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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第334話 制剛。



 『ゴーレムくん軍団』は、大敗した。



 ただ、今回も精霊達のイベントは大いに盛り上がったと思う。

 特に、イベントのラストを飾る『ポイント争奪戦』は大変に興奮する展開になった事は確かであった。


 だが、その意味合いは前回とは大きく異なり、今回は『精霊達対ゴーレムくん軍団』と言う対戦での盛り上がりではなく、純粋に『ポイント上位の精霊達による優勝を競うポイント争い』がとても見応えのある展開になったのだ。



 『昼の部』も『夜の部』も完全に精霊達は勝利を収め、元々のイベントの本来の姿でもあるが、討伐数を一つでも多く得ようと言う精霊達の純粋なポイント競いが今回は熾烈に行われた。

 イベントとしては狙い通りで、エアやバウ、そして精霊達にも大いに喜んで貰えた事は企画した私としては大変に喜ばしい事ではあったと思う。



 ……だがそれはつまり、それだけの盛り上がった裏では『ゴーレムくん軍団』が討伐され続けたと言う事でもあった。イベント後、既に私の手によって修復がなされたゴーレムくん軍団には、『大敗』と言う不名誉な結果が残ったのである。



 そして、そんな『ゴーレムくん軍団』は修復され起き上がると、ボスゴーレムくんを含め全てのゴーレム達は私の姿を認識した瞬間から土下座に似た姿勢をとり、全員で深く頭を下げたのであった。

 その様はまるで『閣下……申し訳御座いませんでした』と心から自分たちの不手際を深謝している様に見える。……そんな機能などつけて無い筈なのだが。



 私は、そんなゴーレムくん達の姿を見ると、魔法ですぐさま彼らの身体を浮き上がらせて、シャキッと立たせる。

 そして、元気のない彼らに魔力を充填ギリギリまで補給をしてあげた。


 『君達は精一杯頑張ったんだ。だから謝る必要などないんだ。胸を張りなさい』と行動で返したつもりである。


 すると、ゴーレムくん達は明らかに悔しそうな雰囲気のまま、何かを耐える様な仕草でコクコクと頷きを返したのであった。……もし彼らが人だったならば、その様はまるで男泣きしているかの様な仕草である。



 ……因みにだが、今回ゴーレムくん達はボスゴーレムくんを筆頭に前回以上に大きく成長した姿を私達に見せてくれた。

 個々の技能も自分達で高めていたようだし、私の作った武器も装備してちゃんと使いこなせるように訓練も重ねていた事を知っている。そして、軍団の連携も以前よりも遥かに巧みに仕上げて万全の状態で今回の戦いへと臨んでいったのだ。



 多少作戦の上で不利は強いられようとも、それでも彼らは勝ってみせると意気込んだのは、何も慢心したからではない。それだけの積み重ねを経てきたからこそ、自信があったのである。



 ……だがしかし、その結果彼らは大敗した。

 彼らの予想以上、ある意味では私の予想を遥かに超える展開となり、精霊達はゴーレムくん達を討伐しまくったのである。



 ゴーレムくん達は準備していたもの全て、悉く跳ね返され、打ち壊された。

 前回に獲得したその尊い『自信』までも含めて、その全ては『昼と夜』の二度の戦いによって完膚なきまで叩き潰されたのである。



 私の目から見ていて、ゴーレムくん達に悪い所は何一つ無かったと思う。彼らは最善を尽くしたのだ。

 つまり今回は、作戦にしても武装にしても精霊達がそれだけ頑張ったと言う話であった。

 全てはその結果であり、精霊達は褒め讃えるべき事を行なったのである。

 また、ゴーレムくん達も含めて皆がそれを理解し、敗者は悔しさを滲ませつつも勝者を確りと讃えた事が今回のイベントの大盛り上がりにも繋がったのであった。



 ……もちろん、正直な話をするなら、ゴーレムくん達を作った私からすると『ゴーレムくん軍団』の深い悲しみも伝わって来てしまって、喜び半分、悲しみ半分な状態ではある。

 私に自分の子供が居るわけではないが、これはそれに似た感覚なのかもしれない。


 ゴーレムくん達が悲しむとそれだけで不思議と私も悲しくなったが、彼らは敗北を確りと受け止めていて最後まで立派に戦い抜いた。それは両者共に誇り高い姿であったと思う。……前までの私ならばきっとこんな事まで考えたりしなかっただろうのに、ふとそんな事を思った。



 ──長雨は降り止んだばかりの筈だが、どうやらまだ降り続くらしい。

 ただ、今度の雨はそこまで悪い雨ではない様に感じた。



 イベントがどれも成功した事は素直に嬉しい。

 やらなければよかったなんて事は無かった。

 ゴーレムくん達も既に前を向き始めて、次はこちらがチャレンジャーだと意気込んでいる。

 精霊達も次も負けないからと勝って兜の緒を締めるつもりであった。

 私はそんなみんなを支え、応援する事にしよう。



 そして、誇り高い彼ら全てを祝福し、その喜びも悲しみも共に分かち合いたいと思うのだった。





「…………」



 ……ただ、そんな中、実は一つだけ今回の戦いで懸念する出来事があった。


 それは、精霊達の勇猛果敢な戦い様を見ていて気になった部分なのだが、どうやら精霊達の中に『淀み』の存在を強く感じたのである。


 それも特に、今回のイベントで活躍した者達程その気配を強く発しており、どうやら彼らが『淀み』に対する耐性の様な能力を宿している事に私は視ていて気づいたのだ。



 これは恐らく、お父さん達と魔法道具の事でギルドに赴いた際にも少しだけ話に出てきたが、人が『淀み』に適応し抗体の様な力を得るのと同様だと思う。それが精霊達にも魔力の様に適応しており、精霊体や精神力をより強化しているのだろうと感じている。



 人よりも、当然自然により近い精霊達の方がその影響を顕著に受ける事は想像に易いとは言え、まさか完璧に防御を固めている『ゴーレムくん軍団』の守りを力尽くで強引に突破する程だとは私も想像もしていなかった。……正直、彼らの存在が無かったら精霊達はここまでゴーレムくん達を圧倒する事は出来なかっただろうとは思う。



 確かに、これだけの力の差を見せられれば上手く取り扱う事で己の成長とする者が出て来ても不思議ではなかった。……私は得ようとは思わないが、人でも精霊でもそれはきっと変わらないだろう。



 それに拒もうと思っても、魔力同様に自然に存在するものなので、拒みきれるものでも無いのだ。

 ……だから、これに対する捉え方は人それぞれで、また扱い方も人それぞれ別れていくのである。



 ──そうして、人や精霊達の中で、これはある程度認められ受け入れられる様にもなっていき、いつしか『淀み』は『マテリアル』と呼ばれるようになるのであった。




またのお越しをお待ちしております。

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