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プロローグ

ここは、沢山の国家からなる、ソキウス共和国内の東側にあるテッラ大国、その北東に、国境をまたいだ環境保護区があり、その中にエルフ達が住んでいる森がある。

 その森の中心地、そこでは今、妖精と契約を結ぶという、成人の儀式が執り行われようとしていた。その最中に、長の前に1人、女の子のような顔立ちの少年が、歩み出て、長に尋ねた。

「ねぇ、ボクもやってみて良いかな?」

何を馬鹿な事を聞くんだっ!? と、周りの大人達は騒然となる中、長は静かに少年を見つめて言った。

「何故そんなに急ぐ必要がある? お前はまだ若い、別に参加しても構わないが、その若さで契約が結べるのは稀な事、それでも参加するのか?」

「うんっ! やるよっ!!」

少年は、元気よく言い切り、足早に儀式に参加すべく、参加者が並ぶ列の最後尾に加わった。

そして、何事もなかったように儀式は進み、とうとう、最後に加わった少年の番になった。

少年は目を閉じ、意識を集中させ、いつも通りなら、自身の影の中、闇の中に存在しているであろう、妖精かのじょにゆっくりと語りかけた。

『……ねぇ? ボクの声が聞こえる? 聞こえたら、返事をしてよ?』

しばらく、少年が頭の中で、語りかけていると。『っ!? …………何? 今日はいつもより早いし、内緒話なんて珍しい』

 妖精かのじょは、いつもの肉声による会話ではなく、魔力を使っての交信に驚いたが、落ち着いて冷静に応えた。

『うん、あのね? ボクは今、成人の儀式に参加してるんだ』

 少年は、妖精を驚かせようと、今の状況を教えた。

『へぇ、って嘘!? あなたまだ7歳じゃないっ!! 何やってんのよっ!!?』

 妖精かのじょは、少年の目論見通り驚いて、思わず地がでた。

『えへへ、ちょっと時間ないから手短に言うね?』

 少年は、ちょっとだけ集中力が乱れそうになるも、踏ん張って言う。



『いやいや、訳分からないからっ!? ちゃんと説明してっ!』

 妖精かのじょは、思いっきりテンパって、少年に説明を求めた。

『んーー、カースちゃ、カースクイーンちゃんって1人ボッチでしょ? だから、契約すれば、ずっと側に居てあげれると思って』

少年は、勇気を持って、思っていた事を妖精かのじょに告げた。

『んなっ!? あ、あなた分かって言ってるのっ!!? ……前にも言ったと思うけど、私は闇の妖精に属するから、仮に契約なんてしたら、あなた仲間や家族と別れなきゃいけないのよ?』

 妖精かのじょ、カースクイーンは、少年の説明を聞くも、納得はせず、前に言ったであろう忠告を、もう一度少年に言う。

『うん、分かってるよ。でも、カースちゃんが居るし、これならもう、1人ボッチじゃなくなって淋しくないでしょ? それに友達だもん、友達は家族なんだから助けないとねっ!』 少年は、少し真面目トーンで話し、カースクイーンを説得しようする。

『……あなた、そこまで私の事を? ……分かったわ、契約してあげる。その代わり、後悔する暇もなく、面白楽しく過ごすことっ!!』

カースクイーンは、少年の説得に、心を動かされるも葛藤し、契約しなければ、ただの繰り返しになると悟り、先送りを諦め、契約を実行に移す。

時間にしては数分だろうか? 少年は最後まで妖精と交信し、見事契約は出来たようだが、他の儀式参加者と違い、少年の影から、急に黒く禍々しい魔力が伸び、少年を包み込んでしまい、大人達はおろか、長さえも驚愕して混乱し、辺りは騒然となった。「馬鹿なっ!?」

「何なんだ、あの魔力はっ!?」

「契約した、だとっ!? 信じられんっ!!」

そんな中、少年は黒い魔力に包まれ、身体を作り替えられながら、片膝をつき、自分の足元にある影へと、その中から来るであろう、妖精かのじょに向けて手を差し出し、満面の笑みで言った。

「うん、約束するよ。面白楽しく生きていこうっ!!」

その瞬間、少年の手の上に、腰まである黒髪ロングストレートを揺らし、深紅のような赤目で、白い肌に和ゴス衣装を着た、30cm程の妖精が、黒い4枚羽を広げ、少年の影から飛び乗る形で思いっきり踏み込み、少年の顔面に飛び膝蹴りをぶちかました。

「っ!!? ~~っ!!!!」

「こんなに面白い事、次からはちゃんと相談しないよっ!」

少年は、突然の攻撃に対処出来ず、顔面の痛みに悶え。

カースクイーンは、そんな少年を眼下に睨みつけて言い。

 少年は痛みから顔を押さえ、拗ねた様子で言った。

「だって、言ったらサプライズにならないでしょ?」

「……な、なら仕方ないわね。さっきの攻撃は悪かったわ」

カースクイーンは少年の言葉に、恥ずかしさから耳まで赤くし、よそを向いて謝りながら、少年の顔を癒やす。

そして魔力が収まると、少年の見た目は変わっていた。髪はショートヘアの金髪から、肩甲骨まであるロングストレートの銀髪に、緑色の目は妖精かのじょと同じ赤目に、白かった肌は、全身日焼けしたような褐色に染まり、手や足等には幾何学模様が刻まれいた。

大人達は、少年の姿を見ると、忙しそうに何やら準備を始めていき。

 長は、状況についていけず、ただ周りを眺めている少年と、傍観しているカースクイーンに近づき、告げた。

「お前達は、明日、日の出からダークエルフの村に向かい、今の名を捨て、新たな名を名乗り、そこで暮らすのだ」

長の言葉を聞き、少年は首を傾げ、思った事を尋ねた。

「今から行っちゃだめなの?」

「別に構わんが、村の外にはモンスターがいる。それに馬車でも……早くて3日はかかる。準備は大人達でやっておく、お前は明日に備えて寝なさい」

長は、渋い顔をして少年に説明し、少年を説得する。

「んーー、分かったよぅ」

少年は、長に言われて考え、眠そうに言い。渋々、自分の家に向かい、こうして、成人の儀式は、慌ただしく終わった。

 翌日、日の出になり、何をやっても少年は起きず、見送ろうとした長や大人達が、業を煮やして少年の部屋を馬車の荷台にし、ちゃんと起きたカースクイーンに御者をお願いし、何とか村を出発させた。

村を出て、昼頃に少年は起きたが、ダークエルフの村まで4日かかり、その間、カースクイーンから色々なレクチャー(少年が無知すぎたため)や、記念すべき初料理(本人曰わくノーカン)、名前決め等をした。

「ようこそ、疲れたでしょう? 私は長のセシル・マーテル。名前は決まってるかしら?」

ダークエルフの村につくと、女性が出迎えてくれた。どうやら、長は女性らしく、村にやって来た少年を歓迎し、名前を尋ねた。

「うん、カースちゃんと一緒に考えたんだ。ボクはラミア、ラミア・アルクスって言います!」

少年は、ダークエルフの長に、笑顔で名前を名乗った。

 しかし、ダークエルフの長は、少年の村の使者から、少年と聞いていたので、名前が女の子っぽい事に困惑して、名前を変えるか尋ねた。

「本当に、それでいいの? 私には、君は少年に見えるし、男の子にしては、可愛い名前じゃないかしら? 差し支えなければ与えましょうか?」

「うん、だって可愛いでしょ? でも、名前もらったら、二つ名みたいで格好いいかもっ!!」

少年は長の言う゛可愛い名前゛に同意して言うが、名前をくれると言うのでお願いした。

「……では、親しい者と、家族の前ではラミア・アルクス、他の場所や他人の前では……クリフ、クリフ・ライゼンデなんてどうでしょう?」

長は、少年の考えを尊重し、使い分ける必要性は無いが、大事なのだろうと思い、名前を考えて、意見を求める。

「クリフ、クリフ・ライゼンデ……うん、良い名前をありがとう」

 少年は、名前を口にして確認し、気に入ったようで嬉しそうにお礼を言う。


「良かった。では、今日から住む場所を教えます。一応、あなたはまだ子供なので、私を親と思っても良いですから、困った時は遠慮しないで」

長は安堵し、少年に説明をしながら案内を始め、村人に馬車を運ばせる。

「ふーん……じゃあ、お母さんって呼ぶね」

少年は、長の説明を聞き、長の呼び方 を考えてたら、長が親代わりと言うので、何の考えも、躊躇いもなく言った。

「お母っ!? あなたは、とても良い子ね。ちゃんと育ててあげますからね」

長は、言っては欲しいが、直ぐには無理だと思っていた矢先に、少年から゛お母さん゛と呼ばれて驚くが、少年の頭を撫で、嬉しそうに言って決意を固める。

「ん゛ん゛っ!! お取り込み中悪いけど、私は゛この子゛と契約したカースクイーンよ」

ちょっと良い雰囲気になりそうなため、カースクイーンは、ワザと咳払いをして、自己紹介をする。

「クイーンっ!?」

「カースちゃんっ!?」

長と少年はカースクイーンの登場と自己紹介に、同時に驚いた。

 長は、まだ成人してない少年が、妖精の中で最上位の階級を持つ者と契約した事に。

少年は、4日間の旅の内3日間、夜に起きて、昼間は寝てたのに、起きる時間より早く登場した事にだ。

「何? 私がいたらいけない? 道草食ってないで、さっさと目的地に行くわよ?」

カースクイーンは、2人を睨みつけて言い。十分に注意して、先に進む。


「あ、ちょっと待って」

長が慌てて、カースクイーンの前に立ち、案内を再開する。

「カースちゃん、どうかしたの?」

少年は、カースクイーンの様子が、少しおかしいと思って尋ねる。

「別に、ただの気まぐれよ」

カースクイーンは、拗ねた様子で、そっぽを向いて言う。

そのまま家に着き、長にそのまま中を案内され、その日の夕方には、歓迎会が開かれて挨拶し、そのままダークエルフの村で、狩りや対モンスター、対人戦、魔法、学問等を教わっていき、あっという間に5年が過ぎた。

 そんなある日、ダークエルフの村の入口で、一悶着があった。

「クリフさん、本当に行っちゃうのっ!?」

「ヤダよっ!! もう少し一緒に訓練しようよっ!!」

クリフと呼ばれた゛女性゛は、自分より年下の少年少女に囲まれ、何やら揉めていた。

「一応、掟でもあるし、自分の食い扶持は、自分で稼がないとね」

女性は苦笑いを浮かべて言い。決意は揺らがないが、やはり寂しいのか、一人一人の顔を見て覚える。

「ラ……クリフ、年に1回位は帰って来なさい。ここは、あなたの故郷なんだから」

5年は経ったが変わらない姿で、長が見送りの言葉を、本当の名前で呼びそうになるが止め、笑顔で女性に語りかける。

「うん、お母さんも元気で……そうだ! 僕には本当の名前があるから、分かったら捜しに来てね? そしたら一つだけ、ご褒美あげるから。ヒントは大人達は知ってるかな?」

クリフ、いや、ラミアは長に挨拶をすると、閃いて、少年少女に向けて、自分の名前を問題にして出題した。

次の瞬間、少年少女は長や、親の元に向かって散った。もちろん、何人かは彼女にまとわり付いたままだが。

「あまり、クリフを困らせないで。みんなも年になれば、出発するんだから」

長は、あくまで冷静に、優しく微笑んで子ども達を諭す。 「じゃ、またね。暫くは近い街に居るよ」

ラミアはようやく、子ども達から解放され、長に一礼すれば、最後にそう言って村を軽装備で出発した。

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