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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第246話 芍薬。



「おっきいねー」



 『土ハウス』の前に浮かべたのは、近場で見ると巨大な壁の如き威容の『氷竜亀』の身体である。

 そんな巨大な羽トカゲを見上げて、エアは驚きや喜びより前に、素直に感心していた。


 『こんなのを倒したんだ!やっぱりロムは凄いなーっ!』と、自然と私の事を褒めているのである。

 するとだ、私は意図していなかった反応が返って来てしまったものだから、少し恥ずかしくなってしまった。……自分では分からないけれど、少し顔には赤みが差しているのではないだろうか。



 当然、そんな私の顔の変化を見極める事にかけては世界で一番の目利きをしているエアであるからして、『ん?なんだ?なんだ?』と私の顔を下から覗き込んできた。

 だが、ただで隙を晒す様な私ではなく、そんなエアからサッと顔を逸らすと、私は自然と顔が落ち着くまで時間を稼ぐ事にする。



 ……ただ、そんな私の異変を察知したエアは、そんな私の逸らした顔を見ようと、全力で素早く回り込んでは覗き込もうとして来た。……や、やめなさい。そんな事で『天元』を使って風の魔素を通すのは卑怯だ。速度を上げるんじゃない。



 エア的にも何かがおかしい事と、面白そうな雰囲気を敏感に感じ取ったのだろう。

 氷竜亀の事では全然喜んでは貰えなかったが、エアは『そんな風にロムが顔を逸らすのはおかしい。なんで逃げてるの?どうしたの?どうしたの?』と言って、このやり取りそのものを無邪気に楽しんで笑みを浮かべるのであった。



「もぉーっ!ロムのけちーっ!」



 結局、私は顔を逸らし続けて、今ではスンっとした表情に戻っている。……まったく。危ない危ない。

 急にエアがなんだか良くわからない抗議をしてくるものの、『さて、何のことだかわからないな』と私は白を切って、エアの頭を二度ほどポンポンとした。

 するとエアは、少しだけ膨みかけていた頬が『ぷしゅーっ』と萎んで、ただただ私を見上げてくる。



 その時のエアの視線はまた少し複雑で、まだ抗議熱がこもっているのか今までに見た事がない表情をしていた。

 しかしながら、それよりも今はエアの学びにして欲しいものが目の前にあるので、私はそちらへとエアの興味を促していく。……ほらほら、もう私の事は良いから、こっちをよく見て覚えておいて欲しい。姿や感覚や魔力の気配などをちゃんとな。



「……うん。分かったっ。また今度ね?」



 エアはどことなく残念そうにしながらも、そう言ってまた元気に『氷竜亀』の観察へと素直に戻っていった。……今度?

 まあ、それはさて置き、こいつの体長はだいたい百五十メートル位はあるだろうか。中々に立派な体躯をしている。


 表面は暗青色で硬質的な鱗が日の光でキラキラと反射して目にとても眩しい。……だが、とても綺麗だった。



「……あの、これはいったい何ですか?」


「ばぅ……?」



 そうしていると、遅ればせながら外へと顔を出してきた二人──のんびり糸目のプニプニドラゴンのバウと、元講師の彼女──は、何があったのかが分からずに首を傾げており、突然海の上にこんな山の様な存在がある事に驚いていた。……そうそう。こういう反応を予想していたのだ。



 私はそんな反応に内心でニマニマとしながらも、徐に『氷竜亀』の身体へと近づいていき、軽く鱗を小突いたりしてみたが──コツンッ!、という凄く硬い響きが返って来て、改めてこれの恐ろしさを想うのだった。

 魔法以外では私にはどう足掻いても傷つけられない相手だろう。……まったく羽トカゲ共の恐ろしさは本当に油断ならないと再認識する。



 ──ゴヅッ!!



 そして、私が小突いていたのを見てか、どうやらエアも一発パンチをしてみたようで、凄く鈍い金属音の様な響きが聞こえて来た。

 だが、そのあまりの固さに流石のエアも拳を痛めたらしく、私を見て少し恥ずかしそうに微笑むとすぐさま【回復魔法】を使っている。……まあ、試してみたくなる気持ちは分からなくもない。



 そして、そんなエアの元に、元講師の彼女は近寄って行き、これが何なのかをエアから聞くと『ドラゴンなのッ!?』と驚きながら、急に興奮して色々と調べ始めだしていた。

 普段はここまで近くで見れないだろうし、好奇心が刺激されたと見える。

 殴ったエアの手も観察したり、興味深そうに色々と質問もしていた。



「ばう~」



 ……だが、一人我関せずなのはバウであった。全くの興味ゼロである。

 そんな事より『お腹が空いたよ~』と言いながら、パタパタと私の背中に乗って来た。……そうだな、そっちの方が重要だ。



 なので私は、すぐさま『お食事魔力』を作ってあげると、バウへとパクっと食べさせる。

 バウは一口でそれを食べると『ばう~~~っ』と背中で悶えていた。……とても美味しかったらしい。私も戦闘後なので、普段よりも魔力の活きと言うか、新鮮さと濃厚さが違っていたのかもしれない。



 そうして、確りと食べ終わった後はバウをさすってゲップをさせてやり、また背中に乗せると、バウはそのまま私の背中にガシッとしがみ付いて、ウトウトとしだした。

 私はそんなプニプニドラゴンの様子に微笑ましさを感じる。……私の背中は眠り辛くないのかね?まあ、ぐっすりと眠れるのなら良いのだが。ゆっくりと健やかに休んで欲しい。



 そうして、私が家の周りを何周か歩きながら、バウがスヤスヤと心地よさそうに眠れるように揺らしていると、エアと元講師の彼女が私の方をジッと眺めているのが目に入った。……ん?どうしたのかな。こちらをぼーっと見て。お腹でも空いたのだろうか。



 そう言えば、『確かにエア達もそろそろご飯を食べたい時間かもしれない』と思った私は、そんな二人にも声を掛けることにした。……さあ、二人とも、一旦食事にしよう。



 氷竜亀は一旦また収納へとしまって、私は先に土ハウスへと入っていく。

 すると、二人ともハッとして気が付くと、まだもう少し調べたい事や試しい事があったらしく、『まだもうちょっとー!』と残念そうな声をあげたのだが、私が何かに使おうかと思って縦横一メートルくらいで切り取っていた奴の鱗を、浄化をかけてから一枚ずつ渡して『これを好きにしていいから。おいで』と言うと、二人は嬉しそうにして素直に家へと入って来た。



 鱗は浄化をかけるとそこそこの光沢も出てきて、もっと綺麗な暗青色になった。

 まるで二人の手の中には、どこかから切り取られた夜空がそのまま広がっている様にも見える。



 そんな夜空の綺麗さに目を惹かれる二人へと軽く注意を促しながらも賑やかな食事を取る私達は、今日も『土ハウス』と一緒に、のんびりと吹雪の大陸へと向かって海上を進むのであった。




またのお越しをお待ちしております。

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