第312話 止水。
イベントは終わった。
個人的な総括を述べるとするなら、先ず、今回の準備期間を多めにとった事は成功だったと感じている。
ちゃんと準備の効果も出ており、エアやバウのイベントでは何一つ問題が起きる事無く大成功と言っていい賑わいを見せていたし、それ以外のイベントでも間違いなくこれまでで一番の盛り上がりになったと私は思う。
……まあ、最終戦だけはかなりバランス調整に難があった事は認めざるを得ないが、イベントが終了してからしばらく経つとその評価も少しだけ変化し、精霊達の中には『あれはあれで刺激的で良かったな!』と言う者が増えて来たのであった。
と言うのも、精霊達の中にも何気に負けず嫌い気質の者は多く居るので……
『またあのゴーレムくん軍団に負けたのか……』
『くそっ、俺は悔しいぞ』
『僕もだ。でも、次はまたこちらが勝てばいい話でしょ?次に向けて頑張ろうよ』
『そうだな。……だけど、その為にはやはりもう少し大樹の森に行く回数を増やして、皆との訓練をしたほうがいいんじゃないか?』
『そうだな!それは良い考えだ!そうしよう!』
……と言って、イベント後にも関わらず、各地の『大樹の森』で居残り訓練する精霊達の姿が沢山見られたのであった。本来ならばイベント後に撤収させていた各地の魔力補給所も、これからは継続して置き続けた方が良さそうである。
イベントの質も年々上がっており、それに合わせて精霊達の訓練も向上しているようだ。
昔と比べて全体的に精霊達もかなり成長してきたと思う。
皆見た目からして健康的になって来ているし、綿毛の精霊達も二回りくらいはふっくらしてきた姿は微笑ましい限りであった。
それぞれの『領域』に帰っても余裕がなかった者達も、今ではイベントに向けて自主トレをする様になり、ちょくちょく『大樹の森』にも足を運ぶようになって来た事はとても大きな変化であると言えるだろう。……何より、精霊達が揃って楽しそうにしている姿を見られるのはとても安心する。
『ボロボロにはされましたが、今回のでちょっと強くなれた気がします』とか『今回の経験を糧にまた頑張ります。凄く楽しかったので、絶対にまた来ますね!』と、今回のイベントの総合ポイント上位勢は楽しめたようでみんな笑って帰って行った。
──そう言えば、今回のイベントにおいて、総合優勝に輝いたのは『第四の大樹の森』からやって来た女性の水精霊であった。
吹雪の大陸にある魔法学園の温泉が大好きらしく、最近は足繁く通っているのだとか。
少しだけ目付きは鋭く一見きつい印象にも見える彼女だったが、『わたし、もうあれ(温泉)が無いと生きていけないんですよ~っ!!』と、優勝者インタビューで何故か温泉好きトークをし続け、場を和ませてくれたお茶目な精霊さんである。
ただ、あの極寒の大地を『領域』にしている精霊達の中でも、かなりの実力者として知られている精霊の一人らしく、『第四の大樹の森』から参加してくれた精霊達からすると『まあ予想通り』であったらしい。
彼女はどの競技においても優勝こそなかったが、どの競技においても必ず上位に入っており、最終的には総合でトップになったのであった。
正直な話をすれば、『総合優勝者』に相応しい『素敵な称号』とはいったい何が良いのかと、私はずっと悩んでいた。イベントが始まる前からずっと考え続け、結果が出る寸前まで何も決まっていなかったのは私だけの秘密である。
……だがしかし、その総合優勝者に彼女が輝いたと分かった時、それまでの彼女の冷静な立ち回りや戦い様を思い返した私は、自然ととある言葉が頭に思い浮かんできたのであった。
──それは、『明鏡止水』。
そして、それこそが此度の優勝者である彼女へと贈られる『名誉』となった。
パッと思い浮かんだだけなのでその言葉を贈った深い理由などはなかったのだが、その称号を告げた時に周りの精霊達は『ウンウン』と納得だと言わんばかりに頷き、称号を贈られた彼女もはにかむ様に微笑んで嬉しそうに笑ってくれたのであった。
だが、そうした勝者の微笑みがあれば、当然その逆もある訳で……。
『旦那、すみません。俺達……』『負けちゃったー……』『後悔……』『不甲斐ない姿を見せてしまいました……』
……と、どうやら今回はあまり結果が揮わなかったらしく、上位勢にも入れなかったいつもの四精霊は、イベント後、数日経ってから『しょぼん』と落ち込んでいた。
イベント中は楽しさに夢中になっていたのでそこまで気にならなかったらしいが、終わってから少し冷静になってみると、段々と時間差で悔しい想いが湧き出て来たのだとか。……まあ、元気をだしなさい。次もまたあるのだから、君達もその時に頑張ればいいのだ。
私は彼らの肩をポンポンしながら励ましの言葉をかけ続けた。
……そうして励ましながら、いずれここに居る四人にも、特別な機会に何かしらの良い称号が贈れたら良いなと、私は密かに想うのであった。
またのお越しをお待ちしております。
祝100万文字到達!&310話到達!
『定期報告(特別編)』
皆さん、いつも『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を読んでくださってありがとうございます。
そして、今回の312話にて、本作品が100万文字を超える作品になりました事を先ずお知らせいたします!
これまで『100万文字以上の作品を書く』と言う経験が無かったので、ここ最近はちょっと意識し過ぎてしまい、少しソワソワしながら書いておりました笑。
正直な話、昨日の更新が終わった時には、少し『ホッ』としました。
まだまだ物語はこの先も続きますが、これでようやく一つ目の大きな節目を超えられたような気がします。
不思議なソワソワも無くなりましたので、この先はまた落ち着いて書いていきたいです。
今年は夏の暑さや、最近の気温の変化で調子を崩す事も多く、思うように書けない日も多かったですけど、それでも皆さんの応援もあって何とか、ここまでこれました。
いつもありがとうございます。
これからも油断なく頑張って参りますので、どうか引き続き応援よろしくお願いします^^!
ブクマをしてくださっている八十六人の方々(前回から二人増)!
評価をしてくださっている二十五人の方々(前回から四人増)!
皆さんのおかげで、この作品の総合評価は418ptに到達しました!
(現在の総合評価の第一目標は500ptですので、……残りは82ptです!なんと百を切りましたっ!)
本当にありがとうございます!
──さて、それでは、初心忘るべからず、目標に向けて確りと声を出していきたいと思います!
「目指せ書籍化!その為に、ひたすら積み重ねていこう!」
『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、是非とも宜しくお願いします!
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