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ギルドと冒険者

ダークエルフの村を出て3年。僕とカースちゃんは、近くの街ノウムで、冒険者として生活している。

 ノウムは、テッラ大国の首都ミゼンから、北東にある街で、村に居た時と違い、多種多様な種族が街を歩き、文化というか、文明の違いに最初の頃は驚いた。

まぁ、それでも最初は各地、色んな国を回ったんだけど、やっぱり故郷が近いからね。1年位で戻って来て、今では僕達も、街の人達もだいぶ慣れた。

そんなある日の正午。

「ふぁあ~~。……よく寝た」

ラミアは、ベットから起きて、居間に出る。

「一体、何時だと思ってるの? いつになったら朝起きるようになるのかしら?」

 カースクイーンは朝食、もとい、昼食をエプロン姿で作っており、起きて来たラミアに呆れながら尋ねた。

「おはよ~、いい天気だね」

 ラミアは、目を擦りながら言い、まだ眠気から覚めてないようで、カースクイーンの質問を無視する流れになった。

「……とりあえず顔洗ってきて、じゃないと昼食は抜きよ」

カースクイーンは諦めてる感じで、いつもの眠気覚ましを言う。

「っ!? 直ぐ洗ってくるよっ!!」

 ラミアは、慌ただしく、洗面所に向かいながら言う。どうやら眠気は覚めたようだ。

その間にカースクイーンは、昼食のテーブルに並べ、椅子に座って待つ。

「お待たせっ! ご飯、あるよね?」

ラミアは行った時と同様に、慌てて戻って来て尋ねる。

「あるわよ。今日もギルドに行くんでしょ?」

カースクイーンは、苦笑しながら言い、今日の予定を尋ねた。

「良かったぁ。うん、当然行くよ?」

ラミアは安堵し、カースクイーンの質問に笑顔で答える。

「じゃ、さっさと食べて行くわよ」

カースクイーンはそう言うと、いつものように食べ始めた。

「そだね……着るの面倒だけど」

ラミアも頷いて食べるが、装備を見て苦笑いで呟く。

少しして、2人とも食べ終わり、食器を洗い終えると、カースクイーンは、ラミアの装備を、なれた手つきで、ラミアに着けていく。ただ、アーマーを着ける前に、胸に晒し布を巻きつけ、胸が無いようにするのが日課だ。カースクイーンが何故、こうするのか、ラミアは知らないが。

 2人の変化と言えば、ラミアはより女性らしい身体になり、カースクイーンは身長が約120cmに伸びた位だろう。

 こうして着付けが終わり、ラミア達は部屋を後にして一階に降り、宿屋を後にしてギルドへ向かう。

2人が住んで居るのは、ギルドが運営している宿屋で、三階の一番右端の2人部屋であり、家賃は他の宿屋に比べて高い。

そして、2人は目の前にある、ギルドの中へ入る。ギルドは外見は洋館だが、中は酒場に近く、飲食が可能で、売店もあり、当然ながら依頼書の掲示板や、依頼所もある。

「んーー、何が良いかな?」

ラミアは、掲示板で、良い依頼が無いか探す。流石に1年もいて、ダンジョンに籠もるのは“儲かり過ぎ”て止めた。 「どうせ、適当に楽な奴でしょ?」

カースクイーンは、呆れた様子で言い。同じような依頼書を一緒に探す。

「ちょっと、宜しいですか?」

 声を掛けられ、2人は振り向くと、ウェイトレス風の服を着た、茶色でウェーブかかった肩甲骨まで長い髪、黒目で、女性としては羨ましい体系の受付嬢、エリル・サルタールが、依頼書を手に笑顔で立っていた。「……さ、今日は帰ろうか」

「……そうね、帰りましょう」

ラミア達は受付嬢を無視して、依頼探しを辞めて、帰ろうとする。

「まぁまぁ、ちょっと話くらい、聞いて下さいよ」

受付嬢はカースクイーンの手だけ、ガシッと掴み、笑顔のまま言うが、目は笑っていない。

「……“彼”に触れなかった事に免じて、話だけは聞いてあげるわ」

カースクイーンは、ジッと受付嬢を睨みつけ、不機嫌ながらも、話を聞く事にした。

「では、此方へどうぞ」

(“彼”に触れたら、私の命が危ないからね)

受付嬢は、慣れた手つきで、個室に案内しながら、一度だけ、触れた時の事を思い出し、心の中で呟く。

「はぁ、“また”捕まっちゃったよ」

ラミアは溜め息を吐き、諦めてカースクイーンと一緒に受付嬢に着いて行く。

「……さて、別にもう誰も居ませんから、演技はいいですよ?」

エリルは、2人が応接室に入ると、鍵を閉め、言いながら椅子に向かい、座る。

「えぇ、私の“彼女”に何かあれば、あなたを消すわ」

カースクイーンは椅子に座り、不機嫌なまま言う。

「前から思ってたけど、意味あるの?」

ラミアは名前以外で、呼び方を使い分ける意味が分からず、首を傾げてカースクイーンに尋ねる。

「十分あるわ。ただ、理由は言わないけどね」


カースクイーンは、受付嬢に対する態度と違い、笑顔でラミアを見て言う。

「……コホン、依頼の内容に移って良いですか?」

エリルは、このままでは、2人が目の前でイチャツきそうなため、咳払いをして、話を戻そうとする。

「チッ、……いいわ。」

カースクイーンはあからさまに舌打ちし、受付嬢を睨みつけて了承する。

「では……と言っても、“カリナ”様はランクCの冒険者で、この依頼はランクB以上なんですが……本当にランクCですか?」

エリルは、依頼書を2人に見えやすいようにテーブルに置き、前置きのように確認をする。

「うん、僕はランクCだよ? 上に上がりたくないし」 “カリナ”と言われたラミアが嫌そうな顔で答える。

「……では、こちらで確認を。普通の冒険者の皆さんは、きちんとランク確認をしてますよ?」

エリルは、少し離れた机にある引き出しから、ある魔力石を取り出し、ラミアに差し出して言う。

「ヤダよ、面倒くさい。僕がランクCって言ったらCなのっ!」

ラミアが珍しく、怒った様子で言い、絶対に石に触れようとしない。


「どう見ても、ソロのランクCが挑む、ダンジョン階層を、軽く越えてますよ?」

エリルは、何度目か分からないが、義務というより、個人的に気になるため、ラミアに食い下がる。

「別にいいでしょ。カースちゃん、依頼内容は?」

ラミアは不機嫌そうに言い、依頼書を見てたカースクイーンに、内容を尋ねた。


「ゲ○野郎の討伐。何でも、見た目が良い、女性サポーターばかりを狙った、陰湿なパーティーが居るんですって」

カースクイーンは、呆れたように依頼書を見て、ラミアに教える。

「狙う? 装備品とか?」

ラミアは、首を傾げ、意味を分かってない様子でカースクイーンに尋ねる。


「……要は悪い男から女の子を助ければ良いの」

カースクイーンは説明を考え、ラミアに、分かりやすく教える。

「なるほどぉ……じゃあ、受けるよ」

ラミアは、カースクイーンの説明に納得し、依頼書にサインして言う。


「あの? 一応、相手にランクCや、最悪Bの方も居て、メンバーも多いみたいですが?」

エリルは、未だに実力が分からない2人だけに、本当に大丈夫かと尋ねる。

「“彼”なら大丈夫よ。受理して待ってなさい」

カースクイーンは、ラミアの変わりに答え、閉まってる筈のドアを開け、ラミアと一緒に出て行った。

「とりあえず、被害者に会おうか」

ラミアは行き先を決め、へらへらして、カースクイーンに言う。

「移動してなければ……こっちよ」

カースクイーンは、つまらなそうに言って、依頼書にあった依頼主の場所に案内をする。

「……また、増えるのかしら?」

 エリルは、そんな2人を見送り、2人の姿が見えなくなってから、ギルドから居なくなる女性陣を見て、溜め息混じりに呟くのだった。

2人は、依頼主が住んでいる、比較的に安い宿屋に到着し、カースクイーンが、店主に依頼主の所在を確認し、依頼主の元に向かう。

「ちょっと良いかしら? 依頼の確認に着たのd……」

カースクイーンは、部屋の前に着くと、ノックして尋ねが、途中でドアが空き、女性が1人、ラミア達の手を取り、無理やり中に入れられる。

「……堂々と、尋ねられない場所なのかな? って、カースちゃん威嚇しないで、依頼主だよ?」

ラミアは部屋に入ると、簡単に手を振り解いて尋ねるが、カースクイーンが、自身の影をランス状にして、依頼主の喉元に向けているため、少し慌てて注意する。

「チッ……次に“彼”に触れたら殺すわ」

カースクイーンは、舌打ちすると、影を戻し、依頼主を解放する。

「…………すみません、こちらにどうぞ」

しばらくの間、依頼主は脱力して、座り込んでしまったが、話す場所へと、なんとか案内する。

「被害者は君? それとも……寝室の子?」

ラミアは席につくと、軽い感じから、真面目な顔をして、依頼主に尋ねる。

「っ!?……寝室の子です。私達サポーターは、幾つか部屋をシェアして暮らしてるんです」

依頼主は、“1人部屋”なのに、もう1人居ることを当てられて驚くが、素直に話す。

「なるほどね。じゃあ……被害者は無理そうだから、あなたが囮になってくれる?」

カースクイーンは納得し、依頼主から詳しい話を聞かずに、いきなり囮をお願いする。

「囮、ですか? ですが……」

依頼主は、訳が分からず、カースクイーンの言葉を繰り返し、心配そうに寝室の方を見る。

「大丈夫、カースちゃんが残るから。その変わりに……相手をダンジョンに誘き出してくれれば、全滅させてあげるよ?」

ラミアは、安心させるつもりは無いが、笑顔で話し、依頼主の手を取る。

「えぇ、命の安全は保証してあげる。


ただ、掃除代までは見ないわ」

カースクイーンは、苛立つが、ラミアから触ってるので、手を出さず、不機嫌そうに言う。

「……あっ、は、はい、分かりました。その、宜しくお願いします」

依頼主の女性は、ラミアの笑顔と行動に、顔を赤くして固まっていたが、カースクイーンに言われて気づき、返事をする。

「ありがとう。それじゃ、行く日が決まったら教えて、ギルド前の宿屋に居るから」

ラミアは依頼主に、笑顔でそう言うと、さっさと部屋を出て行ってしまった。

「……彼の名前はクリフ、クリフ・ライゼンデよ。全く、依頼主に名前教えないと、色々不便でしょうが。私は残るから、しばらく宜しく」

カースクイーンは、ぼーーっと、ラミアを見送る依頼主を見て、言いたい事はあるが、飲み込んで、依頼主に彼の名前を教える。

「クリフさん…えぇ、カースさんも宜しくお願いします」

依頼主はラミアの偽名を嬉しそうに呟くと、真面目な顔をして、カースクイーンにお願いをする。


依頼を受けて数日、依頼主が、ラミアの居る宿屋にやって来 て、ひとまず部屋で話す事になった。

「それで? いつ、どこで、何をするのかな?」

ラミアは、何が楽しいのか、テーブルで向かい合い、笑顔で依頼主を見て尋ねる。

「えぇと……明後日に、近くの樹海ダンジョンで、20階層に行くそうです」

依頼主は顔を赤くして俯き、少し間があるも、ちゃんと説明をする。

「ありがと。じゃあ、ピンチになったら助けるね。気をつけて帰って」

ラミアは立ち上がり、言いながら移動し、ドアを開けて帰りを促す。

「はい、宜しくお願いします」

依頼主は立ち上がり、頭を下げて言うと、部屋を出て行く。

『……カースちゃん、依頼主に何か言った?』

ラミアは、依頼主が居なくなると、魔力でカースクイーンに交信を送り、尋ねる。

『別に、特に何も言ってないわ』

カースクイーンは、素っ気なく言って交信を切るが、実は、色々と言っていたりする。

ラミアは交信を終える(向こうから切られたが)と、武器等の確認(最近、殆ど使ってないが)をして、とても上機嫌で嬉しそうに、一足先にダンジョンに向かう。

依頼主が言った日の昼頃、20階層の入口をラミアが見張っていると、依頼主を連れたパーティーがやって来た。

「来た来た、どこまで行くかな?」

ラミアは笑顔で、その一団を見つめ、後を追いながら呟く。

一団は順調?に、“モンスターに一切会わずに”、階層を進んでいく。「……おかしい、モンスターに出会う所か、1体も見えない」

リーダー格と思われる男が、モンスターに出会わない事を、不審そうに呟く。

それもその筈、ラミアが、そのフロアに居るモンスターを、“全て狩り尽くし、今も狩っている”ため、モンスターに会わないのである。

一団はそのまま、次の階に行き、ようやくモンスターと出会って狩りをする。しかし、少し経つと、また出会わなくなった。

「やはりおかしいっ! コレは後でギルドに報告する!」

リーダー格は、不審から確信に変わり、声を張り上げて言う。

「確かに、これじゃあ食い扶持も稼げねぇ」

「けど、ちょうど良いか?」

パーティーメンバーの男達も、不満を言うが、1人がニヤリと笑うと、依頼主を放っといて、何やら密談を始めた。

「あの? 一体何の話を?」

依頼主は、嫌な予感がして思わず尋ねると、男達が一斉に襲いかかろうとする。

「っ!? ……ぇ?」

依頼主は、恐怖から足が竦み、目を閉じて、過ぎるのを待とうとするも、一向に来ず、目を開けて見ると、男達は“黒い何か”に足元から貫かれていた。

「間一髪、って所かな? 大丈夫?」

ラミアが突然、依頼主の背後から声をかけ、肩に手を置くと、男達は倒れていき、“黒い何か”は消えていた。

「あの? ……これは一体?」

依頼主は状況についてこれず、ラミアを見て尋ねる。

「気にしない、気にしない。とりあえず、勿体ないからあげるね」

ラミアは笑顔で言いながら、1人以外、死んだ男達から、値段が高めの装備と、財布、狩ったモンスターの証拠を取って、依頼主の方に差し出す。

「あの、私はこんなの、入りませんから」

依頼主は困惑した様子で、差し出された物と、ラミアを見て言う。

「いらないの? じゃあ、お姉さんの荷物と交換で。口止め料と被害者の子に、ね?」

ラミアは、いらないと言われれば、困った顔をして、最もらしい事を言う。

「そういう、ことなら」

依頼主は、強く言えなくなる事を言われ、渋々という感じで、荷物である食料と、差し出された物を交換してしまう。

一方、依頼主の宿屋では、数人の男達が、依頼主の部屋に踏み込む。


「……やっぱり、来たわね? このゲ○野郎」

カースクイーンは、被害者と一緒に寝室に居るが、気配で分かり、男達に言う。

しかし、男達は寝室まで行く事は無く、部屋中にある、あらゆる影が突然、ランス状に伸び、一瞬にして身体中を貫かれていた。

「……あら? これで終わり? 呆気ないわね」

カースクイーンは寝室から出て、男達の様子を確認するが、全員死亡であり、つまらなさそうに呟くと、影を元に戻す。

と、ラミアはちょうど交信で、カースクイーンから状況を聞き、ワザと急所だけ外したリーダー格に尋ねる。

「おじさん達は後、何人かな? 4、5人ならカースちゃんが仕留めたから楽なんだけど」

「っ!? ば、ばがな゛……だのむ゛だずげでぐれ」

リーダー格は、ラミアの言葉に驚くも、身体に力が上手く入らず、吐血しており、呂律が上手く回らない口で、助けを求める。

「おじさん、ダンジョンは自己責任だよ? 被害者も同じく助けを求めなかった?」

ラミアは、冷たい目線で、リーダー格を見つめて言い、ちょうど、差し出された物を、荷物に入れ終えた依頼主の所に戻る。

「あの、これで大丈夫でしょうか?」

依頼主は、まだ不安のようで、ラミアに尋ねる。

「とりあえず、帰れば分かるよ。勿論、ギルドに寄ってからだけど」

ラミアは、笑顔で依頼主に言い。重くなった荷物を、依頼主の代わりに持ち、依頼主の手を握って歩き出す。


その日の夕方には、ギルドに着くと、ラミアと依頼主は別々に、受付カウンターで、討伐したモンスターの換金等を行う。

「……すみませんが、ツケで良いですか? というか再三、ダンジョンでは無双しないで下さい。って言いましたよね?」

ラミアの担当になった受付嬢、エリルは、苦笑いを浮かべ、目の前にある、モンスターの皮でパンパンに膨らんだ4つの袋(約60cmサイズ)を見て、ラミアに尋ねた。

「暇だったからね。って、またツケ? 別に良いけど。ちゃんと、受付嬢の依頼もやったよ?」 ラミアはエリルのツケ発言に不満を漏らすも、楽しかったのか、満足そうに笑顔で言った。


「……確かに、依頼完了が認められました。こちらはちゃんと出ますので、少々、お待ちください」

エリルは、ラミアの言葉ではなく、隣から来た、依頼完了の通知を見て言い、報酬金を取りに行くついでに、目の前に置かれた袋を奥に運ぶ。

「……実はあれで半分、何て言ったら怒るかな?」

ラミアは待ってる間、まだ影の中に仕舞っている袋を見て、苦笑いをして呟いた。「お待たせしました。こちらが報酬になります」

エリルは報酬金を持って、戻った来て、金の入った袋をラミアに差し出す。

「んーー、半分依頼主にあげて。変わりにコレ」

ラミアは少し考え、受付嬢に笑顔で言えば、さっきと同じく、袋を4つ出して見せる。

「……うちのギルドを破綻させる気ですか?」

エリルは、出された袋を見て、笑顔が引きつりながらも、何とか文句を言う。

「ツケで良いよ。それか…冒険者ランクをCに固定してくれる?」

ラミアは対照的に、笑顔のまま交渉をする。勿論、今までもしてきたが、その都度ツケにされた。

「クッ……分かりました、何とか固定にします。ただし、指命や高ランク向けでも、適任だったら通しますので」

エリルは嫌そうな顔をし、少し考えながら、ギルド長辺りとアイコンタクトし、笑顔を作って言う。

「本当っ!? じゃ、お願い。後で何か受付嬢達に奢るよ」

 ラミアは目を輝かせて言い、要求が一応は通って凄く嬉しそうだ。

 実際には、現状維持に近いが、受付嬢は本気の笑顔になり、袋と報酬を持って、また奥に行く。その後に、ギルド長も続いたが、ラミアは全く気にしない。

「お待たせしましたっ! またのご利用お待ちしております」

エリルは、奢ると聞いた瞬間から、テンションが一気に上がり、さっさと作業を済ませて、半額になった報酬を、ラミアに差し出しながら言う。

「うん、また明日」

 ラミアも嬉しそうに言って、ギルドを後にし、目の前にある、自分達が住んでる宿屋に向かう。

 カースクイーンには、ダンジョンから帰る前に、依頼完了を伝えたため、多分帰って夕飯でも、作って待っててくれてるだろう。と思っての行動である。

「ただいま~~」

ラミアは、ドアを勢いよく開けて、元気に言うと、台所に向かう。

「お帰り、何かあった? 上機嫌じゃない。私は、被害者のアフターケアしといたわ」

カースクイーンは、ラミアの予想通りに夕飯を作っており、いつもと少しだけ違うラミアの態度を、不思議に思って尋ね、自分の方の報告をする。

「またツケが増えるから、ランクC固定にしてもらった♪」

ラミアは嬉しそうに言うが、基本的に冒険者は上を目指す 。それは、より高い報酬や声明等、人それぞれだが、求めるのは同じである。だが、ラミアは違うようだ。

「ま、今の所ツケで支払われてるし、お金は溜まる一方だしね」

カースクイーンは、納得した様子で言い。現在、ほぼ全ての費用はギルドのツケで払っている。お陰で、お金を使わないので凄く溜まる。

そう、ラミア達はランクC冒険者だが、所持金にツケを合わせれば、超高ランク冒険者なのだ。それもこれも、ダンジョンに行けば、狩り尽くしてしまうせいである。

 しかし、ダンジョンのモンスターは、一定時間が経てば、また増えるために問題はない。だが、限度がある。ラミア達は、ほぼ一瞬でワンフロアのモンスターを倒し、集めて捌き、宝箱まで取っていく。

 そのため、改変前や、モンスターが復活する前に、来てしまった冒険者には、何も得られないまま、そのフロアを後にする事もある。

 なので、ギルドからは要注意人物に指定され、依頼以外でダンジョンに行くときは、ギルドに、いちいち寄って行かなければならない。じゃないと金額が半減、若しくは無価値にする。と脅された。

そんな事を思い出しながら、ラミア達は夕飯を食べて就寝する。

 因みに、依頼主側は、予想より多い金額に驚きながら、ギルドを後にして、ラミアと別れる前に、食糧を渡そうとしたが断られ、宿屋に戻ると、部屋の番号が変わっていて、元の部屋は掃除するらしい。掃除代を払おうとしたら、ギルドから貰うとの事で、渡された鍵の部屋が、新しい部屋だと言われた。

相部屋の同僚は、塞ぎ込んでたのが嘘のように、夕飯を作って待っていた。一体彼等は何者だろうと考え、1日が終わった。

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