2号室住人と
今夜は鍵の付いた部屋に閉じ籠ろう。そう決意しながら、挨拶回りを終わらせるべく俺は2号室の前に居る。
よく考えたら、先ほどは部屋に入る前にノックを忘れていた。これはよろしく無い。いくら神とか言われる存在であろうと、礼を失するのは恥ずべき事である。
と言う訳で、二号室のトビラをコンコンッと叩く。すると、直ぐに中から。
「はぁ・・い!どちらぁ・・さまでしょう・・んっ!」
なんか、呻くような返事が返って来た。何だろう、嫌な予感がする。
だが、家神に逃走の二文字は無いのだ。
「こんにちは、私はこの屋敷の家神で紅葉と言います。住人の皆さんに是非挨拶をと伺わせて貰いました。今はお時間大丈夫でしょうか?」
「あっ・・・んぁい!ちょっと・・・手がぁ、離せないけどぉ・・・平気ですっ!」
なんだろう、苦しそう・・・と言うか、途切れ途切れな返事が。
まぁ、大丈夫だって言ってるし、顔合わせて挨拶するだけだ。問題ない。
「失礼します。」と断って、俺はドアを開けて顔を差し込んで中を覗き込み・・・
「アッ!アッ!アッ!み、みられてるぅ・・・、あんな可愛い娘にぃ・・・見られてるのぉ・・・。」
凧糸で縛ったチャーシューが食べたくなったので、俺はドアをそっと閉じた。