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「A」  作者: みんと*
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第27章


「・・・なに。・・・泣いてんだよ。・・・・・」


おれはなぎの。泣き顔を見るのが。・・・怖くて。少しだけ、身じろぎ、して距離を取った。


「おれ、しゃべり過ぎたな、もう。・・・行かねぇと。」行く、とこもないくせに。


おれは言う。何を。恐れているのか。・・・・


自分の好きな奴が泣いてるって。言うのに。


「・・・。」


大事な奴が、


「・・・・。」・・・大事な、奴。・・・・?おれの。・・・・?



とまどう、おれにおまえが言う。



「僕は。失格です。」


「・・・・。」


「ホスピタリストとして。失格。あなたを。・・・・死へと。導かなくては、いけないのに。それが。・・・僕の仕事なのに。」


「・・・・。」



「死んで欲しくない。」


「・・・・・。」


「死んで欲しくないなんて。いま考えてる。」



「見てみたい。あなたを。本当は。・・・必死で、本気で。・・・生きるあなたを。見てみたい。」


「・・・。」


ごくっと。乾いた喉が鳴る。


身体が、どうしてか動かない、それでもおれは、精一杯、・・・おまえの。・・・・名前を呼んで。



「なぎ、」


「・・・。」


「なぎさ。」



「大丈夫だから。おれ、・・・死なないから。」



「ふ。」自分で、思わず先に笑った。



「・・・ふふ・・・・」


「な、」


「・・・ほんとう?」おまえが、おれを見る。


おれはかろうじて少しだけ、目線を下にして。


「ぅん、ほんと。・・・・」




そっと。


「・・・。」そのまま、恐る恐る、おまえに、近づいて。


手を、伸ばした。


指の先が、その頬に優しく触れそうな・・・くらい。近くに、寄って、


その涙を、本当は、拭ってやりたくて。もう片方の手は、


よしよし、と。頭に触れるか、触れないかのところを撫でる。



「もし。・・・死んだとしても、」


「・・・。」


「また、会えるから。きっと。また会えそう、おれ達。」


「・・・・。」


「違う?」


「そぅだよ。・・・・」なぎが、笑って目を伏せる。


「な。」良かった、とおれはその笑った顔に、少しだけ、安心して。


「そうだろ。」



すぐに。両手を下げて。「そう思えば。死ぬのは怖くない。」


「・・・。」


「終わりじゃなくて。また、始まるだけだから。」・・・そう、誰かが言ってた。あの頃に。




その意味も知らないまま。


ただおまえを・・・慰めたくて、そう言った。



「・・・な、だから。・・・大丈夫だから。」


まだ泣き顔を見せる、なぎに。


「・・・な?」ぽんぽんと。その項垂れる頭を今度は、本当に。優しくあやすように、少しだけ・・・軽く撫でた。





「どっちが。どっちか、・・・わからないね。」


そう言って。おれの目の前で、ふと目線を上げたなぎが。



「・・・。」


その。涙に潤んだ恐ろしく綺麗な瞳で、おれを見る。



・・・・嘘じゃない。・・・その、涙は・・・咄嗟に、感じた。だめだ。



・・・その、瞳はだめだ。・・・・



それを見たら。


自分が。だめになる。



ずっと、見ていたいのに。・・・・



「・・・なぎ。目、閉じて。」 


もう見て。いらんないから。



「・・・・。」


すっと、なぎが長い、睫毛を降ろして、素直に目を閉じると。


ぽろっと。目の端から、涙がひとつぶ、流れて落ちた。


・・・それは。


本当に。本当に煌く泉のしずくのように美しくて。


・・・おれ。こんなに。


・・・綺麗なもの。


いままで、・・・見たことない。・・・・


その事に。感動して。


思わずそっと。その瞳を閉じたままの・・・・


なぎの顔に、


顔を寄せた。





「・・・。」


一瞬、だけ、躊躇して・・・・


・・・躊躇したまま。そのまま、そっと、なぎの、頬にキスをした。


・・・音を立てて、その涙を吸い取るようにして。


不思議とそれは。


透明な。・・・味がして。


そして、そうしても。


じっとして、動かない。目を閉じて、何も言わない。


なぎが可愛くて。


可愛くて、可愛い過ぎて。たまらなくて。・・・・



ちゅ。


・・・。


またそのそばの。頬にそっと、優しくキスをした。



・・・ちゅ、・・・ちゅ。・・・・ほら、な止まんない。・・・・・



なぎ。




ちゅっ。・・・・なぎさ・・・・・・


何度も。何度もその可愛い頬に、唇で触れてキスを、する。




好きだ。・・・すごく。・・・・


おれ。なぎが。好きだ。


想いが、もう今にも唇からこぼれて、・・・溢れそう。・・・・




・・・でもおれ。・・・言わない。・・・・・


それだけは。言っちゃいけない。そんな事、


言えない事くらい、・・・・


分かってる。



言ったって。・・・・


何の責任も。取れないし。





「ごめん。」


「・・・。」


すっと、なぎから離れて。



「なんか。ノリで。キスしちゃった。」



そう言って。う~~んと。伸びをして、立ち上がる。



「・・・・。」


「さて、と。おれ、行くわ。」


そのまま。


そうして、伸びをした格好のまま。


くるりと踵を返して背中を向ける。



そう言った。声が震えそうに、なってて。


身体はもう。・・・少しだけ、震えてて。


こらえ切れずに。大声で。何か泣き出しそうに、なってて。



あれ以来。


声を上げて泣いた事なんて、一度もなかったのに。




その事に。自分で自分が一番。



・・・ここ最近で一番。・・・・・






驚いた。




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