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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第288話 摘句。





「へー、そう。あの子に魔法を教えているの?ロムが?へー、それも二人っきりでねー、あーそうー、じゃあ、『師匠と弟子の関係』って訳?ふーーん……ねえ、本当に『師匠と弟子以上の関係』とかじゃないの?……あっ、そう。そうなんだ。ふーーーーーーん」



 ……なんだろう。久々にこうして直面して話をしたのだが、友(淑女)の一言一言に凄い圧迫を感じる。

 まあ、久々だからそう感じてしまう部分もあるのだろう。

 元々こういう話し方だった気もするし、今のも話の一端でしかないわけで、それ以外の内容は殆どエアの事を心配した質問ばかりであった。



 確かに、私みたいな不器用で粗忽な魔法使いの下で魔法を学んでいる女性が居ると聞けば、昔から面倒見の良い友(淑女)の事であるから、その女性の事が心配になるのも分からない話ではない。……なんとも有難い話である。



 だが、私はエアの事を常に大切にしていきたいと思っているから、『エアをぞんざいに扱ったりはしない』と、友(淑女)にも心配する様な事にはならないとはっきり伝えておいた。


 それから、私がエアをどれだけ大切に想っているかの説明の一端として、エアにはこんなにも凄い才能があるんだと言う話や、魔法使いとしての本人のやる気や努力具合も人並み以上に優れていると言う話、更には精霊達からも凄く愛される程に性格も優しい子なのだと言う話を語っておく。



 そして私はエアほど素敵な人はこの世の中にそうはいないと思っている事も話した。

 魔法使いとしての逸材である事は言わずもがな、その性格は凄く無邪気で素直、また可愛らしく、とても優しい子であると。

 それに、容姿に至っては個人的にこの世の中で一番なんじゃないかと思う程に美人さんであると思っていると。

 最近では女神と見間違う事もしばしばある程で、精霊達にはこれを言うと『エア馬鹿』と言われてしまう等々も素直に語る。



 それとまあ、あれやこれやはと言ったけれど、私がエアを大切にしたいと思う一番の理由は、エアと最初一目会った時から、私が『そうしてあげたい』と強く想ったからであった。

 ……正直、飾りの理由をいくら並べた所で、それに勝る物はないのである。



 私の心が、そうしたいからエアの事を優先する。

 それほど大事に想っているから、ぞんざいに扱ったりはしないのだと、私は友(淑女)に強く語ったのであった。



 ……正直、友(淑女)が言う、『師匠と弟子以上の関係』とか言ったそんななんやかんやからは、はぐらかした形での答えである。

 

 だが、敢えて言うのであれば、私は私らしく、エアに魔法を教える立場の者として、最後までその面倒と責任を見るつもりである事に揺ぎは無かった。

 そもそも、魔法使いとしての『名』をエアへと贈った事がそう言う話でもある訳だし、私が持つ知識や魔法技術の全てをエアへと伝えているのも、それだけの覚悟をしたが故なのである。

 ぶっちゃけ、大切に想ってない訳が無いのだ。



 ……それとこれはまた別の話でもあるが、これらは私の気持ちがそうと言うだけの話で、絶対と言う『契約』を結んだ話ではない。

 エアには、断りたくなったらいつでも断れるようにしてある。


 つまりは、ある日突然、エアが魔法使いを辞めたいと言うのであれば、その時は見送る決意も覚悟も最初の時から私には出来ていた。急に大好きな『お料理屋さん』で今後一生働きたいと言っても、ぐっと飲みこんで見送る事だろう。



 幾ら才能があろうとも、決して、エアに魔法使いとして死ぬまで生きろと束縛するつもりはない。

 エアには自由が似合うと思い、私はその名を贈ったわけだし、辞める時にはちゃんと受け入れるつもりである。



 ──だが、その時が来ないのであれば、私はエアと『ずっと一緒にいる』と『約束』したのだ。

 だから、その誓いを私は何があろうとも守り続けたいと考えている。


 ぞんざいに扱うなど、とんでもない。

 私にとってのエアとは、それほどまでに大切な存在なのであると、私は友(淑女)へと正直に告げた。



「…………」



 すると、私がエアの事について簡単(・・)だが一応そんな説明をした途端に、友(淑女)は黙り込むと、『ムカムカ』と不機嫌そうな表情に変わり、私の事をギラっと睨みつけ出した。……どうしたのだ。出来ればそんな怖い顔をしないで欲しい。心臓がキュッとなる。



 私がそう言うと、彼女はプイっと顔を少し背けながら『もういいっ!何でもないっ!』と言って怒ってしまった。

 ……だがまあ、昔からこういう事はよくあったので、私はこんなやり取りにも懐かしさを覚える。


 元々、私は淑女達と相性が良くないのだ。

 一度話せば、こうしていつも直ぐに喧嘩へと発展してしまう事ばかりであったのである。


 だが、そんな淑女たちの中でも、唯一、友(淑女)だけはこうして喧嘩になった際にも、他の淑女達とその後の展開で異なったのだ。



「……はぁーー、まあ、いいや。とりあえずそっちの話はまた後でするとして、もう一つロムに聞いておきたい事があるの。──ごほん、あなた、やっぱうちの国に来なさいっ!そして、その弟子の子を鍛えるついでで構わないから、うちの国の兵士達にも魔法を教えてあげて?それだけの力があなたにはあるんだから、もっと広く活かして欲し──」



 友(淑女)は凄く頭の切り替えが早いのである。

 そんな友(淑女)をとても優秀な人物であると私が思うのは、こういう部分だ。


 友(淑女)は、先ほどまで明らかに怒っていた筈なのに、今ではもうきっぱりと別の思考へと切り替わっている。

 独特のサバサバ感とでも言えばいいのだろうか、彼女のそれは話しをしていても心地良く感じるのだ。

 その上、彼女は己がなすべき事を感情で見失わず、ハッキリと自分の想いを伝える事が出来る人なのである。



 つまり、彼女は昔から幾ら怒っていても、幾ら喧嘩しても、少ししたらこうして直ぐに自分の考えを確りと伝えてくれるのである。

 『次はもうしないで』、『こうしたらダメ』、『こうして欲しかった』とハッキリと思った事を告げて来てくれるので、とても付き合いやすいのだ。



 彼女はとても優秀で、常に色々な事を考えている人物だ。

 それに正義感と責任感も強い。

 力のある者は責任ある立場に居るべきであると、そんな気高い志もある。



 皆を引き連れていく事ができるリーダー気質をも備えた素晴らしい人物であると昔から私は思っていた。


 この世のものとは思えないほどの美しさで、流れる様な綺麗さの金の髪を揺らし、横を通り過ぎるだけで全ての男達が恋心を抱くと言われている程にモテるにも関わらず、信念があるのか長年恋人も作ないまま仕事に励み、運命の相手が現れるのを一途に待ち続けているのだと言う、そんな誠実な人でもある。



 ただまあ、その代わりと言っては何だが彼女の唯一の些細な欠点として、情が深すぎると言うか、自分の物に対する愛着や執着が強すぎてしまう事があったり、独占欲もかなりあったりする為、自由を求めがちな冒険者とは少しだけ相性が良くないと言う面があった。



 だが、その点、国を守る事に長けた兵士達には、その『超短弓術』の腕前もあって絶大な信頼を置かれているようである。



 個人的には、後でエアにも友(淑女)の事を紹介するとは思うのだが、その時には是非ともエアとも仲良くなって貰えたら嬉しいと思った。

 もし、私に言えない相談事があった場合には、同性の彼女として彼女を頼ってくれたらと思うのだ。

 友と同じく、とても頼りになる人物である。



 ──だがまあ、そんな彼女から私は今、彼女達の国で仕えないかと誘いを受けているわけなのだが、これも実は毎度の事であった。

 ……なので、私の答えも当然いつもと変わらずこう返すのみである。



「すまないが、その気はない。私は冒険者だ。この国に留まる事はできない」


「……ムグググー、またそれかーっ!」



 私が最早お決まりとなったセリフを返すと、友(淑女)はその途端に『お前はまた断るのか!』と言いたげな苦々しい表情を浮かべている。


 ……だが、ちょうどその時になって、彼女の後ろからはもう一人の友が寄って来てくれており、怒りかけの彼女の肩をポンポンして宥めてくれた。



「まあまあ、落ち着け。ロムのその答えは分かり切っていた事だろう。……それよりも、先ずはこちらの話を進めても良いか?」



 ……良かった。ここで友の登場である。

 先ほどまで、派手な装飾の服を着た指揮官の男性達と何かの話し合いをしていたが、それが終わってこちらへと来てくれたらしい。



「……はぁー、もう。分かったわ。あっちは?もう諦めたの?」


「ああ、漸く観念してくれたらしい。少しこれまでが順調にいきすぎたからな。将軍たちの期待が比例して高くなっていたのもわかるのだが、相手がロムだからな。こいつが手に負えない存在だともう充分に理解して貰えたよ。無駄に時間と人員を割いた事は痛いが、被害が何も無かった事だけは一先ず良しとしよう。それに、兵士達の顔を見れば良い訓練になったともみえる。後は戻った時に報告を上手くすれば、例の話もうまくいくだろう。今回はロムの訪問に感謝だな」


「……そう?なら良かった!じゃあ、この後は?」


「ああ、後は俺に任せて欲しい」



 ──すると、この美男美女の二人組は悪戯でもしそうな微笑みを浮かべ、何やら二人で嬉しそうに『ふっふっふ』と悪い笑いをし始めていた。……どうやら相も変わらず、何かしらのやんちゃを此処でもやっているらしい。元気そうでなによりである。

 この二人の事だからきっと悪事を働いているわけではないだろうし、ほどほどに頑張って欲しいと思った。


 だが、そんな二人の思惑とは別に、私にもここまで来た理由があるのだ。そちらを忘れて貰っては困るのである。是非ともそちらの話も進めて欲しい。



「あ、私からも一つ良いか。正直、君達の何かの企みは私に関係ないだろうから細かく聞く気はないのだが、この後君らはどうするつもりなのだ?上に来る予定ではなかったのだろうか?」



 元々の話だと、彼らは『空飛ぶ大地』を目指していた筈である。

 だが、何となく今の友二人の話を聞いていると『目的はもう達したから帰ろうか』と言い出しそうな雰囲気になっていたのだ。



「……あー、上か。そう言えば確かに、見慣れぬ真新しい大地が飛んでいたな。『原初』以外にもこういう場所があるだろうとは思っていたが……。だが、まあ俺達からすると、あそこで降りて来てくれたのがお前で本当に助かったと言うだけだな。大地にはそこまで正直興味はない」


「……ここだけの話をするとね。最初に上の『空飛ぶ大地』がこっちに飛んで来ていると言う話を持って来たのは冒険者ギルドで、その報告でちゃんと聞いて知っていたの。ただ、他の国を通過したのと同じで、どうせこの国でも止まる事無く通過していくだろうと思って、二人して気を抜いて見てたのよ。──でも!そうしたらそれが丁度よく、まさかこんな場所で止まってしまってしまうなんてね。それからは一気に大騒ぎになっちゃった。この国の中でもわたし達二人はああいう場所がある事を知っていたから動じる事は無かったんだけど、周りのみんなにとっては初めての事で、もしかしたら『空飛ぶ大地』からこの国は攻められるかもしれないって、思ってしまった人が多くて宥めるのが凄く大変だったのよ──」



 すると、そこからは友二人のここ最近の忙しなかった話などがどしどしと溢れ出て来た。

 ……どうやら私が想像していた以上に、この国へと迷惑はかけていたらしい。

 本当にすまない。



 ただ、この国の者達は友二人から故郷の話を聞いたことで、ある程度は落ち着きをとりもどしたのだとか。

 そして、かつての『原初』と同じく、ここにも恐らくは誰かしらが住んでいると判断したようだ。


 だが、ここで自然と止まった『空飛ぶ大地』に居る住人達の目的が『交流』なのか、はたまた『戦争』にあるのか、『空飛ぶ大地』側の意図が分からない為、もし攻め込まれたとしても大丈夫な様に戦争の準備を密かに進める事で会議は決定したのであった。



 ……当然、最初は友二人も警戒を強めていて、戦争の備えにも賛成ではあったらしいのだが、あの会議の途中で私から魔法を掛けられたと悟る事が出来た事で、あの上に誰かしらが住んでいたとしても『そこにはきっとロムが居る』と判断したらしく、『それならば戦争はない。安心だ』と判断して自分たちの思惑を優先させたのだと言う。



 それに二人の話を聞いていて、『やはり……』と思う部分は幾つかあった。

 その中でも特に一番大きいのは、友二人がやはりこの場所をかつての故郷であると認識できていなかった事である。


 ……だがまあ、それは本当に仕方のない話だ。

 大地の大きさも、その見た目も、全部が変わってしまっているのだから、下から見ただけで気づく方が難しい。



「おっと、そう言えば聞き忘れていたが、ロム、この上にはどのくらいの人達が住んでいるのだ?この後のこちらの受け入れ態勢を整えておくために大凡でいいから教えておいて欲しい」


「そうね。いきなり兵士を沢山連れて来てしまったから驚かせてしまったかもしれないし、この後の交流が上手くいくように最善を作りましょう……あ、あと、ここの『里』は何ていうお名前かしら」




 友二人から来たその問いに、私は『きたか……』と心に気合を入れた。

 そして、二人の目を一度ずつ確りと見返してから、ハッキリと告げる。



「ここにはもう誰も住んではいない。言うなれば私達だけだな。……それに、二人共この場所の『名』はちゃんと知っている筈だ。なんせ、我々のかつての故郷なのだから──」




またのお越しをお待ちしております。

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