第290話 三角。
「ロム!お前はずるい奴だっ!」
「ほんとそれっ!あんな事今まで言った事なかったのにっ!」
かつての故郷である『空飛ぶ大地』へと帰って来た友二人だ。
久しぶりに故郷を思い出し感傷に浸っていた所で、何やら感極まってしまったらしい。
……ただ、君達にずるいと言われるのは少々心外である。
どちらかと言えば先にずるい発言をしたのは君達の方だと私は思った。
私達はただ友二人を喜ばせたくてやっただけなので悪くはないだろう。
……私だって『おかえり』くらい言えるのだから。
だがまあ、そんな二人の姿は懐かしさと言うよりは、彼らの知らなかった新しい一面を見られたかのようで、私にはとても新鮮に映った。
「──ロム、喜んで貰えて良かったね」
「……ああ。皆のおかげだ」
そんな私の喜びを察してくれたのか、エアは隣で笑っていた。
その背中にはバウの姿もおり、無言のまま糸目がニコッとなっているのが何とも可愛らしい。
また、この場には数多くの精霊達もきていた。私はそんな皆にも視線を送り、小さく頭を下げて会釈をすると『ありがとう』と合図を送った。
すると彼らは『大した事は何もしてないよ』と。『見ていただけだよ』と。『何を言われているのか良くわからないな』と微笑んでいる。
それはまるで誰かの真似でもしているかのようで、その精霊達の姿が見えたエアはクスクスと笑っていた。
「ふふふっ、まるでロムみたいだねっ」
他に何も無い特殊な環境に、これだけ多くの精霊達が集まっていると多少は見えやすくなっているようで、エアは普段よりハッキリと精霊達の姿が見えている様であった。
ここまで精霊達に愛されているエアであれば当然だとも思えるが、エアも精霊達をそれだけ大事に想ってくれているからこその成長である。
エアはいずれ、気づいた時には普段から今の様な状態で普通に彼らを見る様になるだろう。
そして、その時にこそエアは『差異』へと至っている筈だ。……きっとそれももう遠い話ではない。
私が何百年もかけた事を、エアはたったこの十数年で──。
「──ちょっと貴女、話があるからこっちに来てくれる?少しだけ二人で話をしましょ!……ほら、きてっ!」
「えっ!?あ、うんっ!ロムっ、行って来るねっ」
「……ああ」
すると、私の隣で笑っていたエアは、急にサッと近付いて来た友(淑女)によって腕を引っ張られると、そのままスタタタタ―と私から少し離れた場所へ連れ去られてしまった。
……どうやら何か二人だけで話がしたいらしく、友(淑女)は【消音】の魔法まで使って内緒話を始めだしたのである。
エアは、突然の事で少し驚きはしていたものの、引っ張られても簡単に態勢を崩すようなことはなく、何が起きても動き出せるようにと警戒も確りとしながら友(淑女)へとついて行った。……うむ。如何に私と親しくしている相手だとは言っても、油断していないのは大変に良い。冒険者らしい姿と言えるだろう。流石はエアだと私は内心で姿を感心して見ていた。
「ティリアも随分と強引に引っ張って行ったな。……だが、あの鬼人族の娘も良い体幹をしている。魔法の才だけではないようだな。……ん?師匠よりも確りしているではないか。見習ったらどうだ?」
友(淑女)がエアを引っ張っていくと、私の方にはゆっくりと友がやって来る。
そして、私が運動があまり得意でない事を彼は知っているので、少し冗談を交えてそう話しかけて来たのだ。
……当然、そんな冗談はこれまでもう何度も繰り返してきたテンプレであり、私にそのつもりが無い事を彼も重々承知の上である。
なので、私は敢えてそこには言及せず、こちらも言いたい事だけを彼へと語りだす事にした。
……つまりは『エア自慢』である。
私は友へと、どれだけエアが素晴らしいのか、才能も高く、やる気もあり、努力は人一倍している事など、それからこんなにも優しい子でこんな事やあんな事があったのだ!と色々教えてあげる事にしたのであった。
「……わかったわかった。もう充分だ。ロムがどれだけあの娘の事を大切に想っているのかは承知した。……だが、それだと辛い話になるな」
暫く私がエアの自慢話を語り続けていると、友はそう言って途中で降参の意を告げて来た。……なんだ、まだまだ序盤しか語っていないのだが?もっともっと語れるのだが?
……ただ、その時の彼は本気で止めて欲しそうな顔をしていたので、私はその意を汲み取ると一旦話を止めた。
そして、話し続けた喉が少し潤いを欲したので、【空間魔法】の収納から秘跡産果物『ネクト』を二つ取りだすと、片方を友へと渡したのである。
「ありがとう。……ん?見た事ない実だが、美味いのか?」
「ああ。エアの大好物だ」
「そうか。なら大丈夫だな。……おおっ、これは美味い」
そうして、初めての『ネクト』を笑顔で美味しそうに食べる友を見ながら、自分もカプリと実を齧りつつ、私は先ほど友が言っていたとある言葉の事が妙に気になって考え続けていた。
『辛い話』……とはいったい何のことだろうか、と。
エアや友(淑女)を指しての言葉なのだろうか、と。
そう思った私は、【消音】の魔法に消された先で何やら楽し気に語り合う二人の顔を見た。
……だが、二人共何の話をしているのか分からないものの、とても『辛い話』をしている様には見えなかったのである。二人共、ずっと良い笑顔をしていた。
それに、エアと友(淑女)の雰囲気を魔力から察してみても、話をするのはこれが初めての事だろうけど緊張している様にも見られないし、どうやら仲良くなれそうだと思って一安心していた。
……そもそも友(淑女)は同性の女性達に対しては面倒見も良いし、話も面白いし、思いやりもあると聞いたことがある。エアから見ても頼りがいのある大人の女性に見えているのではないだろうか。
まあ、こうして私とエアもそこそこの時間を共にしているわけだが、エアは見た目に反して精神的な部分においてはまだまだこれからの伸びしろの方が大きいだろうから、私に相談できない悩みなんかが出てきた際に、他に頼れる人が居てくれるのは凄く心強いと思うのだ。
そして、私は自分が知る者達の中で、友(淑女)程それに相応しい人は相手は居ないとも思っている。
だから、親心みたいな面からすると、是非とも仲良くなってくれたらと思った。
ただそうすると、先ほど友が言った『辛い話とはいったい?』と言う事になる。
……だが、そう考えた時に、私は遅ればせながらも『ハッ』となり、とある事を思い出したのだ。
そして、果物を齧りながらも隣に居る友の視線を追い、その心配そうな視線の先に映る友(淑女)の姿を見つけた時に、私は内心で気づきを得たのであった。
……と言うか、昔から有名ではあったのだが、それが今も変わらずに続いていると言う事を察して、思わず心の内で溜息に似た何かが思わず出たのだ。
──何を隠そう、この友『レイオス』は、昔から幼馴染である友(淑女)『ティリア』を愛しているのである。
またのお越しをお待ちしております。
祝290話到達!
『10話毎の定期報告!』
皆さん、いつも『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を読んでくださってありがとうございます。
連日の暑さで中々調子が上がらず、ご迷惑をおかけしております。
最近は無理なく書けておりますので、体調は比較的よくなりました。
ただそのせいで更新頻度が落ちている事だけは、大変申し訳ございません。
本作品も気付けば……90万文字を超えました。
作者的には、そこそこのペースで書けております。
地道にやって来た事が、段々と積み重なっている感覚がありますね。
それに、もう少しで100万文字かと思うと……『頑張らねば』と更なる気合も入っております!
このまま油断せずに突き進み続けたいと思いますので、どうか応援し続けて頂けると幸いです。
あと、この定期報告でちゃんと声を出して行く事によって、暑さに負けない様にもなっていきたい。
ですので、折角ですし今回は先に声出しの方からやってみようかと思います!
「目指せ書籍化!暑さに負けるな!緩まないように気合を入れて突き進もう!!」
まだまだ暑い日は続きそうですが、一歩一歩油断なく地道に進んで、調子を取り戻していきましょう!
ブクマをしてくださっている八十二人の方々(前回から五人増)!
評価をしてくださっている十九人の方々(前回から三人増)!
皆さんのおかげで、この作品の総合評価は350ptに到達しました!
(現在の総合評価の第一目標は500ptなので……残りは150ptです!!)
皆さん、本当にいつもありがとうございます!
どうか、今後も引き続き応援よろしくお願いします^^!!
『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、是非とも宜しくお願いします!
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