第1章 出会い 3話
今回もよろしくお願いします!
『出会い』はこれでおしまいとなります。
2度目の朝を迎えた。
少し寂しげな6畳ほどの部屋の片隅で、窓から朝日が顔に差しかかる。眩しそうに目を開ける。眠気を覚ますよう、上体を起こし大きな伸びと同時にあくびが出る。
ベッドから出て、リビングへ向かう。そこは、昨日とは少し違い、暖炉がついていなく、澄み切っていた。誰もいない、とりあえず椅子に座りボーッとしていた。
少し経つと、家の奥の方から足音がしポーラとレオンスが出てきた。
「おはよう」
手荷物を抱えた2人が清々しく挨拶した。
「おはようございます」
俺もしっかりと返す。
「早いけど、ゆっくり休めたかしら?」
「はい、おかげさまで。 ありがとうございます」
昨日は本当にいろいろなことがあった。
「それじゃ、朝ごはんを作るから駆と実優を起こしてきてもらえる?」
そう言って、夫婦でキッチンに立ち支度を始める。
階段を上がった向かえに駆と実優の部屋がある。ドアを開けた。この部屋も子ども部屋というには少し寂しげに思える。ただ2人部屋ということもあり少し広く、分厚い本が棚に並べられている。寝苦しかったのか、左手のベッドには布団から身体をはみ出した駆が大の字で寝ている。実優はしっかりと首元まで布団をかぶり右手のベッドで寝ている。駆は、年相応の身長で、黒というより茶色かかった短髪の容姿をしている。確か瞳も少し茶色で目は大きかったような気がした。実優は、駆より小さく少し長めの黒髪。駆同様、パッチリした目で瞳は黒色。子ども達を微笑ましく、我が子の様に少し眺めた。
駆の肩を優しく叩いて起こした。
「おはよう」
駆は髪を乾かさずに寝たのか、寝ぐせが酷かった
「駆、髪すごいから直してきたほうがいいぞ」
駆はボサボサした髪を触り驚いた顔をし、走って階段を降りて行った。その音で実優が体を起こし、まだ眠そうに目を擦る。わけを話したが、うとうとしている。
「ほら、もう朝ごはんできるんだってさ」
そう言い、ゆっくりとベッドからおり下へ降りる。
「実優も駆と一緒に顔洗ってきなさい」
配膳していたポーラが言う。この光景は本当の家族の様だ。食卓に並べられている中に、バケットと白米がある。日本食は珍しく興味本位で見ていると
「その茶色いスープは味噌汁って言うのですって、美味しいわよ」
ポーラが次に運んできた物は、馴染みある黄金色したオニオンスープ。後に、レオンスがソーセージとスクランブルエッグを運んできた。駆と実優も席に座り、2度目の家族団欒の様な食事を終えた。
使い終わった食器を洗っている中、この家族と、過ごした時間を思い浸っていた。この先のことも考えると不安になるなか
「今日もまた泊まっていくだろう?」
レオンスが不意に問いかけてくる。
「いいんですか!?」
不安になっていたので、咄嗟に返答していた。レオンスは笑い
「やっぱりか、行く当てもないから考えてでもいたんだろ? なら、まだここに居座ればいい。実優と駆もそっちの方が喜ぶだろうしな」
「ありがとうございます!」
「そうだ、洗い終わったら少し外で話さないか?」
返事をし、レオンスは席を立った。
洗い終わり、外へ出ると駆が遠くの方でボールを蹴って遊んでいる。その近くで実優はしゃがみこんでいる。作業場で何かを作っていたレオンスが俺に気づいた
「歩きながら、話そうか」
そう言うと、使っていたレンチを持ちながら歩き始めた。
「今、何を作っていたんですか?」
沈黙が少しあり、俺から話し始める。
「あれは、駆へのプレゼントだよ。本当の誕生日ではないけれどね、あの子たちと出会った日が今日だから毎年何かをあげているんだ」
「あと、実優の分は妻が準備しているよ。あの子たちには内緒で頼むよ」
幸せそうな笑みを浮かべそう言う。
家から離れるにつれて徐々にレオンスの表情が消えていき、不意に問いかける。
「この世界について私が知っている事を話しておくよ」
発しられたその顔からは、笑みが消え意を決したような面持ち。聞いてしまえば、これまでの生活は送れないようなそんな気持ちを思わせる口調でもあった、そして彼は話し始めた。
お読みくださり、ありがとうございます!
『出会い』は今回で終わりとなります。
次回からのサブタイトルは『微かな真実』です。
次回もよろしくお願いします!