リロ=ハーツ誕生
お久しぶりです
神様の邂逅のあと、まばゆい光に包まれたと思ったら次の瞬間、知らない天井のようなものが見えた。ようなもの、というのはまだ景色がぼんやりとしていて周りに何があるかはっきりしないからだ。どこかで見たことがあるが、赤ちゃんは生後1ヶ月ぐらいまでは視力が低いらしい。しばらく周りを見渡していると、知っている声と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「奥様、ご子息がお目覚めになられたようです」
「あら、お腹が空いたのかしら」
「いえ、見たところお腹が空いているわけではなさそうでございます。ただ単にお目覚めになられたのかと」
「そうみたいね。おはよう、私の愛しい愛しいリロ。あなたのママが来ましたよ〜」
肩まで下ろした輝くような金髪に赤い瞳をしているこの人は俺の生みの親で有るシャルロッテ=ハーツだ。隣にいるボブカットの青髪で緑色の瞳をもつメイドさんはエマさんだ。よく俺の世話をしてくれていた気がする。
「う〜〜!」
うーん、いくらなんでもまだ喋ることはできないか。こればかりは仕方ない。それに喋ることができたらおかしいしな。
「あらぁ〜!なんて元気なお返事だこと。きっと将来は素晴らしい人格を待つ立派な人になるに違いないわ」
みなさんお気づきだろう、この母親、親バカなのである。
「もちろんでございます。奥様のご子息ですから」
そしてメイドのエマさんが持ち上げるのも日常茶飯事になりつつある。っとそろそろ腹が減ってきたな。泣くか。
「ぁぅ〜…おんぎゃあ、おんぎゃあ!」
「あら、お腹が空いたのね?今用意しますからね〜。今日は私が直接あげるわ」
しまった、つい癖で泣いてしまったが思い返してみれば意識がある状態で授乳は初めてだ!ま、まずい…非常に精神衛生上よろしくない気がするぞ…
「は〜い、用意できましたよ〜」
どうする…!?耐えるしかないか…?心を無に…平穏を心に…
〜〜〜〜〜〜
おい、「で、味は?」じゃないんだよそこの君。いやまあ大変美味でしたけれども。そりゃまずいわけないよ。
「げぷ」
「あらあら、とっても満足したようね。本当にかわいらしいわ」
「では奥様、名残惜しいでしょうがそろそろ公務の方に…」
「そうねぇ、そろそろ戻らないといけないわね。エマ、あとは頼んだわ。リロをよろしくね」
「かしこまりました、奥様」
母は公務に戻るようだ。…でも普通公務って当主がやるものだよな?父は何をしているんだろうか。いや待て、そもそも父の声を聞いた覚えがないぞ…?どうしてだ?
俺は違和感を覚えながらも食事を終えた後の眠気に勝てず瞼を閉じたのであった。
早速雲行きが怪しいな…