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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
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第24話 穏。

2023・06・14、本文微修正。




 昨日、花畑に寝っ転がっていて気づいたことがある。

 家の周辺のとある一角にある野菜を育成している畑に、暖かい季節のお野菜がかなり良い感じで実っていた。



「…………」



 基本的に私は、野菜の育成にそこまで詳しくはない。だから育てる時には精霊達に助言を貰いながらやる事が多い。自然に関わるものなら彼らも積極的に手を貸してくれるので、いつも有難い事に誰かしらに助けて貰っているのだ。


 因みに、彼ら精霊達にとってもここは憩いの場になっているらしく、手を貸す事に否はないらしい。寧ろ楽しんでくれているそうだ。ここで目一杯遊んだり、普段自粛している能力を思いっきり解放できるのが嬉しいのだとか。


 そんな彼らの様子を見て、私はこの場所を精霊達が尊重してくれているのだとよくわかった。



「…………」



 だからまあ、要は何が言いたいのかと言うと……。


 出来上がった野菜達が今ポコポコと勝手に収穫されており、今エアの周りでわっしょいわっしょいと大量に踊り狂っているのだけれども、それらも全ては彼らの好意である事が私には一目でわかったのだ。決してやりたい放題をしている訳ではないのだと。


 寧ろ、エアがいっぱい食べる事を知ったので、彼らも今年のお野菜育成にはかなり力を入れたのだと。どれも自信作ばかりなのだと、張り切ってくれたおかげなのである。



 これまでは小食の私しかいなかった為に温存していた力も、ここぞとばかりにエアの為本気で作りに作りまくっていたらしい。……あー君達、でもあまり無理はしない様にな。



 ──えっ?昨日どこからか思わぬ魔力のシャワーが降り注いできたので、それを受け取って逆にみんな元気いっぱいだって?……はて、それはいったいどこの誰の仕業なんだろうか。私にはよく分からない。本当だ。隠れてアンチエイジングなんて、これっぽっちもしていない。



「わあぁぁぁっ!ありがとうッ!!」



 私がそんな風に精霊達と話をしている横で、エアはお野菜に半分埋もれながらにっこにこで食べていた。今もキュウリに似たお野菜をシャクシャクと美味しそうに食べている。エアはお肉がとても好きだが、お野菜も凄く好きだった。彼女に好き嫌いは特に無いらしい。


 『お料理』が出来ない私のただ毟っただけのサラダも『美味しい!美味しい!』と食べてくれた彼女だ、精霊達の本気の野菜が旨くない訳が無いのだろう。



 そして、お野菜達もとい精霊達も何気にエアへの餌付けに興味があったのか、今みんな列を作っては一人ずつ食べさせて嬉しそうにまた列へと並んでいる。

 まだ精霊達の姿をエアは見えていないので、きっと彼女の視点からは『お野菜達が自分から食べられに列を成している』様に見えている事だろう。



 それもこのお野菜たち(精霊達)はなんと自分から食べられやすいようにカットされた状態でやってくる上に、勝手にエアの口の中まで『こんにちはー!』と入って来てくれるのである。君達、甘やかしすぎではないだろうか?



 ──えっ?普段の私もあんな感じだって?……いや、ちょっと、何を言っているのかわかりかねる。私の教育はスパルタだぞ。見て分からないか?いや、そんな事は感じた覚えが無い。いや、いやいやいや、いやいやいやいや。



「…………」



 第三者から見ると、精霊達のエアへの愛しっぷりが半端ないように見えはするのだろうが、これは普段から『喜びの歌』も一緒に歌っているし、良き関係を築けているからこそなのだろう。

 精霊達は普段は自然と共に存在していて、そこから色々と眺めている。だからちゃんと彼らは視ている訳だ。


 ただ単に精霊の力を欲しているだけの欲深き者が、いくら取り繕って丁寧に精霊達に呼びかけようとも、一緒に居たいと思える者じゃない限り、彼らがこうして積極的に接してくれることはほぼないのだと。



「ふぁーっ!美味しかったぁーっ!」



 エア完食。あれだけあったお野菜達の列は完全に消滅し、朝一番の取れたて祭りはこうして終了した……。


 『あれだけ実ったのにっ!?』『ほんとに全部食べちゃったっ!』『他にはもうないっ!』



 ……ただ、エアの目には見えてないけれども、実は精霊達、右往左往していた。まさか本当になくなるとは思っていなかったのだろう。エアの食欲に驚きを隠せないようだ。



「…………」



 ただ、そこで言いようのない使命感にでも駆られたのか、不安になってまだまだ『収穫時期ではない』ものまで収穫しようとする者もでたので……私はそこで首を横に振る事にした。



 『何事も程々でいいのだ』と、そう伝えたかった。すると、彼らもそれをわかってくれたのだろう。直ぐに落ち着いて笑って納得してくれたのである。


 誰よりも『その事』を知っている彼らだ。それを成し続ける事の難しさも含め『今』と言う尊さをよく理解しているからこそ、それを無理矢理崩してまで手にしようとは誰も考えなかった。





 気持ち良い風が通る花畑の中、私達は暫く、そこで食後の一時を楽しんだ。

 エアは私の隣で『天元』に風の魔素を通そうと頑張って集中している。この気持ちいい風と一緒に、空を飛びたいと考えているのだろうか。


 一方私の方は、周りにいる精霊達から次回のお祭り開催時期について積極的に話しかけられていた。いやいや、君達、気が早いぞ。



 ──えっ?情報によると、どこぞの白銀耳長族(エルフ)がアンチエイジングにハマっているらしいから大丈夫だと?魔力のシャワーが連日続きそうだから準備を怠るな?今が好機、直近の開催でも構わないだって?……いやいやいや、多く無いからっ、魔力シャワーも今日までだからっ。まったく、揃いも揃って耳が早い。



 だがおかしいな。あれだけ隠していたのだが、どこから漏れたのだろうか。

 ……さては、隠れて覗き見していたな?



「…………」



 でもまあ、結局はエアも喜ぶだろうし、偶にやるなら大歓迎だと言う事で話はまとまったのだ。

 魔力シャワーも一日一時間までなら、君達の好きな場所に放出するのも吝かではない。なので、何卒エアにはアンチエイジングの件は秘密で頼む(小声)。




またのお越しをお待ちしております。

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