表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
280/790

第280話 漲。





 私達は一晩『空飛ぶ大地』の上に『土ハウス』を出して、その中で休んだ。

 昨日は思う存分頑張ってくれたエアとバウは、家に入った時にはクタクタに疲れていたので、入って浄化をかけるとすぐさまスヤスヤと眠りについていた。



 ──そうして翌日の早朝。

 まだ普段ならば、まだ朝日も昇らぬ時間帯に、私は一人外へと歩みを進める。

 エアとバウは昨日の疲れもあって、ぐっすりと眠りについていたので、『土ハウス』の周囲に守りを強化し【消音】も施しておいて、何があっても二人の睡眠が邪魔される事無い様にしておいた。


 こんな早朝から私が何をしに来たのかと言えば、当然今日の作業を密かに進めておくためにである。

 と言うのも、昨日で苗木まで植え終わってしまったので大体できる事は終えてしまっていた。


 なので、これから行うのはただの『おまけ』的な作業である。

 ある意味ではこちらの方が大変そうに見えてしまうかもしれないのだが、私的には昨日の作業の方が幾分も気を遣う作業であった為、どちらかと言えばこちらの方が気が楽だし、不器用な私には向いている作業であるとも言えた。



 そんな本日の私の予定としては、この『空飛ぶ大地』の高度を下げようと思っているのだ。

 私が知る『原初』は元々雲よりも下にあったので、その高さまで戻したいと考えている。


 そうする事によって、自然と周囲の魔素も増え、魔法陣の効果も上がり、砂漠の保湿効果や大樹の状態の安定性の向上を狙いにしていた。


 一応気を付けなければいけないのは、『不思議な力』によってこの場所は浮遊しているので、それを破壊しないようにしなければいけないという事だけれど、風に乗ってフラフラと飛んでいたのと大体やることは変わらないので、これに関してはまあ大丈夫だろうと私は予想している。



 一応、何があっても良い様にと防御面の事も考えておき、この『空飛ぶ大地』は分厚くそこそこに強力な高魔力で包み、ラッピングした状態の『空飛ぶ大地』はそのままゆっくりと斜め下へと引っ張る感覚で高度を下げていった。


 ここで一気に強く引っ張ったりしないのは、それで『空飛ぶ大地』に異常が起きたりしない様にとの配慮からであり、態々下ではなく斜め下へと引っ張っているのは、そうする事で元のルートへと上手く乗せる事が出来ないだろうかと、そんな思惑があったからである。



 ……そうする事で、元の『空飛ぶ大地』の姿を知っている者達は、また『あの場所』が返って来てくれたのだと知って喜んでくれるのではないだろうかと、私はそう想った。いや、きっと喜んでくれると思う。

 なんだったら……そして、出来る事ならば、これを友二人がいる街から見える範囲にもっていきたい。

 きっと喜んでくれるはずである。


 それに、たった三人だけの生き残りであると思っていた私達以外にももしかしたらこれで他の者達も戻って来てくれるかもしれない。

 もしかしたら、皆どこかに避難しているだけでこの日を待っていてくれたかもしれない。


 そう考えただけで、私は少し胸の奥が熱くなるのを感じた。


 そんな風に気持ちが逸ってしまって、こんな早朝に出て来てしまったわけなのだが、作業自体はちゃんと丁寧に時間を掛けてゆっくりと行っている。

 焦ってはいけない。ここでなんらかの大きなミスでも起こしてこの『空飛ぶ大地』を地上に墜落でもさせようものならば、目も当てられない。

 その時は、私もこんな不愛想な顔をしているけれど、本気で泣くかもしれないだろう。

 幾ら表情を取り戻したいとは言え、そんな方法はとりたくない。


 それにどうせ、表情が戻るのならばやはり最初はエア達と共に笑顔でいたいのである。



「……ふぅ~」



 落ちつけ落ち着け。のんびりと行こう。

 焦る事無く、丁寧に。

 ……その先にきっと笑顔が待っているのだから。



 私は、砂漠の中心、そして、地下に刻んだ巨大な魔法陣のそのほぼほぼ中心へと腰を下ろすと、瞳を閉じて魔力を動かす事に細心の注意を払った。

 ゆっくりゆっくりと、高度を下げていく『空飛ぶ大地』を大きな魔力の手で大事に大事に包み込みながら、のんびりと下ろし続ける。


 正直、ここまでの巨大な魔力を出す事もそうそうないので、爽快感もどことなく感じながら、私は雲海の中へと『空飛ぶ大地』を突入させ、その中の雷雨の中を潜り、魔素が潤沢に溢れる雲海の下の世界へと『空飛ぶ大地』を運び続けた。



 ……あと少し、あと少し。

 何かを待つ瞬間と言うのは、不思議な緊張があり、自分の鼓動がいつもより少し大きく感じる。

 そして、感覚が段々と研ぎ澄まされていくような集中力の高まりを覚えた。


 私はきっと、魔法使いとして充実の中心にいる。

 もっと分かり易く言うのならば、全力を出せる状態にあった。



 普段はどうしたって、強力な魔法が使えると言ってもむやみやたらに放ったりなどしない。

 一部自分の力へと制限をかけて、戦闘においても手加減を徹底しして来た。


 だから、昨日のとても複雑な魔力操作だったり、今日の久々に高出力な魔力を出したことによって、私は今、魔法使いとしての準備運動を終えた段階になっており、言うならば少し艶々している。ちょっと若々しくなっているかもしれない。



 雲の中を通って来た事で、『空飛ぶ大地』の地面も若干多めに水気を帯び、その水気に朝日が降り注ぐと大地が白色へと包まれた感覚を得た。

 そんな白い大地の中心には、私と言う『白銀の何か』が居るので、もし周りでこの光景を何某かが見ていたとしたら、さぞかし目障りな事になっているのではないだろうかと思う。



 『フフフフフ……』



 そして、案の定と言うべきか、どうやら見事それに引っ掛かってしまったらしい『あいつら』の姿を遠目に魔力で捉えと、私の内心では悪い笑みが零れた。



 ──総勢百を超える数の大型の羽トカゲ達がゆっくりとこちらへ近づいて来ているのが視えたので、私は瞳を開けて立ち上がり、そんな群れに向かって【転移】を使ったのであった。






またのお越しをお待ちしております。



祝280話到達!


『10話毎の定期報告!』


皆さん、いつも『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を読んでくださってありがとうございます。



ただ、最近は作者もパソコンも、インターネットの環境も全部暑さに負けてしまっておりまして、不調が続いておりました事、誠に申し訳ございませんでした。

前回270話の時には、『暑くても更新速度は変わらないと思います』なんて、呑気な事を言っていたのですが、すみません前言撤回です。


全然違いました。最近はもうフラフラになって書いております。


水分補給はちゃんと出来てるのですが、もうそう言う問題じゃないですよね。書くために集中が全くできてない状態でした。

正直、この暑さは流石に大変で、家のネットも不調になってしまい、上手く保存や更新もできてなかったりしました。



そんな二つの不調が重なった結果、折角更新しても本文がループしてしまったりしていて、読んでくださる方には大変ご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません。


ただ、そんな中態々それを感想で教えてくださった方がいらっしゃいました。あの時は本当に有難かったです。嬉しかったですし、凄く助かりました。


本当にありがとうございます。


また、その他誤字修正を教えてくれた方もありがとうございます。


皆さんの励ましのおかげで、何とかこの暑さでも気力を出してかけております。


今後も、暫くはこうして暑さで不調な時には更新が遅くなる時があるかもしれませんが、負けないように頑張って参りますので、どうか引き続き応援よろしくお願いいたします。



そして、読んでくださっている皆さんも、体調にはお気をつけてください。



ブクマをしてくださっている七十七人の方々(前回から四人増)!

評価をしてくださっている十六人の方々(前回から一人増)!

皆さんの応援のおかげで、この作品の総合評価は310ptに到達しました!

本当にありがとうございます!



──さて、油断はしません!声を出していきます!頑張っていきましょう!!


「目指せ書籍化っ!尚且つ、目指せ先ずは総合500pt(残り190pt)!300pt超えましたよ!嬉しいです!」


今後も『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、是非とも宜しくお願いします!

更新情報等はTwitterで確認できますので、良かったらそちらもご利用ください。

フォロー等は出来る時で構いませんので、気が向いた時にお願いします。

@tetekoko_ns

twitter.com/tetekoko_ns

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ロムさんでも全容が把握しきれない「原初」… まだ他に何かありそう [一言] むしろ今までの更新ペースが異常なくらいだったんで、安全第一、テテココさんのペースで書いてください(*^^*)…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ