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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第307話 関心。




 画の傍にサインを書いた後、私は宿の女性へと『雷石改六』を渡した。


 これからする事は『伝言』の代わりだ。


 『雷石改六』を使い方を宿の女性へと簡単に説明してから、私はバウを背負ったまま『壁画の私達』と立ち位置が重ならない様に気を付けてその隣へと立ち、エアはそんな私の横に更に並んで宿の彼女の方を向いた。


 そうすると、ちょうど宿の女性からみれば私の右手側には『壁画の私達』が居て、私の左手側にはエアが並んでいる状態で見えるのである。



 そうしたら後は、その状態のまま私とエアは一緒に口パクをし始め、向こうから見て分かり易いように『あ、り、が、と、う』と一文字ずつ告げていった。完全に揃うまでは数回やり直したが、その様子を宿の女性に『雷石改六』へとちゃんと焼き付けて貰ったのである。


 こうすることで、『雷石改』には私達から画家の彼女へ向けた『感謝のメッセージ付き映像』が残ると言う寸法だった。


 一応、ちゃんと焼き付けられているか、魔力を通してみて確認もしたが……うむ、どうやらちゃんと焼き付けられているようだ。問題ない。



 これで、次にもしまた入れ違いになる様な事があったとしても、もう大丈夫であろう。

 画家の彼女が旅の途中でこの宿へとまた顔を出した際には、この魔法道具を渡して貰うだけで私達からの伝言になると言う思惑なのである。


 なので、彼女が帰って来た時にはこれを渡して欲しいと頼むと、宿の女性は『是非任せてください!必ず渡しますからっ!』と、なんとも頼もしい返事を返してくれたのであった。……有難い。



 おっ?それに、どうやら『雷石改六』の事が彼女は凄く気になるらしい。

 そういうことであれば、良かったら予備もまだあるので、こっちの一個は良ければ貰って欲しい。

 報酬代わりと言ってはなんだが、好きに使って欲しいと思う。



 すると、どうやら宿の女性は少し感動したらしく、一見してただの石にしか見えない『雷石改六』をぎゅっと握りしめると、まるで宝石の様に瞳を輝かせてみていた。……一応、何度か細かい調整も重ねて、悪用したりふしだら目的では使えない様にセキュリティーもかけた仕様になったので、安心して使えるタイプとなっている。是非ともうまく活用して欲しい。



 ただまあ、そこまで後生大事に扱わなくても平気だ。

 それに、もし壊してしまっても構わない。

 元々耐久性もそこまで高くないので、気にし過ぎない様に……。



 周りを見ると、宿の女性だけではなく他の人達も欲しそうな顔をしていたが、『実は販売中なんで、ギルドでお買い求めいただけると嬉しい』とだけ告げ、少し宣伝をしておいた。……たくさん買ってもらえると魔法道具職人のお父さん方が喜ぶので、どうかよろしくお願いします。




 ──結果的に、この街に画家の彼女が居なくて、再会ができなかった事だけは残念であった。



 ただ、彼女からの『伝言』は私もエアも嬉しく思う。

 『旅の途中でまた会えれるかもしれない』と考えるだけで、別の街に向かう楽しみが一つ増えた様な気がした。



「……ばうー」



 ただ、そうして私達が喜びを感じていると、一人だけ、バウのそんな少し寂しそうな声が背中から聞こえてくる。……おや?

 その声色からすると『……一緒に仲間に入れてー』と言いたそうなぐずりを含んだ声だと直ぐにわかった。


 そう言えば、バウは先ほどの宿屋でひたすらにあの画を見ていた様に思う。

 だが、先ほどの画はまだバウと会う前の時の事だったから、バウの姿が入っていなかったのであった。

 ……だからか、どうやらバウは寂しく感じてしっているようである。

 まあ、あれだけ素晴らしい絵ならば『自分の事も一緒に描いて欲しい』と思うのも当然の事だろうと思うし、一人だけ居ないのは寂しいものだ。



 そうだな、もし次に画家の彼女に会った時には絶対に、一緒の絵を描いてもら──



「──ばうっ!ばうっ!ばうばう!」



 すると、そこでバウはいきなり何かを閃いたと言いたげに私へと何かを話しかけて来る。

 ……ん?なになに?『やっぱ、描いてもらうよりも、自分で絵を描きたくなってしまった』と?


 バウが、自分で絵を、絵を描くのか?……そうかそうか、なるほど。

 それは、なんとも面白い考えだと私は思った。



 画家の女性には、次にいつ会えるかわからない……でも、絵は欲しい。

 ならっ、自分で描けばいいじゃないか!とバウは思ったようだ。



 実際、彼女の絵を見て画家の道へと憧れるものは少なくないらしいし、バウが良い刺激と影響を受けて、画家を目指したくなったとしても、その気持ちになんら不思議はない。

 まあそれが人かドラゴンかと言う違いくらいはあるだろうけど、言い換えればそれだけで、決して不可能な事ではない筈なのだ。



 ドラゴンが絵を描きたくなる時があってもいいだろう。

 それどころか、興味がある事ならばどんどん挑戦してみるといい。

 私はその気持ちを全力で支えるし、応援するのである。



「ばうっ!ばうっ!!」


「バウ~良かったね~」


「ばうっ!」



 ……バウは賢く、我慢強い子だ。

 普段から街中では他の人を驚かせない様にと『ジッ』としてぬいぐるみのフリを頑張ってしてくれている。

 ただ、そんなバウの頑張りに対して、私はこれまで『お食事魔力』ぐらいでしか報いる事が出来ていなかった。


 だから、これはいい機会なのである。

 基本的にのんびりと寝て居られれば充分満足してしまうバウが、自分からこんなにも可愛らしいわがままを言って来る事など滅多にない。

 だからこそ、その想いは是非とも叶えてあげたいと私は思った。



 隣へと視線を向けるとエアもバウをわしゃわしゃと撫でながら、力強く『うんっ!』と頷いてくれている。どうやら大賛成らしい。

 ……よし、ではやろうか。



 ──と言う事で善は急げと、私達は画材が売っている店やギルドを探し回って、バウ用の画材を集め始めるのであった。





またのお越しをお待ちしております。

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