第34章
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自分で。・・・・言ったんだけどさ。
自分で、言ってはみたんだけど。あれから、ぱったり。
なぎはおれの前に、姿を見せなくなった。
・・・・。
・・・顔ぐらい、見せたって・・・・
・・・いいじゃんか、・・・たまに見せたって、いいだろ、
いくらおれが。・・・言ったからって、・・・・・・
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・・・ちょっとくらい、・・・いいだろ、
・・・。来てくれたって、
ベッドに、座って。唇を、尖らせて。足元で、スリッパをぶらぶら、させる。
「・・・。」
・・・顔だけ・・・でもいいから、見たいな、と思う。
別に話はしなくても・・・いいから。
・・・っこらしょ、・・っと。・・・ぉ、・・・っと・・・・
床に、足を付けて。
体重を掛けた、一瞬。膝の、・・・力が、がくっと抜けて、よろけた。
一度、ベッドに手を、付く。・・・自分が。
思っているよりずっと、身体が言うこと、きかなくなってる。
「・・・ほら、な、あいつが。来てくんないから・・・・」
そんな勝手なこと、言いながら。
・・・。ゆっくりと、膝を延ばし、立ち上がると。・・・ぅ、~~・・ん、・・・・
一度。短く、伸びをして。また・・・スリッパの音をさせながら、
滅多に出向くことはない。その。・・・・
・・・場所を、目指した。
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・・・・。
室内を、見渡す。
誰もおれを、・・・見とがめる、人はいない。
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今はちょうど、昼飯の、時間帯でそう言う時でも。
皆やる事は・・・いくらでも、あるんだろぅ。
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ぁ。
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おれは、・・・余計な、咳払いをしながら、近づいて。
「ぁのさ、・・・なぎさは。・・・?」仕方なく。翼に聞く。
「あれ、知らない?」翼がまるで知ってたかのように、くるりと、振り向いて。
「え?」
「可哀想になぎ。すっかり自信失っちゃって。」
「・・・。」
「あそこに。入り浸ってるよ。」
・・・。あそこ・・・・?
翼が、真っ直ぐ窓の方を指で差す。
その方向に、おれも、目線を向けた。
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屋根の上に。
・・・。
ちょうど特徴的なその、シンボルマークが、見える。
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・・・あぁ、・・・・・
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「もう。自分にできることは。これくらいしかないからって。言ってね。」
「・・・・。」
「あそこは、なぎのホームだから。」
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・・・。ホーム・・・・
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・・・。翼の言うその場所が、この建物ん中に、ある事だけは、知っていた。
・・・存在だけは、前から、知っていた。
立ち寄った、事はないし、これからも。
立ち寄る事はないと、思っていた。おれには・・・・
全く、無縁のところだと。思っていたから。
・・・なるほどね。おれは納得して。
どうしてあいつがあんな事言ったのか。全て・・・わかった、気がした。
「・・・あ。あいつ元気?・・・。」
「・・・毅?」
「そう。」毅。・・・・
そう、あいつも。
全然あれから。おれんとこに、顔見せなくなっちゃって。
なんだか色んなことが中途半端だった気がして。
それだけが。少しだけ、気がかりだった。
「武士くんさ。毅に。死ぬならこっそりやれって、言ったでしょ。」
「・・・・。」
「だからさ。・・・・」
「なんだよ。」
「死んだよ、毅。」
「・・・・・。」
「死んだ。」
「うそ。」
「嘘。」
「・・・・・。」
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「最低な。嘘ついてんじゃねぇよ。」翼を、睨みつけて言う。
「最低なのはどっち?」
「・・・。」
「毅はあなたに死んでもいいって言われて。それこそ、死ぬほど。落ち込んでますよ。」
「・・・・。」
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