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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第367話 想起。




 私が元の姿に──皆に見える様になってから、また暫く日々は過ぎた。

 寒さの厳しい季節もあともう少し、もう少しでまた芽吹きの季節になろうとしている。


 ただ、その日はそんな寒さの厳しい季節の最後の悪足搔きとでも言うかのように、こちらの大陸でも大雪が降った。……だいぶ寒い。「くしゅん、む……」。



 自分の周囲の気温の調節をする為の魔法は今の私には出来ない事の一つなので、朝目覚めると自然とクシャミが出て来てしまう。……あたたかい服でも取りだそうか。


 私は、自分の【空間魔法】にしまってある『収納』からバウとお揃いのニット帽を取りだすと、それを深めに被る。自分の視線の上が少し隠れる位にまで被ると、かなり温かい。

 因みに耳は確りと出している。耳当ての様な防寒具もあるにはあるのだが、私は耳に何か被せるとムズムズする為にあまり好きではない。


 その代わりに、この寒い季節の間に屋敷の皆用として一応作っておいたマフラーと手袋も一緒に装着しておく。……これでほぼほぼ完ぺきだ。


 だが、やはり最後は私のトレードマークと言うか、いっそもしかしたら本体はそちらではないかと言う噂まで流れているらしい、白いローブ(子供用)を取りだして、私はバサッと羽織る。……これで正真正銘、完全体の私の完成であった。……ん?



 ただ、そうやって着替えが終わると、私は突然気配も無く背後から何者かに脇に手を入れられて持ち上げられた。……うむ、この持ち上げ方はエアだろうか。

 


「ローム、食堂までおんぶしてあげる!」



 既に抱っこされた状態なのだが、エアはそれから更に私をおんぶして運びたいらしい。

 この身体のサイズになってから、屋敷の中の移動であるにも関わらずエアは私を頻りにおんぶしたがる様になった。

 私が『いや、だいじょうぶだ。一人で歩け……』と言いかけると、必ず『しゅん』と落ち込んだ顔をするのである。……当然、私の負けだ。大人しく従うよりない。



 それに、そこで何とか断ったとしても、最終的には『それに今のロムって何も無い所でよく転ぶからっ!危ないから、ねっ?いいでしょっ?』と、笑顔で行って来るのである。……当然、私の完敗である。素直に従うよりない。



「…………」



 ……だがしかし、そんな問題も今日までとなるだろう。

 なんとここ数日の密かな訓練でまた身体の再構成の魔力調整を色々と試した結果、私は元の身長へと戻れる目処が大体立ったのであった。

 一部使えないままの魔法は、未だ忘れたままではあるけれど、それもその内戻って来そうな気配は近付いているのをかなり感じるし、何とか『まやかし』の後遺症も何とかなりそうな雰囲気である。



 なので、私はエアにその事を正直に伝えたのだが、その瞬間にエアは『ガーンッ!!』と今までにないくらい衝撃を受けた顔をして、私にこう言ったのだ。



「──やだッ!!まだ暫くはこのままでいいじゃんっ!」


「…………」



 ……いや、『やだ』と言われても。それに、そんな悲し気な顔をされても。

 私としては喜んでもらえるかと思ったのだが……、どうやらこの報告はあまり喜んでは貰えなかったらしい。……ふむ、難しいものだ。少し調整を見直すべきだろうか。



 ──そうして、私はエアにおんぶされたまま、何かいい方法が無いかと頭を捻りつつ食堂へと入って行く。

 ……するとその時、食堂には既に屋敷の皆が集まっており、何か声を少し荒げて話し合っている様子が目に入った。


 入口からよく見てみると、どうやら話は主にとある二人が中心に言い合っている様で、周りの者達は宥めているだけの様に見える。


 因みに、言い合っている二人とは、ある意味で既にこの食堂の常連にもなっている傭兵と、その想い人でもある修道女の二人であった。



 そんな二人はこの季節の間に更に仲良くなっていたと思うのだけれど、どうやら今日は何か問題が起きたようだ──




「──そんな事言ったって、仕方がないだろう!」


「仕方がない事なんてありませんっ!本人がどうするかの問題です!心の問題なのです!!」




 ……うむ、どうやらだいぶ熱くなっている様に見える。

 はてさて、いったい何が問題なのだろうか。


 私はエアにおんぶされたまま、そんな不穏な二人へと近づいて行いくのであった。





またのお越しをお待ちしております。

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