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ダンジョンと魔王?

街に帰ってから数週後、ノウムの街、ギルド前の宿屋、ラミア達の部屋。

「ところで、ツケってどうなったの?」

アーシェが昼食後の一服でラミア達に尋ねた。

「……聞かないで頂戴。やっぱり、変態は変態よ。ギルドに尻尾振って」

カースクイーンは、思い出したようで苛立って言う。

「あー、流石にアレはね。酷いよねぇ」

ラミアも、嫌そうな顔をしてカースクイーンに同意する。

「? ちょっと、ギルドに聞いても、分からないから、聞いてるんだけど?」

アーシェは、困惑して、詳しく知りたい為に、再度尋ねる。

 因みに、ツケは“ほぼ”、精算されたらしく、2週間前に、2人がダンジョンに行って、2日前に帰ってきたのは知っているが、どう精算されたかは、個人情報であり、まだ、婚約が確定されてないため、ギルドとしては、教えられないのである。

「……聞いたら、婚約破棄したくなるわよ? 良いの?」

カースクイーンは、悪戯っぽい顔で、アーシェに尋ねる。どうやら、普通には教えられない程難しい話なのか。

「……覚悟はしたわ」

アーシェは、固唾を飲み、覚悟を決める。

「あの変態、よりにもよって、人の金で、「喜べっ! 別荘だっ!!」 って、言いに来て、こんな紙切れを持ってきたわ」

カースクイーンは、そう言って、一枚の紙を、アーシェに差し出す。

「別荘? ……確かに酷いって、最後っ!?」 アーシェは、別荘という言葉に、首を傾げるも、差し出された紙を見て、納得し、溜め息混じりに感想を言い、最後の一文に目を輝かせる。

紙には、各国の首都や王都、しかも、それぞれ族長達の城や、家の近くにある、最高物件の購入。

更に、今いる宿屋を、ギルドから購入した事になっており、一部の金が、ギルドと国に、譲渡として入って、自然保護区の拡張や、保護区内の村への援助金、ギルド施設の改装等、勝手に使われた挙げ句。

最後に、アーシェ姫と婚約に当たり、ラミアとカースクイーンに、役職として族長達直轄のシュバリエ(騎士団長)、ただし、団員は今の所2人のみ、爵位として男爵バロンが与えられた。

「最後? 途中でうんざりして、見てないわ。何か良いのあった?」

カースクイーンは、態度が変わったアーシェが気になり、尋ねる。

「あるわよ? 役職と爵位っ!! これで他の貴族にも、納得させられるわ」

アーシェは、凄く嬉しそうに言い、2人に最後の一文を読ませる。

「……高貴な人程、不便なのね」

カースクイーンは、呆れた様子で言い。

「……凄く面倒くさそう」

ラミアは、意味を深く理解せず、思った事を言って、落ち込む。

「あ、あれ? そんなに嬉しくないの? 一般的には凄く名誉よ?」

アーシェは、2人の反応に戸惑い、理解してもらおうとする。

「妖精の私にとっては不要よ? 一般的な人種と一緒にしないで」

カースクイーンは、呆れたというより、不機嫌になって言う。

「毎日楽しく過ごして、美味し食べ物に、2人が側に居れば別に良いし」

ラミアも、基本的な考えを言って、その言葉に、2人の顔が赤くなったのは言うまでもない。「そ、それで、2人は今日、どうするの? 私は非番だから1日位一緒に居れるけど」

アーシェは顔が赤いまま、もじもじしだして、2人に尋ねる。

「やっぱりギルドね、着いて来なさい。今回は、どうするのか楽しみだわ」

カースクイーンは不敵に微笑んで、楽しそうに言う。

「よっと、乾燥も十分だし、仕返しはしないとね」

ラミアは、60cm程のパンパンに膨らんだ4つの袋を、部屋の奥から持ってきて、笑顔で言う。

「……2人を、敵にはしたくないなぁ」

アーシェは、ギルドがツケにする理由を、今、ここで理解し、ギルドに同情しつつ、苦笑いで言う。

こうして3人は、軽く談笑しながら、ギルドに向かい、中に入る。

「はい、乾燥終わったから持ってきたよ。鑑定お願い」

ラミアは、真っ直ぐ受付カウンターに行って、4つの袋をカウンターに置き、笑顔で言う。

「…………マジですか?」

ラミアの目の前、受付カウンターに居た、受付嬢のエリルは、カウンターに置かれた袋を見て、笑顔を引きつらせて、ラミアに尋ねた。

「マジマジ、カースちゃん曰わく、変態にお願いしたのが悪かったけど、勝手に色々やった仕返し、だって」

ラミアは笑顔のまま、近くの席に行ったカースクイーンの伝言をエリルに言う。

「……少々、お待ちください」

エリルは袋を台車に乗せ、苦笑いで言うと、奥に消える。当然、ギルド長にアイコンタクトし、ギルド長も奥に消えた。

「……あれ、一週間前のだよね? 最初は何個、個々に持って行ったの?」

アーシェは、ふと気になって、同じ席に座っている、カースクイーンに尋ねる。

「確か6つよ? 2週間前に入って、帰って来たのが2日前、下層モンスターだから、かなりいくわよ?」

カースクイーンは、不適に微笑んだまま、楽しそうに教える。

「あれ? …………つまり、下層までの往復を、たった12日でやったの? ちょっと仕返しが、本気過ぎて笑えないかな」

アーシェは、カースクイーンの言葉に首を傾げ、シンプルに考えて、答えに行き着き、苦笑いを浮かべて言う。 つまりは、どうやったかは不明だが、下層まで約6日、多分、寝るとき以外は全力で移動し、下層に到着、数分でフロアのモンスターを一掃し、一カ所に集め、皮を剥いで、同じように帰り、ギルドに寄って、6つの袋を先に渡し。部屋に着くと、その反動か睡眠不足? で二日間眠り続け(昨日、一昨日と部屋に上がり、寝顔観賞したので、ここは把握済み)、現在に至る。という事なのだ。

 果たして、仕返しでそんなダンジョンの下層到達、最短記録を狙うような(というか、ラミア達の記録に更新された)、事までするだろうか? コレは、2人の怒りと、落ち込み具合を、良く表した結果なのだろう。

「あら、私達は、何事も本気よ? 手を抜くのもね」

カースクイーンは、そんなアーシェの心情等知らず、悪戯っぽい笑みで言う。全く笑えない。

「私、2人の事大事にするね。でも……やりすぎな気もするよ?」

アーシェは、カースクイーンの手を握って、新たに決意して言うも……やはり、現状に対しては、同情が大きく、苦笑いを浮かべて尋ねる。

「ただいま、またツケだけど、ツケのおおよその金額聞けたよ?」

ラミアは、戻って来て席に着き、笑顔で言った。


「あら? 珍しい、幾らかしら?」

カースクイーンは少し目を開け、驚いたようで、笑顔で尋ねる。

「エーデルおじさんが、吹き出したのと、だいたい半分位だって」

ラミアは笑顔で言うが、金額自体は言ってない。

「国王が吹き出すって、ねぇ? 前はどの位なの?」

アーシェは、例えでも驚き、思わず尋ねた。

「ん? 受付嬢のエリルは、一生遊んで暮らしても、かなり余裕がとある、とか、言ってたかな?」

ラミアは、思い出しながら、やはり金額ではなく、例えで言う。

「……なんか、凄い人達と婚約しちゃったなぁ」

 アーシェは、苦笑いで言い、別に嫌いとか、好きじゃなく、住む世界が違う気がして、紙を見ても思ったが、この2人、お金の価値を分かってない。

「あら? じゃあ、婚約を破棄してくれるの?」

カースクイーンは、アーシェの言葉に目を光らせ、笑顔で言う。

「破棄はし・ま・せ・ん。ただ、2人だけ、周りと住む世界が違う、って感じただけだから。私が2人に染まるか、2人が世界に染まるのかって話ですよ?」

アーシェはラミアを見て、笑顔で言い、次に、カースクイーンを見るが、目は笑っておらず、やはり、2人の視線が火花を散らしている。「とりあえず、何か頼もう?」

ラミアはそう言って、近くの給仕係りを呼ぶ。

「…そう言えば、アレ近いわよね? アーシェは予定あるわけ?」

カースクイーンは、ふと、視線を壁にある日付に移し、アーシェに尋ねる。

「ありますよ? 1日目は警備で、2日目が城で晩餐、3日目が空きです」

アーシェは、カースクイーンの視線に釣られ、日付を見て、質問の意図を理解し、予定を教える。

「私達、お店出してるから、暇になったら来なさい。こき使ってあげる」

カースクイーンは、予定を聞くと、ニヤリと笑って、笑顔で言う。


「……頑張った、ご褒美の方が、欲しいんだけど?」

アーシェは、苦笑いを浮かべて言う。タダで、こき使われる気はないという、意思表示である。

「あ、紅茶3つに、ケーキとクッキーお願い」

給仕係りが来て、ラミアは、適当に注文すし、給仕係りを下がらせる。2人が注文すると、思ってないようだ。「え?」

「へ?」

ラミアが給仕係りを下がらせ、その瞬間、2人は固まった。何故ならば、まだ注文しておらず、このままでは、ラミアの幸せそうな、食べ顔観賞しかなく、あーん、が出来ないのである。

「お待たせしっ!?」

ラミアは楽しみに待ち、2人が落ち込んでる間に、給仕係りが、頼まれた物をテーブルに置こうとした時、ギルド、いや街が、瞬間的な震度3~4の縦揺れに襲われ、注文の品を落としてしまう。

「あーーー-っ!? ……僕のケーキが」

ラミアは、床に落ちていく、ケーキを見て叫び、慌ててキャッチしようするも、床に落ちて、ぐしゃっとなったケーキを見て、泣き始めながら言う。

「「……かな? 今、地面揺らした奴(人)」」

カースクイーンとアーシェは、ガタッと、同時に立ち上がり、殺気立ちながら、周りを睨みつけて言う。

「あのぅ? 無料のお代わりを持ってきますが、3人前で良いですか?」

誰もが動けず、発言も出来ない状況で、受付嬢のフィーリアが、呑気に笑顔で、ラミア達3人に話しかける

「無料お代わりっ!? 食べるっ!!」

ラミアは、一気に笑顔になって、元気よく言う。

「「じゃあ……それで」」

2人は、殺気立ったまま、そう言って席に座る。


「畏まりましたぁ」 フィーリアはそう言って、厨房に向かい、歩いていく。


「先輩、よく動けますね?」

エリルは、注文を終え、戻ってきたフィーリアに尋ねる。

「? 何が? それより、地震なんて珍しいわよね。しかも、一回だけなんて」

フィーリアは首を傾げ、2人の殺気など感じてないのか、彼女は不思議そうに、揺れについてのみ言う。


「……注文受けた先輩が、品を運んで下さいね? 今、誰もあそこに、近づけないんで」

エリルは、珍しく考え込むフィーリアに、一応、忘れないように言う。

「もしかして……もしかすると? え? 何?」

フィーリアは、目を細めて、ブツブツと考え始め、エリルの言葉が、聞こえなかったのか、不思議そうに尋ねる。

「だ・か・ら、先輩が、品を、あそこに、運んで、下さいっ!」

エリルは、ちょっとイラっときて、大きめの声で、再度フィーリアに言う。


「はいはい、分かりましたぁ。じゃ、ちょっと早馬出してくるね?」

フィーリアは笑顔で言って、のんびりと、ギルドの裏口に行ってしまった。

「ちょっ!? 先輩っ!!?」

エリルは、フィーリアの行動に驚くも、持ち場を今、離れる訳にはいかず、叫んで呼び止めようとするも、無意味だった。

しばらくして、フィーリアは、のんびり戻って来て、注文した品を受け取り、3人の所へ向かう。

「お待たせしました。ごゆっくり食べてね?」

フィーリアは、紅茶、クッキー、ケーキの順で、テーブルに置き、笑顔で言って帰っていく。


「じゃ、食べよう」

ラミア、言いながらも、ケーキにフォークを突き刺し、一気に食べる気である。

「「…………(ゴク)」」

そんな中、カースクイーンとアーシェの2人は、殺気がなくなり、ラミアを注視しながら、急いでケーキを、一口サイズにフォークでカットし、即座に「あーん」が出来るよう、まばたきすら我慢して、付け入る隙を固唾を飲んで狙う。

「……ふぅ、次は」

ラミアは、ケーキをたったの2口で食べ、次に狙いをクッキーに定める。

「(キュピーンッ)はい、あーん♪」

その瞬間、カースクイーンの目が光った気がした、カースクイーンは、フォークで刺していたケーキを、ラミアに差し出して言う。

「良いの? ん、あーんっ」

ラミアは、目を輝かせて、カースクイーンを見て、すかさず食べる。

だが、アーシェが間に入ろうとしたが、椀子そばのように、カースクイーンが次々と、一口サイズのケーキをラミアに向けて運び、ラミアの食べるというより、飲み込んでいく。

「あ、あの、私のも、あ、あーん」

アーシェは、カースクイーンのケーキが、皿から無くなった瞬間を狙って言うが、初めてであり、人目も十分で恥ずかしいが、意を決して言い、フォークに乗ったケーキを差し出す。

「あーんっ!」

ラミアは、カースクイーンのケーキを食べ終え、アーシェから、ケーキが差し出されたので、そのまま食べる(飲み込む)。

「~~っ、どんどんあげるね?」

アーシェは、「あーん」がようやく出来て、感激したが、ラミアが雛鳥のように、口を開けて待ってるので、慌ててケーキをフォークで刺して差し出し、笑顔で言う。

ここで、しばらくこのイチャイチャが続くので、周りの見解を述べておこう。

曰わく。

「ギルドじゃなく、カフェでやれ」

「雛鳥みたいで可愛い」

「あれじゃ、ただの餌付けじゃね?」

「あーん出来て良いなぁ」

「仲が良いですよねぇ」

「……彼氏欲しい」

「とりあえず、酒をくれ」

「俺には分かる、ありゃ、差し出す方が凄いんじゃない、食べてる奴の速度がヤバいんだ。」

「俺は見たんだ。奴はケーキを食いながら、クッキーにまで手を出していたのをっ!」


以上、周りの冒険者や、ギルド職員、受付嬢の見解でした。

地震? があった日から数日後の昼過ぎ。

ラミア達は、受付嬢のエリルに呼ばれ、応接室にやって来て、現在、紅茶を飲みながら、待たされている。

「お待たせしました。こちらが依頼主です」

エリルが、依頼主を連れて戻って来て、3人は依頼主、国王の右腕と言われる書官を見つめる。

「お三方、お久しぶりです。今回、厄介な事が起こりました。」

書官は淡々と言い、席に座って、3人を見つめる。

「僕、帰りたい」

ラミアは受付嬢を見て、嫌そうな顔で、素直な気持ちを言う。

「ダメです」

が、エリルは笑顔で、きっぱりと言い、部屋の鍵を閉める。

「一体、何事かしら?」

アーシェは黙って書官を見ており、ラミアはもう、ダメなので、カースクイーンが、諦めた様子で書官に尋ねた。

「まず、お三方には城に来て貰います。今、すぐに。一応、馬車があるので、詳しい話はそこで」

書官は冷静な顔で言うと、右手を上げ、受付嬢がドアを開けると、兵士が数人入り、一番、駄々をこねるラミアを連行させる。

「……行きましょうか」

書官はそう言って、立ち上がると応接室を後にし、残った2人は、殺気立って書官の後に続く。

「……御冥福を祈ります」

エリルは、殺気立った2人を見て、書官及び、連行した兵士に向けて言う。


書官と2人は馬車に乗り込むと、嬉しそうに、大量のお菓子を食べるラミアが居て、2人の殺気は消えたが、書官の合図で、馬車は通常よりも、早いペースで進み、黙っていた書官が、口を開く。

「まず、我が国に新たなダンジョンが発生しました。この前の揺れの原因です。」

書官は、前置き的に話を始めた。だが、次の瞬間、ラミアが殺気立ち、これには書官は黙った。

「ねぇ? そのダンジョン潰して良い? 良いよね? ケーキとクッキーの恨み~~」

ラミアは、根に持ってないようで、持っていた。コレには、カースクイーンとアーシェも驚いていた。

「構いません。しかし、問題が発生しました。ダンジョンからモンスターが出て、現在、“侵攻”して来てるんです。更に、魔力による交信に近い物で、相手は魔王を名乗り、宣戦布告して来ました」 書官は、ラミアの殺気で、冷や汗を流し、震えるが、努めて冷静に、現在起きている事を告げる。

「それで、彼女と私の他にも、強者を集めて乗り込むわけ?」

カースクイーンは、特に驚かず、冷静に考えて、書官に尋ねる。だが、そこにアーシェは含まれていない。

「はい。国中、国外にも早馬を飛ばしています。アーシェ姫は騎士団長として、侵攻を受けている街に行き、防衛に当たって貰います。」

書官は頷いて肯定し、何か言いたげなアーシェに向かって、役割を教える。

「そう言うことならば、しかし、私もランクAです。一体、どのランクから集めて居るのですか?」

アーシェは、書官の言いたい事は分かる。しかし、自身も上位には入ると思ったために、尋ねる。

「最低で、ランクSに届きそうな者、と言えば納得しますか? 生憎と物量戦なので、こちらは、防衛に力を入れなければいけません。更に詳しい話は、城に着いてから、別々に行います」

書官は、それだけ話、後は絶対に言わない、という雰囲気で口を閉じる。

ラミアは、話が終わると、というか、難しそうな話と思ったようで、途中から殺気を無くし、美味しそうにお菓子を食べている。

カースクイーンとアーシェは、城に着くまで、そんなラミアをジッと眺めて癒やされ。

 馬車は、不眠不休で、たったの2日だけで、城に着いた。

「では、ラミアとカースクイーンは、他の方が来るまで、客室待機、アーシェ姫は、国王直轄の第8騎士団と共に、準備が整い次第、一番侵攻を受けているアハートの街へ行ってもらいます。では、私は仕事があるので」

書官は、言うべき事だけを言って、城の中へと、走って行った。

「とりあえず、彼女を客室に、運びましょうか」

アーシェは書官を見送った後、寝ているラミアの方を見て言うが、そこにラミアはおらず、既に、カースクイーンによって、運ばれていた。

『貴女は、貴女のすべき所に、向かいなさい。彼女の事は私に任せて、死んだら承知しないから』

カースクイーンは魔力による交信で、アーシェに伝え、ラミアと共に、影に沈んで消える。

「……絶対、2人きりで、デートしてみせます」

アーシェは、カースクイーンの言葉の中に、嫌みを感じ取って呟き、急いで第8騎士団の所へ向かう。 数時間後、アーシェが合流した、第8騎士団は、直ぐに王都を発って、アハートの街に向かった。

ラミア達は翌日の朝、到着してる者のみで、謁見の間に集められた。

「……スゥ……スゥ」

が、集められ、全員が片膝をついて、王を待つ中、カースクイーンに無理矢理着付けされ、連れてこられたラミアは、未だに熟睡しており、ラミアを知る人は呆れ、知らない人は、蔑んだ目や、好奇の目線を送り、ざわつく。

「王が来られるっ! 頭を垂れよっ!!」

少しざわつくメンバーや兵士に、書官がやって来て、告げる。

「楽にさせいっ! 面倒くさい。さて、少しだが、集まっておるな?」

白髪の初老の男、国王・エーデル・シュタイン・クロスロードが、謁見の間に入り、早々に言って玉座に座る。

「バカですか? 少しくらい、族長としての威厳を、表に出してください」

書官は呆れながら、国王に対し、きつい言葉をかける。

「……まぁ、作戦の概要や、色々方針の話じゃ、意見があればどんどん言え」

エーデル王は、書官を一瞥して無視し、話を進めて言う。

「今、寝てる奴が居るが良いのですか?」

まず、大剣を背負った大男が、エーデル王に意見する。

「それなら、私、カースクイーンが聞いてるから、問題ないわ。寧ろ、足手まといが多い気がするけれど」

カースクイーンは、ラミアの影から出て、片膝を突いたり、王を敬わず、堂々と立ちながら、苛立った様子で言う。これには、場が騒然というか、青ざめた。相手は気さくだが、王は王である。あまりにも無礼な態度に、彼女を知らない兵士が、押さえようとするが。

「止めぬかっ!! 聞こえなかったか? そこに居るのは全族長直轄の者、闇の妖精、そのクイーンの一角ぞ? 王と女王、立場は同じじゃ、寧ろ此方が、礼を尽くさねばならぬわ。……すまぬな、カースクイーン、そなたの契約者は、朝が弱かったの」

エーデル王は、兵士を一喝し、カースクイーンとラミアが、どういう立場の者か、全員に教えるように言い、カースクイーンに謝罪する。その瞬間、逆に周りが驚いた様子で固まる。

「ありがとう。それじゃあ、私から最初の意見よ。見つけた宝は山分け、勿論、エーデル王も含めて、ただし、死んだ奴にはやらないわ。次に、移動手段は馬車で行きたいわ。最奥までの移動が楽だし、それなら2週間もあれば、全て終わるでしょう」

 カースクイーンは、エーデル王に礼を言い、次に意見という名の要求をして、目標を掲げる。

 だが、攻略メンバーは、山分けに賛成が多い、が、移動手段や攻略日数に、誰もが驚愕した。

「ちょっと待て、クイーンだか、何だか知らねぇが、そりゃ無理があるんじゃねぇか?」

双剣使いの若い男が、カースクイーンの要求や目標に、異議を申し立てる。これには、殆どのメンバーが同意した。

「あら、エーデル王なら分かるわよね? 身分を隠して、一緒にダンジョンの下層に、潜った仲ですもの。50層辺りで、私と彼女が、モンスターを一掃するのに、かかった時間、教えてくれるかしら?」

カースクイーンは、笑顔でエーデル王を見て、この場の全員に実力差が分かるよう、説明を、狼狽えているエーデル王に尋ねる。

「その話は秘密と言ったじゃろ。……はっきり言って、ラクスの毒舌女王より早い。分かりやくなら、一分はかからん。しかも、宝も根こそぎ奪いおって、あまりストレス発散にならんかったわ」

エーデル王は、書官に睨まれ、狼狽えながらも、カースクイーンの求める答えを、きちんと言い、愚痴る。

「それは悪かったわ。で、私と彼女だけじゃ不安、というより、体裁や保険として、メンバーを集めた。という事かしら? 副官さん」

カースクイーンは、満足げに言って、王を睨みつける書官に尋ねる。

「えぇ、帰ってきたら、詳しく話を聞きたいので、生還してください。」

書官は、笑顔でカースクイーンを見て言い。楽しみが増えたかのように、活き活きとしている。

「えぇ。その時は、ちゃんとエスコートしてもらうわ。今度、彼女にあんな事したら、しようとした時点で、殺してあげる」

カースクイーンは、笑顔で書官に言い。根に持っていたようで、軽く殺気立っている。

「コホンッ……恐ろしい会話はその辺で、そこで寝ている契約者が起きれば、馬車移動なんて余裕だしの。カースクイーンの意見は概ね了解した。それで、作戦の説明をしたいんじゃが?」

エーデル王は咳払いし、2人の会話を、これ以上、聞きたくないので終わらせ、カースクイーンの要求を飲み、理由も簡潔に説明して、作戦に移ろうとする。

「えぇ、私は問題ないわ」

カースクイーンは頷き、主導権をエーデル王に返す。

他のメンバーからは特に意見は出ず、エーデル王は、作戦を話す。

「まず、出発はメンバーとサポーターがそろい次第……何じゃが、サポーターが必要な者は、自ら雇ってくれ。はっきり言って、近場の強いサポーターは、先に軍や騎士団が雇い入れ、儂は知らんし、ギルドでも、依頼を出しているが捕まらん」

エーデル王は、困った様子で話し、カースクイーンと寝ているラミア以外に動揺が走る。それはそうだ、いきなり連れてこられた身で、サポーターなんて、連れてきてない。

「……はぁ、ランクC、又はD以下の雑魚で良ければ、ノウムの街に、何人か居るわ。クリフが助けを求めてる、なんて言えば、即決のはずよ?」

カースクイーンは、凄く嫌そうな顔で、エーデル王、及び、動揺しているメンバーに言う。

「何じゃと? ……もしかして、ラ……んん゛っ、カリナ嬢は、女性にモテるのか?」

エーデル王は、意外そうにカースクイーンを見て、ラミアと言いそうになるが、見た目から、カリナに呼び変えて尋ねる。

「えぇ。ノウムの街では、主に、男装しているから余計ね。例え、一時の仲間でも、私の彼女に触れたら、紳士やゲス野郎の男性、淑女やビッチの女性でも殺すわ……こんな風にね」

カースクイーンは、笑顔のまま言って、愛おしそうにラミアを見た後、エーデル王と書官以下に、一瞬で、影をランスにして寸止めさせ、全員を脅す。

「実力は分かったな? カリナはカースクイーン以上じゃ、死にたくたければ従え。カースクイーンとカリナ嬢以外は、出て行け、内密の話がある」

エーデル王は、カースクイーンの援護として、事実を教え。ラミア達以外の退出を促す。その時には、影のランスは無く、元の影に戻っていた。

「こりゃ、楽勝かもな」

「さて、どうだろうか」

「はぁ、先が思いやられるわ」

「カリナさん、カースさん、また後ほど会いましょう」

メンバーは、それぞれ呟いたり、話したりしながら去り、兵士達も出て行く。

「……で、わざわざご指名の話は何?」

カースクイーンはメンバーを見送り、知り合いの魔法使いが、話しかけて来たので、軽く会釈だけで済ませ、扉が閉じると、エーデル王に、向き直って尋ねる。

「マジで秘密の話を、コイツ(書官)が居る前でするな。まぁ、愚痴は追々として、出発の時、侵攻中のモンスターを、あらかた一掃して欲しい。実際問題で、アハートとデーイスの街が攻められ、更にラクス泉国、プラトゥム原国も侵攻されておるからの……頼むっ!」 エーデル王は、立ち上がり、書官を指差して注意するが、睨まれたので止め、カースクイーンに状況を話し、土下座して頼む。これを見た書官は、目を見開いて、固まった。

「……仕方ないわね。立ちなさい、出発時に、最大射程で一掃してあげる。後、モンスターの特徴をまとめた物を、後で持ってきなさい。調理法や、貫く場所の参考になる。後は……死者の数もお願い、多いなら敵の方に投げ捨てといて、上手くすれば私の本領を発揮してあげる。サポーターの説明は任せるわ、騙しても良いし。私と彼女は先にアハートの詰め所に行くわ。今から少しだけ、モンスターを一掃してあげる。」

カースクイーンは、エーデル王を立たせ、頼みを聞き入れつつ、ある注文をすると、来たとき同様に、ラミアと一緒に影に沈んで消える。

「……すまぬな。助かる」

王は頭を下げて、影に沈むカースクイーンに言い。書官は急いで、カースクイーンの求めた物を集めに走る。


一方、アハートの街、第8騎士団防衛線、後方休憩所。

「はぁ、着いて早々に戦闘とか、しんどい」

アーシェは、土汚れの着いた鎧を着て、土汚れを払いながら愚痴る。今は、後ろに下がって休憩所に居る。正直に言えば、考えが甘かった。物量戦と聞いていたが、見渡す限りのモンスターには、流石に目眩を覚えたが、魔法使いが居て、良かったと思う。

「あら? まだ生きてたのね。助けに来たわ、彼女をお願いね」

アーシェの背後から、知ってる嫌みが聞こえ、慌てて振り向くと、カースクイーンが、寝ているラミアを連れて、ニヤニヤしながら言い、ラミアをベットに寝かせている。

「何で此処に? 王都で攻略メンバー待ちじゃないの?」

アーシェはキョトンとしながら、カースクイーンに疑問を尋ねる。

「あらあら、それだと遅すぎるから、直接、私が来たんじゃない」

カースクイーンは笑顔で言い、休憩所を出て行く。

「でも、かなりの数よ? しかも多方面に大量に居るし、厳しすぎない?」

アーシェは、1人でやろうとするカースクイーンを、心配して尋ねるが、カースクイーンは、無視して行ってしまった。

「フフッ、疲れる位で怪我はないわ」

カースクイーンは、アーシェの心配に、軽く笑い、すぐさま、射程圏内に入ったモンスターを、影を操り、串刺しにしていきながら、モンスター群の方へ歩き、近くの影に向かう。

「……凄い」

アーシェは、カースクイーンの後を追ったが、モンスター 群の状況を見て、驚いて呟く。

「もう、良いわね。私の魔力をあげる。踊りなさい、カオス・ヨクラートル」

カースクイーンは、モンスター群、特に死体に近づくと、魔力を放出しながら魔法を展開し、発動させる。

魔法が発動した瞬間、死んだ筈のモンスター達が起き上がり、目を紫色に光らせ、黒いもやが体を包むように発生し、街ではなく、モンスター群に向かい突撃する。

「グォォォオオオッ!!」

「ガァァァアアアッ!!」

モンスター群は混乱し、乱闘とかし、街に侵攻所ではなくなった。

「さ、次はデーイスね」

カースクイーンは、呟くと、近くの影に入り、沈んで消えた。


その後、カースクイーンは、デーイスの前線、それぞれの街に侵攻中のモンスター群、ダンジョン入口と周り、同じように、大量に殺して、自らの傀儡にして暴れさせ、魔力をかなり消費して、アハートの第8騎士団、後方休憩所に戻って来た。


「はぁ……しばらくは無事ね。……あなた、近くにアーシェは居るかしら?」

カースクイーンは、ラミアの側に行き、近くの兵士、多分騎士団員にアーシェを尋ね、アーシェを呼んで貰う。


「カースさんっ!? あんまり、無茶苦茶しないで下さいっ!」

少しして、アーシェはやって来て、カースクイーンに抱きついて言う。

「あら? 無茶ではないわ。暫くは余裕のはずよ? 武器を貸して頂戴。彼女同様に加護を与えてあげる」

カースクイーンは、アーシェに離れるよう、力弱く押し、笑顔で言う。

「別に良いけど、何するの?」

アーシェは、カースクイーンから離れ、一番使う剣をカースクイーンに差し出す。

「じゃ、ワスターティオー・ウィータ・モルス・ウェネーヌム・モルブス・ブラーガ・コンタギオー・イムプレカーティオー。……これで、良し」

カースクイーンは、剣に両手をかざすと、呪文? を唱え、魔力を剣に送り、呪文? を唱え終え、魔力を送り終えると、アーシェに笑顔で言う。


「えぇと、殆ど初めて聞いたけど、何をしたの?」

アーシェは、黒紫色になった剣を見て驚き、カースクイーンに尋ねる。

「ちょっとした付与よ。えぇと……生と死を奪い、傷から病気と毒を与える。つまりは呪いよ」

カースクイーンは疲れた顔をして、アーシェに分かるように説明し、ベットで寝ているラミアに、抱きついて寝る。

「なるほど、って!? ……今回は譲ってあげる」

アーシェは納得し、カースクイーンの行動に驚くが、頑張ったのは事実なので、そのまま寝かせ、剣を鞘にしまう。


「……ん? おはよ」

が、タイミング悪く、ラミアが起きた。

「おはよう。食事持ってくるから、大人しく待ってて、クイーンが寝てるから」

アーシェは、起きたラミアに、優しく微笑んで言い、食べ物を貰いに行く。


「……ここどこ?」

 ラミアは、寝ぼけながら周りを見て、ぽつりと呟く。色々探ったり、顔を洗いたかったが、カースクイーンが隣で寝てるため、諦める。「ちょっと、作る時間無いから、悪いけどこれ食べて」

しばらくして、アーシェが戻り、アーシェは、ラミアに簡単なスープとパンを、差し出して言う。

「ありがとう、貰うね。ってあれ? アーシェお姉さんだ」

ラミアは、受け取って食べると、目が覚めたか、今頃、アーシェに気づいて言う。

「クイーンが、あなたも連れてきたの。ここは、アハートの街の外、第8騎士団の後方休憩所よ。クイーンは今、ちょっと疲れて寝てるから、騒いじゃだめよ?」

アーシェは、ラミアに現在地と、クイーンが寝てる理由を、簡単に教える。

「ふうん……アーシェお姉さんと、カースちゃんは頑張ったんだね」

ラミアは、残ったご飯を食べ終え、アーシェの姿と、カースクイーンを見て、笑顔で言う。

「頑張り具合は、クイーンに負けるけどね。カリナさんは何か聞いてる?」

アーシェは苦笑いで言い、ラミアが何か情報を、持ってないか尋ねる。

「? ……ずっと寝てたから分かんない。だけど、何となくやることは分かるよ?」

ラミアは、アーシェの質問に、首を傾げて答え。抱きついてるクイーンを離して、ベットから起きる。

「一緒に居なくて良いの? 後で荒れるわよ?」

アーシェは、ベットから起きたラミアに、苦笑いを浮かべて尋ね、腕にくっ付く。カースクイーンは、寝ると何もして来ないのは、実証済みだ。

「うん、流石に何もしないのは、悪いからね。それに、昼夜が逆転してちょうど良いし」

ラミアは笑顔で言い、前線に向かって歩き出し、射程内に入ったモンスターを、カースクイーンがやったのと同様に、影で串刺しにしていく。

「本当に、カリナさんもクイーンも、殲滅戦が得意ですよね」

アーシェは、ラミアにくっついたままで、幸せそうに笑顔で言う。

「そうだね、でも、身体が鈍るし、汗はかきたくないから」

ラミアは、肯定し、笑顔で言うと、影で攻めるのを止め、自分の影から、細い剣が収まっている鞘、上下に刃が着き、普通よりもかなり大きな弓と、大量の矢が入った矢筒、投擲ナイフを取り出していく。アーシェからすると、初めて見る光景であった。「……カリナさんって、肉弾戦や射撃戦もやるのね」

アーシェは、武装(武器だけだが)していくラミアを見て、驚きつつ、一緒に肩を並べて、戦えそうなので、嬉しくなって笑顔で言う。


「んー、まぁ、最終手段かな? カースちゃんがダメで、僕自身がダメだったら、相性の違いだけど負けだしね」

ラミアは、そう言いながら、大弓に矢を3本つがえ、モンスターに向け、発射しながら言う。

「……その弓、引くのに力、結構いるんじゃないの?」

アーシェは、弓のしなりと、引く長さを見て、ラミアに尋ねる。

「そうでもないよ? 腕力じゃなくて、筋力だから。まぁ、お母さんの受け売りだけどねぇ」

ラミアは、笑顔でそう言い、今度は投擲ナイフをモンスター群に向けて投げる。

しかし、命中はするが、普通なら構わず向かって来るのに、掠っただけのモンスターすら倒れていく。

「えぇと…当たるだけで倒れるのは、クイーンの付与効果? それともカリナさんが何か付与したの?」

アーシェは、倒れるモンスター達を見て思わず尋ねる。ラミアが倒すので、自分の仕事がない状態なのだ。

「うん、僕だよ? カースちゃんがこっちは得意だけど、自分でやった方が、分かるからね」

ラミアは、笑顔のまま、会話を楽しみながら、モンスター達を次々倒す。

 だが、物量戦には流石に分が悪いか、投擲ナイフがなくなり、矢の本数が半分をきると、矢筒を影に落として仕舞い、大弓の弦を外し、片刃の細い黒色の剣を抜く。

「ようやく……肩を並べて戦えそうです。負けませんからね?」

アーシェは、剣を抜くラミアを見て、ようやく暇な時間は終わり、一緒に戦場を舞える事を、嬉しそうに言う。

「うんっ! 何か皆こっち来るし、背中は任せたよ?」

ラミアも嬉しそうに言い、本能的ならば逃げるだろうが、強敵と見なした軍隊のように、ラミア達に向かい、モンスター群が迫り、最後の言葉が合図になって、2人はモンスター群に突撃した。

しかし、あらかた倒すと、カースクイーンの行動により、モンスター群の増援が鈍り、その瞬間を狙って、ラミアが、カースクイーンと同じ魔法を発動し、モンスターの死体群を生み出し、ダンジョンに向けて突撃させる。

「はぁ……はぁ、……クイーンの付与、強力ね。カリナさん、休憩所で休みましょうっ!!」

アーシェは、肩で息をし、周りを見ながら呼吸を整え、ラミアに声をかける。

「お腹空いた~……ご飯沢山あるかな?」

ラミアは、お腹を押さえて、アーシェの元に行き、アーシェは心配したが、ラミアのお腹が盛大に鳴り、ラミアは、少し恥ずかしそうに言った。

「成果を上げたんだから、沢山あるわよ」

アーシェは笑顔で言い、近くにあったモンスターの腕や、足を拾っておく。ご飯が有っても無くても、手料理を、食べさせたくなったからだ。

が、休憩所に戻ると、ほとんどの第8騎士団が居て、2人は胴上げされ、終わってはいないが、祝勝会に近いムードで、軽い宴会になった。

「うるさいわね? 妖精が寝てるの。少しは静かにっ!? ちょっ!? 止めなさいっ!!?」

あまりの喧騒に、カースクイーンが起きて、文句を言うと、ラミア達同様に胴上げされた。

ひとまず、軽い宴会は終わり、ラミアは満腹感に満足げで、アーシェは苦笑いを浮かべ、カースクイーンは呆れてしまい。

「流石に……お酒はダメね。持ち込んだの誰かしら?」

アーシェは、何名か、酒に潰れている団員を見て、頭を抱えて言い。

「私はもう少し寝るわ。起きたら彼女と交代するから、詳しい話はその時に」

 カースクイーンは、不機嫌なまま、ベットに向かわず、ラミアの影に沈みながら言う。

「……お風呂入って来て良い?」

そんな中、ラミアはマイペースに街の方を指差し、アーシェに尋ねる。

「確かに、私も入れるなら、入りたいけど……一番近い詰め所に確認してみるね?」

アーシェは、ラミアの一言に納得し、ラミアに待つように、行き先を告げ、近くの女性団員を探しに行く。

「風呂ですか? 元気な方は、皆、後方に下がった時に、入ってますよ?」

アーシェが見つけた女性団員は、意外そうな顔をして、アーシェに教えた。……後方待機って、休憩以外の意味もあったのか。

「ありがとう。所で……今誰か入ってる?」

アーシェは、ラミアを他人に見せない及び、独占して見るために、真剣な表情で尋ねる。

「今? ……アーシェ姫と連れの方が暴れてる時に、皆で入って、その後は、酔い覚ましと、警戒にあたる人が入った後だから……多分居ないと思いますよ? 私が最後でしたし」

女性団員は軽い感じで、必要ない事まで教えてくれた。まぁ、助かるので、良しとする。

「ありがとう。それじゃあ、お勤めがんばって」

アーシェは、軽く礼を行って、女性団員と別れ、ラミアの元に急いで戻る。「あ、アーシェお姉さん、どうだった?」

ラミアは戻ったアーシェを見て笑顔で尋ねる。しかし、ラミアはこれまで、少しも汗をかいていたい。


「入れるそうよ。しばらくは大丈夫そうだし、のんびり浸かりましょうか」

アーシェは、下心丸出しで、笑顔でラミアを見て言う。

「ごめんなさいね?、私も入らせてもらうわ」

だが、ラミアの影から、カースクイーンが頭だけ出して言う。実は寝る直前、ラミアのお風呂発言が聞こえ、起きていたのだ。

「ク、クイーン……つ、疲れてるなら寝てて良いのよ?」

アーシェは、びっくりしながらも、笑顔を引きつらせて、気遣うように言う。

「あら、残念。こうしてたら、あらかた(実際には半分位)回復したから大丈夫よ。彼女にも説明しないとだし」

カースクイーンは、頭だけ出した状態のまま、笑顔で言い、アーシェを牽制する。

「とりあえず、早く行こ?」

ラミアは、言い合う2人に、ちょっと不機嫌そうに言う。よほど入りたいようだ。

「じゃあ、案内するけど……クイーンは、到着するまで出てこないでね? みんな怖がるから」

アーシェは、渋々了解し、カースクイーンに、影に入ってるよう、お願いする。

「仕方ないわね。彼女も、歩きづらいだろうし」

カースクイーンは、ラミアの為という事にし、影に消える。

「よし、行こうっ!」

ラミアは元気に言って、先に歩き出す。

「あっ!? 待って、こっちよっ!」

アーシェは、慌ててラミアを追い、詰め所の風呂場まで、案内を始める。


2人は、いや、影からカースクイーンが出て、3人は、詰め所の風呂場に到着し、他の入浴者が居ないのを確認して、服を脱ぎ、身体を洗ってから、風呂に浸かった。

 だが、その間、アーシェはラミアの一部(腰部分)を見ようと試みたが、カースクイーンに邪魔されて見えなかった。 まぁ、実際にはチラッとだけ見え、可愛いキノコだった。とだけ言っておこう。

「良い湯だねぇ~。疲れがとれるよぉ」

ラミアは、湯に浸かり、のんびりと嬉しそうに言う。

「そうね。魔力回復も順調よ」

 カースクイーンは、上機嫌でラミアの前に座る、というか足に乗ってそうな状態で言う。

「クイーン……その位置は……マズいようなズルいような?」

アーシェは、羨ましそうにカースクイーンを見て、顔を赤く染め、ブツブツ言う。

「? ……アーシェお姉さんも座りたいの? 良いよ?」

ラミアは、特に分かっておらず、カースクイーンを横に置いて、アーシェに尋ねる。

「良いのっ!? ありがとう。……っ!?……うぅ」

アーシェは笑顔になって、急いでラミアの前?に座るが、お尻に何かが当たり、驚いて真っ赤になるが、黙って我慢し、もじもじする。

「むぅ……まぁ、説明するわ。私とラミアは可能な限りモンスター群を迎撃、その後、攻略メンバーと一緒に馬車でダンジョン最奥を目指し出発、魔王を名乗るモンスターを倒す。見つけた宝箱や宝は山分けよ」

カースクイーンは、横に運ばれ、ムッとするも、もじもじするアーシェを見て、悪戯っぽい笑顔を浮かべ、今回の説明をする。

「へぇ、成る程。あ、アーシェお姉さん、あんまり動かないでね?」

ラミアは、あんまり、分かってない様子で納得し、もじもじするアーシェをくすぐったく感じて、抱き締めて言う。

「……も、もう限界」

アーシェは、抱き締められた瞬間、全身が真っ赤になる感じがして、何とか言って、カースクイーンにタッチする。

「交代ですって、解放してあげて? 多分のぼせたんでしょ」

カースクイーンは、ニヤリと笑って言い、ラミアにアーシェを解放してもらい、湯船から出して、脱衣所に運ぶ。

「んー、まぁ、ちょうど良いかな?」

ラミアは、もう少し浸かっていたかったが、アーシェがのぼせたようなので、諦めて湯船から上がり、脱衣所に行く。

「ま、多分、直に浴びて摂取したでしょうし、抜いときましょう」

カースクイーンは、アーシェを横にし、手をアーシェのお腹に当てて、入っているだろう毒を取っておく。

「あれ? もしかしてやっちゃった?」

ラミアは、カースクイーンの様子を見て、キョトンとして尋ねる。

「大丈夫、ちゃんと制御してるわ。まぁ、少し媚薬を摂取した位ね」

カースクイーンは笑顔で言い、ラミアを安心させようする。

「良かった。ところで媚薬って何? 毒?」

ラミアは笑顔でホッとし、分からない言葉が聞こえたので尋ねる。

「あ……えぇと、そう、元気になるんだけど、ちょっと副作用で身体の感覚が敏感になるのよ。ちょっと、触れただけでくすぐったかったり、びっくりするの」

カースクイーンは、しまったと思い、内心慌てて、分かりやすく、でもちょっと違う症状を教える。

「ふぅん、そんな毒があるんだねぇ」

ラミアは、感心しながら、使えるのか分からないなぁ、と思いながら言う。

だが、実際は強力で、アーシェが摂取した量が、かなり極小(0.1mg以下)、もしくは耐性がついてたのか無事で良かったと、カースクイーンは思っている。

 そう、実際に極小ではなく少しだけ(1mg)の摂取でも症状は劇的に変わり、普通(1g)に摂取したら、多分、しばらく収まらないだろう。

「……んぅ?」

少しして、アーシェが目を覚ました。症状もなく、大丈夫だろう。

「大丈夫? 立てる?」

ラミアが心配した様子で、アーシェの顔を覗きながら、尋ねる。

「……えぇと、大丈夫だから」

アーシェは、一気に真っ赤になるが、気力を振り絞り、何とか答える。

「じゃあ、早く着替えなさい。後は貴女だけよ?」

カースクイーンは、いつの間にか着替えて言い、欠伸をして影の中に入ろうとする。

「え? ……いっ、今すぐ着替えますっ!!」

アーシェは、言われて自分の状態を確認し、初めて気づき、急いで起き上がって、言いながら着替える。

「のんびりで良いよ? 僕も眠いけど」

ラミアは笑顔でそう言うと、立ち上がって欠伸をする。「よし、行きましょうか」

アーシェは素早く着替え、ラミアの手を取って言うが、視線は泳ぎ、顔は赤い。

「うん、快眠出来ると良いなぁ」

ラミアは、そんなアーシェを特に気にせず、手を握り返してて言い、歩き出す。

その後、休憩所に戻り、ベットで眠り、翌日から3日間、攻略メンバーが来るまでに、夜から昼まではカースクイーン、昼から夜までがラミアと、昼夜を分けてモンスター群を殲滅していた。

 現在、昼過ぎ。

 書官が攻略メンバー24(女性11、男性13)名を集め、最終説明をしている。

「では、予定通りカースクイーンが最初、見えているモンスター群を一掃、カリナが道を作り、ダンジョン最奥を目指し、最短ルートで向かい、魔王を討伐して下さい。宝は山分けなので、変な欲を出さぬように」

書官は簡単な説明と注意をし、王都に帰るべく、馬に乗り、攻略メンバーは、馬車三台に乗った。内枠は、女性陣(ラミアが居るため先頭)、サポーター、男性陣という分かれだが、女性陣は少なく、広く使えるのに対し、男性陣は少し窮屈そうだ。

「じゃ、やったら寝るわ。その後はお願いね?」

カースクイーンは、ラミアにそう言うと、影を操って、モンスター群を串刺しにし、そのまま、魔法で死んだモンスター群を操り、侵攻してくるモンスター群に突撃させ、役目は終わりと、ラミアの影に消える。


「それじゃあ、行こっか。ウンブラ・ウィアッ!!」

ラミアは笑顔で言うと、魔法を発動させ、ありとあらゆる影が伸びて集まり、影が集まった先は、影しかあらず、その上には何もない。そして、その影が、僅かに見える城までの、一本の道を作り上げてしまった。

「嘘だろ、おい」

「……成る程、通りで」

「相変わらず、無茶苦茶ね」

「やはり、頼もしいですね」

攻略メンバーは、その光景を見て、誰もが驚き、同時に、味方で良かった、と安堵した。

それから馬車で向かうも、流石に、全速力で走らせる訳にもいかず、ダンジョン途中で3泊し、最奥の城に到達した。それまでに、攻略メンバーは男性2名、女性1名行方不明になった。

しかし、城の中に馬車は入れるが、置いておく事にし、馬の為に、カースクイーンと男女1名、サポーター1人が残ってくれた。

攻略メンバーは残り18人(男性10、女性8(内、サポーターは、5人))で、ダンジョンから出てくるモンスターを一層し、中に突入した。

「……マジでダンジョンか?」

突入して中を見た時、全員驚き、双剣使いが声を上げた。

理由は、簡単である。どんな形であれダンジョンはダンジョンである。しかし、この城は、見た目同様に、中まで城で、入ってすぐ正面に、上に登る階段があったのだ。他にも、モンスターは居て、迎撃するが、中は、広いだけの城としか言えない造りだった。

「こっちに地下への階段があるぞっ!」

大剣使いの男が、階段を発見して叫ぶ。コレもダンジョンでは珍しい、地下室があったのだ。

一行は一度、地下を調べる事にした。

「……上の階より天井が高いし、ただ、直線だけで、上より広くはないですね」

女魔法使いが、明かりを点けて、火を放ち、確認して言う。

「あ、お宝発見♪ 扉は、開けない方が良いよ?」

ラミアは、影を使って確かめ、嬉しそうに言う。しかし、注意するも、聞いてもらえず。

「宝があんのに、開けずにいられるかっ!?」

数人の男達が扉を開けてしまい、急いで逃げてきた。が、階段途中で、ラミアが影を操って殺した。

「……シャアァァァアアアッ!!」

部屋からは、巨大な鎌を持ち、骸骨の馬に跨がり、ボロボロの布をまとった、死神。通称:グリムロードが姿を表した。これには一同驚き、迎撃体勢をとるなか。

「呪詛、煉獄と楽園、原初にして終焉、祖はそこで生まれた……インフェルヌ・パラディース・オリーゴ・フィーニス・ウィータッ!!」

ラミアは、珍しく呪文を唱え、魔法を発動させると、グリムロードの四方に、魔法陣が向かい、止まった瞬間、魔法陣から沢山の黒い手が出て、グリムロードを押したり、引いたりしていき、徐々に魔法陣が、グリムロードに迫り、最後、魔法陣から出た黒い何かが、グリムロードを食べ、魔法陣が消える。

「あんた……何をした?」

大剣を構えた男が、へたり込むラミアを見て、驚いた様子で尋ねる。

「アレは物理効かないし、並みの魔法も無理だから、別の物に変えたんだよ」

ラミアは、ふにゃっと笑ってから、男の質問に答えた。だが、周りの反応は、今のモンスターを知っており、同じ様に倒した事がある事実に驚いた。

「あれっ!? 宝なんて……カリナ?もしかしてお宝」

女剣士が、部屋の中を見て、ラミアが言った宝が無いのに気づき、ラミアを見て尋ねる。

「開けなくて良いって言ったよ? 影があれば、ほらね?」

ラミアは、自分の影に手を入れながら言い、証拠として、影から金貨を、取り出して見せる。

「取ったなら、先に良いなよ? 仲間が減ったじゃん」

女剣士は、呆れた様子でラミアを見て言う。

「多かったんだよ。逃げた2人を、始末するまで直前まで、かかったんだからさぁ」

ラミアは、立ち上がりながら言い、服に着いた埃を払う。

「ってことは……マジか、山分けが楽しみだ」

ラミアの言葉を聞き、女剣士が、一変して喜ぶ。


「……一体何事だ?」

大剣を持った男が、分かってないメンバーを、代弁して尋ねる。

「あぁ、部屋中山積みで、さっきの金貨や宝石とかが、あったって話。宝箱以上だよね」

ラミアが、少し困った顔で皆に教える。その瞬間、攻略メンバーの殆どは喜んで、騒ぎ出しだ。

「……すまない。今日は、もう休もう。再度奴が生まれても、扉を開けなければ問題ない。更に、モンスターが下に降りてこない。休むには一番良いだろう」

殆どの者が、喜び浮かれる中、大剣使いの男は、ジッとラミアを見た後、周りを見て、提案する。

「……ありがとぉ、正直助かるよ。頭の良い人が2人居て」

ラミアは、笑顔で大剣使いの男性に言い、女魔法使いの方に向かう。

「大変でしたね、お疲れ様。良ければコレを」

女魔法使いは、笑顔でラミアを労い、回復薬を差し出して言う。


「じゃあ、遠慮なく……所で、“僕の名前”分かった?」

ラミアは有り難く受け取り、回復薬を飲むと、目の前の女魔法使い、いや、名前は忘れたが、同じ学校の同期に、尋ねる。

「分かったけど……あれは後輩に向けてでしょう? それに、私はランクAでも上位ですよ? もっと若い子に、花を持たせないと」

スッ、とフードを取った、ダークエルフの女魔法使いは、柔らかい笑顔で、ラミアに言う。

「それは確かに、でも、流石は首席だねぇ。魔法と勉強は強かったからね。ランクをすぐ、上げていくって思ったよ」

ラミアは、ちょっとだけ意地悪に言い、昔を懐かしむように上を見る。

「そういうカリナは、昔と変わらず、愛されてるわね。オマケに、考え方や睡眠時間だって、全然変わらないし、変わったのは身体だけかな?」

女魔法使いは笑顔のまま、ラミアに皮肉を返し、サポーターの食事を取りに行く。話し込んでる内に、それぞれ、野営準備が終わったらしい。

「ま、僕にはご飯が……あれ?」

ラミアは、調理の手伝いに行っただろう、彼女をよそに、影に手を入れて、近くのモンスターの死骸を探すが、何故か見当たらず、ちょっと焦る。


「さっきは助かった。まず、間違いなくアンタが要だ。しっかり休ん……どうかしたか?」

大剣使いの男が、ラミアが1人になったのを確認して、話しかけ、礼を言うが、何やら焦っているラミアを見て、怪訝そうに尋ねる。


「ちょっと待っててっ!!」

 ラミアは必死な顔で、大剣使いの男に言い、交信をする。

『カースちゃんっ!! もしかして、お肉全部取ったっ!? 料理したのあったら頂戴っ!!』

ラミアは、カースクイーンに向け、慌てて交信をして、尋ねる。

『取ってないわ……確かに変ね。森には、モンスターがうじゃうじゃ居るのに、城には生きて……待って、外に排出されたわ。料理して送るから待ってなさい』

カースクイーンは、ラミアの交信に、慌てて周りを確認し、どうするか伝える。

『なるべく早くねっ!! お腹ペコペコだから』

「もう、良いよ。で、何? 僕は今、すこぶる機嫌が悪いよ?」

ラミアは、早々に交信を止め、料理待ちと空腹で、不機嫌なだけなのだが、大剣使いの男を睨みつけて尋ねる。

「……いや、ゆっくり休んでくれ」

大剣使いの男は、ラミアの殺気に驚き、言いたいことを言って立ち去る。

「そんな時は、はいコレ」

と、そんなタイミングに、女魔法使いが戻り、パンの実とスープをラミアに差し出す。

「良いのっ!? ありがとぉ」

ラミアの雰囲気や態度が一変し、笑顔で言い。女魔法使いから、食べ物を受け取ると、勢いよく食べる。

「彼女、お腹が減ったり、食べ物が絡むと恐ろしいけど、普段は、のんびりした良い子だから」

女魔法使いは、呆然としている、大剣使いの男に、苦笑いをして教える。

「……そうか、しかし何を焦っていたんだ?」

大剣使いの男は、納得しかけるも、先程の慌て具合を思い出し、ラミアに尋ねる。

「簡単だよ? 上のモンスターの死骸が、一つもなかったからだよ。食べようと思ったのにさ、酷いよね? 外に捨てるなんて」

ラミアは、訪ねられた時、既に食べ終え、男の質問に答え、文句を言って同意を求めりる。


「っ!? ……モンスターを、食べるのか?」

ラミアの発言に、大剣使いの男は驚いて、ラミアに尋ねる。

「毒がちょうど良いからね。美味しんだよ? 今カースちゃんが作ってくれてるんだ」

ラミアは笑顔で言い、青ざめる大剣使いの男を、不思議そうに見る。

「いえ、それよりも、普通なら食べたりする死骸を“捨てる”という事を考えて下さい。モンスターなのに、おかしいと思わない?」

女魔法使いが、真面目な顔をして言う。大剣使いの男は理解して、頷くが、ラミアは首を傾げたままである。

「魔王が綺麗好きなんじゃないの?」

ラミアは、特に考えずに言うが、的外れとも言えない。

「成る程、上がったとき、綺麗だったらそうなりますね」

女魔法使いは否定はせず、可能性の一つとして言う。


「ま、一番の問題は何階建てで、どんなボスか、だ」

大剣使いの男は、どうでも良い様子で言う。

「何言ってんのっ!? 死活問d……思い出した。このダンジョンの主には借りがあったよ。ありがとう、思い出させてくれて」

ラミアは、必死に言うが、そこで、ある事を思い出し、笑顔のまま、大剣使いの男に礼を言うが、殺気がだだ漏れで、少し離れている攻略メンバーさえ、冷や汗を感じる程である。近くに居る2人は、たまったものものではない。

「ほ、ほら、一回落ち着いて、ね? カースクイーンからご飯来るんでしょ?」

女魔法使いは、経験から、殺気を納めるために、ラミアの注意を外そうと試みる。

「あ、そうだった。もう来るかな?」

ラミアから殺気がなくなり、楽しみのようで、ウキウキして影を見つめる。


「……今のは一体、というか、借りがあるという事は、会ったことがあるのか?」

大剣使いの男は、ラミアの言葉を真に受け、疑問点を女魔法使いとラミアに尋ねる。

「どうせ、食べ物関係ね。昔の比じゃないけど。多分、あの時の揺れで、食べ物が落ちたりしのね。怒った彼女が相手を逃がすなんて事はしないわ」

女魔法使いは、浮かれて聞いてない、ラミアの変わりに大剣使いの男の質問に答える。

「……成る程、食べ物の恨みは、怖いという事か、肝に銘じよう」

大剣使いの男は、渋々という感じで納得し、戻っていく。

「……やっと、行ったわね。はい、頼まれた品よ。次は一体位、確保して進みなさい」

カースクイーンが、ラミアの影から現れ、注文の品をラミアに渡して言う。

「わーいっ!! カースちゃん愛してる」

ラミアは、嬉しそうに言い、注文の品を取って、食べ始める。

「それじゃあ、私はそろそろ寝るから、またね」

女魔法使いはそう言うと、ラミアから離れていく。


「うん、またねぇ」

ラミアは、相手を見ずに言い、食事に専念する。

「それじゃあ、私も帰るから、ちゃんと朝に起きるのよ?」

カースクイーンは、ラミアに注意を促し、影に消える。 が、ラミアは朝、女魔法使いにより、何とか朝に起きた。方法は、ご飯の匂いと、かなり熱いスープである。

「昔、長から聞いてて良かったわ。カースクイーンは、アナタに酷いこと、出来ないだろうし」

女魔法使いは、苦笑いで、起きたラミアに言う。

「うぅ……まだ、舌がヒリヒリするよぉ。こんな事しなくても、ちゃんと起きるのに」

ラミアは、急いで水を生み出して飲み、涙目で女魔法使いを、睨みながら言う。しかし、呼んでも、叫んでも、揺すっても起きなかったので、説得力がない。

「説得力が無いわね。私が起こさなかったら、アナタ殴られてたわよ?」

女魔法使いが、呆れた様子で事実を言い、周りのメンバー(サポーター以外)は、頷いて同意する。

「むぅ……痛いのは起きた時、響くから助かるけど……そんなに急がなくても、大丈夫なのに」

ラミアは、尚、文句を言うが、皆はそうじゃないらしい。

 しかし、上に戻って、一階のモンスターを倒し、2階に行った瞬間、その異変は突然起きた。

「お腹空いたぁ……もうご飯? ご飯だよね? ご飯にするね?」

ラミアが、突然座り込み、お腹が盛大に鳴って、我慢出来ないように、メンバーに尋ねてきた。


「えっ!? まだ食べて、2時間位しか経ってないわよ? しかも、結構食べてたわよね?」

女魔法使いは驚き、突然座った、ラミアに尋ねながら、持ってる携行食を探す。

「お腹空いた、お腹空いた、お腹空いたぁっ!! だから食べて良いよね?」

ラミアは叫んで、モンスターの死体が目に入った、次の瞬間、ラミアは四つ足で立って、モンスターの死体に突撃し、生で食べ始めた。

 流石に、サポーターには見せられず、大剣使いの男が、サポーター全員を気絶させたが、攻略メンバーの殆どは、呆然とそれを眺め、酷い嫌悪感ではなく、もし、モンスターの死体が、近くになかった事を考えてしまい、冷や汗を流し、恐怖を感じている。

「コレが……学校時代、先生が起こさなかった理由……そして、珍しく起きてたと思ったら、常に何か食べてた理由……なのかしら?」

女魔法使いは、ラミアを少し心配しながら、何故、カースクイーンや長が、無理やり起こさないのか、ようやく理解出来た。

 そう、多いと自分達は思ったが、ラミアにとっては、少なかった。大体、カースクイーンが持ってきた量や、食べてた量を参考にしたが、よくよく、思い出せば、森では常に何かを食べていた。つまり、消化速度と消化能力が、バカなのである。なのに、トイレは普通の人と同じとか、理解に苦しむ。

「んー、やっぱり生は味気ないや。次は、ちゃんと調味料かけて、炙れば良いかな?」

ラミアは食事を終え、笑顔で言うが、メンバーは依然として、呆然と固まっており、2mのモンスターを食べ終わるのに、10分もかかってない。

そう、驚く事が多すぎて固まっているのだ、しかも、ラミアはその場で、倒したモンスターの死体 を影で集め、軽く一口大に斬っては、袋を取り出して入れていき、30分位で、モンスターの死肉を、袋詰めに出来た。

「じゃあ、早く上に行こう。 待たせちゃマズいんでしょ?」

ラミアは、笑顔でメンバー1人1人を見て、尋ねてからサポーター全員を起こす。

「……悪かった。次からは、昼まで寝てて良い」

大剣使いの男は、ラミアを見た後、女魔法使いとアイコンタクトして、頷き合い、ラミアに提案した。もし、サポーターの食糧が狙われたら、自分達自身も危ないからだ。

「本当っ!? 良かったぁ、僕、朝弱くてさあ」

ラミアは、大剣使いの男の言葉に、嬉しそうに言うと、先へ歩き出しながら、袋から肉片を取って食べる。

「あぁ、悪いが先頭近くを歩いてくれ、流石に、それをサポーターの娘には、見せられない」

大剣使いの男は、苦い表情で、ラミアに言う。ラミアが居た位置には、代わりではないが、女魔法使いが変わらずに、サポーターの援護に回る。


「? 別に良いよ? でも、次からはちょっと、キツくなるかも」

ラミアは笑顔のまま、上を見て言う。どうやら、上のモンスターは強いらしい。

実際に、二階から上に上がってみると、モンスターの数ほど少ないが、明らかに下と違うのが分かる。それは、デカさと種類である。下の階でも見かけたが、そこから進化したか、群のボス的なモンスターしかうろついてない。しかも、それぞれ縄張りがあるようで、接触もしていない。

「んー、適当に狩って、上で合流で良い? そっちも働かないとアレでしょ?」

ラミアは、少しだけ考えるようにして、他のメンバーに尋ねる。

「あぁ、ここまで8割から9割はアンタが狩って、こっちはまともな戦いをしてないからな。次で終わりだろう? 身体の勘は鈍らせたくない」

大剣使いの男は、頷いてラミアに同意し、他のメンバーを説得する。外から見た城の大きさと、中が同じと判断しての決断である。

「じゃあ、競争だね。遅かったら狩っちゃうから」

ラミアは笑顔で言うと、階段側、つまり目の前のモンスターを、影の中に沈ませて、右にゆっくり歩いて進む。

「……行くぞっ!」

大剣使いの男が、合図し、サポーターと女魔法使い以外は、競争という言葉にやる気をたぎらせ、一気に左へと走り出す。

「皆、野蛮なんだから」

女魔法使いは、溜め息混じりに呟き、観光ガイドのように、ゆっくりサポーター達を左に進ませ、右に行こうものなら脅した。

この城は、はっきり言って分かりやすく、階段はほぼ中央、そして四角で繋がっており、どちらからでも階段に着くのだ。一階と二階が同じなら、面積に多少の違いはあれど、その上も同じと考える。

 一方、外で馬車護衛のメンバーは、男性1人が、装備を剥がされ、正座をさせられていた。

「信じらんないっ!? あなたバカ? こんな時に女性を襲おうだなんてっ!!」

女冒険者が、男に罵声を浴びせ、カースクイーンが怯えるサポーターを介抱している。

「こっちは暇なんだっ! 少しくらい良いだろっ!!」

男は、逆ギレして女冒険者に言う。ただし、襲おうとはしない、こちらは武器がなく、向こうは完全装備なのだ、当然だろう。

「誰のお陰で暇か、少しは考えなさいよ。実力差も分からないのかしら?」

女冒険者は、男に見切りをつけ、此処で殺すか考えながら言う。

「あら? あらあら……暇なんでしょ? 出来れば相手してあげてもらえる?」

カースクイーンは、生きたまま影に沈んだモンスターを、感覚的に察知し、男に向けて装備を渡し、木の影からモンスターを出す。

「GAaaaaAAAッ!!」

影から出たモンスターは影に縛られて動けず、咆哮を上げて暴れる

「は?」

「えっ!?」

装備を渡された男は呆然となり、女冒険者はモンスターを見て驚き、サポーターの娘は気絶してしまった。

「ほら、暇だったんでしょ? 檻にしてあげるから、挑みなさい。私達は暇だなんて思わないし、それが居ればモンスターも襲わないでしょう」

カースクイーンは、大量のお菓子以外に、ティーセットまで、書官が馬車に用意してくれてたので、優雅に紅茶を入れながら言う。

 因みに、大量のお菓子は、殆どラミアが食べてないが、食べれる果物を、見つけて食べてたので、大量に確保して貰ったので、つまみは十分だ。

「……そういう事なら私も」

女冒険者は、カースクイーンの意図が分かり、お茶会に同伴させてもらう。うん、これなら暇じゃない。

「いやいやいやっ、相手おかしいだろっ!? 1人で狩れるレベルじゃねぇって」

男は、急いで装備を身につけつつ、焦りながら文句を言う。

「あっそ。私、男って嫌いなの。死ねゲス野郎」

カースクイーンは、ニッコリと男を見た後、睨みつけて言い。有言実行と、影を操り、男をモンスターの前に置き、影で檻を作って、モンスターに男を襲わせた。

「……それにしても、夜はどうする? 流石に私1人じゃカバー出来ないよ?」

女冒険者は、男とモンスターの戦闘というか、一方的な虐殺を見ずに、カースクイーンに尋ねる。

「じゃあ、仕方ないわね。ちょっと待ってなさい。」

カースクイーンは、笑顔のまま言うと、立ち上がり、木の棒を持っておもむろに、馬車を中心に、周りに魔法陣を書いては、幾重にも繋げる。という行動をし始めた。

「……何してるの?」

女冒険者は、魔法陣を不思議そうに見つめ、意味が分からず、カースクイーンに尋ねる。

「何っておまじないよ? まぁ、夜になれば分かるでしょうけど、アレは返さないとね」

カースクイーンは、地面に魔法陣を書き終え、笑顔で話し、男を食べたモンスターを、影に沈める。

「……ねぇ? 実際問題、ランク幾つ? 上位ランクで名前見かけた事無いけど?」

女冒険者は、カースクイーンを真剣に見て尋ねる。

そう、高ランクには、高ランクの情報網がある。だが、引っかからないのは、ラミアがランクCに固定しているからであり、更にギルドに金を払って、情報隠蔽をさせてるからだ。 その日の夜、結局競争はラミアの勝ちで、4階にはモンスターが居らず、階段ではなく扉だけで、広さも一階や二階に比べ、半分以下なので、一泊してから開けることにした。

そして、カースクイーンの方は、凄い現象が起きていた。

「魔法って、熟練者とかは詠唱無しとか、イメージで使ったり、魔法名や、魔法陣を書いたりするのは、二流や三流、って聞いた事あるけど……何やったの?」

女冒険者は、自分達を囲むように書かれた魔法陣が、夜になって輝くのを見て、カースクイーンに尋ねる。

「はぁ、私はカースクイーンよ? 勿論、闇属性はだいたい使えるけど、私の専門は呪いなの。魔法をイメージするための詠唱じゃなくて、言わないと発動しない呪詛なのよ。魔法陣を書くのは、呪詛を使わず、消すまで有効だからよ。光っているのは、注いだ魔力が、夜になって見えるだけよ。因みに、術者以外が触れたら…その呪いにかかるから、気をつけなさい」

カースクイーンは、やれやれという感じで、長々と丁寧に教える。そして、説明の通り、魔法陣に触れたモンスターは、ふらふらと、どこかに行ってしまった。

「じゃあ……今どんな呪いがかかっているの?」

女冒険者は、固唾を飲み込み、カースクイーンに尋ねた。

「今は、忘却と遭難の呪いね。何故来たかを忘れ、自分の現在地も忘れて、周りが同じ景色に見える呪い。ま、一般的には毒殺、呪殺が多いかしら?」

カースクイーンは、面白い位にかかるモンスターを、楽しそうに見つめながら言い。

それを見た、女冒険者とサポーターは、決して逆らわず、仲良くしていかないと、ヤバいと思ったのであった。


翌日の昼過ぎ、ダンジョン最深部、城の四階。

ラミア達、攻略メンバーは昼食を終え、入念に突入準備をして、身体をほぐし、目の前の大層な扉を開けた。

「よく来たな。っておせぇよっ!? 何で目の前に来てんのに、休むとか信じらんねぇっ!? そもそも最初の速度どこ行ったよっ!? こっちは、テメェ等の動きをきちんと、把握してんだよっ!! まぁ、やり合う前に、少し話しようかと思ったが……流石に魔王の俺でも、頭に来たから、今すぐ死ねやっ!!?」

そこには、玉座らしい椅子から立ち上がり、こちらを睨みつけて、一気に話す。5m程の、頭は黒い3本の角が生えた牛、上半身は巨人で、下半身が山羊、背中に蝙蝠の羽根を生やし、巨大な戦斧、ハルバートを持ったモンスターが居た。

「成る程……魔王というのは伊達ではないか」

大剣使いの男が、納得したように呟き、牽制として突撃をかけようとした瞬間天井が割れた。

「何っ!? 攻撃っ!?」

女剣士は、周りを見て確認しながら言う。


「いや、上に居るよ? 魔王」 ラミアは、キョトンと、入った時から上を見上げ、分かってない様子のメンバーに、指を指して教える。


「あらあら、少しだけ、本当に話をしようと思ってたのに、使えない子」

天井から降りて来た、髪はピンク色の、ウェーブかかった、腰までのロングで頭に2本の角、黄緑色の猫のような目、露出度の高い、ボンテージのような服を着て、背中には蝙蝠のような羽を、腰辺りから爬虫類のような尻尾が生えた、悪魔と分かる女性が、地面に降り立つと、自称魔王は、手に持ったハルバートで、自らの首を切り落とし、死んだ。

メンバーの殆どが呆然なって立ちすくんだまま、ラミアが尋ねた。

「話って何かな? 僕もあるんだよね。ケーキとクッキーの恨みが」

ラミアは殺気を出して、悪魔の女を睨みつける。

「私は、大淫魔のアスモ。悪いけど女に興味ないの。強い殿方は誰かしら?」

アスモと名乗った悪魔は、ラミアを軽くスルーして、メンバーの男性陣に話しかける。

「意味が分からんな……押して参るっ!!」

大剣使いの男が、ラミアを一瞥し、意を決して、一気に距離を詰めて、斬りかかる。

「あら、危ない……でも、殺気や動き方適に、アナタとあの娘以外は、そんなに強くなさそうね」

アスモと大剣使いの男の間に、ハルバートが小さくなって分け入り、それをアスモは軽々と使って、大剣使いの男を弾き飛ばすと、一気にラミアの背後をついた。

「じゃあ、お返しははコレで良いかな?」

ラミアは、自分の唇を噛んで、血をなめた所に背後に、ちょうど来たアスモの唇に、軽いキスをして言う。

 別に唇ではなく、どこでも良かったが、一番近いと思った所にしたので、偶然であり事故なので、なんと言おうと、ノーカンである(後のカースクイーンとアーシェ談)。

「っ!? ……そ、そんな、初めてなのに」

アスモは、キスのショックと、ラミアの血と唾液から回って来た毒と媚薬により、床に座り込んだ。

「それは、ごめんね? じゃあ、主従の盟約、そのためにその証を示し、オムニス・ニヒル、ヒンメル・ボーデン、モナルカ・セルウス、ドミヌス・セルウィトル、コントラクトゥス・ユーラティオーッ!!」

ラミアは、アスモの様子に苦笑いし、呪詛を唱え、魔法陣を発動させた。

「くぅ……少しでも動けたら、こんな……」

アスモは、苦悶の表情して、魔法陣が消えた後、固まったように動かなくなった。

「……やったの……大丈夫か?」

大剣使いの男が、ラミアに近づいて、倒したのか確認しようとしたが、ラミアが、涙を流したのを見て、尋ねる。


「あ、えぇと……倒すには倒したよ? アスモちゃん、お手」

「はいっ! 何なりと申しつけ下さいませ」

ラミアは苦笑いして、大剣使いに言い、アスモに向けて笑顔で指示をだす。

するとアスモは、嬉しそうに尻尾を不利ながら、ラミアにお手をして言う。


「「はぁぁぁあああっ!!?」」

攻略メンバー一同、ラミアとアスモを見て、驚きの声を上げた。

「ちょっと、皆煩いよ? 別に、主従の呪詛で、主従関係作ってもいいじゃん。悪い子じゃないよ?」

ラミアは怒られたと思って(まぁ、正しい)、拗ねた様子で言い訳のように言って、アスモの頭を撫でる。

「ちょっと待て……じゃあ、何か、アンタは最初から、殺す気無かったと?」

大剣使いの男は、慌ててラミアに尋ねた。雰囲気とやることが違うと感じたからである。

「? 最初はぼろ切れになるまで、こき使ってから殺そう、と思ったんだけどねぇ。契約すると、過去を共有しちゃって、可哀想だから許しちゃった」

ラミアは、笑顔のまま、タダで殺そうとしなかったのを暴露し、苦笑いで今の心境を言う。

「……最下層モンスターを、こき使って殺すとか、相変わらず、食べ物でキレると容赦ないわね。で、直ぐに許すお人好し加減も」

女魔法使いは、ラミアの言葉に納得し、苦笑いで言う。

「て言うか、あっさり死んだ自称魔王は何なんだ?」

ようやく事態を飲み込めた双剣使いの男が、アスモに尋ねる。

「……あれは門番です。元々知性は無く、私が生み出した下等悪魔、パラサイトに乗っ取らせ、代理人になって貰いました。他のモンスターにもパラサイトが取り付き、私の命令で街を襲わせました。強いては、強い殿方を見つけるために」

アスモはラミアに確認し、観念した様子で、淡々と説明をするが、目的が微妙だった。

「ちょっと待ってっ!? つまり、わざわざ強い人間を呼ぶためだけにしたの?」

女剣士が、アスモの目的に、驚いて尋ねる。

「はい♪ まぁ、無事に見つかったし、主従関係という素晴らしい関係になったので、行く行くは結婚して子供を……いえ、今は、パラサイトは消え失せ、モンスターは通常通りですのでご安心を」

アスモは、嬉しそうに言い、ラミアに抱きついて妄想に入りそうになるが、皆の視線が痛いため、ラミアから離れて普通に話す。


「いや、女性同士なら、子供は出来んだろう」

 大剣使いの男が、ある意味、皆の言いたい事を代弁して言う。

「皆さんご存知ない? 世の中には陰と陽、男性と女性、その2つの特徴を持った子が極稀に生まれます。我が主はそんな稀有な存在。つまり……子供を孕ませ、産むことが出来るんですよっ!! イヤッホーーッ!!!」

アスモは、ラミアの身体について、詳しく説明し、最後は何故か叫んでた。

その発言に、中心地にるラミアは首を傾げ、冒険者一同は驚き、あ、コイツ(アスモ)ウザイという顔をし、サポーターの殆どは、熱い視線をラミアに向けていた。

「……あー、ドンマイ。というより、話の内容分かったか?」

大剣使いの男は、何かを悟った感じで、ラミアに声をかけるが、ラミアがキョトンと、首を傾げたままなので、もしやと思い尋ねた。

「全然。そもそも、子供って赤ちゃん? 赤ちゃんって神様みたいなのとか、妖精さんとか、鳥さんとかが、ある日突然、運んで来るんじゃないの?」

ラミアは、首を横に振り、不思議そうな顔で、親が小さい子供に、苦し紛れに説明するような事を言う。

「「え(はぁ)っ!?」」

ラミア以外の全員が、ラミアの発言に、驚愕して固まった。

「ちょっと待ってっ! あなた長にそれ聞いたの何時っ!?」

女魔法使いは、同郷である。そのため、慌てて尋ねる。

「ん~、10歳位の頃かな?」

ラミアは顎に人差し指を当て、思い出すようにして言う。

「じゃあ仕方ないか。って授業はっ!? 一応、学校の授業でもやったでしょっ!?」

女魔法使いは納得しかけるも、まだ腑に落ちなくて尋ねる。というか、同郷の人は同じ考えが多い、と思われたくないだけだが。

「だからぁ、殆どの授業寝てて、お母さん(長)に殆ど教わったって言ったよ?」

ラミアは、女魔法使いの気迫に、ちょっと引き気味だが、ちゃんと答える。

「長の親バカぁっ!! 一応、娘?なんだからちゃんと教育してよ」

女魔法使いは、長に向けて叫び、涙を流して言う。


「そういえば、カースちゃんが何か、時期が来たら教えるって言ってたけど?」

ラミアは、女魔法使いの叫びに、ちょっと思い出して言う。

ラミアの最後の発言により、黒幕は確定した。そして、殆どが逆らえない事にも納得した。

「そういえば、皆さんは、主が居て良かったですね? 私、登場時に魅了の魔法を使ってたんですよ? 反射というか、返されるとは、思いませんでしたが」

アスモは、一段落した所で、思い出すように笑顔で言う。

「呪詛返しだね。一応、詠唱というか、呪詛を言わなくても出来る、数少ない魔法だよ。分かりやすく言うと、かかった魔法を相手に返す魔法。まぁ、魔法陣じゃないけど、身体に刻まれてるからね。オートカウンターみたいなものかな?」

ラミアは、簡単に説明をする。というより簡単でしか説明が出来ないだけだが。

「成る程。じゃあ、皆さん帰りましょうか」

アスモは、落ち込んで納得し、一転して笑顔で言う。が、基本的に同意として、皆出口に向かい、お前が言うなっ!? という目線をアスモに向ける。

「…………よし。じゃあ、改めて宜しくね。友達として」

ラミアは、影で部屋中に探りを入れ、幾つか宝箱と、アスモの私物的なのを影に入れて頷き、アスモの手を取って、笑顔で言うが、最後の一言にアスモは落ち込んだ。

 一行が城から出ると、カースクイーンと女冒険者、サポーターが、のんびりお茶会をしていた。

「あら、終わっ……貴女誰かしら? 人の彼女に手を出すなんて、良い度胸ね?」

カースクイーンは、一行を見て、魔法陣の一部を土で消し、ラミアが知らないアスモと、手をつないで出てきたため、カップを落として固まり、殺気を出して、アスモを睨みつけて尋ねる。

「あ、私はこの度、主従関係になった、この城の主、大淫魔のアスモと申します。これから宜しくお願いしますね?」

アスモは、カースクイーンを見て、作り笑いを浮かべ、簡単に自己紹介をする。

「そう。まぁ、使い魔としては、良さそうね。彼女と契約した、妖精のカースクイーンよ。後で彼女の魅力を、教えてから潰してあげる」

カースクイーンも笑顔で自己紹介し、何やら物騒な事も言っているが、お互いの視線で火花が散ってそうなので先に馬車に乗り込んだ。

 馬車の順番は、ラミア達3人だけを先頭にし、2台目に男性陣、3台目に女性陣が乗った。誰だって、飛び火で怪我をしたくはないのである。しかも、ラミアがアーシェの心配をして、馬車を飛ばしまくり、馬が可哀想だったが、3日で街に帰還した。

帰還すると、アハートの街は歓喜して盛り上がり、一泊する事になり、翌日の朝、騎士団と共に王都に向かう。

「で、誰ですか? この破廉恥な格好をした女性は?」

当然、アーシェは、ラミア達と一緒だが、アスモを見て、眉間にシワを寄せて、カースクイーンに尋ねる。

「彼女が契約した、ダンジョンのボスよ。私も認めたくないけど……ライバルが増えたわ。当然、彼女の管理下で、悪あがきは出来ないけどね」

カースクイーンは、少し諦めた様子で、アーシェに教える。まぁ、3日もあれば、折り合いもつくし、色々カースクイーンが教育(洗脳)しただろう。

「……ま、まぁ、友達なら仕方ないわね。家族にもなるし……彼女がその気なら諦めるけど、クイーン同様、狙うなら堂々と狙いなさい」

アーシェは、ラミアはチラチラ見ながら、何となくも察し、諦めて、ライバルと認めて言う。

「ありがとうございます。まぁ、私としても、種族柄、愛人位で我慢しますわ。隙あらば狙います」 アスモは笑顔でアーシェを見て言い、最後に、宣戦布告する。

「ま、ペット認識が一番よ。行動パターン的に犬だし」

カースクイーンは、アーシェを安心させる為に言い。尚且つ、油断させようとする。

「ところで、2人は褒美決まった? 彼女だけでも良いけど、貰える物は貰わないと損よ?」

アーシェは、とりあえず、話題を変えて、ラミアとカースクイーンに笑顔で尋ねる。

「え? アスモちゃんじゃダメ?」

ラミアは、アーシェの言葉に首を傾げて尋ねる。

「ダメよ。王の権限で出来る物にしないと、民が不審に思うわ」

アーシェは困った顔をして、ラミアに言い。カースクイーンを見る。

「じゃあ……アレにしましょう。日も近いし、前回の場所はもう取れないから」

カースクイーンは思いついたのか、手を合わせて、笑顔でラミアに言う。

「? あぁ、アレね。うん、分かったよ」

ラミアは、カースクイーンの言いたいことを理解し、笑顔で頷いて言う。

そして、分からずに首を傾げる、アーシェとアスモをよそに、2人は盛り上がり、そのまま王都に着くと。

城までパレードが行われ、沢山の人に感謝されながら到着し、そのまま謁見の間に通された。「皆ご苦労だった。予想より、かなり早く終わらせ、大儀であった。じゃが、儂も行きたかったが、書官に止められての。楽にして良いが、少し減って、知らぬ者が1人混じっておるか?」

エーデル王は、簡単に礼を述べ、早く帰ったのに文句を言い。メンバーの人数とアスモを見て尋ねる。

「……お言葉ですがエーデル王、多少の犠牲は付き物。そして、此方の悪魔、彼女がダンジョンボスであり、大淫魔のアスモ。現在はカリナ殿が魔法の主従契約を結び、現在は害がありません」

大剣使いの男が、代表的に説明をする。

「……誠か? ラミア・アルクス。褒美もきちんと与えねばならぬため、偽名はこの場は無しじゃ。お主の口から真実を聞きたい」

エーデル王は、大剣使いの男を見て頷き、ラミアに直接尋ね、嘘がないか確かめる。

「大体あってるけど、死んだのは自己責任。それにアスモちゃんは、主従じゃなくて、友達っ! だから家族だよ? というかエーデルおじさん話し方変だよ?」

ラミアは、今回起きており、偽名だろうと、なかろうが、本人は基本的に気にしておらず、素直に言って、不思議そうな顔でエーデル王を見る。

「プッ、ハッハッハッハッハッ、そうかそうか、成る程のう、よく分かったが、堅苦しいのは他の物が居るのでな、しばし我慢してくれ」

エーデル王は盛大に笑い、ラミアの言い分を納得し、苦笑いをしてラミアに言う。

この瞬間、ラミアの人脈の凄さが、部屋中に知れ渡り、場は驚愕で静まり返った。

「で、ちょっと宝箱は今から出すけど、財宝が先かしら? 生き埋めになるけど。私を信用すればキチンと等分してあげるわよ? クイーンの名をかけて」

カースクイーンは、場が静かになったので、報酬の山分けを提示する。

「そんなにかっ!? では、此方も王として頼みたい」

エーデル王は、立ち直らない者を、無視して話を進め、お願いする。

「じゃあ、金貨から渡すわ。確か適当な袋は一杯あるから」

カースクイーンは、影に手を入れながら言い、面倒になって、影に入った。

「えぇと、他の報酬の話でもして、時間潰した方が、良さそうだね」

ラミアが、影に消えたカースクイーンを見て、苦笑いをしてエーデル王に提案する。

「そうか、それ程か。では、言い出しっぺのラミア嬢は何が欲しいっ! おじさんは多少の無茶でも叶えるぞっ!!」

 エーデル王は、少しというか、かなりはしゃいでる様子で、ラミアに尋ねる。そこに王の威厳は無くなかった。

「あ、いつも通りになった。……えぇとねぇ、王都の端っこに、“また”、二階建てが欲しいな♪ 前の家、近くでモンスターが、取れなくなったから」

ラミアは、王の状態にボソッと呟き、カースクイーンに言われた通りに、笑顔でお願いをする。

「なんじゃ、そんな事か。良いぞ、祭り一週間前までに、完成させよう」

エーデル王は、笑顔で快く受けた。後で後悔したのは、また別の話であり、それを物語るように、書官が眉間に、手を当てている。

そして、立ち直った者から、要求を言い、それぞれ願い事が通った(因みにサポーターの皆さんは、謁見の間ではなく、客室で報酬を渡され、帰って行った。理由は、雇い主とは言え、ギルドを通した依頼書であり、それぞれが、報酬(ラミアが使った品々と金)を渡されたからだ)。

「終わったわ。因みに、私の願い事も、聞いて貰えるのかしら?」

カースクイーンは、影から出てきて、金貨の詰まった袋(1mサイズの袋)を、攻略メンバーに渡しながら、エーデル王に尋ねる。

「勿論だとも。カースクイーンの願いは何だ?」

エーデル王は、冷や汗を流し、表面上は笑顔で、カースクイーンに尋ねる。

「ありがとう。簡単な話よ? この共和国では、差別が全面的に禁止されている。だから、私達妖精と、癪だけどアスモに、人権をくれないかしら? 特に結婚権利」

カースクイーンは、笑顔で礼を言い。自分の願い事を、真剣に、エーデル王に訴えた。

「カースさん……まさか私もだなんて」

アスモは、カースクイーンの要求に、涙を浮かべ、決まってはないが、心から感謝をする。

「待て、カースクイーンッ! それは……儂だけでは無理だ。確かに、数日後に族長会議がある。しかし、良いのか?」

エーデル王は、カースクイーンの要求に慌て、うろたえるが、一番可決されやすい事も理解し、あえて、他にないか尋ねる。

「無いわ。悪いけどそんなに欲深くないの。という訳でお願いね? 金貨と宝石は宝物庫に入れたわ」

カースクイーンは、笑顔で言って、袋を配り終える。その数、一人当たり、8袋である。そのため、謁見の間が、袋にだいぶ占領された。

「分かった、善処ししよう。次に宝箱じゃな。カースクイーンは、儂の横に宝箱を出してくれ、儂自ら開けて出そう。欲しい者は前に出よ。」

エーデル王は、カースクイーンの要求を渋々受け入れ、カースクイーンにお願いして、宝箱の渡し方を言う。

その事自体に異論は無く、オークションの、競りに近い感じで、皆、凄い活気になって宝箱の中身をゲットしていくが、誰も(王も含み)要らない物は、ラミアが貰っていった。

その後、祝勝会を城で開き、その日は泊まって、翌日に解散となった。

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