才能
前回の続きです。
激しい光が収まり、水晶玉が弱い光をぼんやりと放ち始めた。光の色は…赤か?
「まあ!なんてこと…」
「まさか本当に魔力があるとは…これは大変なことになるぞ…」
「私も長年メイドをやってきましたが、こんなことは初めて見ました…」
母上は絶句状態、父上は驚きと喜びが混じったような表情、エマさんは驚きのあまり目を見開いている。
あれ、俺また何かやっちゃいました?
(ふぉっふぉっふぉ。ご機嫌じゃのうカントリーボーイ)
この声は…メイクリエス様!どうして今声が?
(そろそろ説明する頃合いかと思ってのう。)
(お主の魔力は見て分かる通り赤じゃ。これは上から3番目に位置しておる。が、実際はもっとあるぞ。この世界では上から順に黄金、紫、赤、緑、青、黄、黒の順番で魔力の強さが評価されておる。黄金は基本的に王族のみに発現する色じゃ。じゃから実質紫が一番上となるのう。)
なるほど、色は属性ではなく単純な魔力の量を表していたのですね。属性はどうなるのでしょうか。
(属性は魔力測定器では当然測れん。そして、才能じゃ。1属性しか使えない者もいれば2属性や3属性、全属性を使える者もおる。)
全属性!夢がありますね。
(じゃが申し訳ない、お主が使えるのは火属性のみじゃ。)
ガビーン!そ、そんな…そんなことが…
(本当に申し訳ない。本来なら全属性を使えるようにしたかったんじゃが…上手くいかなくてのう…例のイレギュラーに関係するのやもしれん。)
おのれイレギュラーめ…必ず解決して全属性扱えるようになってやるぞ…
(あるいは男に発現する魔力の属性が火属性だけなのかもしれん)
なるほど…どちらにせよ、今使えるのは火属性のみなのでまずは火属性を極めていきたいと思います。
(うむ。わしはいつでも見守っておるからの。分からないことがあればどんどん聞きなさい。では、バイナラ)
うーん…メイクリエス様は相変わらず言葉選びが少し古いな……あっ、他の属性について聞くのを忘れてしまった。まあいいか。今は火属性だけ使えることが分かっただけで十分だな。っとそろそろみんなが我に帰りそうだ。
「本当に、こんなことがあるのね……今でも夢を見ている気分だわ……」
「ああ……」
「シャルロッテ様、お次は属性判定を行われてはどうでしょうか」
「属性判定!忘れていたわ、早速取りかかりましょう。エマ、またお願いできる?」
「かしこまりました、すぐに」
程なくして、次の機械が運ばれた。さっきの魔力測定器では両手に収まるかといった具合の大きさの水晶玉があったが、今度の機械は、握り拳ぐらいの大きさの水晶玉が6つある。
「さっそく始めましょうか。リロ、何度もごめんね、もう一回手を借りるわね」
そう言って母上は俺の手を再び握り水晶玉へと近づいた。一つ一つ翳していくようだ。
一つ目はーー光らず。
二つ目はーー光らず。
三つ目はーー赤い光を放った。
「火属性か!」
父上が喜び混じりの声を上げた。
四つ目はーー光らず。
五つ目はーー光らず。
六つ目はーー光らず。
やはり火属性のみ光ったようだ。
「火属性だけのようね…これで全属性使えるようであれば、私は意識を保つことができなかったと思うわ。」
「同感だ。逆に火属性だけで良かったという気持ちもあるくらいだ…」
「男が火属性が使えること自体も、とんでもないことだとは思います。」
「エマの言う通りね。これは…国王に報告するべきかしら…」
「とりあえず、今はリロの一歳の誕生日を祝おう。とんでもない一日になってしまったがな」
乾いた笑みをこぼしながら父上はパーティー会場へ戻っていった。
「それもそうね、エマ、申し訳ないけど片付けをお願いするわ」
「かしこまりました」
「リロ、パーティーに戻りましょう。料理が冷めてしまうわ」
それもそうだ。せっかくうちの料理人たちが腕によりをかけて作ってくれた料理、食さないわけにはいかない。今日は特別な日。しっかり楽しんでいこう。