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決戦 ゼウセント-3

「……合図だ!!」

 潜入していたシーアは、光の柱が闘技場から見えた時――二人に合図を出した。


 シーアはすぐさま煙玉という紐を抜くとポフポフと煙を吐き出してくる球を、手当たり次第に投げ始めた。


 煙玉は白い煙を城内に瞬く間に充満させた。


「何事だ!?」

「火事だぁあああ!!??」

「何だと!?すぐに消し止めろ!!!!」

「いや……避難が最優先だ!!」

 それを見た騎士達が大混乱に陥った。



 その煙が見えた瞬間、二人は急いで地下にある牢獄へ走った。



 その二人を目に捉えた城内警備担当の王国騎士団長、女傑 ルクス・フォールタリア。

「………………」

 


 ――エインの言った通り、警備の騎士は誰もいなくなっていた。


 そして、先王が捕まっている檻が見えた。


「――やっと会えました!!……助けに来ました。父上!」

「ん?……まさか……ウィスタリアか!?」先王は無事に檻の中にいた。

「はい!今この檻を開けます!」


 ウィスタリアが檻の錠を壊そうとしたとき……


「……いや~それは困りますね~」

 その後ろから声が聞こえた。


 ――右大将、小野レイウスだ!!


 ……しかも、今よりかなり若く見えた。


「な!?――なぜお前がここに!?闘技場にいるはずだ!!」

「はい~!本体はそうですね~……だから、これは分身体です!!」


 レイウスがそう言った時、他の檻の中から次々とレイウスが出てきた。


 その数――合計で10人。


「な!?――レイウスがいっぱい!?」

 流石の光景に後ずさりするウィスタリア。


「レースや決闘に乗じて先王の奪還なんて……出来るわけないでしょう~?」


 妙に若いレイウスたちがウィスタリアとリナを取り囲んだ。


「さて、話の続きは捕まえてからですね~」

「いや~処刑の見世物が増えるとは……幸運ですね~」

「なぜ若いか?……分身体ですから現役時代の姿にしたまでのことですよ~」

「ウィスタリア様にまたお目にかかれるとは……光栄の極みですね~」

「さて……そちらのお嬢さんも犯罪者擁護の罪で捕まえましょうか……」

「ご安心ください!……あの魔人の御令嬢共々、可愛がってさしあげますからね~」

「レベル50の私達10人に勝てるわけないでしょう~?大人しく諦めて下さい!」


 現役時代のレイウス、レベル50が10人。



 ――リナとウィスは絶体絶命の危機だった。



「……今だね……エイン!!!!」


 しかし、リナの目には一切の絶望を感じていなかった。



 ――そして、午後4時になった瞬間――



 ……突然、リナの体が光りだした!!



 ――権能一画 予約発動!!  ⋘自己強化⋙ <付加>!!



 ――リナ・クーフィン・カラフル レベル100!!!!


「何!?何だと!?何だ!?この女の威圧感は!?」


 突然の出来事と、リナからオーバード並みの……いや、それ以上の脅威を感じて怯むレイウス達。



「ここを通してもらいます!!!!」


 勇気に満ちたリナが構えた。



 10人のレイウス達が剣を抜き魔法で攻撃しようとした瞬間――


 ≪天魔時停止(てんまじていし)≫!!!!


 最上位魔法で時間を止めたリナ。


 ――別に彼らを倒すことが目的ではないので、すぐに逃げる算段をする二人。


 この最上位魔法は、止めた時間の中でリナに許可されたもの、ウィスタリアとぎょうじいとシーア、そして遠くにいるエインだけが止まった時の中でも動けた。


「今のうちに行きますよ。このままエインのいる闘技場に行きます」リナが指示した。

「あぁ。ほら、行きましょう。父上!」

「……なんや、えらい迷惑かけたみたいやなぁ……」弱々しく口にした先王。

「その前に、ギルガルディア・シルフェルドさん。王令を発してください!!」リナが言った。


「!?――なんで君がそのことを?」 

 驚愕する先王、ギルガルディア・シルフェルド。


「早く!止めていられる時間は1分です。早く所定の場所に行かないといけません。脱出には妨害もあります。お願いします!!」

「……わかった!……やってみよう!!」

 

「我――ギルガルディア・シルフェルドがゼウセント王国に命じる。我らを阻むものを全て無力化せよ!!!!」


 ――その言葉が……文字通りゼウセント王国を動かした。


 国中のあらゆるものに命が吹き込まれた。

 城内に数多ある石像が突然動き出した。

 騎士の石像、幻獣の模型、赤い絨毯、石柱、あらゆる無機物が、訓練された騎士のように彼らの障害を阻み始めた。


 近くでは、時が止まっている多くの騎士達の前に石像が近づき、武器を取り上げ、捕まえ始めた。

 

 三人はシーアと合流し、中央階段前まで走った。

 

 走りながら、今起こっている現状に当惑するウィスタリア。


「これは……一体?」


「――そうか、お前には言ってなかったか――この国には二つの国宝があるのだ。形ある国宝の光の宝玉と、形無き国宝――国王大号令!!通称は王令という。……国民が、この国の王として認めた者だけがこのゼウセント王国の全てに命令できるのだ!!……まさか、国民達はまだ私を国王と思っているとはな……」

「……いえ、それは当然かと――父上!!」



 ――リナの最上位魔法の効果が解けて、時間が動き出した!!



「!?……あいつらがいない!?」

 分身体のレイウス達は相対する相手がいなくなってしまい、混乱した。




 ――闘技場。


「――!?向こうで仕掛けた罠が発動した!?誰かが先王を取り返しに来ただと!?」


 レイウス本体がそのことを知り油断したその時、一本の糸が上着にくっついていた。


「うわあああああ!?」


 いきなり凄い力で上着が持っていかれる状況で思考停止したレイウス。


 もう一本の糸が的確に巻物にくっ付いて、光の柱の方へ飛んで行った。


「な!?――スクロールがああ!!??」




 そのスクロールを手に取った。


 ――光の中から出てきたその人物こそは、


 ――そう。


 ――エインだった。

 

 クモの糸を繭状にして包まって糸を絶えず補充することで、オーバードのエクレールグロワールに耐えていたのだ!!!!


 しかし、それでも耐え切れずにエインごと消し飛びそうになっていたその時、リナの時止めのおかげで新たに糸で補強して耐久することができたのだ!!



「――よし!!!」


 エインはイファンを取り戻した!!!!


「貴様ああああああああ!!!!!!!!!」

 レイウスが吠えた。


 オーバードの最終奥義の光が消えた。


 エインがまだ健在だと知って、再び構えて奥義を放とうとしたオーバードだったが!?


「……あら?大英雄さんは、幼気な女の子がいるにも構わず――攻撃するの?……ねぇ?」


 アルフェルト・シルフィードが闘技場に降りて来ていた。


 ――付き人のミイが連れてきたのだ。


「……ふっ……そういうことか――エイン殿……」

 その一瞬で全てを理解したオーバード。


「――はい!最初からそのつもりでした!!」


 エインは急いでスクロールを広げて、檻の写真を引きちぎった。


 スクロールが燃えだして、写真が光った。


 エインの腕の中にふわっとイファンが収まった。


「――お待たせ。イファン!」

「……あっ……エイン」

 キョトンとした顔をしているイファン。


 闘技場でも石像が動き出して騎士達の動きを制限していた。


 幾人もの騎士達を足止めする石像。援軍が闘技場に入ろうとすると勝手に門が締まり、地面が崩れて通れなくなったりしていた。

 剣を抜こうとしても、鞘から抜けなくなったり、鎧が何倍にも重くなって動けなくなっていた者もいた。

 


「くそ!!!!決闘は終わりだ!!!!騎士団長全員であの小僧を殺せ!!!!!!」

 小野レイウスが激昂して騎士団長全員に命令した。


 その命令を聞いて、この決闘を観戦していた騎士団長達が次々と戦場に降り立った。


「この時を……待っていたぞおおおお!!!!!」無双ガラスティン・アルバー。

「いや彼めちゃくちゃですよね!?あぁ~いじめられたい!」剣聖マルアス・リゾット。

「ランジェリーには渡さないぞ!あんな戦いを見せられて熱くなってたんだ~!!!!俺にやらせろおおおお!!!!」当千サラ・コバヤシ。

「ん~。おじさんは気が進まないな~、だって疲れたしね~」紫煙ジョン・ワリー。



「イファン、指笛を吹いて!今すぐ!!!!」

 エインの真剣な顔を見て、すぐに言われたことを実行するお姫様抱っこされたイファン。


 ――ピィイイイイイイイ!!!!


 団長会議室で檻の中に入っていたイファンの魔獣まで――その音が届いた。


「ッグググググググウウッガアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


 イファンが連れていた魔獣は脱皮するように自分の体の殻を魔法ごとぶち壊して――檻から脱出した。


 その姿は全くの別物と化していた。


 ライオンの頭、ヤギの頭部が生えた背中、蛇でできたしっぽ――そう!


 魔獣はキマイラに進化した!!


 魔獣キマイラは大きくな口を広げると、赤い炎が燃え上がり、上位魔法の魔導爆裂破を横薙ぎに放った。


 ドガアアアアアアアアアア!!!!


 ――王城が大爆発!!!!


 その影響で高い塔にあるレイウスの部屋が崩れて落ちてきた。


 魔法の爆風がこの闘技場まで届き、その部屋にあったこの世で一番変態的なものが闘技場まで落ちてきた。


 ゴォオオオンンンン!!!!


 エイン達の前に落ちてきたもの。


 ――それは――黄金の全裸ザムディン像だった。


「え!?……ね?……何この気持ち悪いもの?」

「うわぁ……」

 アルフェルトとイファンはその気持ち悪いものを見て絶句した。


 キマイラは脱出口を作って、主人の元へ飛び立った。


「……今です!!!」

「ふおお!!!」


 リナとぎょうじいはその時を見計らってキマイラに飛び乗った。


 ウィスタリアとシーアは王都に残るので、ここでお別れだった。


「……父上、どうかお元気で!」

「……行きますよ、退却します!」

「……うむ」

 二人は騎士の鎧を拝借して王城を脱出した。



 イファンを下ろしたエインは、向かってきた騎士団長たちと戦闘に入った。



「今までの恨みだ!!――今度こそ、ここで打ち倒す!!!!」


 アルバーは右手で剣を振り攻撃しながら、左手で業火灰塵を放とうとしていた。


 エインはその隙に糸を放って、アルバーの左手を地面に向けさせた。


 それによってバランスを崩されたアルバーは背中ががら空きになった。


 エインは自分の右足の踵と、アルバーの後頭部に糸でくっつけて引っ張った。


 まるで吸い込まれるようにこっちへ来たアルバーをエインは完璧なタイミングで前方宙返りして、後頭部へかかと落としを喰らわせたエイン。


 ――ドゴオオオオオオオンンン!!!!


「ぐっはぁぁあああああ!!!???」


 一撃必倒!!!!


 ……アルバーは気絶した。


 マルアスが今度はきた。


「今度は僕が相手だあああああああ!!!!」


 しかし彼は攻撃する気配がなく、ただただ走ってきただけだったので……。

 

 適当に、糸でくっつけて引っ張り、壁に向かって叩きつける様に計らった。


 ――何という奴なのでしょう!?

 自分から糸に当たりに行ったマルアスはそのまま目にも止まらぬ速さで壁に激突、人型の穴が開いた。


 ――マルアス戦闘不能。


「はっはっは!!……オーバードが苦戦するわけだな――今度は私だ!!!!」


 王国騎士団長 当千、サラ・コバヤシ レベル47――好戦的な性格の彼女は前の二人とは異なり、様子を見つつ接近を図っていた。


 その様子を見たエインは右手で大袈裟に、コバヤシ目掛けて糸を飛ばした。


 しかし、流石にバレバレだったのでサイドステップされて避けられた。


「隙あり!!――おらああああああ!!!!」


 エインと同じく槍を使うサラは、ジャンプして遠心力を利用して燃え上がる槍で攻撃しようとした時、豪速でエインの盾に吸い込まれた。


「え!?ナニコレ!!!!????」


 ――最初の糸はフェイク、本命の不可視の糸を左手からこっそりだして、コバヤシの顎と盾にくっつけていた。


 ――バチィイイイインンンン!!!!!!


「ごほわば!!??」


 無防備な顎をかち上げるように盾が激突!!


 一撃必倒!!!

 

 ――サラは気絶した。


「あ~……これ、俺の番じゃね~か~……嫌だね~」

 オーバードに次ぐ実力者、紫煙のジョン・ワリーがエインの元に来た。


 エインは他の奴とは違い――しっかりと構えをとった。


「すまないね~……こっちも仕事なんでね。行くよ~!」


 ジョン・ワリーとエインが戦闘に入った。


 ドオオオオオオオン!!!!


 二人を乗せたキマイラが闘技場に到着した。


「お待たせ!!……エイン!!」

 リナは自分の役目をしっかりやったよ!!――そんな気持ちを込めて名前を呼んだ。


「解除して――リナ!!!」ジョン・ワリーと戦闘中のエインが叫ぶ。


「わかった!!」


 キマイラから降りたリナは、錬金魔法で固まっていた全裸の黄金のザムディン像に近づいた。


 ≪天魔虚無陣≫!!!!


 リナは黄金像に向かって魔法無力化を行った。


 黄金だった彼が、元通りの色に戻り、最強の亜人……魔王ザムディンが復活した!!


「……ふわぁああああ~~……あぁ~良く寝たぜ~~」

 大きく伸びをするザムディン。




「ちょ!?……やべぇな!?マジ強ぇ!?」

 ジョン・ワリーはエインの持つ槍と盾を、変身魔法で木の棒だったり砂に形を変えさせ無力化しようとした。

 

 しかし、エインは意図的に糸の塊を作って、煙の中にひたすら突っ込んで変身をガンガン無駄使いさせて――ジョン・ワリーの魔力切れを狙った。


 そして隙を作れば、煙を避けて三叉の槍で幾度もジョン・ワリーの眼球を狙った。


 疲れていて動きが鈍いジョン・ワリーはそのしつこいまでの目潰し攻撃が当たりそうになり、寒気が走って全力で緊急回避して後方へ避難し、そのまま戦意喪失した。


「いや無理!!こんなやつとやり合ってたのかよ~オーバード~!!」

 そのまま闘技場の観戦席まで飛び上がって逃げるジョン・ワリー。



「イファン、みんなを呼んで!!」

 持っていた槍と盾を捨て、そしてお世話になった特注専用手袋を脱ぎ捨てたエイン。


「――ん!!」

 右手を空へとかざして、招来召喚を展開するイファン。


「ああ~~……なんか良く寝たぜ~~~」

 全裸のザムディンが動き出した。


「……魔王ザムディンか」

 この状況を静観していたオーバードが口を開いた。


「ようオーバード~。さっきはよくもやってくれたよな~」

 ザムディンは凝り固まった筋肉をほぐしながら言った。



「……何という事だ!――大失態だ!!……こうなったら四の五の言ってられませんね……」

 ――とにかく一番重要なことだけは達成させなければなるまい!!


「全軍に命令する!先王に魔法を放て!!――あいつだけは……ギルガルディアだけは殺せ!!!!」 


「オーバード!!何をしている!!??先王を殺せ!!!!」

 吠える小野レイウス。


「まだ決闘は終わってなどいない!!……故に、先王を討つ権利は……今の私にはない!!」

 淡々と答えたオーバード。


 観客席にいた邪魔してくる石像を壊した騎士達が――全方位から魔法をぶっ放した。


 火球、放電、氷柱など、百を上回る下位魔法がキマイラに乗る先王ギルガルディア・シルフェルドを狙った。


 ――しかし、その魔法たちがある男の手のひらに集まった。



 ≪天魔吸収陣≫!!!!


 ――そう――魔王ザムディン。


「くううううううう…………クソがああああ!!!!!!!!」

 激怒するレイウス。


「へっ……人間程度の魔法が俺様に効くかよ!!」


「……めちゃくちゃ効いてたじゃん」ボソッとリナが言った。


「いやあれは違うぜ!?竜人か聖人のやったこったぜ~あのスクロールはよぉ~!!」


 その間にイファンが招来召喚を行い、グリフォンやマンティコラなどを呼び出した。


 エインがイファンに連れられて、グリフォンに乗った。




「きゃあああああ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!」


 何が起きたのか全く分かっていなかった観客たちが、突如悲鳴を上げた。



 ――そう、ザムディンのザムディンが……映像画面でドアップになってしまったのだ。



「なんだあれは!?」「きゃああああ!!」「子供を隠せ、絶対見せるな。トラウマになるぞ!?」「服を着ろ!!変態!!」「恥だ、男の恥だ!!」「犯罪者は犯罪者を集めるのか!」「変態だ!!本物の変態だ!!!!」

「なんて、でかさだ。感動したぜ!」

「露出狂だ!!人類史上最悪の露出狂だあああああ!!!!」



 ――それに気づいてしまったザムディン。



「……露出狂?……ふん……馬鹿馬鹿しい――」

 それを隠すことは勿論……それを見られて恥ずかしがる様子も全くないザムディン。


「服!?恥!?犯罪!?貴様らの下らねぇ価値基準に――何故俺が従わなければならない?」

 逆に、声高々に持論を叫ぶ。


「己の信念に従って生きることこそ――真の男の生き様だ!!どこの誰に何を曝そうと何の問題もない!!!!」


「男に生まれたのであるならば――恥も外聞も捨て去って己の信念を貫いてこその――カッコよさだぜッ!!!!」


 右手を握り、カッコいいポーズをするザムディンのザムディンが――立ち上がった。



「きゃああああ!!!???」「ぎゃああああああ!?」「最低だ、王国始まって以来の最低だ!!」「気持ち悪い、ありえねぇ……」「変態だ。世界最強の変態だあああああ!!!!」「……あら、素敵……」



 ――阿鼻叫喚であった。



「変態の中の変態ねザムディン!―ザムいわ!―ザムいわね!?すっごくザムいわ!!??」

 アルフェルトは新たな言葉を作り出していた。



「――エイン殿」

 そう言って、オーバードはある物をポイっと投げた。


「……光の宝玉。……どうして?」

 エインは素直にオーバードに質問した。


「――我が奥義を防ぎ切ったこと……そして、あることに対する感謝と。最後に一つ――約束をしてほしい」


「……はい」


「アルフェルト様を、どうかよろしくお願いします!」

 小さく頭を下げる大英雄。

「――はい。わかりました!」

 エインは頂点にしっかりと返答した。


「……ザムディン。帰るよ。急いで!」

 エインは変態に声をかけた。


「おう。苦労かけたな……」

 マンティコラに乗るザムディン――乗られる時にマンティコラさんが嫌そうな顔をしたのは気のせいだろうか?


 エイン、リナ、ザムディン、アルフェルト、イファン、ぎょうじい、キマイラ、宝玉。


 全部取り返した!!


 ――これでゼウセント王国には用が無くなった。


「行くぞ!!」

 エインが出発を指示!


 イファンの合図で、魔獣たちは上空に高く上昇した。



 ――先王は、オーバードの顔を見た。


 ――オーバードもまた、先王の顔を見た。


 ――ペコッ。


 ――頭を下げたオーバード。

 ――無言で頷く先王。




「まだだ!!空中防衛部隊。あいつらを撃ち落とせ~~~~!!!!!」

 なりふり構わず先王を殺そうとするレイウス。


 しかし、ドンドンドンドンと、昨夜聞いたことのある音がした。



 空中部隊のところに特大煙玉が打ち上げられた。



 ぐわあああああああ!!!???


「……テティシア様、任務完了しました」魔法で通話するフリューゲル。

「ご苦労様でした。撤収しなさい」

「――これで、イカ撃退の恩は一匹分返せたかしら」


 ――そう、彼女こそ王城の自室で今回の一件を見守っていた第一王女 テティシア・シルフィード。




 ――無事に王都を脱出した一行。


「よし、全部取り返した!!!」

「この勝負は、僕達の勝ちだあああああ!!!!!!」



「イエエエエエエエエエエエイ!!!!!!」





 ――こうして、エイン一行は、ゼウセント王国から旅立った。






 ――ゼウセント王国。


 観客たちも騎士達も騒然だった。


 石像が動き出して、騎士団長達が悉く負けた。


 すでに石像などは動かなくなっており、いつもの王国に戻っていたが、人心はそうではなかった。


 国民全員が何が起きたのか分からず、一部の者たちはパニックを起こし事態がより悪くなりかけていたその時、一人の男が一喝した。




「静まれーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」


「……此度の決闘、色々ありて混乱するのは理解できる――」


「しかし!!……決闘の勝利条件は、最後まで戦場に立っていた者である!!!!」



「故に――此度の決闘の勝者はこの私、グガ・グラウンズ・オーバードである!!!!!!!」


 振り上げた右手が、勝利の二文字を掴み取った。


 おおおおおおおおお!!!!!!!!


 オーバード!オーバード!オーバード!


 王国の市民全員が、オーバードの名を繰り返し叫んだ。



 ……オーバードは、国民たちの声を聞きながら、ある人の言っていたことを思い出した。



「オーバー……形無き国宝など重要ではないのだよ!……本当に大切なものはな、オーバー。…………国民の笑顔だ!……これ以上に勝る国宝なんて……この世に存在しないのだからな」


 ――私は、あなたの勅命に従い、国民の笑顔をお守りいたします……この命尽きるまで!!






「……何がオーバードの勝利だ!――先王は逃げ、魔人は取り逃し、形ある国宝まで取られた。アルフェルトがどっかいったのは良かったが、魔王も解放された。……残ったものなど残り滓だ!!!!」


「……おのれぇ、全てはあのエインとかいう奴の仕業だ……!!」


「……あいつは一体何なのだ!?全く情報がないとは……、レベル1でオーバードと戦えた。……間違いなくおかしい!」


「……まさかあいつは!?……私と同じ――()()を受けた者だというのか……」


 アデブ……アデプ・トポポは何食わぬ顔で聞いた。


「――それで?祭りは上手く行ったのか?レイウスよ」

「…………」

「我が右大将、小野レイウスよ。どうしたのじゃ?」

「……これは本当にしたくありませんでしたが、最後の手段に訴えるしかなさそうですね……」

「――?」



 闘技場の隅で固まって座り込む4人の騎士団長。


「いや~まいった!あれは強いわ~負けて当然だよアルバ~。自信もっていいよ~」陽気なジョン・ワリー。

「…………」萎びているアルバー。

「はぁ~気持ち良かった~!!」恍惚なマルアス。

「次は……次は負けねぇぞ。こんちきしょう」プルプルと拳を震わせるサラ・コバヤシ。



 闘技場の控室にて……。 


「……あの時……亜人の少女と一緒にいたのは、間違いなくウィスタリア様だった。――こうなることを期待していたのですね……オーバード!」フォールタリア。

「……不忠者と呼ばれても仕方ありませんが、こうなって良かったと思います」フリューゲル。

「……全ては右大将レイウスの仕業ですね。……左大将として皇国への任務が終わった今、これ以上は私が好きにはさせません。フォールタリア、フリューゲル、協力してください」左大将セレーネ・ラクティス。

「「もちろんですよ。セレーネ」」


「……王令が発令していた……国民に形無き国宝のことを話す必要ができたのではないか?」

 一人の人物が三人の元へとやってきた。

「……ウルオン!」

 それは、央大将のウルオンだった。

「……私もオーバーと同様、幼少よりわが君ギルガルディア様に仕えた騎士ですから……」



 無事に逃げ切ったウィスタリアとシーア。


「どうやら上手く行ったようだな。……エイン君。ありがとう!!」

「ウィス様、今後はどういたしましょうか?」

「そうだね……少し情勢が変わりそうだ。――できればどこかで潜伏したいが……」

「――なるほど。話は伺いました」


 ツルツル戦士長と三馬鹿が現れた。


「では、ウィスタリア様には、お店でしばらく働いてもらうのはどうでしょう?」

「……あそこで……か?」

「はい。シーアさんは、美人ウェイターとして、ウィスタリア様には恐縮ですが。女装してもらいます!!」

「………………」冷や汗を掻くウィス。

「そう――今日からあなたの夜の名前は――タリアちゃん!!!!」

「…………」また白目になったウィス。


 ――この日からウィスタリア元王子は、新たな世界の扉を開いてしまったのだった。







 ……一筋の光さえない暗闇の空間。


「……レイウス。ただ今戻りました」

「――ん」

 無垢な子供のような無邪気な声がした。



「それで……あの……大変申し訳ございませんが……一つお願いしたいことがございます」

「ん?」

「ゼウセント王国に――あれを送ってはもらえないでしょうか?」

「……ん……いいよ」

「――ありがとうございます!!このレイウス一生の悦びでございます!!」

「――でもね~」

「……はっ……」

 恐れおののきながら……続きを聞くレイウス。


「ボク――いまおいしいものたべてるの!いっぱいトカゲさんたべてるの!……だから、じゃまされたくないの!」


「はっ――大変失礼いたしました!!」

「――だからね?つぎダメだったら……きみ――もういらないからね?」

「……はっ!――肝に銘じておきます」





「……偉大なるセロさま」

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