第46章
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「ぇ、ぃつ・・・?いつの話?」
「・・・。」
「会ったってどこで?それ最近の話・・・?」
・・・違うよな。前って・・・いま言ってたよな・・・・
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「前ってさ、」
「いいんです、少し、休んでて・・・・?」
「・・・。」なぎが、そうきっぱり言って。
おれ、は・・・・・・
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実際、何かを深く、考えようとしてるのに。
・・・実際・・・おれはやっぱり凄く。疲れてて。・・・・・
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「ごめん、・・・ごめんな。なぎ。」もう目を閉じながら、おまえが、綺麗に整えてくれた、白いベッドに、移動した途端すぐに・・・そこに、身を沈める。
・・・まるで初めて人が寝るような、多分そんな感じの真新しいベッド。
「・・・ん?」
「・・・おれ、ほんとに覚えて・・・なぃ、」・・・まじで、おまえになんて。
これまで多分・・・会ったことない。
おまえみたいなやつに、会ってたら絶対、覚えてる。でも・・・全く・・・覚えになくて、
おれが、忘れてておまえだけ、覚えてるとしたら・・・・・ぁぁ・・・・・・
・・・それ、って、・・・・
・・・。一体、どういう、事なんだよ・・・・・・・
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「いいんですよ、大した事じゃないし。」てきぱきと、なぎが小さな心電計を取り付ける。
「嘘だろ、大した。事だろ。・・・・?」
「昔あなたの故郷で、ちょっとすれ違っただけです。」
「・・・。まじで?」
「はぃ、まじで。」
・・・・故郷・・・・・?
・・・故郷って言ったら。・・・海、か波・・・・・・ふふ。なぎさがまた。嬉しそうに・・・笑った。
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それを・・・最後に。・・・その顔を、最後に見て、おれは・・・・・
どれだけ、・・・・目を閉じて、いたんだろう。
・・・。
・・・ふと、目が覚めたとき、あまりに。現実味がなくて。
一体。どこから。・・・どこまでが。夢なんだろうって。
今は、何年なんだろうって。ふとそう思った。
いつ。・・・だろうな。いつに戻りたいかな、おれ。
あまり前からじゃなくて。いい、そうだな。・・・3年前でもいい。
そしたら。言うんだ。この土地から、逃げようって。
津波の来ない、とこに逃げようって。・・・・
「・・・・・たけし。」
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やっぱりこの時も。おまえがおれの。名前を呼んで。
こっちの世界に、引き戻してくれた。
その声は優しいのに。とても。・・・力強くて。
おれは一瞬で。逃れようもない、抗えない、その力、にさ。現実に、・・・向かおうと。立ち向かおうと。・・・したんだけど。・・・・
「どうしたの?」
なぎが心配そうに、おれの顔を覗き込む。「・・・いや。」
「・・・。たけし?」
「力が全く入んねぇ。・・・。ごめん、起こして。」
「・・・・。」
「・・・よっ、」
・・・っと、なぎに寄りかかり、ながらようやく、身体を起こす。やべぇ。
「・・・やばぃ、ちょっと・・・」
「・・・。」
・・・カラダが。自分のじゃないみてぇに。
全く、自分の言う事、きかない。
なぎの目が、一瞬曇る。
充電が切れたみたいに。足の先だけはわずかに、自由に動く。
そっから上は・・・まるで錘か鉛が詰まってる、みたいに。・・・・
手の先ひとつ、動かすにも。
・・・重い。重くて、だるくて億劫で、仕方がない。
「大丈夫。」・・・なぎさが、おれの眼を見て、はっきりと言う。
「・・・。」
「大丈夫だよ、少し、体力つけましょうか。・・・」
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「え?」
「・・・・・・。」おれは、絶句した。「なにコレ。」
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「たけしが。食べたかったもの。」
「・・・どうしたの?」
「作ったの。」
「誰が?」
「僕に。・・・決まってる、でしょ。」渚が、笑って言う。
嘘だ、と思った。だってそれは。・・・・母ちゃんの。作るハムカツにまるで・・・そっくりで。
「わかった、おまえ、そっか肉屋の息子だった?」
「えぇ?」なぎが、笑う。
「・・・違うよな。」あそこの息子は一人だけだ、おれと、いっこ年上の・・・ってぇ、え?・・・なんだ?
「なにこれ?」
それはまるでおれが描いた、毅に・・・・描いた・・・・・
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その絵に・・・・そっくりで。・・・・・・
そっくりに描いた、その絵が・・・・・
そのまま、飛び出して、来たみたいで・・・・・
「・・・・・。」
・・・あれ、あの絵・・・・・あれ、おれ・・・・
どうしたっけ・・・・・
「いいから、座って。もぅ。」
なぎがあの可愛い言い方で。おれを席に促した。
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