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「A」  作者: みんと*
36/64

第36章



ベッドの上で。毅がおれを少しだけ。遠慮がちに見る。



「よぅ。元気そうじゃん?」おれはおどけて。そんな事言って。



白い。毅の顔を見た。




「武士くんも。・・・・。元気そう。」



「おれは、元気だよいつも。ふふ。」



「・・ふふ、」毅が、下を向いて笑う。



「・・・。」





「・・・。ごめんな。この前、あんな、事言って。」素直に。毅のそばに座って、そう言った。



「ううん。・・」



毅が。おれを見て。



「ボクの事、・・軽蔑してる。・・・?」



「なんで?」



「死ぬのが怖いって言ってたのに、簡単に、死のうとするから・・、」



「ぷは。簡単にじゃねーだろ。この間も言ったけど。すげぇと思うよ、実際。おれなんて。そんな勇気もねぇ。」



「でも武士くん、死ぬのは怖くないって言った。」



「怖くねーよ。」



「・・・・。」



「・・・おれはさ。・・・ずっと。やりたい事あって。」



「・・・?」



「まず。空を飛びたい。」



「・・・。?そら・・・?鳥みたいに?」毅が、首を傾げる。



「そぅ!思う存分大空を、飛び廻ってみたい。」



風を真正面に受けて。青い空、だけを目の前に見て。・・・・



「透明な。空気をはら一杯、吸い込む。すげぇ。気持ち良さそうだよな。」



「・・・ふふ、うん。」



「あと。自由になりたい。」



「・・・。」



「誰にも何も言われずに。何にも縛られずに。規則とか。ルールとかも関係ない。それを。さ、考えたら。気づいたんだよ、」





「それを実現するには。死ぬしかねぇじゃんって。思いついたわけ。」



「・・・・。」



「生きてるうちには。できない事ばっかだしさ。」両手を合わせて。



それを前に伸ばした。



「いま、生きてるおれを、一番癒してくれるのは。死ぬのを、考える事なんだよ。」



「・・・。」



「死だけが。おれの友達。・・・・それだけがおれに寄り添って。おれの孤独を。・・・癒してくれる。」



「・・・・・。ボク、」



「・・・?」



「ボク、・・・は、武士くんの、友達じゃ・・・ない?」



「・・・・。」



少しだけ。考えて、言った。




「ちがうな。」



「・・・。」そして毅が、悲しそうな・・・顔を、する前に言う。




「おまえの事は、仲間って言ったじゃん。」



「・・・。」



「仲間ってさ、家族みたいなもんなんじゃねぇの?」





「よくわかんねぇけど。」



「・・ふふ、そぅだね、よく分かんないね、・・」



「な、ふはは。」



ふたりで。また笑った。





「・・・でもって。だからさ。実際、ほんとに死ぬのは、勿体ねぇわけよ。」



「・・・。やっぱり、よく、わかんないや。」



「ごめんな、おれ話すの上手くねぇから。」





「でもほら、だからおれなんてさ。家族もいねーし。いまはこうして。死ぬ事くらいしか。できる、事もねーし。」



「・・・。」



「何度も何度も。死のうかなって思ったけど、ここん中にさ。・・・・いつまでも。・・・・」



胸に、手を充てる。



「いつまで経っても。父ちゃんと。母ちゃんが。いる訳。」



「・・・・。」



「それ思うとさ。父ちゃんと、母ちゃんが何となく。・・・悲しむ気がして。できねぇんだよ。」



何度、やろうと思っても。



何度・・・死のうと思っても。




「・・・できねぇの。」



もうあれ以上。不憫な思いは。させたくねぇから。




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