表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
249/790

第249話 奇縁。





「それはもしや、『ドラゴンの鱗』ではありませんか?」


「いや、もっと正確に言うのならば──」


「──あなたには聞いていません」


「…………」



 この短時間で、私は随分と学長先生に嫌われた様である。



 ……だがそんな私を見て、隣に居るエアは私のローブをクイクイっと引くと、にっこりと微笑んでくれた。

 どうやらその表情を読むに『上手くいって良かったね』と伝えようとしてくれているのが分かる。

 きっとエアから見たら、私が学長の怒りの矛先を元講師の彼女から自分に変えるために態と話しかけたように見えたのだろう。


 だが、実際には仲良く間を取り持つつもりで話しかけて失敗しただけなので、私としては少しだけ微妙な心持ちになった。……ただまあ、エアのその優しさだけは大切に感じておく。ありがとう。



「はい、学長のおっしゃる通りです。これはドラゴンの鱗を切り出したものになります」


「やはり、そうですか……それにこの色は、まさか水竜の物ですか?」


「はいっ」


「なるほど。これは大変に貴重な物ですね。……ですが、どうしてこれを見せたかったのですか?『新たな発見』とは?」


「はい。それなんですが、どうやらこの鱗、調べた所によると魔法をほぼほぼ弾き消す高い性質を帯びている事が分かりました」


「っ!!……なるほど。つまりはこれを更に研究する事で、我らが学園が誇る『マジックジャマ―』と『マジックキャンセラー』の問題部分の解決に光明が差すのではないかと?」


「はい。ご想像の通りです」



 ……なんか、どこかで聞いたことがある言葉が出てきた。

 凄くジェネレーションギャップを感じる。

 良くわからないが、どうやらここで作られている何かであったらしい。



「……確かに、ここ数年進展の無かったあれらにとって、これはかなりの朗報となりそうですね」



 学長は、彼女の話を聞いて嬉しそうな相槌を打っていた。

 もうすっかりと彼女と話をする分には問題が無い所まで機嫌が直っている様に見える。

 このままいけば話も上手くまとまりそうだ。



「それで、こちらに居るロムさんとエアさん達は、この水竜を仕留めた冒険者さん達でして、今回の素材提供にも協力をしてくださった方々なんです」



「……なるほど。そちらの方々が一体なんでこの場所まで貴方と一緒に来られたのかと思えば、そう言う繋がりでしたか」



 学長は私達の方向をチラッとだけ見ると、漸く何かを納得できたらしく、少しだけ息をついた。

 どうやら最初から、私達と彼女の関係性が見えてこず、かなり警戒していたようである。

 ……もしかしたら、最初から学長が重い空気だったのは私達の存在が原因の一端として大きかったのかもしれない。もしそうだとしたら大変に申し訳ない事をしたと思う。



「では、先ほどあった契約とかの話も、その協力関係に理由があるのですか?」

 

「はい、そうなんです。……海竜を倒す程の冒険者の方々と言う事で、お二人の魔法技術を少し拝見して、私はその技術が大変に高いと判断しました。なのでそれを是非とも学園の皆にも見て欲しいと思い、ロムさん達にも相談してみたところロムさん達もそれを快く引き受けてくださったんです」



 元講師である彼女は私達がここにいる理由を一生懸命学長へと語ってくれた。

 そしてここへと来た目的も本来のものとは多少違うが、嘘にならない範囲で上手く説明してくれる。

 現状だと、私達に対する説明は凄腕の魔法使いのそれであるが、私達が本来ここへと来たのは『お裁縫』の魔法を見せるためなのだ。



 ……彼女も中々の策士らしい。

 学長から許可だけ取れれば後は勝手にやってしまおうと思っているのだろう。

 私は余計な事を話してボロを出さない様に、ひたすらに黙っておいた。……エアもバウも『シー』だぞ。

 


「なるほど。今度こそ、ちゃんと聞きましたから、話は確りと理解しました」



 すると、学長は何度も頷きながら、そんな発言をしてくる。

 なんか微妙に棘を感じるのは私だけだろうか。


 ……だが、そう思った直後、そんな予想は間違いではなかったらしく、学長はいきなりニヤリとした笑みを浮かべると、突然こう言って来たのである。



「それでは、私も一肌脱いで協力しましょう」


「……えっ」



 当然、彼女はその発言に固まった。



「当然です。これだけ素晴らしい成果を持ってきた上に、その成果を直接狩ってきた冒険者さんまで態々いらして下さったのですから、歓迎しない訳がありません。学長である私が協力してはいけないという訳も無いですよね。ですから、是非ともその海竜を倒したと、ほざく……コホン。おっと失礼、言い間違えました。海竜を倒したというその実力を、わたしとの『魔法戦』で見せて頂ければと思いまして……」



 学長は、今までにない笑顔をわたしへと向けてロックオンしてくる。

 その表情からは『その顔面にパンチさせろ』という禍々しい気配を感じた。



「──どうです?良い考えでしょう?」







またのお越しをお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ