表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/64

いざ行け 異世界-0

 なにもない まっしろなせかい 


 ぼくは 


 たったひとりだった



 うえもしたもなく みぎもひだりもなく ゆかもなくそらもない


 じぶんといういしきでさえ おかしなものだとおもった


 じかんさえもない このせかいに 


 ひとつのへんかが 生まれた



「…………ぇ……」


 どこかから、声のような音が聞こえた。


 僕の頭の中で響いてくる、ぶっきらぼうな声。


 それを聞くと、心のどこかで苛立(いらだ)ちが生じた。


「……おい!お前!!」


 ――ビクッ!?


 空間が震えるような声量に、僕は心臓が止まったかと思った。


「……え!?もしかして……僕……ですか?」


 この時、初めて僕は、自分の声を聞いた気がした。


「ふ~ん、なるほど……お前がそうか。随分と軟弱そうなやつだが……まあいい。そう変わりはいないからな~」


 謎の声は、何やら気怠(けだる)そうな態度だった。


 ありとあらゆる全てが謎だらけの世界――


 万が一にも、この声が消えてしまったら、僕は何も分からないままに置いていかれてしまう。


 危機感を覚えた僕は、何とかしないと――と、思った。


 僕は勇気を出して――言ってみた。


「あなたは誰ですか?ここはどこですか?僕は一体……何がどうなったのですか!?」


 (はや)る気持ちが、言葉を次々と送り出す。


「あ~も~うるさい!そう次々と質問するな!……あとで答える奴が答えるさ……では、早速だが登録開始な」


 声の主は、質問などお構いなしに、話を進めだした。


「登録?」


 よく分からないその言葉に、僕は緊張が走った。


「――んで、え~っと、ん~こいつは難しいとダメっぽいしな~…………おし!こんなもんだろ~」


 ピロン♪


 突然、どこかから何かの機械音が鳴った。



「はい。じゃあ、行ってきな――良い世界を!」


「……はっ?」



 フッ――。



 突然、足元から地面らしきものが消えた。


 いや、空間が出現したというべきか。


 あの声は誰なのか?登録って何だ?今の異変はなんなのか?ここはどこなのか?


 自分は……だれなのか?


 そんな僕の疑問は、この後、すぐに霧散(むさん)した。



 ――目を開けると……まるでスカイダイビングしたような青々(あおあお)とした大空があった。


 見渡せない程の広大な世界が、そこには広がっていた。

 

 遠い空に浮かんでいる島、真っ白に彩られた山脈、右の空にはかすかに見える月と左の空に昇っていく太陽、視界一面に見えた大陸と煌めく大海原が、飛び込んできた。


 

 きわめて雄大な光景に、心を奪われた。



 しかし、肌を貫く寒さと耳から送られる轟音で、今まで気付いていなかったことに……決して理解したくないことに……気付いてしまった。



 自分が、今、とてつもない速さで落下していること。



 そして、着地する手段がないことを……。




「あ……僕……死んだ……」


 




 もしも、願いが叶うなら―― 



 あなたは 



 何を願いますか?




 全てが思うままとなったら、


 あなたは、


 何を叶えてみたいですか?



 何を見て、どこかへ行き、何を成してみたいですか?



 それとも……



 何かを殺したいですか?


 何かを、ぶち壊してみたいですか?



 叶えられなかった思い


 残り続けた後悔


 やってみたかった夢



 

 もしも、願いが叶うなら――


 


 これは、そんなひとりを追いかけた――冒険譚である。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ