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「A」  作者: みんと*
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第19章



「ふぅーーー・・・・・」



なぎさの。目を盗んで。また吸い始めた、煙草。・・・全然。旨くも、なんともねぇ。


ただ、気持ちを落ち着かせる為だけに。煙を肺に、吸い込む。


肺はまだ、やられてねぇんだな。


胸を上から、手でさすって。


・・・すぅ。・・・また。それを口に咥えて。吸い込んで。


ふぅ。ーーー・・・・・父ちゃんの。真似をして吸い始めた、煙草。



おれは。結局憧れて、いた。・・・父ちゃんに。


余計な事は言わず、ただひたすらに自分の。船を守り。家を守り。シンプルに。


家族や、仲間を大事にするって事を、男のやるべき事を教えてくれた。


そんな姿を、背中を。後ろから見ながらいつだって。


格好いいって。父ちゃん、みたいになれたらいいのにって。


心のどこかでいつだって、思ってたのに。・・・・


それを、言えないまま。


結局そうだったのに。


船を継ぐとも。・・・言えないまま。


離れ離れに。なっちまった。船だって結局。・・・なくなっちまったしな。



・・・おれはだめな。・・・やつだな、ほんと。



どーしようも。ないやつだ。



ぎゅっと。煙草の吸殻を足元で。捻って消す。







「・・・見ーーつけた。」


「・・・。」頭の、上から。なぎの。可愛らしい、声がした。






ぷいっと。そっぽを向いて立ち上がる。


「待って。」


「・・・。」


「そこで。・・・待ってて。・・・?」


いやだ、と首を振る。


「お願い、」


「・・・・。」


「きちんと。話をさせて。・・・?」


「・・・・。」


「お願い。」



おれは。頭上のその、声を無視して立ち上がり、歩き、始めた。


どうしようもなく。・・・むなしかった。


むなしい、なんて。気持ち、これまで何度も。何度も、実際感じて来ては、いたんだろうけど。


実感、した事は思い返せば。あまり。・・・なかった。


・・・実感して、初めて、わかった。 


不思議と。それはこれまで。感じた、事もない程の。・・・むなしさ、だった。





あのあと。


毅と風呂に入ったあと、なぎさが、おれに言った。



「僕たちは、あるプログラムに基づいた、相乗効果を、狙っています。」


「・・・。」


「・・・は?」間の抜けた、声を出すおれを、なぎさがじっと、見つめる。



その真剣な眼差しに。


「・・・。」おれはすぐに、口をつぐみ。


何か。・・・もっと大事な事。言おうとしている、事に気がついた。


何か。おれに。言おうとしている。


何かもっと大事な・・・事。打ち明け話。



「なんだよ。」先を、促す。「・・・なに?」


「・・・。」


「何が、言いたいの、おまえ。」


「・・・・。」


言い始めたくせに。その先を言うのを。・・・ためらっているような、おまえに。


おれは言った。



「言わないなら、翼に聞く。」


「待って。」


「・・・。」


「待って。いま、言うから。」


「・・・。」



さっき、こいつは言った。


「僕たちは。」って。その前に、こうも言った。


「正直に、言います、」・・・って。


・・・・って、事は。


それって、事は、つまりは。その前は。おれに、何か隠し事してたって。事だ。


おまえの言う、「僕たち」は、おまえと。・・・翼のこと。


おまえ達はふたりして。陰で。


おれに隠して、何かをたくらんでたって、事だ。


毅との事絡めて。


おれを利用して何かおまえ達の思い通りになればいいって、


下心持って、・・・たくらんでたって事だ、



「違う。」


「・・・え?」


「怒らないで。・・・聞いて、いただけますか。?」


「・・・。」なんだその。言い方。


 

急に。変な丁寧語使いやがって。おれはその、言葉に。口ぶりに。


いらいらして。急にそんな、余所余所しくなった、なぎの態度に。・・・凄く。


勝手に、傷ついて、イラついて、


何の。話も聞きたくない。・・・そう、思った。


おれの悪いとこ。


自分でもよく、わかってる。嫌な、事からは。


面倒な。事からは。・・・それが。自分にとって、嫌な事で。あればある程。・・・


遠ざけたい。近づきたく、ない。傷つきたくない。





おれは。そうだ。・・・おれは。臆病な。男なんだ。




・・・・顔を、覆った。




父ちゃん、・・・ごめん、・・・ごめん、こんな。奴で。・・・・




・・・ごめん。・・・・






顔を覆って、膝を丸めたベッドの上で。


「武士くん。」





「・・・。」



逃げるように舞い戻ったそのベッドの、信じられないくらいに、すぐ近くに。



翼が。



腕を組んで立っていた。




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