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「A」  作者: みんと*
21/64

第21章



かさ、・・・かさとゆっくりと、枯葉を踏む。


・・・そう。ひとつくらい。・・・まだ、できるなら。


何か、ひとつくらい。おれにも、できるなら。


人の役に立てるなら。・・・そしたら、もしかしたら。



中庭のベンチになぎが、座っていた。



「・・・。」



その後ろ姿が何だか、随分儚げに、見えて。


消え入りそうに、心細そうに・・・


・・・見えて。・・・すぐにでも。近寄って、傍に行ってその細い肩を抱き寄せて、やりたい衝動に、駆られた。

 

急いでできるだけ、足早に、近づく。



ふふ。そしたら。さ・・・ほんとに。いい事あんのかな。




・・・・な、・・・・父ちゃん。






「・・ごめん。」


「・・・・。」


隣に、腰を下ろすとすぐ、そう素直に、なぎに謝った。


「ちゃんと。話も聞かないで。ごめん。」


「・・・いえ。僕も。言い方を、少し間違えました。」


「・・・。」


まだ、困惑したように。眉根を寄せて、おれを見る。少しだけ、まだ。こいつと。距離を感じる。


・・・なんてな。今まで勝手に、おれがそう思ってた、だけなのかも。


そう、思ってまた。少しだけ虚しくなった。 



「すごく、稀なケースなんです。」


「・・・。」


「こんな、事はあまり、ないんです。」


「そうだろうな。」


「・・・。」なぎが、おれをじっと見つめる。


「おれとあいつ。・・・だろ、毅。あまりに、似過ぎてる。」


「・・・。はぃ。」


「・・・。」


・・・もぅ。いいや、と思った。何でも。実験台にでもモルモットにでも。


何にでも、なってやる。


・・・こいつがそう。望むなら。


なぎを見つめて。


「おまえさ、正直にそれ、おれに言おうと思ったんだろ。」


「・・・。」


「その方が、いいと思ったんだろ。」少しだけ、冷静に考えれば。すぐにわかる。


「だから、あんな言い方、したんだろ。」


「たけし。」


おまえがそう。おれを甘く呼ぶ。声を聞いて。


我慢できずに。今すぐ、手を伸ばして抱き締めて。いいよって。何でもしてやるよって。言って、・・・・やりたい衝動に、また駆られた。


会うたび、おまえと話をするたび、どうしてか、たまらない、気持ちになる。


怖いくらい。どうしようも、ないくらい惹かれてく。どきどきする。鼓動が止まら、ない。・・・・


名前を呼ばれて。一気に距離が、縮まった。おれは嬉しくて。



「なに?」


「・・・。」


「まだ。言いたいことあるなら言ってみなよ。」そう、できる限り優しい声で、先を促した。



「たけし、」


「ん・・・?」



「海、見に行きませんか。・・・?」




「・・・は?」おれはまた。

 

間抜けな声を、あげた。



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