第36章
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ベッドの上で。毅がおれを少しだけ。遠慮がちに見る。
「よぅ。元気そうじゃん?」おれはおどけて。そんな事言って。
白い。毅の顔を見た。
「武士くんも。・・・・。元気そう。」
「おれは、元気だよいつも。ふふ。」
「・・ふふ、」毅が、下を向いて笑う。
「・・・。」
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「・・・。ごめんな。この前、あんな、事言って。」素直に。毅のそばに座って、そう言った。
「ううん。・・」
毅が。おれを見て。
「ボクの事、・・軽蔑してる。・・・?」
「なんで?」
「死ぬのが怖いって言ってたのに、簡単に、死のうとするから・・、」
「ぷは。簡単にじゃねーだろ。この間も言ったけど。すげぇと思うよ、実際。おれなんて。そんな勇気もねぇ。」
「でも武士くん、死ぬのは怖くないって言った。」
「怖くねーよ。」
「・・・・。」
「・・・おれはさ。・・・ずっと。やりたい事あって。」
「・・・?」
「まず。空を飛びたい。」
「・・・。?そら・・・?鳥みたいに?」毅が、首を傾げる。
「そぅ!思う存分大空を、飛び廻ってみたい。」
風を真正面に受けて。青い空、だけを目の前に見て。・・・・
「透明な。空気をはら一杯、吸い込む。すげぇ。気持ち良さそうだよな。」
「・・・ふふ、うん。」
「あと。自由になりたい。」
「・・・。」
「誰にも何も言われずに。何にも縛られずに。規則とか。ルールとかも関係ない。それを。さ、考えたら。気づいたんだよ、」
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「それを実現するには。死ぬしかねぇじゃんって。思いついたわけ。」
「・・・・。」
「生きてるうちには。できない事ばっかだしさ。」両手を合わせて。
それを前に伸ばした。
「いま、生きてるおれを、一番癒してくれるのは。死ぬのを、考える事なんだよ。」
「・・・。」
「死だけが。おれの友達。・・・・それだけがおれに寄り添って。おれの孤独を。・・・癒してくれる。」
「・・・・・。ボク、」
「・・・?」
「ボク、・・・は、武士くんの、友達じゃ・・・ない?」
「・・・・。」
少しだけ。考えて、言った。
「ちがうな。」
「・・・。」そして毅が、悲しそうな・・・顔を、する前に言う。
「おまえの事は、仲間って言ったじゃん。」
「・・・。」
「仲間ってさ、家族みたいなもんなんじゃねぇの?」
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「よくわかんねぇけど。」
「・・ふふ、そぅだね、よく分かんないね、・・」
「な、ふはは。」
ふたりで。また笑った。
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「・・・でもって。だからさ。実際、ほんとに死ぬのは、勿体ねぇわけよ。」
「・・・。やっぱり、よく、わかんないや。」
「ごめんな、おれ話すの上手くねぇから。」
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「でもほら、だからおれなんてさ。家族もいねーし。いまはこうして。死ぬ事くらいしか。できる、事もねーし。」
「・・・。」
「何度も何度も。死のうかなって思ったけど、ここん中にさ。・・・・いつまでも。・・・・」
胸に、手を充てる。
「いつまで経っても。父ちゃんと。母ちゃんが。いる訳。」
「・・・・。」
「それ思うとさ。父ちゃんと、母ちゃんが何となく。・・・悲しむ気がして。できねぇんだよ。」
何度、やろうと思っても。
何度・・・死のうと思っても。
「・・・できねぇの。」
もうあれ以上。不憫な思いは。させたくねぇから。
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