第1章
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「禁煙ですよ。」
「・・・。」
口に咥えたばかりの煙草を。看護士に、取られた。
「・・・。」
また無言で。一本咥える。
「禁煙だってば。」
彼はそう言って、笑った。
逆光で。顔はよく見えない。
・・・おれは構わず。顔を背けて、
咥えた煙草に、また火を点けた。
取られないように。ぎゅっと強く、指の間に挟んで。
「ココは病院じゃ。ないだろ。」
「病院でしょう。」
また呆れたように。
その看護士は、笑ってそう言って。
おれはその隙に、すぅっとその煙草を通して、軽くひとつ。
白い、息を吸った。
「煙草くらい。」
「・・・。」
「自由に、吸わせてよ。」
青空に向かいふーーぅ・・・・と長く、その白い筋を吐く。
眼に映るのは青。
煙の白はまるで雲のようで。
すーー・・・・。っとその青い空に。白い煙が吸い込まれるように、消えて行く。
「そう、させてあげたいのはやまやまだけど。」
「・・・。」
「規則だから。」
素早い動作で。
そのおれの持っていた煙草をすっとまた、手早く取り上げられて。
どうするのかと見ていたら。
魔法のようにそれを。
その小さな手の中に、隠した。
「え?」
「・・・ふふ。」
「煙草は?」
「捨てました。」
「どこに?」
「ポケットの、中に。」
「・・・。燃えるよ?」
「あなたみたいな人がいるから、」
「・・・。」
「灰皿を持ち歩く、羽目になった、まったく、もぅ。」
全然困ったような顔を見せずに。
その天使みたいに。可愛い顔をした看護士は、にこっと笑って、そう言った。
おれの隣にとん、と軽々座る。
「喫煙所、あるでしょう?」横から、おれの顔を覗き込んで。
「やだ、あそこは。病人ばっかで。」おれはぷぃと、すぐに顔を背けて。
「あははは。」頭の後ろで、その笑い声を聞いた。
「・・・笑ってるし。」
おれも笑って、立ち上がって。
うーーーーんと思い切り。腕を伸ばして、空に向かって伸びをした。
今日も。・・・また。
ろくでもない。
ただの一日が。始まる。
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