第1章 変わりゆくもの 2話
前回、今回もお読みくださりありがとうございます。
今回も「変わりゆくもの」2話です。
是非、楽しんで頂けたらなと思います
作業場に戻る途中でも、レオンスから話を聞けた。驚くことに、彼の他にもポーラ、駆、実優までもが、先ほど彼が見せてくれた『魔術』を使えるらしい。しかし、彼が用いる魔術の能力とは異なり、ポーラは『移動』に携わる能力らしい。また、駆と実優は『変身』する事ができる能力である。この世界では、こういった異なる能力を持つ魔術が多く存在する。その中でも、攻撃的な魔術を持った者が悪知恵を働かせる奴らが存在するらしい。話を聞き終えると、俺はいくつもの疑問が浮かび上がった。
1.人による能力の異なり。
2.魔術が目覚める原因。
3.万人が魔術を使用できるのか、目覚めるのか。
大まかだが、こんな事が思い浮かんだ。そして、駆、実優、ポーラ、レオンスが目覚める事となった原因を知りたいとも思った。
「では、作業を始めようか」
彼は、張り切りながら作業場に置いてあるいくつかの工具からドライバーを手に取り渡された。
「あの、これから何を作るんですか? 」
「あぁ、まだ言っていなかったね。 駆には自転車をあげるんだよ」
自転車を作るのは大変なのではないのか。不安だが、駆へのプレゼントだ、弱気にはなれない。そんな事を考えている途中
「安心しな、フレームとかはもうあるから、それを組み立てるだけで簡単な作業さ」
「良かったです……」
この人は、俺の考えている事がお見通しなのか、それとも顔にでているのか?というほど、対応した言葉をかけてくれる
「ちなみに、駆は赤色が好きだから。赤い物を作ってあげるよ」
小さい男の子は、赤や青といった原色系の色を好む傾向があるらしい。俺も小さい頃は、そうだったかも知れない。女の子の場合は、水色、ピンクといった明るい色が多い
「それでは、まずはこれから」
彼の説明を聞きながら作業を始めた。
「よし、これで完成だ」
最後の工程が終わり、駆にぴったりなサイズの赤い自転車が出来上がった。所々に、青色の部品も付けられている。
「出来ましたね! 」
外は、夕日が差し掛かかる。俺のペースに合わせてもらえたようで、少し時間がかかったのだろう。彼は、何かを思い出したのか、立ち上がり奥の方からある物を取り出してきた
「駆には、これが必要かもね」
それは、乗りこなすための補助輪だ。駆のような子は、何度も転び気合いで何とか出来そうだが
「そうかもしれませんね」
その事も理解しつつ、笑いながら返した。そんな、冗談交えた会話をしているなか
「ご飯の用意ができましたよ」
ポーラが扉を開け、顔を出し呼びに来た。
「わかったよ」
「わかりました、ありがとうございます」
そう言って、完成した自転車を家の前まで運び入っていく。
「おー、すごいですね! 」
そこには、装飾されたリビングが出来上がっていた。駆と実優は、自分たちの誕生日を自ら作り上げていた
「実優とおばさんと3人で作ったんだ! 」
駆が言いながら俺の左手を引っ張る。と同時に、実優も駆け寄りもう片方を引く。さすが誕生日の子供達だテンションが高い。
「誕生日おめでとう、駆、実優」
引かれながらそう言った。何故か不思議そうな顔をして駆が見ている。そして、二人に導かれいつもの席に着いた。
「せーの、セシルさん、おでめとお!」(駆)
「セシルさん、おめでとう」(実優)
噛みながらも勢いで言い切った駆。小声だが恥ずかしながら言った実優。その二人が俺を挟んで笑顔でこっちを見ている。俺は素で驚きの声をだした。状況を説明してもらうため席に着いたまま、顔だけをレオンス達の方に向けた。レオンス達も笑顔でこちらを見ながら
「おめでとう」
「おめでとう」
状況の説明もない後、駆がしゃべる
「僕らが誕生日なわけないじゃん! セシルさんの歓迎会だよ! 」
これは、逆に驚かされたのかと頭が回らない。すると、レオンスが満足げな顔で
「お前達の誕生日は今日だぞ」
それを聞いた駆は、驚きの顔も声も出さずに何度も否定し顔と手を横に振る。その会話のよこから
「駆、実優、誕生日おめでとう」
とポーラが言い、駆は大きく驚いた。それに対し実優は、あたかも知っていたようにありがとうと返した。
「なんで、実優は知ってんだよ!」
2度驚いた駆は聞いた
「だって、おばさん達の部屋のカレンダーに書いてあったもん」
それを聞いた駆は、すぐに奥の部屋まで走って行く。一方、ポーラとレオンスは、してやられたかのように互いの顔を見て微笑み合っていた。
お読みくださり、ありがとうございます。
幸せな回だったのでは、ないでしょうか?と思います。次回も誕生日&歓迎会の続きです。
では、よろしくお願いします。