第37章
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「・・・・。そぅなんだ、・・・・」毅が。
膝を抱えて、前を見る。・・・目、を・・・・
「・・・。」
もぅ・・・潤ませて。腕に、顔を埋めそうにするから、
「すぐ泣くなよ。泣き虫たけしめ。」そう言って、からかってやった。
「・・るさいなー、自分だってたけしじゃん。」すんすん、鼻を鳴らして。
「ふはははは、」
言い返せるだけ。
まだいいか。
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「おまえ家族は?」
「いない。」
「え?」
「いるけどいない。」
「・・・そっか。」・・・なんだよ。・・・そんな事まで、一緒かよ。・・・・
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「でも。・・・いるのにいない。方が辛いな。」
「・・・。」
「な。」毅を見る。
毅に、前に食いたい物を聞いた時。
言われて。・・・・
おれは、おにぎりの絵を書いた。
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「中身は鮭で~。」毅が言う。
「・・・。」
「あとはシーチキン。」
「・・・・。」さらさらと。
白と黒で、三角の絵を二つ描く。
「中身分かんないじゃん!」
「ふはははは。」
そんな事言って、笑った。
毅の一番食べたかった物は、この世で、一番・・・・
喰いたかった物は、コンビニで売ってる、ビニールがかかったおにぎりだった。
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「家族なんて。名前だけだよ。」
「・・・。」
「たまたま、そう生まれただけで。あとはこうして。ほったらかしだし。」
「・・・・・。」
「だからいいんだ、名前だってなんだって。」
「・・・可哀想だな。」つい口が滑って、
そんな事、言った。
「・・・。」
「家族がいても。おまえのがなんか。かわいそうだな。」
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「・・・・そっか。・・・・・」
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「・・・おまえさ、死んでも良いけど。おれが死んでからにしろよ。」
「・・・。」
「な。待っててやっから。途中でどっかで、ほら・・・川か何か、あるんだろ。」
「・・ふふ。」
「な、そこの手前で、待っててやるよ。」
「ふ、ふふふ、」
「な。」
「・・・ぅん。」
「・・・・。」
おまえは、どうやら見た目によらず。泣き虫で、寂しがり屋なやつみたいだから。
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「おれ・・・ずっと待っててやるからさ。おまえが来るまで。」
「たけしくん。」
「な、それなら怖くねぇだろ?」
「・・・。」
「・・・な、だから、・・・さ、・・・泣くなよ。」
言葉に出すつもりはなかったのに。
別に・・・泣いたっていいと思ってるのに。
「な。だからもう。泣くなよ?」
慰め方も・・・わからなくて、上手く言葉にもできなくて。ただ、毅に向かって。そう言った。
「・・・おれが、いるじゃん。」
な、だからさ。
もう泣くなよ。
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「・・・泣くなよ。・・・・」
ただそばにいて、腕に顔を伏せて・・・泣く、毅を見て。それだけ言った。
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あ~~なんで。・・・・あんな事。言っちまったのか。
「・・・・。」
簡単に。死ねなくなんじゃんかよ。
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ったく。
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次は、こっちか。・・・・はぁ、・・・とひとつ。ため息を、ついて。
「・・・。」
その。・・・建物の入り口。重い、扉をそっと、押し開けた。
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静かな。
想像よりずっと静かなその場所に、佇む。
真っ直ぐに敷かれた、絨毯の先に、
「なぎ。」
・・・なぎがいて。・・・少しだけ、ためらいがちに・・・そっと、近付いて、行く。
近寄ってもまだ、小さなその背中に、声を掛ける。
言われた通り・・・そのとおり、確かになぎが、静かに前を見て、ベンチに腰を掛けていた。
ぐるりと少しだけ、首を廻す、自分には・・・余りに、場違い過ぎて、すぐに、・・・いたたまれない、気持ちになる。
「・・・・。」
「ぁのさ、久しぶり。・・・でもねぇか。」
頭を、がしがしと掻く。
「その、おまえが。自信失ってるって。翼に聞いて。」
「・・・。」すっと、祭壇の前から、立ち上がる。
「その。・・・そうでもねぇよって。言いに来た。」
相変わらず。
上手い言葉が。見つからない。
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それでもなぎは、くるっとおれの方を、振り向いて。
相変わらずの、その顔で、おれを見る。
・・・少しの表情も。崩さずに。
「・・・。」
・・・やっと顔、・・・・・見れた・・・・・
自分がひと息、
ついたのが、分かる。
「一体何の。話ですか。・・・?」
「・・・え?」
「僕は自信なんて。失ってません。ただ・・・プログラムに基づいて、動いているだけ。」
「・・・・・。」
「あなたの事なんてもうどうでもいい。」
「・・・。」・・・息が。
「あなたなんて別に死んだっていいしあなたが死んだって僕には何の、関係もない。」
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「・・・てね。」
「・・・。」
息が。
・・・止まるかと・・・思った。
「・・・なんてね、」
「・・・・。」
「そんな事、言えたらいいのに。」
なぎがぱちっと。信じらんねぇくらい、綺麗な顔で、おれに片目をつぶって、
肩をすくめて、そう言って、見せた。
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