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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
240/790

第240話 懸命。




「……前言撤回は可能だろうか」



 魔法を遊具として考えている彼女から『魔法講師になって欲しい』と言われた私は、そんな即答をしていた。ほぼ無意識に近い受け答えである。

 私がそう言う場をあまりにも好んでいないので、身体が勝手に反応してしまったようだ。



「……でもロム、一回言ってからだと、カッコ悪いよ?」



 だが、自分でも流石にそれは良くないだろうと思っていると、当然の如くエアにも言われてしまった。

 無意識での言葉であるとは言え、深く反省である。



「……そうだな。すまない。こちらから言い出した事だ。引き受けさせて欲しい」


「わあっ!ありがとうございますっ!嬉しい。それに、それだけの素晴らしい魔法技術をお持ちなんですから、もっと自慢してください!それは必ず皆にいい影響を与えるとわたしは思いますっ!」



 私が引き受けると言った瞬間から、彼女の瞳はお裁縫をする時の私のモノクルよりもキラーンと光り輝いている。


 自慢か……それだけで済めば、確かにそうなのだろう。

 だが、それは例えばの話、披露するのは一度だけでも良いだろうかと私は彼女へと尋ねてみた。

 正直言って、何度も何度も、自分の力を見せびらかすと言うのは、私は避けたい。



「自慢するのが嫌なのですか?」


「いや、別の問題を重視しているが故にだ」



 私は冒険者として、自らの力の吹聴するのがあまり好きでは無い。

 そして、吹聴した事が敵対する者達に知られ、それが原因となり対策されて隙を突かれるという事態を招きたくないと考える。


 長らく冒険者として生きて来た私には、それが決して起こらないわけではない事をよく思い知っていた。ここは決して軽んじていい部分ではないのである。



 だから、彼女には披露する事は構わないが、その回数だけは配慮して貰いたいと伝えた。

 内容はあの『お裁縫』で使った魔法で良ければ、それこそ私の全力をもって行う事を魔法使いとしてここで誓う。



「あー、なるほど……そう言う訳が……。うーん、そうですね。それじゃあ確かに、何度も講師として魔法技術を披露して貰うと言うのは控えましょう……うん。いきなり向こうでも受け入れてくれるかもわかりませんし、一度だけ皆の前で衝撃的な披露をして貰って、それで皆の曇った考え方に良い刺激を与えて、みんなに新たなる風を入れましょう。……もし、それで皆の考えが変わらないようであれば、その時はもう完全に見切りをつけて、わたしは自分だけの道を歩んで行こうと今決めました」



 私達が互いに覚悟を持って一時的なりとも完全な協力関係を構築する事が決まった瞬間である。

 すると彼女は、私に講師になって貰う代わりに、何の対価を払えば良いのかを尋ねて来た。



「金銭で良いのならば、わたしの残りの全財産だろうとお渡しできます。何か魔法の実験に付き合えと言うのならば、この身ならば幾らでも捧げましょう」



 それは、この取引を絶対に逃げようのない確実なものにする為、彼女が私と完全な契約を結びたいという気持ちである事を示しているのは言うに及ばずであった。


 言葉だけの契約でも本来は十分な筈だが、それでは不十分であると彼女は考えたのである。

 私の魔力が彼女よりも強いために、もしもの時は私が好きに逃げられる事をよく理解したうえでの発言であった。


 だから、逃げようのない何かを基軸に据えて、より強力な契約が欲しいと彼女は欲している。

 それだけの本気具合がそこにはあるのだと、強い思いが伝わって来た。



「それじゃ、わたしがその契約の軸になるよっ!ねっロム、いいでしょうっ?」



 そして、驚くべきことに私達の話を傍で聞いていたエアは、突然そんな事を言ってくる。

 その雰囲気から、決して冗談の類ではない事を私は理解したが、何もエアがその役を務める必要はないだろうと思った。……いや、正確に言うのならば、ほんの少しでもエアの危険になるような行為をさせたくないという思いが胸に広がったのである。



「……なるほど。確かにそれならば、あなた方は絶対にこの契約を遵守してくれますねっ!」



 そして、彼女もエアの意図が分かった様でにっこりとした微笑みを浮かべている。

 私がエアを大事に想っている事を理解しているが故の微笑みだが、それは決して嫌らしいものではなく、『それなら大丈夫だ!』という安堵を感じている素直な笑みであった。



 ──さて、既に大きな契約を結ばずとも、私の言葉から自然に発する魔力によって、不可避の契約へとエアは縛られてしまった。



 もし私がここで逃げでもすれば、その途端にエアの首が弾け飛ぶ。

 そんな事は絶対にさせないとは言え、そうなるかもしれないと言う可能性がほんの少しでも存在する状況に心がざわつくのを感じる。……だが大丈夫だ。一度だけ力を見せる。ただそれだけである。




 ……その後、私達は彼女が逃げ出す前まで講師をしていたという学園へと向かって一緒に旅をする事した。

 向かう先は今居る大陸の海を越えた先にあるという『吹雪の大陸』である。





またのお越しをお待ちしております。




祝240話到達!


『10話毎の定期報告!』

皆さん、いつも『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を読んでくれてありがとうございます!



本作品はもう少しで文字数80万文字に達しようとしております。

100万文字も段々と見えてきましたね。

油断せずにこのまま突き進めば、そこにも行けるかもしれません。

どうか、見ていてください。



応援・ブクマ・評価・感想・誤字報告等々、本当にありがとうございます。

皆さんの支えや、励ましを感じます。有難いです。

今後も着実に進んで行きますので、引き続き応援頼みます^^!



ブクマをしてくださっている六十四人の方々(前回から二人増)!評価してくださっている十三人の方々!

皆さんのおかげで、この作品は総合評価254ptに到達しました!

本当にありがとうございます。



──さて!それでは今回も、目標を見定めて確りと声に出していきたいと思います!


「目指せ書籍化っ!尚且つ、目指せ先ずは総合500pt(残り246pt。半分を切りましたっ!)」



今後も『鬼と歩む追憶の道。』略して『おについ。』を、是非ともよろしくお願いします!

更新情報等はTwitterで確認できますので、良かったらそちらもご利用ください。

フォロー等は出来る時で構いませんので、気が向いた時にお願いします。

@tetekoko_ns

twitter.com/tetekoko_ns



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― 新着の感想 ―
[気になる点] エアが基軸になろうと関わってくる点。ロムとエアに対して全く利益がないにも関わらず契約する意味が分からない。 相手側も対等な何かを差し出す必要があるはず。そうでなければロムの方が魔法使い…
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