第48章
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なぎと一緒に、片付けを手伝った。
「いいから、座ってて。」
「いや、大丈夫。」
そんなやりとりを・・・して。
一緒に台所に、立った。
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「・・・ごめん!」なぎに向かって、手を合わせる。
「・・・たけし、いいから。」
「まじで、ごめん・・・・」なぎに、申し訳なくて、頭を下げる。
飯は、ひとくちだけ。
味噌汁はやっと半分。
ハムカツは・・・なぎが作ってくれた、3種類。
全部・・・ひとくちづつしか、食えなかった。
キャベツには手も。つけらんなくて・・・・
気持ちでは食べたいと思ってんのに。
喉に・・・・喉の先に、腹ん中に、入っていかない。
いつも、飲んでもいないくせに腹いっぱいって言って、ふくれた腹をさする。
毅の事を・・・思い出す。
「・・・せっかくおまえが作ってくれたのに、」
「食べれたほうです。」
「なぎ、」
「・・・良かった、少しでも食べられて。」本当にほっとした顔をして。
可愛い笑顔を見せて、なぎが、おれを見る。
「・・・。」
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「飯の力って。凄いよな。」
「ね。」
まさに指の。・・・先から。生気がみなぎる、感じだ。
なぎが作ってくれたハムカツは。最初で最後の。・・・・そう。きっと、多分。この世で最後の。おれの食った飯になるに、違いなかった。おれは。・・・そんな気がしてた。
・・・。だからおまえ。
今日こんなこと、してくれたんだろ。・・・?・・・だからだろ?
隣にいる、なぎを見つめる。
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きゅっと。なぎが水道の蛇口のレバーを上げた。
手を可愛い、真っ白いエプロンで拭いて。
「泊まって行く?」
「・・・・え?」
「今日、泊まって行くでしょ。?」
「・・・・。おまえ。なに、言ってんの。・・・?」
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「そんな事。できる訳ないじゃん。」
「できるよ。僕が言えばできる。」
「・・・・。」
「前に。僕が聞いたの。・・・覚えてる?」
「・・・・。何が?」
「あなたの食べたいもの。お母さんの。ハムカツ。あなたの行きたいところ。それは。・・・言わなかったけど、それはきっと。・・・」
「・・・。」
「故郷の海。」
「・・・・。」
「ごめんね、ふるさとまでは。行ってあげられなかったけど。・・・・」
・・・おれは黙って。聞いていた。
「あと。あなたのしたい事。・・・言ってたよね。」
ううん、おれは首を、振る。
「言ってた。」
「・・・。」
「セックスだって。」
「・・・・・。」
「する。・・・?」
「しない。」
「どうして。・・・?」
「逆にさ。どうして。おまえはなんで、そんな事言うの。言えるの?おれに。・・・・」
少しだけ。後ろに・・・下がる。
「言わせるの?僕に。・・・?」
「・・・・・。」
「あなたが言わない、うちから。・・・?」
「なぎ、」
「たけし。」
おまえが。・・・近づく。
「キス。・・・して?」
ふるふる、とまたおれは首を、振る。
「・・・どうして?」
ちゅ。
「・・・・。」その。おれを見つめる瞳に耐え切れなくて。目をぎゅぅっと閉じて。それを目ん中に閉じ込めて、そっと、一度だけ、
なぎの顔めがけて、思い切って、キスをした。
どこに触れたのかは、わからない。・・・わからない、けど。・・・
唇、・・・以外だったのは、確か。
息をつく。
「もう、してくれないの。・・・?」
「勘弁、してくれよ頼むから。」
「・・・。」
「おれ、無理だよ。」
「大丈夫。」
「もう、頼むからなぎ。」おまえの口癖が思わず。口から出た。
「じゃぁ。キスして、・・・?」おまえが、おれに迫る。
おれは・・・思わず少しだけ、後ずさり、して。
「・・・・いま、したじゃん。・・・・」
「そうじゃなくて。僕が。して欲しいキス。」おまえが。
間近でおれを・・・見上げて、見つめる。
・・・・。めまいが。しそうだ。
おれまじで。
今日死ぬのかも。・・・しれない。
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