表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「A」  作者: みんと*
24/64

第24章


「何か誤解。・・・してませんか。・・・」


「・・・。」遠慮がちに。なぎがそう、後ろから、問いかける。


「何がだよ。」初めて、口を開く。ちらりと。まだなぎの手の中にある、その紙を忌々しい思いで、見つめながら。・・・・・



おれは。ショックだった。自分がそう、見られていた事が。



仕事。・・・そう、言われて。


そんな事。言われて割り切って・・・おれを見ていた事が。そんな風に、見られていた事がとても。・・・ショックだった。



わかってる。


そんな事初めから、分かってる。・・・・



仕事なんだって、


言われなくたって、わかってる・・・・




それでもって、



「あなたが自殺をするとは。」


「・・・。」


「考えては、いません。」



「・・・。んな事どーだって、」


「・・・。」


「いいんだよ。」そんな事。


おまえに関係ない。



「だからこの紙を。・・・見せました。翼には、止められましたけど。」


ぴくりと耳を、傾ける。翼。・・・・その、また忌々しい、名前を聞いて。


「・・・あいつが何って。言ってんだよ。」おれの、ライバル。

 

・・・ライバルって。言うか。・・・今んとこの、恋敵・・・みたいな、もんだ。・・・なぎを、見つめる。



「少し座って、話しませんか。・・・?」


「・・・・。」


大人しく。促されるまま、車椅子を押され。


また、銀杏で埋まるベンチに、移って。驚くほど手際良くなぎが枯葉を払うと、一緒にそこに、腰を掛けた。

 




「少し、話してもいいですか。・・・?」隣の、おれを見る。


「だから、座ってんじゃんかよ。」どうして、おれは。こんな言い方しかできないのか。・・・・はぁ、と少しだけ。


ため息を、もらす。



「疲れた。・・・?」なぎが言う。


「・・・。」無言で。返事を返す。


「・・・大丈夫?」おれの顔を、心配そうに、覗き込んで。



・・・そんな仕草でさえ、今は。


嘘みたいに感じる。



「・・・大丈夫だって。」


「無理しないで、すぐに言って下さい、モニターを付けてないから。・・・心配だな。・・・・」



「・・・。」例え嘘でも、とすぐに、思わず、思い直す。


憂い顔が、やっぱりたまらなく、綺麗で。・・・・


触れたくて。思わず、おまえに手を伸ばしそうに、なる。こればっかりはだって、・・・仕方ない、じゃんか。・・・おれだって、


生身の、人間だ。


・・・今んとこは。




ぎゅっと手の平を、握る。


あまりこれ以上は、近付かないほうがいい。


おれは、少しだけ。ベンチの端に寄った。



「・・・。はぁ、」今度はなぎが、ため息を、漏らす。


「一日に50人。」


「・・・。」


「この国で自殺をする人がいるって。知っていますか。・・・?」なぎが静かに、話を始めた。


「未遂を含めたら未知数の人達が、・・・」


「知ってるよ。」おれは言う。


「・・・。」


「細けぇ数字は知らないけど、あのあとだって、いっぱい見て来た。」


「・・・・。」



そう、本当に大変なのは。・・・まず、生きてく事だ。


おれはあの後に知る。面倒な、ことばかりだ。生きてくって事は。


今までそんな。面倒な事一切合切、おれは親に頼りきって、生きて来た。


そんな事をそうだな。親が亡くなってから改めて。おれは・・・初めて、知る事になる。



「でもさ。」


「・・・。」


「家もない。金もない、それなのに仕事も家族も。全部全部なくなっちゃってさ。」


「・・・・。」


「もう、生きてる意味がない。死にてぇなんて思っちゃう事なんて。・・・仕方のない、ことだろ?」おれは言う。



「どうして。死にたいと思うと思う?」そのおれの問いには答えず、なぎが言う。



「・・・。」そりゃぁ。・・・・


「生きてても、仕方ないって思うからだよ。」


「違う。」


「・・・。」


「何が。・・・違うんだよ。」


その珍しく強い、口調に。思わずなぎを、見つめた。



「死にたいと思うことと、生きてても仕方ないと。思う事とは違う。」


「難しいこと言われても。おれわかんねぇよ、ばかだから。」


「違う。」


「・・・。」


「あなたは、馬鹿じゃない、・・・だからいま。・・・生きている。」


「・・・・。」




「自殺、する人はね、死に。・・・憧れるの。」


「・・・。」


「生きることと死ぬことを天秤にかけて。死ぬほうが、楽になれると。魅力的だと・・・そう、思うの。だから死を、選ぶの。」・・・本当の。・・・死の意味が何かも。わからないまま。・・・・



死に魅了され、まるで恋にでも堕ちるように、・・・盲目的に、それを、・・・選んでしまう。




「生きたい・・・と思うより強く、死にたいと・・・思って、しまうの。」


「・・確かに。」


「・・・。」


「そりゃそうだろ、じゃなけりゃ、わざわざそっち行こうとは、思わねぇよ。」


「・・・そぅ、だから死を、恐れるうちはまだ、大丈夫。」


「・・・。」


「自分で死を選んだりはしない。」その、畏れを肌身に感じているから。




人はそうして、・・・日々死と向かい合い、生きている。




「そう、思っていたの、知っていたの僕たちは。・・・でも、毅は違った。」


「・・・。」



「毅。・・・?」おれは思わずそう、口にする。


「そう、彼はもう。・・・何度も。自殺、未遂を起こしている。」


「うそ。」


おれは言う。


「・・・ほんと。」


「・・・・。」


「ほんとなの。」なぎがおれを、じっと見つめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ