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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
258/790

第258話 薄日。

2020・08・03、加筆修正。








 枝の間から空の青さがよく見えた。

 縦に伸びた大きな雲が空を二つに割っているかのように、果てしなく長く続いている。



 私は大樹の枝上に身を預けて寝ころび、お腹の上に乗っているバウの頭をグシグシと撫でながら、ボーっとその光景を眺めていた。




 大樹の森へと私達は戻って来た。

 ただ、一面の銀世界であった吹雪の大陸とは違って、ここら辺は太陽の光が温かに降り注ぎ、全てが青々とし彩りに溢れている。



 【転移】で一気に戻って来たのは良いのだけれど、ここで少し問題が起きたのだ。

 慣れればそうではないのだけれど、こういう急激な環境の変化は意外と身体に響くのである。

 

 特に、久々の日差しの季節の日の光の照り返しは、まだまだ赤子と言っていいバウにとっては幾分刺激が強かったらしく、現在バウ本人は少しだけご機嫌斜めであった。


 独りにすると『ばうーーーっ』と地面をジタバタとしながらいつまでも唸っているので、今はこうしてお腹の上でバウを宥めつつ、一緒にお昼寝をしている真っ最中なのである。……大丈夫だ。安心しなさい。



 バウの真白でプニプニした肌が所々少し赤みを帯びている所を視ると、どうやらまだエアや他の羽トカゲ達の様に環境適応能力にそこまで高いわけではないという事が分かる。

 強靭なドラゴンと言えども赤子の時には弱点が沢山あるのは当然の事であり、ご飯の問題と同様に周りが確りと気を配っていなければいけない話なのだ。



 何度回復をかけてもヒリヒリする感じが止まらないそうなので、私は魔法の使い方を色々と変えながら、『じわ~っ』とゆっくり内部から回復が掛かる様に施し、バウを癒しつつ首後ろをポンポンして眠りを促していった。




 一方、エアの方は、大樹の森で開かれていたイベントのお片付けをしながら楽しそうに笑っている。

 そんなエアの周りに居るのは精霊達で、皆エアと一緒に片付けのお手伝いをしてくれている様であった。


 エアは未だ精霊達の姿をちゃんと視る事は出来ないけれど、精霊達から途切れ途切れに聞こえる時があった『囁き』とは違い、今では自分から魔力に気持ちを乗せて伝え合う事が少しだけ出来る様になっていた。

 それを使ってエアは、未だ少しカタコトでゆっくりとだが精霊達との会話を好きな様に楽しんでいる。

 精霊達もエアと心を通わせられる事を凄く嬉しそうにしていた。



 因みに、エアが今やっている事を少し説明するとするならば『おはよう』という一言を伝えるのに、『朝』『皆』『元気』みたいな純粋な想いを、魔力で遠回しに伝えている感じである。


 思うが儘に言葉そのものを伝える事はまだまだ難しいらしく。受け取り手である精霊達がそれを解読して意味を理解するまで時間を少し要するという、時間差が出来てしまってはいるが、これでもちゃんとした会話であった。



 まだ随分と不器用でのんびりした会話だが、相手の答えを待つその時間さえも楽しいみたいで、エア達は終始ニコニコと微笑んでいる。




 そして、エア達の集まり以外にも、周辺には似た様な集まりが所々に見えた。

 『大樹の森』で開かれた各種のイベントは既にもう無事全部終わった後であるが、その名残として反省会と次回の対策を練っている精霊達がかなり多いのだ。



 ……因みに、明日には私達はまた学園へと約束通りに戻る予定であるが、今回のイベントは前回以上に楽しかったらしく、皆大絶賛かつ大騒ぎをしていた。

 そうして集まっている精霊達の殆ども、その興奮が冷めやらぬ感じなので、まだまだ暫くは語り合いたくて居残るつもりらしい。……なんとも微笑ましい話だと私は思った。




 前回は各属性毎でチームを分けたのだが、今回は全チームを一度バラバラにして、私が独断と偏見で力関係を魔力で測り、ほぼほぼ総合力が均等になるようにチームを振り分け直し、即席で『混合チーム戦』を開催する事になったのであった。



 そうして、各種属性の仲間がいる事で、彼らの魔法戦は更に多彩になり、チーム毎に戦略性溢れる激しい戦いが幾つも繰り広げられていた。


 そのチームごとに順位と勝利ポイントも決めて、何戦も繰り返し、総合的にポイントが多いチームが優勝という風にしたら、まさに熱狂と言えるほどの盛り上がりを見せたのである。


 中には熱中し過ぎてしまい、周りが見えておらず相手だけではなく味方を巻き込んでケガをさせてしまった者達もいたけれど、あまりにも楽しかったのか、回復を施すと直ぐまた魔法戦へと皆笑顔で戻って行ったので、どれだけ彼らがそれに熱狂していたのかが分かって貰えるだろうか。



 魔法戦で使う魔法も、私が作った魔力の滝などの『魔力回復所』があるので、彼らは好きに補給できるし、大樹の森はそもそも私の魔力でかなり丈夫になってもいる為、少しくらいは無茶をしても防御は間に合うし復旧も楽に出来たので、彼らは思いっきり楽しんでいた。



 また、他の種目でも目新しいのは幾つか用意してあり、大樹の森に密かにお宝を設置して、それを冒険者の様に精霊達が皆で集めて貰って、そのポイントを競って貰ったりするのも大変に人気であった。

 純粋な戦いが苦手な者達には、こちらの方がかなり人気であったと思う。



 ただ、今回のこれらは『大運動会イベント』等とは別であり、未だお試し開催した様なものなので、本番は実りの季節にある事を精霊達は悟っているらしく、皆の顔つきからはどことなく本気具合が高まっていっている様に感じた。



 有難い事に、皆本気で取り組んでくれるらしい。

 そんな彼らの本気具合を感じて、実りの季節になったらもっと忙しくなるだろうと私は察した。


 だが、彼らがそうして楽しそうにしてくれる姿を見れるだけで、私も充分に嬉しく思う。

 今回はお肌のヒリヒリが気になり過ぎて参加できなかったが、『次はバウも参加するか?』と、私はお腹に居るバウへと尋ねようとした。



 だが、ヒリヒリして上手く眠れずにいた筈のバウも気づけばようやく安心して眠る事が出来たらしく、いつの間にか『くーくー』と静かに寝息を立てていたので、私は口を開かず噤んだ。……ゆっくりとおやすみ。



 ──そうして、眠りについたバウを撫でながらいると、木の上に居る私へと向かって、下からエアや精霊達が手を振ったり笑いながら手招いて呼んで来るのが視えたので、私はバウを起こさないよう大事に抱っこしながら、大樹からぴょんと飛んで魔法でゆっくりと落ちていく。



 その際、大樹から見える綺麗な景色と、笑顔で手を振るエアや精霊達、寝ながらも『ガシッ!』としがみ付いて来るバウの温かさ、そんな色々の大切さを改めて感じ、私は内心で微笑みを浮かべるのであった。






またのお越しをお待ちしております。

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