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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
330/790

第330話 煩悩。

(注意・前話329話の後半部分を書き直しておりますので、書き直し前の話を読んでしまった方はご注意ください。)




 芽吹きの季節の気持ち良い風に髪を揺らしながら、エアは良い笑顔で眠っている。

 だが、いきなり失神してしまった事には驚いたので、私はエアを心配して回復と浄化を強めにかけておいた。

 そして、序でに他にも異常が無いかを魔力で注意深く確りと調べておく……。



「…………」



 ……ふむ。どうやら悪い所は無いようだ。

 でも、だとしたらエアはなんで失神したのだろう。謎だ。嬉しさで気絶はするものなのか?



 まあ、エアが元気であるならばそれで問題ないかと、私はエアを横抱きにして立ち上がり、くるりと振り返って青年達に今回の企みについてちょっと尋ねてみる事にした。



 『君達、私に先ほどのセリフをエアに向けて言わせるのが目的だったのか?』と。


 すると、別に私としては怒っているつもりはないのだけれど、表情のせいかそう見えてしまったようで、青年達は『あっ』と声を詰まらせている。



「……えっとー。た、たくらみですか?……いやー、ちょっと、何を言っているのか俺にはよくわからないですねー」


 それに、白々しくも素知らぬふりをされてしまった。

 これだと追及も出来ないだろう。



「わたしもです。さーて、そろそろいい時間ですし、宿に戻ろっか」


「それが良いな!じゃあ、ロムさん!エアさんをよろしくお願いします!俺たちはこれで!皆さんもお疲れ様でしたー!また」


「おーう、おつかれー。気をつけて帰れよー」


「……あのロムさん、一つここだけの話ですけど、エアさんわたしにちょっとやきもち焼いていたみたいです。ロムさんが一緒に居ない時のエアさんって、ちょっと雰囲気違うんですよ。知ってました?だから、もっと安心させてあげてくださいね。……それでは、明日もよろしくお願いします」


「……ああ」



 そうして、二人は詳しい説明はなしに、それだけ言い残すと帰って行ってしまった。

 ……彼らが言わない方が良いと判断した事ならば、それを無理に問い質そうとは私も思わない。


 それに、今の言葉だけでも十分に分かった事は多かった。

 ……でもまさか、そんな事を言われるとは思ってもみなかったのである。



 私と居ない時のエアを、当然私は知る機会があまりない。

 なので、エアの雰囲気が変わると言うのは、本当に私の知らない姿だった。

 それと、安心か……。



 正直言って、エアと彼らがいつそんな話をしていたのかさえも全く気付けていない私である。

 だがここで『安心なんて難しい事だから後々考えればいい』と棚上げする事だけは避けたいと思った。


 それは考えて無いのと一緒である。

 より良くなって欲しい思うのならばちゃんと願うべきだし、したいと思うのならば動くべきだ。


 私はもっとエアに喜んで欲しいので、その為の行動を開始しようと思う。

 ……とりあえずは、やはり私は普段から言葉が少ない気がしたので、再度その改善をするつもりであった。

 これでも良くなったと私的には満足しかけていたのだが、どうやらまだまだ足りてないようである。





 そうすると今回、あの二人は本当にエアに協力してくれただけだったのだろう。

 だから、あの言葉を私に言わせたいと思ったのも、きっとエアの望みだったのだ。


 そして、彼らの表情を見るに、ちゃんとエアが望む言葉を私は言ってあげられたのだと感じた。

 叶えられてあげられた事を素直に私も嬉しく思う。……私も褒め殺しにもあったし、そのお返しだ。



 それに、私も何となくだが、エアとのこういうやり取りをするのは凄く久しぶりな気がして、嬉しかった。あの場の雰囲気を作ってくれた皆には感謝しかない。……ありがとう。



 エアの成長は日々ゆっくりとだが着実に進んでいる。まるで魔法の様に。


 訓練には増々自分から励む様になり、考えもちゃんとはっきり言うようになってきて、甘えて来る事もあまり無くなったエアを、私は大人になって来たのだと思っていた。

 だが、それはただの勘違いだった事が、今回の事でよく分かったのである。



 私はきっとずっと想い違いをしていたのだろう。

 エアは大人へと成長していた訳ではなく、未だその手前に居たのだと。

 少しだけ自分の気持ちを隠す事が上手くなっただけで、ちゃんと密かに思う所があったと言う事なのだと。



 ……複雑だ。けれどそれが愛しくも思う。



 そして、エアはきっとあの二人に、そんな複雑な相談もしていたのだろう。

 そこであの二人は、私からエアへと声をかけさせる作戦を思い付いたのではないだろうか。

 不安そうだから、少しでも安心させる様に、エアが喜ぶ言葉を私に言わせる作戦である。



 もっと単純に言えば、エアを私に甘えさせる作戦だったのだろう。



 私としてはいつでも甘えて来て貰って構わないのだが、エアはそれがしたくても出来なくなっているのかもしれない。もっと普段から言葉をかけて促したら、エアはもっと喜んでくれるだろうか。



「…………」



 だがまさか、自分が魔法以外の事でこれほどまで頭を悩ますとは思いもしていなかった。

 『年頃』……と言っていいのかは分からないが、昔からエアを見て来て、少しずつその変化を傍で感じて来て、段々と複雑になって変わっていくエアを、不器用なこんな私が支え続けていく事がこの先も出来るだろうかと、ふと疑問にも思う。



 ……ただ、許されるのならば、私はこの先も支え続けて行きたいと願った。

 もしエアが、私の存在などいずれは邪魔にしか感じられなくなり、共に冒険する事さえ厭うようになる時がこの先来たとしても、その日まではずっと一緒にいたいのだ……。



 ──いや、いかんな、来るか来ないかもわかならい、こんな不明で暗い未来の話をするのは良くない兆候だ。

 未来の話をする時には、もっと笑顔が伴うものであるべきである。


 ……普段は殆ど歳月など気にしていない癖に、こんな時ばかり歳を取った気分になってしまうなんて、また友に笑われてしまうぞ。気を付けなければ。



 そもそも、私はもう『差異』へと至り、歳を取らなくなって久しいのだ。

 それからずっと私は、変わらない姿のままなのである。


 この身が既に人とは違う時の流れを生きている事も、最近は少し忘れかけていた。

 忘れてはいけない事の筈なのだが、楽しい日々につい……。


 でも、この日々もいずれは終わりが来る事を私は知っている。

 きっと、エアも私よりも先に……。



「…………」



 今の今まで、一切考えてもいなかった事が、一瞬だけ頭を過ぎった気がした。

 ……いや、なんでもない。なんでもなかったのだ。



 気付けば周りに居た剣闘士達もいつの間にか帰り支度を終えていたのか、みんな帰り始めているようだ。……私達も早く屋敷へと帰る事にしよう。



 横抱きしていたエアを私は背負い直すと、日差しの厳しい季節へと駆け足で変わろうとしている夕暮れの街の中を、のんびりと歩いて帰ったのだった。





またのお越しをお待ちしております。




祝330話到達!


『10話毎の定期報告!』


皆さん、いつも『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を読んでくださってありがとうございます。



今の時期は、ある意味でとても危険な季節でもあります。


食べ物も美味しいし、過ごし易いのは良いのですが、その分個人的には一番油断しやすく、風邪なども引きやすい季節ですので確りと気を付けていきたいと思います。

風邪をひけば執筆が遅れますからね。これは大問題なのです。


それと、この季節はついつい夜更かしをして、睡眠時間が削られる事もしばしば……。

そして、夜更かしをすると色々心や体に影響が出るのが何ともにくい所です……。

小説を最大限で楽しみ、盛り上げていく為にも、この先も気を付けていきたいと思います。



……ただ、どうしても眠れない日、と言うのもあるかと思います。

そこで!そういう時には、眠る前のちょっとしたお時間のお供に『鬼と歩む追憶の道。』はいかがでしょうか笑!(すみません。ただの宣伝でした)

ほぼほぼ毎日更新しておりますので、他の作者様の作品と一緒にお楽しみ頂けたら幸いでございます^^。



いつも読んでくださっている方々、応援ありがとうございます!

誤字修正の報告、助かります><申し訳ありません。

感想もありがとうございます。とても嬉しいです。



ブクマをしてくださっている九十人の方々!評価をしてくださっている二十八人の方々(前回から一人増)!

皆さんのおかげで、本作品の総合評価は446ptに到達しました!

(現在の総合評価の第一目標は500ptですので……残りは54ptです!)



本当にありがとうございます!

今後も油断なく頑張って参りますので、どうか引き続き応援よろしくお願いします^^!




──それでは、声出しいきます!目標を明言するのは大事な事ですので、失礼致します!


「目指せ、『書籍化』ッ!」




今後も『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、是非とも宜しくお願いします!

更新情報等はTwitterで確認できますので、良かったらそちらもご利用ください。

フォロー等は出来る時で構いませんので、気が向いた時にお願いします。

@tetekoko_ns

twitter.com/tetekoko_ns



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