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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第31話 明。




 私と精霊達とのお話は朝まで続いた。

 ただ、それは私が怒ったりだとかいう訳でなく、事情を聞くためだけのものだった。

 闇の精霊が槍の事に関して全くの無関係だったのは、闇の精霊の態度を見ていてば直ぐに分かった。

 なので、原因はそれ以外にあると私は察した。



 そしてよくよく思い出してみると、『これは君達がやったのか?それとも異常事態なのか?』という私の問に火の精霊達は驚いた顔をしながら、『うん』と答えている。これは自分達が仕組んだ機能の仕業ではあるだろうが、異常事態も起こっていると言う事を意味していたのだろう。


 彼らはおちゃめが過ぎる。が、嘘は言わない。

 私が怒っていないのも本当の事である。それに元々は私が彼らの表情から勝手に勘違いして先走ってしまっただけと言う事もあるし、あの時点では槍が勝手に動き出しただけなのだから、もう少し話を落ち着いて聞いていれば何も騒ぎを大きくすることはなかった筈なのである。冒険者時代の癖で、つい戦闘の気配を感じると血が騒いでしまうのが、私の欠点と言えるだろう。



 だが、今回場合に限っては私は結果的にこのミスをしてよかったと思った。

 それほど闇の精霊との出会いは私にとって嬉しい出来事だ。


 それに、おかげで槍が動き出した原因にも大凡の察しがついた。

 闇の精霊は言っていた。"みんな"楽しそうだった。来てみたかったと。

 では、その"みんな"とは誰の事かと私は考えたのだ。



 土、水、風、火の精霊達はここの常連だ。だいたいいつも彼らはどこかで見かける。

 私は今まで精霊と言えば全部が彼らの事で、彼ら以外の別の属性に力が傾倒している者達は見た事が無かった為に、存在しないのだと勘違いしていた。


 だが、それが間違いであったのだと、そう気付けたのは闇の精霊との出会いがあったからである。

 そして、闇があるならば、光もあるだろうと思うのが当然の思考の流れであった。


 そうした時、私は身近で良くキラキラと光っているものの存在を思い出したのである。


 その存在を少しだけエアから借りて、現状私の手に渡った途端に薄い鈍色をして、スンッとすましているその槍の事を、私はジーっと見つめながら、そっと囁いてみた。



「さては、君が光の精霊だな?」



 そう言った瞬間、槍は横に小さくブンブンと揺れる。……いやいや、その状態で首を振られても。

 そして、同時に闇の精霊を捕まえた時とほぼ一緒の揺らぎを私は感じていた。光の精霊で間違いないだろう。


 彼?それとも彼女?闇の精霊と同じく性別があるのかは分からないが、光の精霊もずっと私達の傍に居たのだ。気づかなかっただけだった。『差異』に至った者だと驕っていた自分を恥ずかしく思う。

 昨日の私の【探知】や【空間魔法】にひっかから無かったのも当然だ。あれは隠れている物を見つける魔法である。その点、光の精霊はずっと動いていた。肉を焼き続けていたのだ。

 私は自分の魔法の盲点に気付けたことを喜びに思う。もっと精進しなければ。


 『自分は投擲槍だ』なんて槍の嘆きが聞こえた気がしたが、本当はあれは『わっちは光の精霊なのです!なのに肉を焼かされてるのです!』と言う光の精霊のプンスカだったのだと思えば納得がいった。



 『気づかれたのです。すごい力を持っているのです』



 そうして、観念したのかエア以外が持っても光らなかった槍が、ぷわーと淡い光を帯びて、その中から光の精霊の本体が出て、来そうだったが……別に何かが出てくるわけではなく、そのまま話しをし始めた。出てこないんだ。



 『ここ、思ったよりも居心地が良いのです。光る機能がちゃんとついているのもお目が高いのです』



 そうか。それなら無理強いはしない。

 それに闇の精霊が暗い所を好むように、光の精霊もまた光を発している場所でなければいけないのだろうと思う。

 君も良かったら好きなだけここに居てくれていいからと伝えた。



『当然なのです。わっちはエアちゃんの槍なのです』



 ……いや、君それでいいのかい?確かにエアの力になってくれるなら私も嬉しいけれど。



『エアちゃんを見てると心がほっこりするのです。わっちは元気な子を傍で見ているのが何よりもの幸せなのです』



 そう言う事ならばと、私は光の精霊に引き続きエアの槍役をお願いする事にした。

 エアはまだ精霊達の姿を見る事が出来ない。いずれは出来るだろうけど。


 彼女がいずれ彼らの姿を目にした時、きっとそのあまりの多さに驚くんじゃないだろうか。

 自分はこんなにも多くの精霊達に見守られていたんだなと、それに驚き無邪気に喜ぶエアの笑顔がなんとなく想像できて、私も自分の事の様に嬉しくなるのであった。




またのお越しをお待ちしております。

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