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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第399話 睡。




 私達は『大樹の森』へと帰って来た。


 そして、帰って来てからは毎年寒さの厳しい季節にだけ『白銀の館』へと顔を出し、それ以外は殆ど森での生活を続けて数年、私達はとても穏やかな日々を過ごしている。


 その間不思議な感覚だが、冒険したい気持ちはあるものの、私達はちょっとの間だけ旅をお休みする事にしたのだった。



 ……気付けば、エアと共に冒険者になって、そろそろ二十年位にはなるだろうか。

 私達が森の中で出会った時から考えれば、もう二十五年位にはなるかもしれない。



 この間は長命の種族である私達にとっては本当にあっという間だったと思う。

 ただただ目まぐるしく、そして楽しい日々であった。


 ただここ数年で、『白銀の館』に居た子供達もすっかりと大人になっており、いつの間にか成人していたというのだから驚きではある。……皆で大いにお祝いしたのは私達の記憶にも新しかった。



 その点冒険者としての私達の活動の話をすると、各地を色々と冒険した様な気はしたものの、実は思ったよりはそこまで各地を回れていなかったりはする。まだまだ行けてない場所は多く、見られていない景色も沢山ある筈だ。



 でも、どちらかと言えば私達のこれまでの旅は行ったり来たりの方が多く、最短距離で各大陸へと足を運びこそしたが、まだまだその奥までは行けていないと言うのが本音である。

 ……だから、それを思った時に、私はまだまだ旅はこれからだと思ったのだ。

 その先にも絶対にエア達と一緒に行って見たいと思ったのである。



 なので、今だけは少し休憩をして、この次に旅に出る時にはもっと『今度は各地の大陸の隅々まで歩いてみようっ!』と、『自分達だけの地図でも作ってみるのも楽しいかもねっ!』と、エア達とは食事時に色々と話をしていた。……その時にはまた全力で冒険を楽しみたいと思う。

 



 ──だが、それもまだまだ、先の話。もう暫くは森でゆっくりとするつもりだ。

 久々にゆっくりした影響なのか、今は凄く森での生活が楽しく感じる。

 そして、こののんびりとした時間の流れがとても心地良くあった。


 ……それと、個人的にも少しだけ、今は集中できる時間が欲しいと思っているのである。

 と言うのも、流石に私も、いつまでもこの姿のままではダメと思ったのだ。



 『漸くですか?』と、精霊達にも言われたけれど、いい加減に『差異』で得た変化を確りと自分のものにして、元の姿に戻る為の研鑽を私は積む事にしたのである。



 ──そうして、この数年は研鑽に努め、その結果、ようやく私は元の姿へと戻る事が出来たと、そう言う話なのであった。



 一応、この数年で起こった色々を簡単に説明しておくと、どうやら私の身長が縮んでいたのは、魔力の不足が影響している事が原因だと分かったのである。


 私は今まで『魔力のスーハー』ができる様になってから、殆ど魔力不足と言う状態には陥った事がなかった為に、最初はその原因へと中々辿り着けなかった。


 だが、よくよく調べてみると、『差異』を超えた事により私の中の深い部分にある魔力のタンクの様な『器』の部分が、大きく変化している事に気づいたのだ。


 それにより、私は自分を構成する為に必要な魔力の最大値が大幅に変わっていると悟り、今までの魔力量だけではどう頑張ってもあの幼い姿を作るだけで精一杯だと理解したのである。



 要は、今の私の『器』はどうやらかなり大きくなっているので、元の姿になるにはもっと多くの魔力が必要である、と言うそんな話であった。


 なので、魔力をどこからか集めればそれで問題は解決に近付くのである。

 ただし、実はその為に必要な魔力と言うのが通常では考えられない程に膨大だった為に、普通に過ごしているだけでは溜まるまでにかなりの時間を要する事も分かったのであった。


 因みに、それに要するまでの時間というのは、大体私がこれまで生きて来たのと同じ位の年数かそれ以上の時間を、ずっと『魔力のスーハー』し続けなければいけないくらいの魔力量である……。


 当然、それは流石に、それだけの長時間をずっと『魔力の吸収』ばかりはしていられないと私は思った。

 もしそんな事ばかりをしてボーっとしていると、『きっと身体からは木が生えてくるだろう』と……。

 正直、そんな耳長族特有の伝統の冗談が本当になりかねない話なので、心の底からやりたくないと思ったのである。



「…………」



 ……でも、『ならばいったいどうしたら良いのだ!』と、普通は悩むことだろう。


 ──だがしかし、そんな私に唯一朗報だったのは、日頃から『魔力のスーハー』を地道にやってきていた為に、私は密かに長年『ドッペルオーブ』を作り溜めていたのであった。


 その為、私はその『ドッペルオーブ』の余剰分を回収するだけで、あっという間に必要な分の魔力量を確保にする事ができたと、そう言う訳なのである。

 ……こういう時に、日頃からコツコツと積み重ねてきて良かったと心底感じた。



 ──つまりは、そんな事をこの数年はやっていて、魔力の問題も解決し、再度己の身体を魔力で再構成し直して、私は見事元の身体へと戻れたと言う、そんな話であったのだ。



「…………」



 ただまあ、それでも全部が上手くいったのかと言うとそう言う訳でもなく。

 実は、その際に幾つか小さな問題も起きていたりもする。


 と言うのも、身体が戻ったその瞬間、傍ではエア達も一緒に見ていたのだが、二人は私が元の姿に戻ったのを見ると、……『え~~~~~~~~ッ!』『ばうーーっ!ばうっ!ばうっ!』と、だいぶ不評な声を出し始めたのであった。……その時は『──えっ!?ダメだったか!?』と私も少し驚いてしまったのである。



 ……どうやら、いきなり戻ってしまったので、エア達もビックリしたらしいのだが、殊の外エア達は私の幼い姿がだいぶお好みではあったらしい。バウも凄く残念そうな声を出すと、私の事をペシペシと何度も尻尾で叩いていたのだ。まあ、可愛らしい攻撃である。



 ただ、精霊達は素直に喜んでくれたのだが、二人はそうではなかった為に、正直言うと内心ではかなり『しょぼん』と落ち込んではいたのだが、それは二人には秘密だ。

 それに、二人は最初こそ少し不満そうにしてはいたものの、翌日からは逆に不思議な位にずっと私の傍に居て、それからはピタッとくっ付いて離れなくなっているのである。……照れ隠しだろうか?それとも偶々天邪鬼な気分だっただけか?まあ、なんにしても今は甘々だった。



 今も尚、背中側ではエアが顔を埋めながら占領しており、前側ではバウがずっと私に抱っこされたままスヤスヤと眠りについているのである。……何だかんだとは言いながらも、そうやって寄りかかって来てくれて、安心そうにしてくれている二人の姿を見ると、私としても凄く『ホッ』と一安心したのであった。



 ……因みに、魔力で身体を再構成すれば良いだけなので、慣れればまた幼い姿になれるだろうとは思っている。なので上手くできる様になったら、その時にはまたエア達に見せて喜ばせてあげる事にしようと思う。それまではこれも二人には秘密なのだ。

 



 ──そうして、甘える様に眠る二人の事を大切に想いながら、私達は今日も『大樹の森』でのんびりと過ごしたのであった。





 


またのお越しをお待ちしております。

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