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いざ行け 異世界-2

 少年は取り敢えず、先程のリナ達の様子を見て並々ならぬ事情があると思い、話を聞いてみることにした。


「――まず、僕のことは後でいいから、リナさん達の事情を聞かせてもらえませんか?」

「うん……でも、これは村と私の問題だから……あなたは自分のことを心配したほうがいいんじゃないのかな……?」遠慮気味に話すリナ。


「いや……僕が戦士長って人に危害を加えてしまったから僕はもう部外者じゃないよ。――だから教えてください!」

 少年の意思は固そうだった。 

「……うん。わかったよ」

 その意気込みを見て……リナは話をし始めた。


 ざっくり言うと、雪の降らない村に異常なほどの雪が積もってしまい上納品の作物がダメになってしまった。このままでは王国の占領地になるということである。


「なるほど、だから村を守りたくてあんなに必死な感じだったのか……」

「うん……そうなの。あの人たち、本隊が来ているとか言ってたから、すぐにも占領する気だと思う」

「……うーん」


 少年は、自分にも責任はあると思っているし、正直このリナという女の子はすごく可愛いから助けたいと思った。

 ……それに……良く分からないけど――女性には優しくしないとダメだと――少年の心が訴えてきた。


 だから助けたいけれど、今の自分に何ができるというのだろうか……。

 自分の名前すら思い出せない非力な男が、さっきの戦士長よりも強い騎士団長率いる兵隊を撃退できるだろうか……?


 ――どう考えても無理だ!!


 ……しかし、何もしないなんていうことはできない


 ……今思い出せることは、何かに登録されたこと。

 

 ……そして、さっきの約1万メートルもの上空から戦士長の頭に激突しても死なない体だったこと。


 ――分からない事しかないけれど、体が丈夫になったらしいことだけはわかる。


 ――ならば、


 ――分からないなら、行動してみよう!!


 そう思った僕は心の隅っこで、少しだけこの状況が楽しいかも……と少し思えた。


「よし!とりあえず、なんとかしてみよう!!」

「え!?なんとかって……どうするの?」

「まず、村人のみなさんは兵隊が来た時にどうするのか、各自の行動を考えて相談し実行してください。僕とリナさんで王国の人達をなんとかしてみようと思います!」

 

 何!?君のような非力な少年に何ができるのだ!?こうなったら、村を捨てるしかない!いや、先祖代々の大切な場所なのだぞ!?戦うというのかよ!?騎士団長に勝てるわけないだろ!?だからって何もしないで占領されるのを待つのかよ!?

 

 ――狼狽(うろた)える村人達――その時!!


「狼狽えるでないと言うたはずじゃあーーー!!!!!!」

 お婆さんが一喝した。再び静まる村人達。


 そして少年の方へ話しかけるお婆さん。


「お前さん、何も覚えておらんのじゃな?」真剣な表情でお婆さんは聞いた。


「あっ……はい。そうですね――覚えているのは、この上空から落ちてくる少し前に真っ白な世界にいて、声の低い人に良い世界をと言われたこと以外は……何も」


「――そうか、わかった」お婆さんはそう言うと。


「リナ、この人について行きなさい。……そして、この人を信じなさい」


「お婆ちゃん……」


「お前らもええな。彼の言う通りにするんじゃ」

 村人達に言った。お婆さんに言われたら仕方ないとみんなは渋々(しぶしぶ)と受け入れた。


「お婆さん、なんで今会ったばかりの僕を信じてくれるのですか?」

 

「なんでもええわい。ほれ、さっさと行動せんかい!!……なんとかしてみるのじゃろう?」


「……はい!!」


「……まず、王国の部隊がどんなものなのか知らないと話にならない。――リナさん道案内をお願いしてもいいですか?」


「――はい。勿論です!」


「じゃあ――行きましょう」


 少年とリナは、一目散に村から走って出ていった。


 その二人の後姿を見送る二人。

「なあ、婆ちゃん……」村人が尋ねた。


「――なんじゃ?」


「なんで、あの見ず知らずの男を信用したんだ?」 


「……種族に一つずつな。かなりの古くから伝わる伝説があってのう。カラフル一族の伝説にはこうあるのじゃ……」

 

 お婆さんは、のどの調子を整えると。


 馬鹿げた顔をしながら両手を挙げて踊りだした。


「一文無しが降りてくる♪ そいつは何も無きにけり♪けどすぐ行動するのです♪世を照らす光放つもの神様神様かもしれない♪予想外をたのしめう♪おお~今日は特売日~♪」

 いきなり歌いだした。


「………………」

 ――何してんの婆ちゃん……みたいな顔で見る村人。

 

 お婆さんは何事もなかったように続けた。

 

「不思議と彼の状況と似てはおらぬか……もしもこの馬鹿げた伝説が本当で、彼がこの世界の神なのだとしたら、もはやこの村や王国どころの話ではないじゃろう――」

 少し間をおいて。

「この伝説から私らに伝わるものがあったなら、それは予想外を楽しめ……ということじゃな」


「それが、カラフル一族の信仰じゃ」


「まあ、彼は落ちてきたけど……あと特売日って何のことだろう?」

「さあの……」

「……ところで、族長はこんなときになにしてるんだろ……?」

「そんなこと知るか!!あのボケ老人。いつも肝心な時におらんのじゃ。一度追放してしまえばええんじゃ!」


 そう言ってお婆さんは大きな家に帰っていった。

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