第12章
・
「あ~~腹いっぱい。」全然ふくらんでもいない、そこを毅がさする。
まだパックのジュースは半分も、飲んでないハズだ。
「・・・。おまえさ。」
「・・・。?」
「あと、どのくらい?」
「・・・。いのち?」
「そう。いのち。」おれは、笑って。
「近所の、医者はボクを診て、びっくりして。」
「・・・。」
「いつ死んでも、おかしくないって。」
「ぷは、」
「え?」
「おれも、そう言われた。」
「ほんと?」
「ほんと、生きてるのが、不思議なくらいだって。」
「ボクも!!そう言われた。」
「なんか、すげぇ、とか、思わなかった?」
「思った!!なんか、誰かに自慢したくなる、みたいな?」
「な!!わかるわ。」
おれ達はまた、笑って。
「ほんと・・・似てるな、おれ達。」
「ぅん。」
毅が、下を向いて笑う。
「・・・。なんだよ急に。暗い顔して。」
「武士くんは。・・・怖くないの。・・・?」
「・・・。」
「死ぬの。・・・怖くない?」
「怖くねーよ。」
「・・・・。」
「じゃ。逆に聞くけど。なんで怖ぇの?」
「・・・。理由なんて、ないよ。」
「・・・。」
「理由もなく、怖いから。・・・」
「・・・。」
「・・・どうしようもなく。・・・恐ろしいんだよ。・・・・」
・
「おれさ。」
「・・・・。?」少しだけ、背中を上げてもらったベッドで。
なぎと。話をする。
体調は。
落ちるときは、一気に落ちるけど。すぐに良くなる。最近の。医療技術は凄ぇよな。
だって。
「おれ、いま全然ぴんぴんしてるし。」点滴の。袋を見上げる。
「あはは。」
「・・・それ、笑うとこか?」
「ごめんなさい。」
「・・・。」素直に。少しだけ、俯いて。あやまるこいつは。
まじで。今すぐ、押し倒しちゃおうかと思うくらい。可愛過ぎて。・・・ほんと、困る。
このベッドに。
今すぐ押し倒して。
上に。乗っかって・・・・・あぁしてこぅして、・・・ってぇ・・・・
「あぁ!!」・・・もう!!
「・・・。?」
・・・だから、言いたかったの、は。そーゆー事じゃ。なくて。
「・・・あいつにさ。おれ毅にさ。」
「・・・。」
「何って言ってやれば。いーと思う。・・・?」
「・・・・。」
「おまえ、プロなんだから。なんかいい方法、知ってんだろ?」
「それができたら。翼はあんなに、苦労してない。」
「・・・・。」
頭をがしがしと。掻いて。・・・・あ。
風呂。・・・・入りてぇな。・・・・・・
「あ!!!」
「え?」
「おれ。・・・あいつと。毅と。風呂、入ろうかな。」
「・・・・。」だめって。顔してる。こいつ。
「頼む!!」拝むように、手を合わせる。
「・・・。」
「おまえの言う通りにするから。」
「・・・。」
「おれ、何でも。おまえの言うこと、聞くから。」
・
その日の午後。
あっけなく。風呂に入るのを許された。
「もともと。おれが入れるはずの日だったんだって。」
「・・・へぇ。・・・・」
「・・・。」相変わらず青白く覇気のない。毅の顔を見て。
ゆっくりと、服を脱ぐ、
その骨ばった背中を見ながら、
「・・・・ったくよ、あいつ。」おれも座ったまま。
ぽいぽいと。合わせになった服を放り投げて全裸に、なってく。
「?」
「それ知ってたくせに。澄ました顔して、言いやがんの。煙草は、金輪際禁止。出歩くのは午前と午後、十分まで。だからおれ、言ってやったの。」
・
・
「早朝は?夕方は?」って。
「・・・・。」
「夜中は?明け方は?」・・・って。
「・・・・。」
・
「・・・相変わらず。」
「・・・。」
「不良なんだから。もぅ。」
・
・
バシャっと。顔にお湯を掛ける。
あの。・・・もぅ。がな。たまんないよな。
甘えるように、おれを見ながら。文句言う。
「ふふふ。」
「なに、にやけた顔して。」毅が。膝を抱えて湯船の中に座る。
「・・・。」湯に浸かるのは。五分以内。
言いつけを守って。そっと、身体を起こして、おれは一段、高い所に座った。
肩まで湯につかった、毅が言う。
「ほんと、いいよね。武士君は。なんか。・・・楽しそうだ。」
「・・・・。」
・
「おれ、思ったんだけどさ。」湯の上で両手を合わせて伸ばす。
「・・・。」
「なんで、おれは怖くなくて。おまえは怖いのか。おれと、おまえの違いは何なのか。それさ、おまえが正解なんだよ。」
「・・・。」
「死ぬのってさ、きっと。ほんとは・・・すげぇ、怖い事なんだよ。おれさ。」
毅を見る。
「一度。死にそうになった事、あんの。」
「・・・・。」今度は毅が、じっとおれを見る。
「まじで。」
・




