第1章 変わりゆくもの 1話
前話と期間がかなり空いてしまいました。
申し訳ありません。
今後は、頻度をあげれたらなと思います。
では、「変わりゆくもの」どうぞです。
あたりは明るいが、日が頂上から下りはじめる頃に話が始まる。
「まずは、前世のことを覚えているだろう? あの時の世界と現世は同じ様な所じゃない、この世界は異常すぎる、物や自然あるいはその他、そして人も」
レオンスは、重たい口調で言う。
「具体的には、どのような事が?」
彼の表情や口調を見るに、あまり追求して聞きたくはなかったが仕方ない。
「あぁ、教えるさ。 だけど、今日はあまり時間がないからこれだけだ」
そう言うと、彼は手にしていたレンチを俺に渡した。
「私に投げてみてくれ」
彼は唐突に冗談のようなことを言う。しかし、彼の表情は変わらずだ。俺は拒否する言葉を選ぼうと考えたが、この話に冗談は無いと察し
「本当に良いんですか? もし何かあったら…」
「大丈夫だよ、あと思いきりの方が分かりやすいから頼む」
それは中々、気が滅入るな。だけど、その行動を起こさなければ何も始まらない。彼の表情を見て
「では、いきますよ…」
不安でいっぱいだが、俺は構えた。
「……せーのっ! ーー」
思い切り投げられたレンチは、彼の方向に飛んでいき、当たると思えた。しかし、レンチが薄く色づいた膜のような何かにぶつかる。そして、彼の目の前でレンチが落ちた。今は彼の周りには何も見えないが、確かに衝撃音と無傷な彼がいる。安堵した俺は、
「何をしたんですか? 」
「マジックみたいなものさ、でもそれは種も仕掛けもない本物さ」
「マジックとは、手品をしたということですか? 」
「手品には、種も仕掛けもあるだろ、人の目を逸らしたりして巧みにみせる芸がそれさ。 だが、今見せたのは本物。魔術と言うんだ」
過去に夢のような、創作されていたことがこの世界では実現している。これが前世と現世の違いなのか。話しの冒頭で言っていたことが、実感し戸惑っていた俺に彼は言う。
「驚いただろ、私も初めは驚いた。 この力が使えるようになった時は、今でも鮮明に覚えているよ」
「まぁ、これがいつ使えるようになったかなどの話はまた後日話そう」
たぶんこの世界の話を聞くには長話になるのだろうと思い
「では、また後日に」
異様な余韻は、残っていたが焦っても仕方がないと考えた。
「それでは、セシル少し手伝ってくれないか? 」
この話の後の事だから、何を手伝えばいいのか頭が働かない。少し間があいた
「はい、何をすればいいですか? 」
さっきまでの深刻な表情、重たい口調と、とって変わり明るい表情となる。彼の心境を大きく変えた物の手伝いなのだろうか
「それは、もちろんあの子達へのプレゼント作りさ」
彼は、この世界で何らかの悲劇に合い、そこで駆と実優との出会いが幸せを与えてくれた。彼の感情が暖かく伝わってくる。そして、俺にもその暖かさが芽生え始めていた。
お読み頂き、ありがとうございます!
ほんの少しだけですが、この世界の事が分かる話でした。次話はきっと暖かい話になるでしょう。