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鬼と歩む追憶の道。  作者: テテココ
208/790

第208話 着実。

2020・07・09。本文全修正。そして加筆。


内容はほぼ変わりませんが、ほぼ全部を書き直す事にしました。

修正前のものを読んでしまった方々は申し訳ございません。


修正前のを読んでしまって、修正後のを読まれる方へ。

修正前の方は、一部次話の内容に触れる部分がございましたが、修正後にはその部分がありません。その点をご留意頂けますと幸いです。





 私は『白銀の館』に『第三の大樹の森』を作りたいと考えた。



 そうする事で得られる利点は幾つかある。



 まず一つ目の利点が、私が新たに得た力とでも呼べばいいのか、『ドッペルオーブ』の新しい活用法の幅が広がり、ただ単に魔力を溜めて置けると言う使用方法から、このオーブを大樹の核として使用する事により、自分の新たなる視点の代わりとして大樹を起点に周辺を視る事が出来る様になったのである。



 それによって私は遠距離に居ながらも、大陸を超えて魔法を使う事が出来ようにもなった。

 これさえあれば、この屋敷の者達に何かあったとしても、私は直ぐに魔法で彼らを守ったり手助けしたりする事が出来る様になる。



 次に二つ目の利点が、街中に大樹の森の拠点を作る事で、街にいる精霊達が自由に行き来できるようになる事だ。

 これによって、今までは中々街外へと行けなかった精霊達が、大樹を通して他の土地へと赴く事が出来るようになる。



 因みに、街中の精霊達があまり余所へと行けないのは、自然が少なく綿毛の精霊達ばかりなので、皆に力の余力があまり無いからだ。

 だから、こうして街中に一つ、拠点となる大樹がある事で、癒され喜んでくれる精霊達は数多く増えるだろう。



 そして、三つ目の利点が、屋敷の中の一室を【空間拡張】で広げて作ったその『大樹の森部屋』とでも呼べる部屋は、屋敷の皆にとっても楽しい空間となるだろう。大きな泉があると思う存分泳げるだろうし、炎の滝などは視覚的にもそこそこ楽しむ事が出来る。



 また、スペースをかなり余裕をもって作っているので、屋敷の皆が思い思いに運動や遊びにも使う事が出来る上に、畑作業が出来るスペースも大きく増やしてあった。

 前回の精霊達の反応を見て、最初から大きめに確保する事にした為、屋敷の者達も好きな時にお野菜を育てることができるようになっているのである。



 それに、そのお野菜を育てる際は精霊達が密かにフォローもしてくれると思うので、普通に育てるよりもそのお野菜はかなり美味しくなるだろうし、育てるのもかなり楽になるだろうと思われる。



 ここまで聞けば、良い事尽くしなのではないだろうか。


 屋敷の者達にも精霊達にも、きっとどちらにとっても良い結果に繋がる筈の提案である。

 

 私はこの場所が、精霊と人、そのどちらにとっても居心地に良い空間となって欲しいと心から思った。



 小さいけれど、ここは『里』だ。

 私にとっては此処こそが、再び見つけた大事な大事な『里』なのである。



 だから、ここに住む人々も精霊達も皆に幸せになって貰えるように、そんな彼ら全員を守れるようにと、最大限出来る事をしたいと私は思った。




 ──という訳で、先ず私はこの屋敷に住む皆に『この屋敷の中に一部屋、木と森の部屋を作りたいのだが……』と、作っても良いかの許可を問うてみる。……もちろん、嫌と言われたら素直に諦める心積もりではあった。彼らに迷惑を掛けたいわけではない。




「もちろんです。貴方のしてくださることに、わたしどもに否やはございません」



 と、老執事のその即答に、周りに居るエルフの青年達や女中さん、お母さん方、お父さん方、子供達、皆が直ぐに笑顔で同意の頷きを返してくれた。



 あまりにも突飛な話ではあるので、普通は『木と森の部屋とはなんですか?屋敷の中に増やすのですか?』と皆が首を傾げて困惑するのではと不安に思っても仕方がないとは思うのだが、屋敷の皆は『何か大事な意味があるんですね?』と最初から私達にする事に理解を示してくれたのである。



 『貴方方のしてくださる行動にはきっと何かしらの意味がある筈ですから、それを私達は信じます』と、彼らは私を純粋に想い、信頼してくれた。……その気持ちのなんと有難い事だろう。



 もちろん、そんな事を言われたのならば、私が彼らの信頼に応えるために全力を尽くすのは極々当然な話だと言う訳で、皆にとっても最高に居心地が良い空間となる様に絶対作ってみせようと思った。


 隣に居るエアやバウへと顔を向けると、二人も同じ気持ちだったようで、笑顔で頷き返してくれる。二人も全力で協力してくれるらしい。……よし、皆で頑張っていこう。





 ──と、それでは先ず、羊飼いの少年のお家に施した時と同じ様に、適当な部屋の一つを私は【空間拡張】の魔法を使ってかなり大きめに広げた。


 比較するのならば、この一部屋だけで第二の大樹の森以上の広さがあるだろう。



 そして、広げた部屋の中へと【土魔法】で地面の代わりとなる広大な大地を作りつつ、それと同時に【空間魔法】の収納にしまっていた木々を次々と出していき、屋敷の中に大きな森を一気に作って行った。



 頼もしいのは、流石に二度目と言う事もあってエアやバウの手際がかなり良くなっている事である。二人とも実りの季節の間の魔法練習の成果もかなり出ているようで、安心して見ていられた。




 そして、私達は次々と、『第三の大樹の森』に『第二の大樹の森』と同じく『大きな泉』や『炎の滝』と言った環境を作っていき、その大きな泉の中心はまた浮島状態にして、その中心にはちゃんと白い苗木を植えておく。これでとりあえずの形は出来上がっただろう。



 後はまた、その白い苗木に『ドッペルオーブ』を仕込みつつ、その他の環境に乱れがない様にと色々と調整をすれば完成だ。



 ……因みにここは、屋敷の皆に、泉や滝がいらないと言われた場合には、直ぐに作り直せるようにもなっている。

 その利点は作っている途中で気づいたもので、この『第三の大樹の森』の素晴らしい部分でもあった。


 ここは周囲の環境や森への配慮をそこまで気にする必要がない分、自由に作って好きに変更できるし、そのお手入れも大変楽であると言う事に気が付いたのである。



 この『第三の大樹の森』の特徴は、木々以外がほぼ私達の魔法によって生み出されたものばかりなので、当然魔力の通りも良い。つまりは操り易いという事でもあり、途中で畑を広げたり、逆にそれを縮めたりと、いつでも直ぐに対応ができるのだ。



 今回は先を見据えて、イベント用のスペースも大きく確保できているので、ここでなら人数過多で二つの会場に精霊達を分けたりする事も考えなくていいかもしれない。

 なんにでも使える屋外のフリースペースが出来たと思えば、その利点はかなり大きいだろう。



 また、前回は戦闘スペースの狭さの問題で、実はなくなく全員では参加出来なかった『属性対抗魔法戦』も、これで次回からは少数精鋭だけではなく全員参加でも大丈夫になったのだ。次回からはきっと、かなり激しい模擬戦が繰り広げられる事になるだろう。




 だが、それだけの利点はあれど、実は欠点というのも当然あり、羊飼いの少年の家で作ったものと基本的には同じでもある為、雨が降らない事や季節の変化がない等の自然現象は起こせず、常に一定の心地良い風しか吹かないという問題が生じた。『それって問題か?』と思うかもしれないが、自然に身を置く精霊達にとっては、自然現象のある方が調子が良くなるのである。




 ……ただ、そんなこんなはあっても、今回はかなりの短時間で『第三の大樹の森』を作り上げる事が出来て、私とエアとバウは中々に満足を感じていた。


 全力で取り組んだおかげか、かなりいい出来になったと自負もしているので、エアやバウが若干のドヤ顔をしてしまうのも、これはしょうがない事だろう。


 私も表情こそ変わらないけれど、そんな二人と共に心の中では一緒に笑みを浮かべていた。




 ──だが、どうにも喜んでいるのは私達だけの様で、よく見ると私達の作業を見ていた筈の屋敷の皆は全員ポカンとし、固まった表情をしているのであった。






またのお越しをお待ちしております。

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