。その魔法の基点として私を中継地点とする事により、各『大樹の森』にも行きやすくなったので、精霊達としてもだいぶ便利にはなると思う。


 

 当然、未だ初めての試みではあるので、もしかしたらこの先に何かしらの不具合が起こる可能性は十分に考えられる。

 だが、若干怪しい部分があったとしても、後は『別荘』となる部分を【拡張】して広げた『大樹の森』の空場所へと作っておけば、『精霊達の大お引越し作戦』はほぼほぼ成功したも同然であった。



「…………」



 ……正直、私としてはあまりにも上手くいきすぎた事に、一抹の不安の様な感覚を覚えてはいる。

 ただ、そうは言っても結局は戦争から精霊達を安全に引き離せる方法となるとそれしか思い浮かばなかった為に、私は出来る限りの細心の注意を払ってどんどんと『お引越し』をしていったのであった。


 もし何かしらの問題が起きてしまっとしても、『その時はまた、その時で対処すればいいだろう』と少しだけ安直な心もあったのである。



 ──だがしかし、結局はそんな考え不足のせいか……悪い予感は当たってしまう事になるのだけれども、その時の私にはそんな事など知る由もないのであった。





またのお越しをお待ちしております。

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